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自由・公正・透明な情報通信市場の実現に向けた提言
― 経済活性化と構造改革を目指して ―

I.望ましい情報通信市場の姿


国民生活の質的向上ならびにわが国産業の国際競争力の向上に向けて、情報通信技術の可能性を最大限に発揮させるためには、情報通信市場において事業者間の競争を促進し、サービス料金の低廉化やサービスの多様化が進む結果、情報通信市場が拡大し、設備投資が増大するとともに事業者の国際競争力が強化され、より優れた情報通信サービスの開発競争や料金競争が促される、という好循環が形成される必要がある。

  1. 利便性の高い多様な情報通信サービスの実現
  2. 利用者が情報通信技術の革新のメリットを享受できるよう、利用者ニーズに対応し、安価で多様なサービスが機動的に提供されている。

    国民、企業、行政などの利用者が、各々の目的、例えば、情報の収集・分析・発信、コスト削減、意思決定、業務の迅速化や新たな事業の創出等を図る手段として、情報通信技術の高度利用へのニーズが高まっている。今後、デジタル技術、光技術、ネットワーク技術、半導体技術、情報圧縮技術、暗号技術、ソフトウエア技術等の急速な技術革新のメリットを、利用者が機動的かつ選択的に享受できるようにすることが求められている。そのためには、事業者間の競争を通じて以下のような状況が実現していることが望ましい。

    1. 利用者のニーズに対応し、伝送可能な情報の形態、伝送容量、片方向・双方向等の面できめ細かいサービスメニューが提供されている。また、従量制、定額制、各種割引料金やそれらの組み合わせ料金制等を含め、多様な料金メニューが存在し、良質なサービスが安価に提供されている。

    2. グローバルに事業を展開する利用者のニーズに対応し、内外一貫したシームレスサービス、ワンストップ・サービスが提供されている。

    3. 国内・国際間でネットワークインフラが柔軟に構築・利用され、利用者は、通信・放送用の複数のインフラを通じて、音声・データ・映像等の形で自由に多様な情報を入手、発信できる。

    4. 低年齢層から高齢層に至るまで、誰もが使いやすい端末機器を介し、高度な情報通信サービスが提供されている。また、日本国内においては、事業者にとって高コスト地域であっても、国民生活に不可欠な通信サービスが、妥当な料金水準で受けられる。

  3. 自由・公正・透明な情報通信市場の枠組み
  4. 情報通信市場において、多数の事業者が、サービスの料金、質の面で創意工夫を発揮できる自由な競争、安価で良質なサービスの提供によって利用者の獲得を競い合う公正な競争が実現し、市場が拡大している。市場支配力が存在する場合、それを利用した反競争的行為を防止するための仕組みがある。また、事業者は適切な情報開示を行う一方、行政においても、制度・政策や意思決定過程の透明性を確保している。行政は、利用者の立場から市場を監視し、透明な手続きで裁定を行っている。

    こうした利便性の高い多様な情報通信サービスを実現するためには、以下のような自由・公正・透明な情報通信市場の形成を図り、事業者が十分に創意工夫を発揮できるようにする必要がある。

    1. 多数の事業者が、有線・固定無線・移動無線を利用した設備の保有、再販、相互接続等、多様な態様のネットワークを自在に構築することができ、自らのリスクの下、料金・サービス面で創意工夫を発揮できる自由な競争が展開されている。また、内外における競争を通じ、透明性を保ちつつ、国際水準の競争力を確保している。

    2. 事業者間で、安価で良質なサービスの提供によって利用者の獲得を競い合う公正な競争が行われている。市場支配力を利用した反競争的行為を防止するための仕組みがあり、サービス提供に不可欠な設備については、あらゆる事業者が技術的に可能な任意の場所で接続し、合理的な料金で同等に利用できるようになっている。また、不当な技術の囲い込みによる反競争的行為が起こらないよう、監視体制が設けられている。

    3. 利用者が安心して事業者を選択しサービスを利用できるように、事業者は、経営内容、サービス内容、契約内容、アフターサービス体制等に関する情報を適切かつ、わかりやすく開示している。一方、行政においては、利用者の利便性向上の観点から競争促進のためのルールを定め、その遵守状況を監視するとともに、事業者間の紛争については透明なルールに基づき公正に裁定を行っている。また、利用者の意見や苦情に対し、迅速に対応、処理する透明な体制が整備されている。行政における基本政策やルール、規制に関しても、原案が事前に公開され、十分な期間をもって、広く意見を募ることが原則とされるとともに、決定までの過程、審議会等の議論が詳細に公開されるなど、国民・企業が政策をめぐる議論を理解し、参加できるようになっている。ルール策定や規制緩和のスケジュールが明示され、規制が行われる場合には、その理由と対象、期間、手続き等がわかりやすい形で公表されている。


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