Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2015年10月15日 No.3242  新たな「サイバーセキュリティ戦略」を聞く -情報通信委員会

谷脇氏

経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で情報通信委員会(内山田竹志委員長、中西宏明委員長、近藤史朗委員長)を開催した。内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターの谷脇康彦副センター長から、政府が9月に閣議決定した新たな「サイバーセキュリティ戦略」について聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ サイバー攻撃の脅威

サイバー攻撃の脅威の特徴は3つある。1点目は、政府機関への標的型攻撃の深刻化である。今年5月には日本年金機構から大量の個人情報が流出した。2点目は、パソコン、スマートフォン、自動車など、さまざまな機器へのリスクの拡散である。3点目は世界中でサイバー攻撃事案が発生し、リスクがグローバル化していることである。

■ サイバーセキュリティ戦略の概要

サイバーセキュリティ基本法が今年1月に施行され、サイバーセキュリティ戦略本部(本部長=内閣官房長官)と内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が設置された。同法に基づき、9月4日に新たな「サイバーセキュリティ戦略」が閣議決定された。

同戦略の目的は3つある。1つ目は経済社会の活力の向上および持続的発展である。企業の経営層の意識を改革し、セキュリティ対策は「費用」ではなく「投資」であるとの認識を醸成する必要がある。また、安全なIoT(Internet of things)システムやサイバーセキュリティ関連産業の振興が求められる。

2つ目は国民が安全安心に暮らせる社会の実現である。国民に対する普及啓発やサイバー犯罪対策の強化を行う。また、重要インフラ分野(情報通信、金融、航空、鉄道、電力等)の範囲の継続的な見直し、効果的かつ迅速な情報共有が重要である。さらに、政府機関の情報システムの防御力の強化、独立行政法人や特殊法人への対策強化と必要な法改正に取り組む。

3つ目は国際社会の平和・安定およびわが国の安全保障である。警察や自衛隊の能力を向上させ、欧米やASEANなどとの協力・連携を推進する。このほか、サイバー攻撃の検知・防御能力の向上などの研究開発の推進、産学官が連携した人材の育成・確保などの横断的施策がある。

推進にあたっては、高度セキュリティ人材の登用によるNISCの機能強化、産学官や関係省庁間の連携強化、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会に向けた訓練などを行う。

■ 関連予算

8月20日にサイバーセキュリティ戦略本部は平成28年度予算重点化方針を策定、政府機関への対策の強化などに重点化した。28年度のサイバーセキュリティ関連予算概算要求額は742.8億円で、27年度325.8億円の倍以上である。

【産業技術本部】