Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年2月8日 No.3349  イノベーション・エコシステムの構築に向けた改革の現状と課題に関し議論

経団連(榊原定征会長)では現在、Society 5.0の実現に向けたイノベーション・エコシステムに関する検討を進めている。そのためには、企業が大学や研究開発法人等とのオープンイノベーションを推進することが重要である。そこで経団連は1月10日、東京・大手町の経団連会館で未来産業・技術委員会企画部会(須藤亮部会長)を開催し、政府の総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員を務める物質・材料研究機構の橋本和仁理事長から、イノベーション・エコシステムの構築に向けた改革の現状と今後の課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ これまでの政府の取り組み

安倍政権の発足から、イノベーション創出に向けて政府はさまざまな政策を講じている。例えば、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の司令塔機能を強化するために、府省横断型の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を創設した。SIPは府省・分野の枠を超えてCSTIが予算配分し、産学連携で基礎研究から実用化・事業化までを見据えたものであり、産業界からも高く評価されている。

大学改革に関しては、国立大学のビジョンに基づく機能強化を進める支援を始めた。また、世界水準の研究を行う指定国立大学の教育研究の自由度を高めたり、優秀な研究者を卓越研究員として雇用できる制度を設けたりしている。

研究開発法人に関しては、世界トップレベルの成果を生み出す創造的業務を担う特定国立研究開発法人制度を設け、理化学研究所、産業技術総合研究所、物質・材料研究機講が選定された。これら3法人はいずれも国際的に高い評価を受けている。

■ 研究開発法人、大学の取り組み

こうした取り組みにより、産学連携の好事例も生まれ始めている。

例えば物質・材料研究機講では、化学業界や鉄鋼業界の企業が中長期的な研究開発で協調する場として、マテリアルズ・オープン・プラットフォームを設けている。

東京大学では、小規模な共同研究にとどまらず、組織と組織による「産学協創」を進め、研究開発から事業化領域まで協働し始めている。また、ベンチャー育成に関しては起業の促進のみならず、ベンチャーキャピタルを活用した間接・直接の投資も行っている。

■ 課題と今後の取り組み

しかし、まだ大学・研究開発法人がイノベーションを牽引しているとはいえないし、産学連携の規模は諸外国と比べると小さい。日本の基礎研究は強くイノベーションの種はある。イノベーションを創出するには、基礎から実装までスピード感を持って進め、異分野と連携することが重要だ。

そのためには、政府全体で整合性のある統合的な戦略を策定することが不可欠だ。政府では、統合的かつ具体的なイノベーション戦略を今夏を目途に策定する予定である。

政府はイノベーションシステムの構築に向けて政策を立案しており、国立研究開発法人や大学も変革を試み始めている。企業も、オープンな領域を可能な限り広げ、大学・研究開発法人やベンチャーと真のオープンイノベーションを進めて官民で戦略的な先行投資を行えるようにしてほしい。

【産業技術本部】