Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年4月23日 No.3451  新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査および株主総会の対応について

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかにおける、企業の決算作業および監査等について、関係者間で現状認識を共有し、問題に対処するため、金融庁を事務局とした「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」が4月3日に設置された。

同協議会において、経団連は、「新型コロナウイルス感染症の影響により、企業の事業活動に大きな制約が生じ、決算・監査対応を通常のスケジュールどおりに行うことが困難となっている」「新型コロナウイルス感染症の先行きが不透明な状況下で、企業は今後の業績を見通すことが難しくなっている」といった決算・監査対応の現状を伝え、政府等に対応を求めた。

こうした現状を踏まえ、同協議会では、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ、関係者の健康と安全を最大限確保する等の観点から、以下のとおり、決算開示、株主総会、会計上の見積りに対応することが確認されている。

1.決算開示

金融庁は4月17日、金融商品取引法に基づく有価証券報告書等(有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書および親会社等状況報告書等)の提出期限について、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等を改正し、企業側が個別の申請を行わなくても、一律に今年9月末まで延長することとした。

この改正に伴い、今年4月20日から9月29日までの間に提出期限を迎える有価証券報告書等の提出期限が一律に9月30日まで延長される。

例えば、3月期決算企業では、2020年3月期年度決算の有価証券報告書と21年3月期第1四半期決算の四半期報告書の提出期限が9月30日まで延長される。また、12月期決算企業は、20年12月期第1四半期決算および第2四半期決算の四半期報告書の提出期限が9月30日まで延長されることになる。

なお、決算および四半期決算(決算短信および四半期決算短信)の発表時期については、東京証券取引所から公表された「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適時開示実務上の取扱い」(2月10日)において、速やかに決算内容等を確定することが困難となった場合には、「事業年度の末日から45日以内」などの時期にとらわれず、確定次第開示することで問題ないとの見解が示されている。

2.株主総会対応

株主総会の開催について、現行会社法下で対応可能な取り扱いを、同協議会の声明文として整理し、4月15日に公表した(※)。

声明文では、これまでに法務省、経済産業省から公表された新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた対応に加え、いわゆる「継続会」を開催する場合の取り扱いについて考え方を整理している。そのポイントは以下の3点。

  1. 当初予定していた時期に株主総会を開催し、取締役の選任等を決議するとともに、続行(会社法317条)の決議を行ったうえで、「継続会」において計算書類・監査報告等の説明を行う

  2. 計算書類・監査報告等は、決算・監査業務が完了次第、直ちに株主に提供する(当初の株主総会の招集通知に計算書類等を添付する必要は必ずしもない)。「継続会」は当初の株主総会の後、「合理的な期間内」に開催する

  3. 「継続会」の開催においても、必要に応じて開催通知を送付するなど、株主に十分な周知を図る

3.会計上の見積りへの対応

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかにおける、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りを行う際の留意点が企業会計基準委員会(ASBJ)から4月10日に公表され、これを受けて、日本公認会計士協会(JICPA)も監査上の留意点を同日に公表した。ポイントは以下のとおり。

ASBJが公表した「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」では、

  1. 新型コロナウイルスの感染の今後の広がりや収束時期等を、誰も予測できない場合であっても、最善の見積りを行う
  2. 見積りにあたって、新型コロナウイルスの収束時期等について、一定の仮定を置く
  3. 仮定が明らかに不合理である場合を除いて、最善の見積りを行った結果として見積もられた金額については、事後的に乖離が生じても、誤謬にはあたらないものとする
  4. どのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったかについて、具体的な開示が必要になる

――としている(※※)。

※※ https://www.asb.or.jp/jp/info/87343.html(5月11日追補)

JICPAが公表した「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」では、

  1. 監査人は、新型コロナウイルスの収束時期等の予測に関して、経営者が一定の仮定を置いている場合には、その仮定が明らかに不合理である場合に該当しないことを確かめる
  2. 不確実性の極めて高い環境下においても、これを要因として会計上の見積りの監査が困難であることを理由に、監査意見を表明できないという判断は、慎重になされるべきである

――としている。

【経済基盤本部】