経団連くりっぷ No.92 (1998年12月24日)

社会貢献推進委員会(委員長 椎名武雄氏)/12月4日

社会貢献活動の課題と今後の取組みについて懇談


社会貢献推進委員会では、「1997年度社会貢献活動実績調査結果(案)」について報告・審議した。また、現在の経済状況における社会貢献活動の課題と今後の進め方、あるいはNPOの現状と課題をめぐって意見交換を行なった。

  1. 「1997年度社会貢献活動実績調査結果」について
  2. 事務局から同調査結果(案)について報告(1頁参照)するとともに、結果の公表につき了承を得た。なお、同調査結果を基本に『社会貢献白書1999』を出版予定。

  3. 懇 談 I
    「今後の社会貢献活動のあり方について」
    1. 問題提起
      1. 加藤種男・社会貢献担当者懇談会(社会基盤整備)共同座長
        「社会基盤整備」に関する問題については、できるだけ速やかに中間報告をまとめたいと考えている。
        「自立・自助・自己責任」の社会を実現するという課題を社会貢献活動の側面から考えると、NPOを支援し、育成し、支えていくための方策を検討していくことが喫緊の課題となる。とりわけ寄付金に関する税制を見直していくとともに、「民から民への資金の流れ」を支える仕組み、たとえば企業とNPOをつなぐ役割を果たす中間組織(インターミディアリー)のあり方について検討してはどうかと考えている。
        また、社会貢献活動のあり方と活動の評価についても検討すべきだと考える。

      2. 島田京子・社会貢献担当者懇談会(変化する企業と社会貢献)座長
        この10年間で社会貢献活動が企業に与えた変化を検証し、大きな構造変革期において社会貢献活動が果たす役割について検討していくべきであるとの意見を多く得て、「変化する企業と社会貢献」懇談会が設置された。懇談会では、「官から民」の流れの中で、専門性を必要とする社会作りや、社会のアカウンタビリティ向上のために社会貢献の観点から取り組むべき課題について検討していく。(詳しくは28頁参照)

    2. 懇談
      1. 若原泰之・1%クラブ会長
        「特定非営利活動促進法」(NPO法)が12月1日に施行され、NPOの基盤整備に関して大きな一歩が踏み出された。
        経済状況は大変厳しいが、今後とも社会貢献活動や寄付に関するマインドを高めていくための議論、あるいは具体的方策を積み重ね、NPO法を実のあるものにしていく必要がある。

      2. 河野明男・日本航空副社長
        将来的にたくさんのNPOが生まれてくるとき、どの団体とどのような関係をもつかが課題となる。例えば当社では、NPOの災害救援活動に際しての薬品や人員輸送に協力しているが、今後は会社の特長を活かした活動を行なうことが考えられる。

      3. 桑垣絹一・旭硝子専務
        社会貢献活動には個人の参画も欠かせない。個人の参加を企業がバックアップするなど、企業のなかの「個」が社会に係わることができるような努力も必要である。

      4. 瀬尾隆史・社会貢献担当者懇談会(社会基盤整備)共同座長
        当社では、NPOに対して目を開き、多様な価値観を受容できる社員が増えてほしいと考えて、社員がNPOやNPOの会員になることを推賞している。
        日本は欧米と比して個人寄付が少ない。NPO関連税制はもちろん、個人寄付の事務手続き簡素化などの方策についても検討が必要だと思う。

      5. 河辺尚之・富士ゼロックス社会貢献推進室長
        当社の社員組織に、給与・賞与の端数を集めて寄付する「端数倶楽部」があるが、募金額は確実に増加している。個人の力は大きい。
        この組織が関係しているNPOはほとんどが「草の根団体」である。このようなNPOに対する支援をどうするかも重要であり、この点、企業側の観点に立った中間組織的な役割も必要かと思う。

      6. 山田竜一郎・アイシン精機広報渉外部庶務グループ グループマネージャー
        現在の経済状況は、かえって質を重視した社会貢献活動を展開するにはチャンスだと考える。
        当社では、例えば中央共同募金会に代わって地域のNPOやボランティア団体に寄付するよう宣言し、現在団体を募集している。
        会社の地域性を重視し、身近な団体との関係を築くために、社員が直接団体に出向くなどしている。

  4. 懇 談 II
    「現在のNPOをめぐる状況と日本NPOセンターの活動状況について」
    1. 播磨靖夫・日本NPOセンター代表理事
    2. 日本はもちろん、欧米でも社会システムやモデルがことごとく変革の時を迎えつつある中で、「市民セクター」やNPOが果たさねばならない役割も多い。
      社会システムは、知性と経験と価値観で成り立っている。社会構造だけではなく、社会の質も変わっていく必要があり、新しい「経験知」の科学の主体としてNPOが果たす役割も大きい。単に外国の社会制度の移入ではなく、問題の本質を問い直していく議論が日本のNPOにも必要である。

    3. 山岡義典・日本NPOセンター常務理事・事務局長
    4. NPOに関するこの数年間の変化は大きいが、NPO法の施行(12月1日)にともなって新しい動きが急に起こったわけではない。NPOの法人化という問題よりも、法律によってNPOの活動が社会的に認知された事の方が意味が大きいと考える。圧倒的多数の任意団体・ボランティア団体がNPOとして社会的に認知され、その動きが日本社会に広がっていくことの方が重要だ。
      日本NPOセンターは、現在の動きの中で、これまで個々の現場に対応した活動を行ってきたが、今後は日本全体の状況を見据えた活動を行なっていきたいと考えている。


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