日本経団連タイムス No.2978 (2009年12月15日)

日本経団連が連合と懇談会

−労働政策決定プロセス、三者構成の堅持を確認


日本経団連は11月27日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、古賀伸明会長)との懇談会を開催した。日本経団連からは御手洗会長、渡文明副会長、森田富治郎副会長、氏家純一副会長、大橋洋治副会長のほか評議員会副議長、関係委員長ら20名が、連合からは古賀会長はじめ、会長代行や副会長、事務局長ら幹部17名が参加。連合が古賀新体制になって初めてとなる今回の懇談会は、(1)経済の現状認識と持続可能な日本経済の構築(2)雇用問題――をテーマに意見を交換。厳しい日本経済の現状や雇用の維持・安定の重要性について認識が一致したほか、今後も必要に応じて両団体による共同の取り組みを行うべく、事務局レベルでの検討開始で合意した。さらに、労働政策の決定プロセスは、公労使による「三者構成」の枠組みの堅持が極めて重要との共通認識を確認し合った。

あいさつする古賀連合会長

冒頭のあいさつで御手洗会長は、連合が今年設立20周年を迎えたことに触れ、設立当初からその時々の労使の課題について意見交換や協議を行ってきたとしたうえで、「今後もお互いの考えを認識し合いながら、日本の経済社会の安定と発展に向けて、共に努力していきたい」と語った。

続いて古賀会長は、今後もさまざまな課題について議論していきたいと述べるとともに、日本社会の安定には雇用の安定が不可欠であり、雇用問題は喫緊の課題であるとして、共同で取り組めるものは協力していきたいとあいさつした。

■ 意見交換・自由懇談

「経済の現状認識と持続可能な日本経済の構築」をテーマに行われた意見交換では、日本経団連側から、景気の早期回復と持続的な経済成長の実現の観点から、政労使が一体となって改革を進め、成長によってパイを増やすことが求められるとの考えや、「持続可能な社会保障制度の構築は、将来不安の解消、内需の安定化を通じて経済成長に寄与する」との認識のもと、さまざまな場面で労使が協調し、知恵を出し合っていくことが望ましいとの見解を示した。

連合側からは、内需主導型経済システムの構築が重要であり、そのためには「雇用・労働」を政策の基軸に据えることが最も重要との意見があった。また、日本の企業数のほとんどを占める中小企業に関し、「モノづくりの現場において、中小企業が強くなければ、技術力の発展は難しい」との考え方に立ち、技能・技術の高度化やそれらを伝承する人材の育成等が必要との発言があった。

次に、「雇用問題」について、日本経団連側からは、「雇用安定・創出に向けた労使共同宣言」1月22日号既報)、「雇用安定・創出に向けた共同提言」3月12日号既報)を連合と取りまとめ、政府へ共同で要請した結果、「雇用安定・創出の実現に向けた政労使合意」4月2日号既報)として結実し、雇用調整助成金の拡充等の施策を活用した個別企業の雇用維持の取り組みが、雇用失業情勢のさらなる悪化を一定程度押しとどめているとの認識を示した。そのうえで、「政府には、職業紹介や職業訓練機能の充実、失業中の生活保障などのセーフティーネットの一層の強化が求められる」とし、民間の労使としても新たな雇用の創出に一致して取り組むことが重要であると指摘した。

連合側からは、当面する雇用対策として、(1)雇用調整助成金の要件緩和(2)雇用保険の国庫負担率の本則4分の1への復帰(3)地方自治体による緊急雇用創出事業の積み増し(4)求職者支援制度の創設に伴う職業訓練実施体制の確立――を指摘。雇用問題に関する中期的展望では、連合が掲げている「180万人雇用創出プラン」を紹介したうえで、同プランの実現には雇用対策だけでなく、全体的な課題解決が必要であるとして、政労使が政策目標をどう実現するかが重要との発言があった。

また、雇用問題に関連して、労働政策の決定プロセスや労使の果たす役割の重要性についての言及が双方からあった。日本経団連からは、労働政策は企業経営や労働者の生活に密接に関わり、多大な影響を及ぼすことから、企業の実態を把握している労使が議論して合意した内容をベースとすることが重要であり、公労使の三者で構成される労働政策審議会の結論が最大限尊重されるべきとの見解を表明。さらに、過去の経験や教訓を踏まえた労使共同の取り組みが社会の安定をもたらすとして、互いの主張や考え方を理解しながら社会の安定に向けて労使が共同歩調を取っていくことの重要性を強調した。

連合からも、「政策立案システムがどのようになろうとも、労働政策の立案に関しては、公労使三者構成の枠組みを維持すべき」「民主主義国家における政策決定は、最も重要な利害関係者である労使の代表に、政府が加わった三者協議で、一方の利害に偏することがない結果を導くのが常道である」など、同様の意見が相次いだ。

自由懇談では、新卒者の雇用対策や長期失業者問題、非正規労働者の増加への対応、企業における職場力の低下、技術力向上のための取り組み、ポジティブ・アクション(女性の積極活用)の取り組み強化、集団的労使関係の重視など、多岐にわたる発言があった。

閉会あいさつで古賀会長は、「雇用問題に対する処方箋は一つではなく、重層的な対応が必要」との認識を示すとともに、互いに力を合わせて何ができるのかを事務局レベルで検討したい旨を発言。さらに、労働政策決定プロセスについて、「(公労使)三者構成を堅持することの重要性を認識し合えたことは大変意義のあること」と評価した。

これを受けて御手洗会長は、両団体事務局レベルによる共同取り組みの検討開始や、労働政策決定プロセスの堅持について賛意を示したうえで、「協力できるものは協力し、この危機的状況から脱出して持続的な経済成長につなげることがすべての問題を解決するという強い共通認識を持って政府にも働きかけ、適切な政策を求めていきたい」と締めくくった。

【労働政策本部】
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