経団連の最近の動き

(1996年9月)

「経団連インフォメーション」の記事より


NPOと企業・行政とのパートナーシップの拠点作りへの動きについて

個人の自発性に基づく多様で活力ある社会づくりをめざして、NPO(民間非営利組織)関係者が中心となって、NPOの基盤強化と企業や行政とのパートナーシップの拠点となるような組織作りの準備が進められている。
この組織の名称は「NPOリソースセンター」となる模様で、11月22日に設立発起人会が開催される。経団連からは、椎名社会貢献推進委員会委員長と若原1%クラブ会長が設立準備懇談会の委員に就任し、同センターの活動に積極的に協力していくことにしている。
同センターの主な機能は、NPO関連分野における(1)情報の収集と発信、(2)コンサルテーション(相談・助言)とコーディネーション(関係組織の紹介・調整)、(3)人と組織のネットワーキング、(4)交流と研修(フォーラムの開催等)、(5)関連研究等である。

加納地球環境部会長がAPEC会議の晩餐会で記念スピーチ

本年7月のAPEC閣僚会議において、「持続可能な成長についての研修・情報ネットワーク」を新設することが決定されたことを受けて、その設立会合が10月22日〜25日にオレゴン州ポートランドで開催される。この度、オレゴン州知事より、経団連環境アピールはパートナーシップの重要性を打ち出すなど、ネットワーク設立の趣旨に合致するので、23日の晩餐会において、同アピールについて記念スピーチをして欲しいとの要請があり、加納地球環境部会長がスピーチを行う。
同会議には、APEC18ヵ国の駐米大使,環境担当官、学者、環境NGO等が参加する。日本からは通産省・環境庁・外務省等が参加予定。晩餐会にはオレゴン州選出の上下院議員などを含め700〜800名が出席の予定。

「ASEMビジネス・フォーラム」開催へ

本年3月1〜2日、バンコクでASEM(アジア欧州会合)が開催され、アジア(ASEAN7ヵ国、日本、中国、韓国)と欧州(EU加盟10ヵ国、欧州委員会)の首脳が初めて一堂に会し、両地域の関係強化に向け意見交換を行った。この中で、両地域間の貿易・投資拡大に民間が大きな役割を果たすことが確認された。
この会議での合意を受けて、来る10月14〜15日、パリで「ASEMビジネス・フォーラム」が開催される。ASEM参加国の民間経済人が、(1)インフラ、(2)資本財、(3)消費財、(4)サービス、(5)中小企業等のテ−マについてビジネスの視点から意見交換を行う予定。日本からは、末松経団連副会長、樋口経団連副会長、中川APECビジネス諮問委員会日本委員(昭和プラスチックス社長)ほかが参加する。

意見書「社会保障制度改革の必要性と高齢者介護に関するわれわれの考え方」をとりまとめ

財政制度委員会(伊藤助成委員長/福原義春共同委員長)では、9月20日、標記意見書をとりまとめ、公表した。概要以下の通り。

  1. 社会保障制度改革の必要性
    21世紀に豊かで活力ある経済社会「魅力ある日本」を実現するためには、キャッチ・アップ型のわが国の諸制度を抜本的に見直していかなければならない。わが国の社会保障制度の綻びは覆いがたいものとなっており、総合的、抜本的な再構築が不可避となっている。

  2. 高齢者介護について
    急速な高齢化に伴い、本格的な介護制度の導入は避けられないが、将来負担のあり方を含め社会保障制度全体の改革像が明らかにされないままに、「公的介護保険制度」が先行導入されることには、俄には賛成しがたい。

  3. 社会保障制度改革の基本的考え方
    社会保障制度改革の基本は、
    1. 財政構造の改革、
    2. 民間活力の最大限の活用、
    3. 国民負担率の抑制、
    4. 財源方式の再検討と適切・公平な負担、
    であると考える。

当委員会では、財政構造改革の提言と併せて、総合的な社会保障制度改革の基本的方向ならびに医療、年金、福祉などの個別制度の改革の方向を提案する予定である。

行政改革委員会委員を招いて行革推進五人委員会を開催

政府の行政改革委員会(飯田庸太郎委員長)では、今年末に規制緩和、官民活動分担、行政情報公開のそれぞれについて意見を取りまとめる予定である。
そこで、経団連、日本商工会議所、日本経営者団体連盟、経済同友会、関西経済連合会の長で構成する行革推進五人委員会では、来る9月30日に飯田委員長をはじめ行革委員会委員を招いて会合を開き、意見の取りまとめ状況および今後の行政改革の進め方について基本的な考え方を聞くとともに、行政改革委員会と経済界の連携・協力関係の強化について意見交換を行う。

即応予備自衛官制度の導入について

冷戦後のわが国の安全保障政策の指針である新防衛大綱において、わが国防衛力の合理化・効率化・コンパクト化を推進することが打ち出された。この一環として、陸上自衛隊の編成定数を、現行の18万人から16万人とし、その内数として、新たに1万5千人の即応予備自衛官が導入されることになった。
自衛官OBから募集される即応予備自衛官は、現在の予備自衛官とは異なり、第一線部隊の要員として、防衛出動、災害派遣、PKOに加わる。また、このために年間30日の訓練(予備自衛官は5日)が課される。自衛隊OBを抱える企業にとっては負担増となるが、企業の理解の得られる制度の導入に向け、経団連としても検討を行っている。

廃棄物問題の深刻化を踏まえ「循環型社会の構築に向けた課題」を建議

香川県豊島(てしま)の廃棄物不法投棄事件が社会的な問題となっている。厚生省は、産業廃棄物処理施設の建設が進まないのは、こうした事件によって住民が不信感を抱いているためであるとして、不法投棄の防止策強化と原状回復のための基金創設を次期通常国会に提案しようとしている。
これに対して経団連では、産業界としての意見を9月9日に取りまとめた。そこでは、基本的な考え方として、
  1. 産業廃棄物処理施設を国の重要な産業インフラとして位置づける、
  2. 産業廃棄物処理業の近代化に向けて優良な処理業者の育成を図る、
  3. 欧米に倣って現行の一般廃棄物と産業廃棄物という区分を見直す、
という3点を指摘している。その上で、具体的な対策として、廃棄物の排出抑制・リサイクルの促進、産業廃棄物処理施設整備の促進、不法投棄・不適正処理防止策の強化、不法投棄の現状回復の4点について考え方を示した。
なお、原状回復については、
  1. 適正処理を行っている事業者に不当な負担を負わせるべきでない、
  2. 現在生じている不法投棄問題については、事態がそこまでに至った責任を明らかにし、速やかに原状回復を図るべきである、
  3. 今後は不法投棄の根絶に全力をあげるべきであり、原状回復の必要が生じた場合はその時点で検討すべき、
と主張している。

税制改正に関する提言を取りまとめ

経団連では、9月11日(水)に税制委員会(委員長:久米副会長・日産自動車相談役)を開き、税制改正に関する提言を取りまとめる。
今回の提言においては、税制改革を経済構造改革の柱として位置づけ、国・地方合わせた思い切った歳出削減を前提に直間比率の是正を進めるべきであり、法人ならびに個人の所得課税の軽減を中心に訴える。
特に、この夏、経団連会員企業約1000社を対象に「企業の公的負担に関するアンケート調査」を実施したところ、企業の公的負担控除前利益に対する公的負担(税負担+社会保障負担)の割合が7割を超えている実態が浮き彫りになった。そこで、企業の税負担の実質的な軽減を早急に行なう必要性を指摘する予定である。
この他、企業経営形態の多様化に対応するための連結納税制度の早期導入や、企業年金制度に関する規制緩和ならびに特別法人税の撤廃が、今回の提言のポイントである。
9月17日の理事会での正式決定後、来年度税制改正に向けて、本提言をもとに、政府、与野党等関係方面に強く働きかけていく。

「企業行動憲章」見直しのため、企業行動憲章部会を設置

経団連では、企業倫理の重要性を認識し91年に「企業行動憲章」を発表して、各社に企業行動の見直しや自己規律を呼びかけてきた。
しかし、憲章発表から5年が経過し、内外の環境が大きく変化したことや、最近、何件かの企業不祥事が続いていることから、企業行動委員会(委員長:那須副会長・東京電力会長、共同委員長:鈴木イトーヨーカ堂社長)では11月末を目途に同憲章を見直すこととし、具体的検討作業を進めるため、同委員会の下に「企業行動憲章部会」(部会長:小野日本電気専務取締役)を設置することとした。
9月13日に第1回部会を開催し、新しい企業行動憲章の枠組みや、企業倫理・企業行動についてのアンケート調査などについて検討する予定。

第4回食品工業白書を取りまとめ

経団連農政問題委員会(委員長:宮内オリックス社長)では、昨年12月から、食品工業の原料調達問題について検討を行ってきたが、今般、その検討結果を第4回食品工業白書としてとりまとめ、9月17日の経団連理事会に報告した後、公表する予定である。
今回の白書では、わが国食品工業界の厳しい経営状況について明らかにするとともに、その原因となっているわが国の農産物価格支持制度について問題点等を指摘し、併せて今後の農政のあり方について問題提起を行っている。特に、6品目の農産物について、価格支持制度等により生じている国民負担額を試算している点が特徴となっている。


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