経団連の最近の動き

(1997年5月)

「経団連インフォメーション」の記事より


第59回定時総会を開催

さる5月27日、第59回定時総会が開催された。まず、冒頭、豊田会長は、「最近、企業の不祥事が相次いでいるが、こうした不祥事は、様々な改革に取り組んでいる経済界全体の信頼を揺るがすことにもなりかねない」とし、改めて経団連企業行動憲章の周知徹底とその遵守を訴えた。また、「今こそ経済社会システムの抜本改革への流れを加速させ、活力あるグローバル国家建設への歩みを確固たるものにしなければならない」とし、経済界としても、痛みを乗り越え、自ら改革に取り組んでいくことを強調した(豊田会長総会挨拶)。来賓の橋本総理からは、経済構造改革、財政構造改革、金融システム改革等の諸改革を断行する旨強い決意が表明された。
次に、事業報告・収支決算、事業計画・収支予算に関する審議が行なわれ、それぞれ可決承認された。また、本年4月に新たに設立された21世紀政策研究所の事業計画・収支予算等についても審議、承認された。
さらに、辻義文、金井務、前田勝之助、鈴木敏文の4氏が新たに副会長に、関本忠弘、出光裕治、大賀典雄、福原義春、橋本徹、前田又兵衞の6氏が新たに評議員会副議長に、それぞれ選任された。併せて、顧問、推薦会員、常務処理役員等の選任が行なわれた。
最後に、「改革のさらなる前進と新たな発展に向けて−21世紀を切り拓くわれわれの責務と決意」として、
  1. 6大改革による経済社会システムの抜本的改革、
  2. 法人税制改革、規制の撤廃・緩和、不良債権の早期処理による内需主導の経済活性化、
  3. 21世紀の新たな成長と発展の基盤の確立、
  4. 世界の平和と繁栄への貢献、
  5. 企業倫理の確立と自己責任原則の徹底、
に取り組んでいくことを決議した。

企業人政治フォーラム・シンポジウム開催
〜どう進めるか、行政改革〜

企業人の政治参加の促進、政策本位の政治の実現を目指す企業人政治フォーラムでは、発足2年目を迎え、記念シンポジウムを6月4日に開催する。

イラン東部地震義援金について

経団連では、5月10日にイラン東部で発生した大規模地震に対し見舞金を送った。
イランでは、3月の大地震と併せて5,000人近い死者と1万人以上の負傷者が出ている模様で、義援金・救援物資などを募集している。お問い合わせは下記へ。

在京イラン・イスラム共和国大使館
住所:〒106 東京都港区南麻布3-10-32
TEL:03-3446-8011/5、FAX:03-3446-9002

「21世紀政策研究所」 事務所開設

経団連が創立50周年を記念して設立した「21世紀政策研究所」の新しい事務所が来る6月2日(月)、下記に開設されます。7月中には研究者が着任し、本格的な研究活動を開始する予定です。

住所:〒100 東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル3階
TEL:03-3201-1951、FAX:03-3201-1978

「財投改革の基本方針」を公表

経団連では、5月20日、提言「財投改革の基本方針」を公表した。同提言は、今年2月に財政制度委員会・金融制度委員会・行政改革推進委員会の共管で設置した財投問題専門部会(部会長:磯部朝彦日立製作所専務)の検討成果を踏まえたもので、
  1. 財投の「入口」(郵貯、簡保等)・「中間」(資金運用部)・「出口」(個別財投機関)を分断し、郵貯・簡保の経営形態は例えば特殊会社とすること、
  2. 政府が2000年末を期限とする「財投改革推進計画」を策定する(具体的作業は行政改革会議―議長:橋本首相―が行う)とともに、改革の実施状況を監視するために民間人からなる「財投改革監視委員会」を時限的に設置すること、
などを提案している。
なお、財投改革にあたっては、民間にも相応の役割・責務が求められることになり、こうした点も含め、引き続き財投改革の具体像についての検討を深めていく予定である。

原子力の開発利用の促進について

動燃の一連の事故を契機として、原子力に対する国民の信頼が大きく揺らいでいるが、エネルギーセキュリティ、地球温暖化問題への対応等の観点から、原子力の重要性はますます高まっている。さらにまた、ウランについても軽水炉での利用では、今後75年程度で枯渇するとみられており、プルサーマルによっても、これが多少伸びるに過ぎないことから、高速増殖炉の開発促進と核融合の研究推進は不可欠である。
そのような中、資源・エネルギー対策委員会では、篠崎委員長を団長として5月19日、20日に日本原燃の六ヶ所村施設と東北電力葛根田地熱発電所を視察した。引き続き、エネルギー政策について検討を行い、近く原子力政策について提言をまとめる予定である。

次代を担う創造的な人材育成の環境作りに向けて企画部会を設置

教育改革は、橋本総理が掲げる6大改革の1つであり、現在、中高一貫教育の拡大、学校週5日制におけるカリキュラムのあり方等の検討が進められている。
創造的人材育成協議会(会長:末松謙一さくら銀行会長)では、これらの動きに機動的に対応するとともに、21世紀の産業を担う創造的な人材育成の環境作りに関わる課題を具体的に検討するために、同協議会の下に企画部会(部会長:田宮謙次ソニー専務取締役)を設置することとした。
5月30日に第1回部会を開催し、文部省の田中壮一郎政策課長より、文部省の教育改革への取り組みの現状等について説明を聴取する。また、採用・人事・評価制度に関する企業の自己改革の推進策や、教育改革への経済界としての取り組み方等、今後の活動方針を検討する予定。

ハンブルグの独企業との研修生交流制度発足

アイセック・ハンブルグでは、日独企業間の相互交流をはかる目的で、ドイツ企業で研修を希望している日本企業の若手社員およびドイツ人研修生を受け入れる日本企業を募集している。同研修制度は互恵主義に基づき、日独双方の企業が相互に同人数の研修生を受け入れることになっている。
日本人研修生は、独企業での研修の他にハンブルグ大学でドイツ語コース、国際マネージメント等の学科を自由に履修できる。今後、社内での国際人養成およびハンブルグでの人材発掘、特にハンブルグ地区へ進出または同地域の企業との人的交流・関係強化を望んでいる日本企業にとっては大変興味深い制度と言えよう。詳細については下記まで。

Mr.Stefan RAUSCH
AIESEC Hamburg,Von-Melle-Park 5,20146 Hamburg,Germany
TEL(040)44809976/FAX(040)4105996

医療保険の抜本改革は喫緊の課題

経団連では、昨年11月、医療保険の抜本改革を提言し、政府、各政党に理解を求めている。
ところで、さる5月8日、与党三党の政策協議を経て、健康保険法改正案が衆議院で可決された。改正案の柱は、高齢者の定額自己負担増、薬剤費の定額追加負担、政管健保保険料率の引き上げ、被用者保険本人の自己負担率の2割への引き上げなどだが、抜本改革とはほど遠い。現行医療保険制度の最大の問題は、老人保健制度とりわけ老人保健拠出金であり、拠出金の撤廃を含む制度の抜本改革なくして医療保険改革は進まない。高齢者の自己負担の定率化、定額払い制度の拡大、競争原理の導入などにより医療費全体の抑制を図るとともに、老人保健制度は、世代間扶助の考え方に立ち、税方式による新たな高齢者医療保障制度に移行すべきである。

商法改正(利益消却の手続き簡素化・ストックオプションの導入)に関する動きについて

経団連では、従来より、自己株式消却手続の緩和、ストックオプションの導入を求めてきたが、これを受けて、自民党、社民党、さきがけの与党プロジェクト・チームにおいて、「株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律案」およびストックオプションを導入するための「商法の一部を改正に関する法律案」を議員立法として、作成し、4月30日(水)、新進、民主、太陽の賛同を募って提出した。
両法案は、5月8日(木)に衆議院を通過、5月15日(木)に参議院法務委員会で可決された。
両法案が成立すれば、株主総会の決議に基づき、一定の要件の下で、取締役・従業員を対象としてストックオプションを付与することができることとなる。
また、従来の商法による特別決議に基づく自己株式の消却に加え、中間配当財源の2分の1の範囲内で、取締役会決議に基づいて自己株式を消却できることとなる。
法案は、5月16日(金)の参議院本会議で、採決される予定である。

平成11年年金制度改正の検討課題について厚生省からヒアリング開催

今年4月、新しい将来人口推計をもとに、公的年金の財政見通しが発表されたが、出生率の低下・平均寿命の伸びにより、平成6年財政再計算の時点を上回って、保険料が上昇するとの試算結果が示されている。こうした状況を受け、年金審議会では今月末から平成11年度制度改正の具体策について検討を開始する予定である。
そこで、社会保障制度専門部会(部会長:高野盛久三菱化学常務取締役)では5月14日、大谷泰夫厚生省年金局年金課長を招き、平成11年年金制度改正の主な検討課題およびスケジュールについて説明を受けた。
大谷課長からは、平成11年財政再計算に向けて、積立不足額の推計、中間段階における制度改正メニューの呈示等の情報開示を行いながら、給付と負担の関係に配慮し、(1)給付水準の引下げや支給開始年齢のあり方、(2)年金の公私の適切な組合わせ等が主な検討課題になるとの説明があった。

法人税の実質減税実現に向けて取組みを開始

経団連は、先進諸外国の中で極めて重いわが国の法人税負担(実効税率 49.98%、地方税の超過課税を考慮すれば 51.39%)を米国並みの約4割にまで引き下げることによる、実質的軽減を求めている。
高齢化社会に対応していくための経済活力の基盤を築いていくためには、企業の国際競争力を維持していくことが不可欠である。とりわけ、増減税ゼロではなく、法人税の実質的減税による経済の活性化は緊急の課題であり、経済構造改革の重要な柱と位置づけるべきものである。
しかし、昨年末の平成9年度税制改正の過程では、大蔵省は実質減税を拒み、法人税率引下げの財源は法人税の課税ベースの拡大により賄うとの方針の下、中長期のビジョンのなきままに、法人税率を1%引き下げる代わりに、賞与引当金、貸倒引当金など3引当金を圧縮廃止するとの案を示したため、経団連は強く反対し、結果として法人税の抜本的改革は今年に先送りされた。
そこで、経団連では、本年を法人税抜本改革実現の年と位置づけ、年明けから積極的な活動を進めている。来年度税制改正においては、中長期のビジョンが示され、その中で具体策が提示されるべきである。
4月から法人税改革について論点整理を進めている自民党税調に対しては、さる4月 11〜12日に、経団連ゲストハウスに林義郎自民党税調会長を招き法人税改革をテーマにフォーラムを開催するなど、自民党税調の検討に経団連の意見が反映されるよう、積極的な働きかけを進めている。
また、5月には、政府が大幅な法人税減税を打ち出しているドイツに調査団を派遣し、その詳細を調査し、その成果を法人税改革議論に活かすこととしたい。
今後は、諸外国との実質的な法人税負担の比較について更に詳細な検討を行いつつ、法人税のネット減税に向けた理論構築を進め、早期に来年度税制改正に対する当会の基本方針を策定することとしたい。

情報化部会の検討状況をインターネット公開・ご意見募集

情報通信委員会情報化部会(部会長 礒山隆夫東京海上火災保険専務取締役)では、産業や公的分野の情報化推進策を検討しており、7月を目途に中間報告書をとりまとめることにしている。5月6日に、これまでの検討状況を経団連ホームページに掲載し、広く国民・企業の皆様のご意見を募り、今後の参考とさせて頂くこととした。ご意見をお寄せいただきたい。
【連絡先】E−mail:joho@keidanren.or.jp


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