経団連の最近の動き

(1998年12月)

「経団連インフォメーション」の記事より


No.200 (12月25日発行)より

警察庁、郵政省の不正アクセス対策法制の基本的考え方に対しコメント

ネットワークを通じたコンピュータ・システムへの不正な侵入(不正アクセス)を防止することは、情報化が進む企業活動や社会活動の安全、さらには国際的な組織犯罪を阻止する観点から重要な課題となっている。警察庁ならびに郵政省は、次期通常国会への法案提出を目指し、このほど「不正アクセス対策法制」に関する考え方をそれぞれ公表し、パブリック・コメントを求めていた。
そこで、情報通信委員会情報化部会(礒山隆夫東京海上火災保険副社長)では、両省庁から説明を聞き、意見交換を行なうとともに、アンケート調査、専門家との打ち合せ、通信・放送政策部会ならびに情報化部会の委員への意見照会等の結果を踏まえ、不正アクセス対策法制に関するコメントをとりまとめ、12月16日に両省庁に提出した。
主張のポイントは、

  1. 不正アクセスを犯罪とし、その行為者へ罰則を導入すべきこと、
  2. 不正アクセス防止に向けた法制については、民間の自助努力を促すものとすること、
  3. 通信ログを保存する場合には、プライバシー、通信の秘密等の確保に関して刑事、民事ともに責任を問われないことを明確にすること、
などである。

No.199 (12月18日発行)より

規制緩和委員会が第1次見解を発表:経団連要望の実現状況

政府の規制緩和委員会はさる15日、小渕行政改革推進本部長に対し、「規制緩和についての第1次見解」を提出した。
同見解は第1章で規制緩和の今後の進め方について、第2章で行政分野横断的な取組みについて提言を行なった後、第3章で行政分野別に13分野70項目を規制緩和の重点項目として掲げている。
70項目のうち36項目は経団連が要望した事項であり、トラックの車検期間の延長、CPのペーパレス化の検討開始、有料・無料職業紹介事業の規制見直し、労働者募集・労働者派遣事業規制の見直し、法曹人口の大幅増員等18項目はほぼ要望通り盛り込まれた。PFI構想の具体化、企業による病院経営への参入等、残る18項目については採り上げられたものの内容が不十分となっている。
今回の見解は全体として「検討すべきである」「審議会の検討状況を踏まえつつ、引き続き検討すべき」などの記述が多く、経団連がかねてから要望している規制緩和推進体制の強化の必要性を痛感させる。
行政改革推進本部ではこの見解を受けて年度末に規制緩和推進3か年計画を改定することとしており、経団連では引続き可能な限り多くの規制緩和要望が実現するよう、各方面へ働き掛ける予定である。

企業の97年度社会貢献活動実績調査結果を発表

社会貢献推進委員会および1%クラブは、経団連会員企業と1%クラブ法人会員を対象に毎年実施している「社会貢献活動実績調査」の97年度調査結果を公表した(調査対象1,046社、回答社数396社、回答率37.9%)。
調査結果を概観すると、97年度後半に景気が急速に後退していった中でも、企業が地道に社会貢献活動に取り組んだことが分かる。
1社平均の社会貢献活動支出額は前年度に比べ3.5%増加し、4億1,400万円に達した。また、この支出額が経常利益に占める比率も前年度に比べ0.23ポイント上昇した。
社会貢献活動支出額の内訳を見てみると、寄付金額の1社平均が2億7,500万円(前年度対比3.9%増)、自主プログラムに関する支出額の1社平均は1億4,400万円となり、96年度に大幅に増加した自主プログラム支出額が97年度も依然として高い水準を維持している。これは、独自にプログラムを企画・実施するための社内体制が整備されてきたことや他企業と共同でプロジェクトを実施しうるネットワークが構築されてきた証左と考えられる。
社会貢献活動を推進するための社内体制については、208社(回答企業の52.5%)が何らかの制度を導入しており、とくに「基本方針の明文化」や「専門部署または専任担当者の設置」は概ね3社に1社が実施している。
さらに、企業は従業員が行なう社会貢献活動についても積極的に支援している。とりわけ、ボランティア休暇・休職制度や青年海外協力隊参加休職制度など、従業員のボランティア活動を支援するための環境整備が進んでいる。

No.198 (12月11日発行)より

「経団連 産業競争力強化に向けた提言」を15日に建議

わが国が現下の厳しい不況を乗り越え、さらに世界的な大競争時代や本格的な少子・高齢化社会が到来する中で、持続的かつ安定的な成長を実現していくためには、経済の根幹である産業、とりわけ製造業の国際競争力を強化していかなければならない。
こうした観点から、経団連では、本年5月の定時総会において産業問題委員会(委員長:瀬谷博道 旭硝子会長)を設置し、爾来検討を進めてきたが、今般、第1回の提言(案)をとりまとめた。今回は、産業競争力強化の重要性を強調するとともに、先進諸国をはじめとする諸外国との国際競争上のイコールフッティングの実現を訴えている。
具体的には、エネルギー、物流、租税、社会資本、労働などの高コスト構造が、製造業の国際競争力を低下させ、本来ならば、国内において比較優位をもつ産業までもが海外への移転を余儀なくされるなど、産業基盤を脆弱化させているという認識から、高コスト構造是正を産業競争力強化の出発点と位置づけ、その是正策を実施すべきであるとしている。
本提言(案)は12月15日開催の理事会の審議を経て、政府・与党など関係方面に建議される。
今後、経団連では、今回の提言で訴えた課題の実現を政府等に強く働きかけていくとともに、産業問題委員会を中心に、戦略的産業の振興や経営資源の有効活用に向けた改革等の課題について検討・提言を行ない、産業競争力強化に向けた総合的なビジョンとしていく予定である。

No.197 (12月 4日発行)より

総務庁の意見照会手続(案)に対する経団連意見を取りまとめ中

総務庁では、本年3月に閣議決定された規制緩和推進3か年計画に基づき、「規制の設定または改廃に係る意見照会手続(案)」(いわゆるパブリックコメント手続)を公表、12月10日まで広く意見を求めている。年度内に閣議決定し、来年度から実施の予定である。
意見照会手続は、各省庁が政省令や政策などを作定あるいは改廃する際に、事前にドラフトを公表し、国民や企業からコメントを求め、政策の公正性や透明性を確保しようというもので、多くの国で既に制度として確立されている。経団連も従来より政府に対し同手続の早期導入と法制化を求めてきた。
経団連では行政改革推進委員会において、総務庁案に対する経済界としての意見を取りまとめ中であり、12月7日の会長副会長会議で審議の上、総務庁に提出する予定である。

定期借家権創設の法案の国会成立に向けて

定期借家権の導入は、家族向けの優良な借家供給を促し、多大な経済効果が期待されることから、経団連では、かねてより要望してきたところである。自民党でも昨年来「定期借家権等に関する特別調査会」(会長:保岡興治衆議院議員)を設置し、議員立法による法改正に向けて、具体的法案の検討を進めてきたところである。名原経団連借地借家法部会長(日本生命副社長)も同調査会に招かれて、意見陳述を行なっている。
こうした動きを受けて、昨年11月18日には、緊急経済対策で正式に盛り込まれ、さらに、本年6月5日には、与野党の共同提案で、衆議院に法案が提出された。しかし、課題の山積により、未だ審議に入っていない状況にある。経団連としては、早い段階での国会での成立に向けて、与野党の関係議員に働きかけていくこととしている。


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