Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年11月26日 No.3477  人口減少・ポストコロナ社会のデザインについて聴く -地域経済活性化委員会

経団連は10月29日、地域経済活性化委員会(古賀信行委員長、小林哲也委員長、月岡隆委員長)をオンラインで開催し、京都大学こころの未来研究センターの広井良典教授から、「人口減少・ポストコロナ社会のデザイン」をテーマに説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 2050年、日本が持続可能な社会になるためのシナリオ

わが国は2011年から人口減少社会になっており、現在の出生率(1.36)が続くと、50年過ぎには人口が1億人を下回る。社会の持続可能性を確保していくためには、従来の延長ではない新しい発想による変化が求められている。

そこで、日立京大ラボにおいて、50年の日本を視野に入れて、持続可能シナリオとビジョンを描くために、AIを活用して検討を重ねてきた。17年9月に取りまとめた提言では、日本社会の未来にとって、東京一極集中のような「都市集中型」よりも「地方分散型」の方が、雇用、格差、健康、幸福の観点で望ましいという結論に至っている。

検討の過程では、4つの持続可能性((1)人口(2)財政・社会保障(3)地域(4)環境・資源)に注目しながら2万とおりのシミュレーションを行った。これによると、今後8年から10年のうちに、「地方分散型」を選択し、その実現に向けて、再生可能エネルギーの活性化、まちづくりのための地域公共交通機関の充実、地域のコミュニティーを支える文化や倫理の継承などに取り組むことが欠かせないことがわかった。

人口が増加してきた時代は、すべてが東京に向かって動いていた。人口増加と集中はセットで中心に向かうベクトルが強固であった。今は人口減少の時代であり、逆のベクトルが進んでいくと考えるのが自然である。実感する1つの事象として、若い世代のローカル志向があり、300の自治体が相談窓口を設置して開催したふるさと回帰フェアの昨年のテーマは、「なぜ、いま若者は地方をめざすのか」であった。参加者の年齢層は20代、30代の若者が主になっている。新型コロナはあくまでもきっかけであって、地方分散の動きは人口減少という中長期的な流れのなかで、すでに起こっていたと考えられる。

地方分散型の社会の具体的なイメージはドイツが参考になる。人口10万人の都市でも中心部は歩行者中心の空間となっており、賑わいがあるなかで、ベビーカーや車いすのお年寄りが普通に過ごせる。他方、日本に目を転じると、人口10万人の地方都市はもとより、40万人規模でも中心市街地がシャッター通りとなり、空洞化が進んでいる。よくも悪くも日本の都市は、自動車での移動を中心に計画されてきたが、高齢化が進み、運転が難しい年齢層が増えているので、まちづくりのあり方の方向転換が課題である。幸いにも、高松丸亀町商店街(香川県高松市)のような再生事例などの試みが広がりつつある。

現在、地方の中核を担う都市である札幌、仙台、広島、福岡等の人口増加率は東京圏を上回っている。また、地価の上昇率もこれら4都市の平均は東京圏を上回っている。東京一極集中の状況は少しずつ緩和しており、「少極集中」ともいえる状況にあり、ドイツのようにより小規模な都市の活性化を図り、「多極集中」へと移行していくことが重要である。

【産業政策本部】