[目次] [基本的考え方] [第I章] [第II章] [第III章] [おわりに]

通信市場における競争の促進に向けた課題
−接続ルールを中心として−

I.地域通信市場における競争の促進


  1. あらゆる形態による競争の促進
  2. 従来、地域通信市場、特に加入者回線部分は、自然独占性が強く参入が困難であると考えられてきた。しかしながら、
    1. ユーザーの立場からは、サービスを提供している事業者が回線設備を自ら設置しているか否かは関係ない上、他事業者の設備・機能を活用することで競争を行うことは可能であること、
    2. また、現にごくわずかではあるが、ユーザーに直結する回線設備を自ら設置しサービスを提供している事業者が存在すること
    を考慮すれば、独占を前提とすることなく、技術革新や規制緩和の進展を踏まえ、あらゆる形態による競争の促進を大胆に追求すべきである。そうすることによって、将来的には、有線系と無線系、移動系と固定系、地上系と衛星系を問わず、これらがシームレスにつながり、どのような設備を使ってサービスが提供されているかをユーザーが意識しないような環境が実現されることが期待される。現時点で考えられる基本的な競争の形態としては、 がある。事業者は自らの事業戦略上、望ましい形態を選択、組み合わせて競争していくことが期待される。

  3. 回線設備を自ら設置して競争する形態
  4. 国際・国内、長距離・地域といった市場区分の撤廃、さらには、いわゆる需給調整条項の撤廃により、今後、地域通信市場へ参入する事業者が増えることが予想され、競争が進展する可能性が広がっている。しかしながら、回線設備の設置のためのルートの確保が困難、設置のための費用が大きいなどの理由から、未だ市場は、ほぼ独占状態にある。

    有線により回線を設置する場合、最も大きな問題はルートの確保である。したがって、電柱・管路等の合理的かつ非差別的な条件による開放、道路・河川占用規制の緩和が不可欠である。そのためには、地域通信市場における競争促進を国家的な政策課題と位置づけ、中央省庁、地方自治体、関係事業者等が一体的に取り組む必要がある。

    また、無線により回線を設置する場合、電波の有限性が最も大きな障害となっており、現在利用可能な周波数をより有効に利用するための技術開発、さらには、新たな周波数の開発が不可欠である。この点、先般、郵政省が公表した「情報通信政策の課題と今後の対応について」(以下、「政策ビジョン」と略す)において、「加入者系無線アクセス(ワイヤレス・ローカル・ループ)」の整備促進の方向が打ち出されていることに注目したい。

  5. 他事業者の回線設備・機能を一部利用して競争する形態
  6. 他事業者の回線設備・機能を一部利用して競争する形態としては、現行制度上、接続と業務委託の2つの方法がある。接続については、現在、原則として事業者間の協議に委ねられているが、相互の利益が相反するなどの理由から、協議が円滑に進まず、長期化するなどの問題が生じている。特に加入者回線をほぼ独占している事業者との接続については、そのような問題がみられる。第一種電気通信事業者による業務委託については、第一種電気通信事業者は、あくまでも回線設備を自ら設置してサービスを提供することが原則であるため、ごく例外的にしか認められないのが現状であり、実際には、国際電気通信事業者、移動体通信事業者等に限定されている。

    したがって、事業者間の接続に関するルール作りを急ぐとともに、第一種電気通信事業者の設備保有原則、業務委託のあり方についても併せて見直す必要がある。

    なお、この点、郵政省が「政策ビジョン」において、「他事業者の設備の弾力的な利用の促進」を打ち出していることに注目したい。

  7. 他事業者の回線設備・サービスを賃借・再販して競争する形態
  8. 現行制度上、電気通信事業者は、回線設備を自ら設置してサービスを提供する第一種電気通信事業者と、それ以外の電気通信事業を行う第二種電気通信事業者に区分されている。第二種電気通信事業者は、第一種電気通信事業者から回線を賃借し、これにコンピュータ等を接続して付加価値サービスを提供している。加えて、今般の公専公接続の完全自由化によって基本音声サービスの単純再販が可能となる。これにより第一種電気通信事業者と第二種電気通信事業者のサービスには何ら差異がなくなる。しかしながら、現状は両者のサービスの料金および提供条件は異なる規制の下に置かれており、公正競争上の問題が生じる。

    また、第一種電気通信事業者については、設備保有原則の下で再販は認められておらず、再販を利用して柔軟にネットワークを構築し競争を行うことができない。

    したがって、第一種・第二種という事業者区分を見直す必要がある。

    さらに、電通審案でも導入を検討するとしている卸料金を導入すれば、再販事業の活性化につながるものと期待される。

    なお、以上のような措置を講じた場合、回線設備を自ら設置してサービスを提供しようとするインセンティブが薄れるとの見方もあるが、当面は、多様な競争形態を認めていくことが先決であると考える。

以下第II章では、他事業者の回線設備・機能を一部利用して競争するために不可欠である、接続のルールについて意見を述べたい。


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