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新産業・新事業委員会企画部会報告書
「日本型コーポレート・ベンチャーを目指して」
第1部 新事業開発に関する各社の取り組み事例
アサヒビール
- 新事業開拓
- 昭和61年前後にスーパードライに取り組んでいた頃から、現在にいたるまで会社全体がベンチャー的な体質になっている。したがって、社内では、特にベンチャーという意識は持たれていない。
- 新規事業に着手する場合、トップダウンによって動き出すことが多い。特に新事業開拓の組織、システムは整えていない。トップダウン方式のほかには、経営企画室において検討、立案し、経営会議において決定することもある。この場合、経営会議で決まればすぐにプロジェクトは走り出すことになる。
- 新事業進出に関しては、明確な基準はなく、ケースバイケースで審議が行われる。現在は、本業からかけ離れた分野での運営は考えられていない。食料品を中心に会社の発展を図っており、そうした大枠の中で新事業の開拓を推進している。
- 子会社の運営原則
- 子会社の業績が良ければ子会社の給与が親会社の給与を上回ってもよいとされている。また経営が順調に伸びているのであれば、ストックオプションを導入することにも前向きである。
- また、新規事業子会社を経営会議に諮る際に予めある程度の損失限度額を決めておき、それを越えた赤字が発生した場合にはほぼ確実に撤退することになっている。
- 新規事業会社に社員を派遣した場合、いずれは本体に戻すことが多い。業績低迷の時代にリストラを行ったこともあって、現状において、社員は20〜30代が多く、いわゆる中高年層の余剰人員はないので、人員的にも年齢構成的にも社内で閉塞感はない。
<事例>
- 構造産業廃棄ゼロ(工場)
コーポレートベンチャーを育てる一例として、既存の設備などを通じて、社内にて検証を行うことも行われている。
- 食品工業において、環境への取り組みは非常に重要なテーマであり、究極的には工場より廃棄物を完全に出さないことが目標になる。
- 各地の工場単位で実験が行われているが、このたび、茨城工場にて産業廃棄物の投棄・埋め立てに回る資源を極力減らすシステムを開発した。
- 処理してできた商品は、別会社を通じて販売にまわしている。古くからビール工場にて発生するビール酵母を利用して、整腸剤の製造・販売を行っている(アサヒビール薬品)。
ビール製造の過程でできるビール粕は夏場に多く発生するが、これを牛の食欲が旺盛になる秋から冬場まで貯蔵するため、脱水・発酵等の処理をし、牧畜の原料として販売している(株式会社エーアンドシークリエイト)。
- 汚泥については、有機肥料に加工を行い、近隣に販売を行っている。
- 事業化よりも環境保全の面が大きいが、産業廃棄物の処理コストが上昇することも考え合わせ、分別を徹底して行い、ビニールについてまで、業者経由で焼結を行い、舗装道路の砕石として再利用している。
- 漢方医薬品への進出
従来アサヒビールとして薬品事業部があり、ここで、ビール酵母を利用したエビオス錠を製造しており、これを拡大、さらに漢方医薬品会社を買収し、今後の高齢化社会を見据えた、食品、健康産業への飛躍を狙った。
ビール酵母、漢方など、自然素材を材料とする医薬品の開発で、身体にやさしい医薬品のラインナップを図っている。
- 順興薬品(台湾の漢方薬メーカーより漢方エキスを購入し、これを輸入加工後に医療用医薬品として販売)
- アサヒビール漢方製薬(市販用の漢方を製造販売)
- アサヒビール薬品事業部が順興薬品を買収後、アサヒビール漢方薬を含め、アサヒビール薬品株式会社として独立した。
買収の理由は、医療用漢方薬(医者が処方箋をもって処方する漢方薬品)の認証は限定的であり、現在150種のみ認可されている。そのうち順興薬品は35種製造している。今後も医療用漢方薬は、これ以上認可されない見込みである。

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