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新産業・新事業委員会企画部会報告書

「日本型コーポレート・ベンチャーを目指して」

第1部 新事業開発に関する各社の取り組み事例

NTTデータ通信


  1. 新規事業開発のフレームワーク
  2. 新規事業開発の手法には、M&A、ジョイントベンチャー、ライセンス、出資、社内ベンチャー、子会社化、自社開発などの手法がある。どの手法をとるかは、会社の判断する事業リスクによる。いわゆる社内ベンチャーは、ミドルクラスのリスクの場合に手がけるものとなろう。

  3. 社内ベンチャー制度の経緯
  4. 予てより、経営戦略などについて全社員が提案できる制度があったが、その中から、社内ベンチャー制度導入の提案があった。そこで、目的をどこにおくか(新事業開拓、企業風土の活性化、人材育成、若手の活用)、事業領域のターゲット(マルチメディアに限定、本業に近い、または遠い)、リスクとリターンの関係、人材を取られる事業部との関係、会社の支援のあり方等について相当議論を行った。

  5. 社内ベンチャー制度の概要
  6. その結果、プロジェクト型の社内ベンチャーと独立型の社外ベンチャーとの2つのコースを設けることとした。
    社内ベンチャー(プロジェクト型)の場合、提案者が社内にプロジェクトを設立してプロジェクトリーダーになる。事業領域としては本業に近いものとし、成功報酬としては100万円以下の表彰金を与える。失敗した場合は、プロジェクトを解散し、転属してもらう。3年で単年度黒字を出すことを目標とし、会社からの資金援助は1億円を上限とする。
    一方、社外ベンチャー(独立型)の場合、提案者が退職して社長となる形で関連会社を設立(本社からの出資は34%以上49%以下)する。事業領域は本業からやや遠いものとし、成功報酬として本社に株式の高額買い取りをしてもらえることにより、キャピタルゲインが入る。失敗した場合は、会社を解散し、会社による再雇用は保証しない。収支目標については、やはり3年で単年度黒字を出すことを目標とし、資金援助は1億円を上限とすることとした。

  7. ベンチャーへの支援内容
  8. まず、NTTデータ出身のベンチャー企業は、NTTデータ通信も出資している日本ベンチャーキャピタルから、出資やアドバイスを受けることを予定している。
    また、人的支援として、社内外のエキスパートを紹介してアドバイスを受けられるようにしたり、あるいは外部のビジネススクールと連携した起業セミナーを開催している。
    資金援助の面でも、1億円を上限として、運転資金、設備投資資金を援助する。また、研究開発資金も別枠で援助することも検討している。
    さらに、NTTデータの保有する特許・ノウハウの使用許可を与えることとした。

  9. 社内ベンチャー制度への募集状況とその結果
  10. 本年4、5月に募集したところ、社内プロジェクト型への応募が16件、社外型への応募が4件あった。インターネット関連のネットワーク・ビジネスならびにNTTデータ通信が力を入れようとしているパッケージ・ビジネスが多かった。人物・事業性・NTTデータ通信の事業との関係を念頭に審査した結果、今回は初回ということもあり、1件だけを合格とした。九州支社の49歳の人物の提案した、社内プロジェクト型のパッケージ・ビジネスである。

  11. 社内ベンチャー制度の限界
  12. 社内ベンチャー制度には、独立ベンチャー企業と同様に成功の確率は決して高くないこと、会社本体の売上高に与えるインパクトは小さいこと、大企業内には起業家的人材がほとんどいないので大きな成果は期待しにくいという問題、さらには、社内ベンチャー制度はミドルクラスのリスクのある事業に適しており、リスクの非常に高い分野には向かないこと、といった限界があることは事実であろう。

  13. 既存企業の生み出すベンチャー
  14. それらの限界を越えていく一つの方策として、ベンチャーキャピタル的手法で投資を管理していくコーポレート・ベンチャーキャピタルという考え方がある。これは、多数のベンチャー企業に分散投資をしてリスクヘッジを行う手法である。この手法を、社外ベンチャーの管理に応用していくことを考えている。
    また、いわゆるベンチャー企業のような1人の天才科学者による新スキル開発型と異なり、大企業のベンチャーの場合には、天才はいないかもしれないが、大企業の保有する豊富な経営資源を活用できるため、特に多様なスキルのぶつかりあうメリットを活かせる分野のベンチャー企業を生み出すことが有効ではないかと考えている。


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