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新産業・新事業委員会企画部会報告書

「日本型コーポレート・ベンチャーを目指して」

第1部 新事業開発に関する各社の取り組み事例

オリックス


  1. 社内のどこからでも新しいビジネスの芽を提案できる社風
  2. 新事業開拓を推進する制度の枠組み(組織としての新規事業部門)は持っていない。営業の現場から寄せられた情報を重視し、それを基に最終的には役員会、トップの考え方で決断する。現場には、新しいことを常にやろうという考え方が社内全体にある。トップも現場という意識で、トップにしか入らない情報を基に事業化を検討することもある。

  3. リース業界の先駆けとして設立
  4. オリックスは、1964年4月、米国の動向を参考にして、3商社、5銀行の出資のもとに設立された。わが国リース業界の先駆けとして、コーポレートベンチャーから始まった企業である。
    リースは、本質的にはお金を加工するビジネスであり、それを専門的に追求し、付加価値や金融サービスをつける形で事業を拡大してきた。
    オリックスがノンバンクとして生き残ったのは、母体会社からの独立と自立経営の方針を打ち出したことが大きな要因である。1970年に大証2部への上場を契機に、それまで出向扱いで勤務していた従業員のうち、オリックスに残ることを希望する人のみ転籍してもらい、そうでない人は出向元に帰ってもらった。これにより、社員の士気が高まった。これが今日のオリックスを築いた。

  5. リースから派生したビジネスへの前向きな取り組み
  6. オリックスは、早くから国際的なネットワークを築いてきた。リースの仕組みやサービスそのものを研ぎ澄ましてきたことが、今日の地位を築き上げた。リースから始まり、金融サービス(事業資金への貸付など)、物件サービス(レンタカー、航空機リース)、不動産事業(独身寮、研修施設の運営)への進出を行なっている。
    また、顧客の隠されたニーズを探り、世の中の変化を見ながら、銀行が手掛けておらず、大蔵省の規制もないニッチ部分の金融サービスの商品システムを作ってきた。

  7. 新規事業の成功例・失敗例
  8. 成功例として、オリックス・オートリース、オリックス・レンテックが挙げられる。オリックス・オートリースは、車両18万台を所有して、メンテナンスを中心にオートリースを行っている。全国タクシー合計が25万台であり、かなりのシェアを確保している。
    また、オリックス・レンテックは、1976年に設立され、測定機器、OA機器のレンタルを行っている。実験用・検査用の測定器の短期間利用ニーズ旺盛だが、利用頻度に比べて価格が高く、しかも保守管理が面倒であることに目をつけて進出した。ニッチの市場だが、順調にマーケットが拡大しており、その中で過半数のシェアを確保している。現在、1万5000種類の品揃え、18万台の機材を利用して運営している。
    失敗例としては、広告用飛行船運航業を行うオリエント飛行船が、参入の時期が早すぎて閉鎖した。また、無店舗で、個人向け物品賃貸業、旅行用鞄やカラオケセット等のレンタルを行うファミリーレンタルが、オリックス本社が個人向けリースに関するノウハウを持っていなかったため、対象マーケットの特性が把握しきれなかったことから取りやめたことが挙げられる。

  9. 新規事業を成功させる要因
    1. オリックスには、グループ連結経営の思想がある。連結経営思想にたつと、大胆な事業展開ができるようになる。東京営業本部を例にとれば、東京営業本部、オリックス・オートリース、オリックス・レンテックも1つの営業体と見做し、営業体同士での人材の異動が柔軟にできる。営業体という位置づけのため、顧客の取り込みのためには、レンテックがオリックスの商品を売ったり、生命保険を売ることもできる仕組みになっている。連結思想には、人材、資金を柔軟に動かせるというメリットもある。
    2. オリックスが親で他のグループ会社が子という関係は、連結の思想に馴染まないため、なるべくしない。営業体同士の関係も並列であり、上下関係はない。
    3. 新事業の開拓には柔軟性とチャレンジ精神が重要である。確固たる信念に固執しすぎると、事業環境の変化についていけなくなる可能性がある。絶えず、環境の変化に気を配って、柔軟な姿勢で新しい市場の創造に取り組む必要がある。
    4. 人は失敗を積み重ねて成長するという考えから、失敗を恐れないで進取の精神を尊重する風土もある。こうした風土がいろいろなビジネスに挑戦することを促している。

  10. 金融サービス会社としてのチャレンジング会社への支援
  11. リースは、本質的には無担保金融であり、不良債権になっても転売ができない。今後も、チャレンジしている企業に対して、リース会社のビジネスの本質的な部分に関するノウハウを活かして、リース、事業資金、出資などを柔軟に組み合わせた金融サービスを提供していく。
    また、オリックスグループの新規事業および事業拡大に向けて、レンダーとして絶えざる革新を続けていかなければならない。常に変化する、金の加工業者であり続けるため、絶えざる革新、さまざまな新規事業に挑戦していくことが大切である。


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