[ 目次 | ポイント | はじめに | 第1部 | 第2部 | おわりに ]
新産業・新事業委員会企画部会報告書

「日本型コーポレート・ベンチャーを目指して」

第1部 新事業開発に関する各社の取り組み事例

ソニー


  1. 常に「新しさ」に挑戦
  2. これまでのところ、ソニーには、コーポレート・ベンチャーを集中的に担当するセクション、または社内起業家を組織的に募集する制度は存在しない。常に人のやらない新しいことへの挑戦が、いわば社員の宿命となっており、また、固定的な組織・システムを嫌い、朝令暮改ならぬ朝令朝改をいとわず、目的に適った組織づくりと人材再配置を果敢に行う風土があるからである。
    すでに、1960年代に、ウデと意欲に燃えながら組織の壁に頭を打ち付けている有能な人材こそを求めるべく、「‘出るクイ’を求む!」という求人広告を掲載している。その心は今も変わらない。
    「ソニーは井深、盛田に率いられたベンチャー・ビジネス」と大賀会長が表現するように、管理職から一般社員までが新たな企画・アイデアを、さまざまな機会を通じて、発表する機会を与えられ、その中から、商品化・事業化が図られるケースも少なくない。
    役職などに関わらず、いいモノ、新しい方法・方式を提案する声には耳を傾け、トップ自らも真剣に判断していこうとする姿勢は、創業以来、脈々と受け継がれている。
    さらに、電子機器にとどまらず、開拓者精神を発揮して新分野に挑戦していこうという「業種にとらわれない好奇心」を重んじる思想にも一貫したところがあり、スパゲッティ・チェーン(アルデン亭)、ゴルフのランキング方式の開発(ソニーランキング)など、およそ本業からは想像できない分野にまで事業を展開している。

  3. 別会社化によるコーポレート・ベンチャーの展開
  4. 新しい事業分野を開拓するためには、その事業分野への集中、専念が不可欠である。大きな組織の中にあると、担当責任者の活動にも他からの干渉があり、特定の新分野に集中できなくなりがちである。そこで、別会社・別法人の形態をとることにより、社内起業家を特定事業に専念させ、また独自の経営戦略、マネジメント手法による事業展開が円滑に進められることになる。
    別会社化の具体的な効用は、
    1. 異なる企業カルチャーの創出(ソニー内の既存のビジネスと違った新たな考え方・社風を創出する)
    2. 経営陣に対するインセンティブの確保(若手経営者をトップとし、活力ある人材を確保し、ソニー内のシニオリティにとらわれず、適材適所を図る)
    3. 異なる人事制度の採用(新たな分野への進出であり、例えば、ソフトのビジネス、特異なマーケティングに長けた人材など、従来と異なる人材を確保・活用する人事政策の採用が可能となる)
    などがあげられる。
    ソニーは、既に別会社化により、さまざまなビジネスを展開してきた。ソニー・ミュージック・エンターテイメントによる音楽ソフトビジネスへの進出をはじめ、ソニー生命保険、輸入雑貨販売のソニープラザ、Jリーグ関連商品などのキャラクター・グッズを企画・販売するソニー・クリエイティブ・プロダクツなど、多種多様な事業展開を国内と海外あわせて1000社近い別会社によって進めている。

  5. ソニー・コンピュータ・エンタテイメント(SCE)
  6. 最近の別会社化の事例として、ソニー・コンピュータ・エンタテイメント(SCE)がある。ハードウェアを製造販売するソニーと、エンタテイメントを提供するSCEとでは、ビジネスの性格が大きく異なる。つまり、既存の放送プログラムがあるために、ハードウェアのみで販売できるテレビ、ラジオと異なり、エンタテイメント・ビジネスには「ソフトがなければ価値がない」という特性がある。
    こうした双方のビジネスの本質的相違に起因するさまざまな理由、例えば、マーケティング・チャネルの違い等により、 SCEは別会社の形態をとることとなった。これまでに、同社のプレイステーションは、創業3年目にして、生産台数が1000万台を超えるまでになっている。


日本語のホームページへ