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新産業・新事業委員会企画部会報告書

「日本型コーポレート・ベンチャーを目指して」

第1部 新事業開発に関する各社の取り組み事例

東芝


  1. 新規事業阻害要因の分析
    1. ニーズとシーズの結合ができていない。撤退の決断ができにくい。速やかな意思決定ができるようにしなければいけない。
    2. 市場面の要因が非常に重要なファクターである。

  2. 失敗からの教訓
    1. 明確な商品コンセプトが重要である。シーズ先行、マーケティング欠如ではいけない。すでにあるマーケットに入っていくのではなく、市場を創造する意味合いが強いため、競合他社に何で勝つかの明確化、デファクト・スタンダード化が欠かせない。
    2. 併せて、事業化の意欲と執念、育て上げる粘着力、慎重さや大胆さ、撤退時の意思決定、組織・人の問題、トップの決断が重要である。

  3. 全体構想(枠組み)
    1. Advanced - I 事業本部(ADI)
    2. Advanced - I 事業本部(ADI)は、 94年7月、どの事業本部にも属さない、社長直轄の事業本部として発足した。全社横断的な複合的事業に取り組んでいる。その源流は、80年代に行ったI作戦(インフォメーション、インテリジェンス、インテグレーションなどの頭文字のIをキャッチフレーズに、社内の情報化を推進した全社的な運動)で、情報通信・電子デバイスの売上構成比が3割から6割に伸びた。
      90年代に入って、バブル崩壊とともに成長も頭打ちとなり、次のステップの模索が始まった。タイム・ワーナーへの投資を行ったのもその一つである。
      93年7月、 I作戦から次世代への展開を期してAdvanced - I(ADI)作戦を開始した。総合I空間ビジョンを展開し、特別のプロジェクトを全社レベルで形成した。
      全社から、50歳以下の有識者を9人集めた。その人選は、事業グループ担当役員が名指しで行った。この活動から、
      1. コンピュータとマイクロプロセッサ事業
      2. デジタルメディアネットワーク
      3. 次世代デジタル映像メディア
      4. 個人情報機器事業
      の4つを大きなテーマとして取り上げることにした(次世代メディアとコンピュータ、デジタルメディアネットワーク、これが融合されたところに個人情報機器が存在するという考え方)。
      これまでの新規事業推進部は、社内の取りまとめ役的な性格だったため上手くいかなかった、との反省から力をもった体制とするため、副社長を本部長とする全社の横断的体制を構築した。さらに各事業本部の売上の0.5%を徴収、投入した。
      総合電機メーカーの持つ組織化した総合力を特徴として、グローバルな視点で、変化の激しい複合した事業領域でトップランナーを目指す試みを始めた。

    3. VB投資制度
    4. ハイテク分野等での新規事業を開発・育成するため、VB(ベンチャービジネス)のリソースを戦略的に活用することを目指す投資制度である。投資対象は、先進的なベンチャー企業であり、投資に際しては、 迅速な意思決定ができるような仕組みとしている。投資額には上限を設ける。

    5. 多様な新規事業育成の仕組み
      1. 社内に事業推進部という組織を設置して進める他、全社横断的プロジェクト、ベンチャービジネス設立支援など、多様な手法をとっている。
      2. ベンチャービジネス設立支援制度は、東芝を退社して退職金を原資にベンチャーを設立する場合、東芝も出資をすることにより設立の支援をする(1回しか投資しない)。その第1号はピクセラ社である(95年1月設立、本社米国シリコンバレー、高解像度のパソコン用カメラの開発)。
      3. 参入基準については、3年間で事業化してROIが26%と一応設定している。撤退基準については、立ち上げ完了時に事業目標が達成不可能なもの、計画から著しく乖離が大きいもの、累損が一定額を超えたものについて、撤退を決断する。


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