経団連の最近の動き

(1998年3月)

「経団連インフォメーション」の記事より


No.169( 3月27日発行)より

山崎自民党政調会長に対し、抜本的な税制改革を要望

3月26日早朝、豊田会長はじめ経団連幹部は自民党の山崎政調会長と懇談し、景気対策として

  1. 税制抜本改革、
  2. 公共事業の前倒し、
  3. 住宅取得促進・土地の流動化策、
  4. 年金改革、
  5. 規制緩和・高コスト構造の是正、
の5点を要請した。
特に今回の要望の最重点課題として税制抜本改革を掲げ、最高税率の大幅引下げ(65%→50%)、累進構造緩和を中心とする4兆円規模の所得税・住民税減税と、法人実効税率の40%への引下げを中心とする3兆円程度の法人税制改革を要請した。
このほか、公共事業の80%程度の前倒し、住宅取得に係る贈与税の特例の拡充、確定拠出型企業年金制度の導入なども要請した。

「変わる企業の採用行動と人事システム」事例集を作成中

創造的人材育成協議会(会長:末松さくら銀行相談役)では、創造的な人材育成のための環境の整備や、学歴偏重社会を是正するために、1996年3月に提言をとりまとめた他、1997年3月には、企業の採用行動に関するアンケート調査を実施・公表することにより、各企業の採用行動が変わってきている現状を、教育機関や社会にアピールしてきた。今般、これまでの統計的データを肉付けし、企業の改革への取組状況を具体的に示すために、同協議会の主要企業が実施している採用・人事・処遇・育成面での改革の現状を「事例集」としてとりまとめることとした。
同事例集は、4月中にも公表し、企業が

  1. 従来以上に創造的かつ時代感覚に富んだ人材を求めている、
  2. インターネットの活用等により、オープンかつ多様な採用方法を進めている、
  3. 多様な人材の最適・有効な活用に向け、業績・実績に応じた評価・処遇システムを構築している、
等の実状を紹介することで、企業の自己改革を促すとともに、教育関係者等、広く社会にアピールしていきたい。

日本の産業技術力の実態把握について

経団連産業技術委員会では、科学技術予算の倍増、科学技術基本法の制定や科学技術基本計画の策定、科学技術関係の中央省庁再編などの一連の流れのなかで、21世紀にふさわしい科学技術推進システムの枠組み作りに向けて積極的に取り組んできた。
今後、産業技術委員会では、あらためて産業界自らの技術力の実態を事業分野別に的確に把握し、それを踏まえて経団連の政策要望に結びつけていきたいと考えている。そこで、現在、当委員会政策部会では、メンバー19社から資金面での協力も得て、日本の産業技術力に対する経営層の現状認識、企業努力の方向性,必要としている人材等の調査に取り組んでいる。4月6日の産業技術委員会では、当委員会企業及び研究開発関連企業約280社に対し、本調査への積極的な協力をお願いする予定である。

No.168( 3月13日発行)より

税制改革の早期実施を要望
−経済4団体首脳と橋本総理が懇談

3月10日午前、首相官邸にて橋本総理と経済4団体首脳が懇談し、当面の景気対策や貸し渋り対策について意見交換した。
席上豊田会長からは、貸し渋りについては、大企業においても借り入れ金利の上昇による長期資金調達コストの上昇など、影響が出ていることを説明した。
景気対策については、

  1. 過日訪米した際、米国経済人などから内需拡大による景気回復を要請されたこと、
  2. 金融機関の経営が安定しないと景気が回復しないこと、
を説明した上で、金融関連2法の早期実施による金融システムの安定化を求めた。また来年度予算を速やかに成立させると共に、必要であれば、予算成立後直ちに追加の景気対策を取るよう要望した。その中で、法人税減税をはじめとする税制改革の早期実施を求めた。
最後に、国民が将来に明るい展望を抱くためには経済対策の目玉を作る必要があることを指摘すると共に、今が政治の正念場であり、景気回復のために首相のリーダーシップ発揮を求めた。

「政府一体となった地球温暖化対策を望む」を建議

気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)における京都合意の着実な実行に向けて、政府は橋本総理を本部長とする地球温暖化対策推進本部を設置し、1月9日に、省エネ法の改正強化や経団連環境自主行動計画の公的なフォローアップ等の対策を決定した。これに対して、環境庁は、別途、「国の基準に従って、事業者に温室効果ガスの削減計画を作成させ、 都道府県知事に提出させて、都道府県が指導・助言・勧告する」という法案を、今国会に提出する意向である。
そこで、経団連では、3月9日に、

  1. 環境庁の法案は、省エネ法と二重規制となる、
  2. 温室効果ガス対策について都道府県が指導・監督することは企業が全国ベースで対策をとる上で、却って妨げとなりかねない、
という2点からなる標記意見書をとりまとめ、政府・与党に建議した。

WTOの更なる強化を望む意見書を発表

GATTの発効から本年で50年を迎える。5月にはジュネーヴにおいてGATT/WTO体制50周年を記念する式典と併せて第2回閣僚会議が開催され、今後のWTOの作業計画が討議される。そこで、貿易投資委員会では、今後のWTOのあり方に関するわが国経済界としての意見を「WTOの更なる強化を望む〜国際ルールに則った多角的貿易体制の一層の推進に向けて〜」と題して取りまとめた。
本意見書では、先ず、WTOが引き続き多角的貿易体制の推進に向けて中心的役割を果たすことを求めている。また、わが国企業が抱える通商上の問題を明らかにし、加盟国のWTO協定遵守の確保を求めた上で、協定の一部見直しやWTOの一層の機能強化の必要性を指摘している。さらに、中国などのWTO非加盟国の加盟促進、投資、環境などの新たな分野の国際ルール作りに向けた取り組みの強化、更なる貿易自由化の促進を求めている。3月17日に理事会の審議を経て公表の予定。

No.167( 3月 6日発行)より

21世紀政策研究所がニューヨークでセミナーを開催

21世紀政策研究所では、さる3月5日、ニューヨークにおいて日本協会との共催により、「日本の金融システム安定化と東アジアでの経済秩序の再構築」をテーマにセミナーを開催した。日本からは、宮澤喜一元首相、豊田章一郎経団連会長、田中直毅21世紀政策研究所理事長らが出席し、日米の金融関係者・マスコミ等約300名に対して、日本の立場を具体的に訴えた。宮澤元総理は基調講演のなかで、「金融監督庁の設立や預金者保護のための公的資金の用意、金融機関の資本増強などを実施するが、重要なことは金融機関の自助努力や業界再編を通じた競争力強化であり、護送船団方式を目的としたものではない」と強調された。また豊田会長と田中理事長は、「東アジアの経済調整を短期間で収束させるために日本は、市場の開放と内需の拡大を図る必要がある」と共通の認識を示した。それに対して、アメリカン・エンタープライズ・グループのグリーンバーグ会長らから有益なコメントがあった。

電子商取引に関するアンケートを公表
省庁横断的な推進を政府に要請

経団連では、この2月、電子商取引に関する企業の取組みや考え方を把握するため、主要会員企業を対象に電子商取引に関するアンケートを実施した。
これによると、電子商取引に対する縦割り行政の排除を求める声が強いこと、電子商取引普及のためには、通信料金低減やサービス多様化が不可欠であり、一層の規制緩和が求められていること等が明らかになった。
この結果をもとに、3月4日に開催された政府の高度情報通信社会推進本部有識者会議において、礒山隆夫情報通信委員会情報化部会長(東京海上火災保険専務取締役)より、電子商取引に対する政府の省庁横断的な取組み、規制緩和の一層の推進、ならびに公的分野の情報化の促進等を訴えた。
アンケート結果は、3月26日発行の経団連くりっぷや経団連ホームページに掲載することにしている。

ヘルスケアビジネスに関する検討の開始

今後の高齢社会において、国民負担率を抑制しつつ、多様化する国民の医療福祉ニーズに対応していくためには、医療福祉制度の抜本改革を図るとともに、国民が医療福祉サービスを自由に選択できる環境を整備することを通じて、医療福祉サービスの質的向上を図る必要がある。
そこで、新産業・新事業委員会(委員長:大賀ソニー会長)では、企画部会(部会長:古見日興リサーチセンター会長)のヘルスケアビジネスワーキング・グループ(座長:熊谷日興リサーチセンター常務取締役)において、医療福祉サービスの質的向上を図る観点から、ヘルスケアビジネスの課題と今後の対応、環境整備のあり方などについて、医療・福祉制度等の抜本改革を推進している財政制度委員会と連携しつつ検討を開始した。
新産業・新事業委員会としては、年内に報告書をとりまとめる予定である。


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