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「変わる企業の採用行動と人事システム」事例集
〜教育改革に向けての企業からのメッセージ〜

II. 本 論 ─ 事例集の概要


序.変わる採用行動と人事システム

経済活動のグローバル化、高度情報化の進展、急速な少子化・高齢化、アジア経済の激動等、内外の環境は大きく、しかも急速に変化しており、わが国は、活力に富むグローバル国家を築いていくため、経済構造改革、行政改革など抜本的な改革を推し進めつつある。
各企業においても、自己責任原則に基づき、熾烈さが増す内外企業との競争に打ち勝つために、ダイナミックに変化するグローバルな事業環境を見極めながら、高付加価値で魅力ある製品・サービスの開発・提供、低コスト化、新たな市場の創造・開拓などに、日々存続をかけた挑戦を続けている。そして、この一環として、わが国企業は、21世紀に向け、従来の企業活動や組織を抜本的に見直し、採用行動や人事・処遇・育成面はもとより、従来の企業活動や組織の抜本的見直しなど、様々な改革・変革に取り組んできている。
このような人材をめぐる企業側の改革の動きは、学校教育も含め、今後わが国が社会全体として望ましい人材育成・活用システムを模索していく上でも大きな力となろう。

1.能力や個性に応じた多様な人材の採用

  1. 求める人材像〜企業は多様な人材を求めている
  2. 今後、企業にとっては、従来以上に創造性に富んだ人材が不可欠となる。求める人材像は企業・業種により異なるが、これが明確になれば、学生側も自らの関心・能力に応じて目指すべき進路・カリキュラムを選択でき、「就社」から「就職」への意識改革につながることも期待される。各社の求める人材像は次の通りである。

    1. 新しい価値を創造する、時代感覚に富んだ人材
      まず、多くの企業では、「自ら問題を発見し、考え、実行できる力」や「既存の概念を超えて、新しい価値を創造できる人材」など、いわゆる創造的な人材の確保に力点を置いている。また、「時代の変化や顧客の期待を先取りする感性とスキル」「市場(顧客)ニーズを的確につかみ、トータルに事業をまとめられる人材」「グローバルな視野、国際的な感覚を身につけ、生き生きと行動できる人材」など、時代や市場の変化を捉え、時代感覚に富み、国際性を備えた人材を求めている。
      さらに、技術系や経験者の採用の際は勿論のこと文科系の採用にあたっても、「高度な専門性・専門分野における基礎学力」「プロフェショナル志向に富む人材」等、専門性やプロフェッショナリティを重視する傾向が一層強まっている。

    2. チャレンジ精神や積極性は基本
      このように、時代や市場に対する感性や専門性を求める一方で、「チャレンジ精神」「バイタリティ」や「人の知らないことを求める貪欲さ」「未知の領域に飛び込み、自ら課題を達成していく開拓精神旺盛な人」などを求める企業も多い。積極的・意欲的態度や行動力は、いわば企業の人材に対する基本的ニーズともいえるものであろう。
      また、「誠実性、協調性とともに他にも配慮できる人」「組織の中にあって個性や持ち味を発揮できる人」など、「協調性・バランス感覚」を求める企業や、「信頼される人材」「顧客の立場で考え、行動できる人材」など顧客志向を重視する企業、さらには目標達成に向けての持続性重視の観点から「心身の健全さや辛抱強さ、粘り強さ」「ひたむきさ、貪欲さ」を求める企業など、企業・業種により、求める人材は多様である。

  3. オープン化・多様化が進む企業の採用行動
  4. これまで多くの企業は、効率性や協調性を重視し全員参加型の経営・雇用システムを構築してきたが、この中で採用においても、新卒一括採用やリクルーター制(OBルート)などを通じて、限られた短い期間内に同質的な価値観を持つ人材を採用してきた。しかし、このような企業の採用行動が、学校教育のあり方にも少なからず影響を与えてきたことも否めず、経団連としても各企業に対して、採用のオープン化などによる幅広い人材の受け入れを呼びかけてきた。
    また、企業においても、経済システムが大きな変革を遂げる中、革新的な経営に向けての創造的な人材確保の必要性は格段に高まりつつある。このため、ここ数年企業は、柔軟で機会均等を重視したオープンな採用方法(オープンエントリー制、通年採用など)への取組みを一層拡大するとともに、職種別採用や経験者(中途)採用などにより、より専門的で即戦力のある人材を積極的に確保する動きを強めている。

    1. オープンかつフェアな採用方法の拡大
      とりわけ、ここ数年、オープン・エントリー制の拡大は著しい。97年3月公表の経団連調査では、採用の際に「出身学校」を重視する企業は5〜6%に過ぎず、またオープンエントリー制を採る企業の割合は95年調査時の導入企業と比べ(41%)、97年は文系70%、理系57%と拡大していたが、今回の各社事例においても、多くの企業で導入が進んでいる(42社中、34社が導入)。
      具体的には、「一定の学校への偏ったPRはしない」「技術系で1大学から2名までしか採用しない」「応募者の集合しやすい日曜日や休日に選考行事を設ける」「電話自動受け付けシステムを導入し、応募者すべてに説明会に来てもらう」「全国の希望者に機会を与えるため、延べ70回もの会社説明会を開催した」などの取組みが見られる。
      特に、選考の際に出身大学名を問わない「学校名不問」の採用方法については、今回の各社の回答でも半数近い企業が取り入れており、企業が、オープンかつ大学名に左右されずに人物・能力本位に、との考えを明確にしようとする姿勢が窺える。例えば、選考書類や面接時に「学校名を記入させずに参加者全員と面談した」「集団面接の際、サークル名、学部名等から学校が類推できないように、かなり厳格に注意を払う」などといった企業や、さらに入社後の人事データにも大学名を入れないなど、これを一層徹底している企業もある。
      なお、オープンエントリー制の採用に伴い、リクルーター制度や学校推薦による採用方法を縮小・廃止する企業は増加している。
      また、採用活動を具体的に見ると、就職情報誌への採用情報の提供に加えて、「インターネットで、採用スケジュールや説明会等の情報を公開し、メールプレゼンテーションでの応募を受付ける」「メールエントリー制度を導入し、ホームページ上に採用基準を公開した」など、インターネットの持つ双方向性を活用した採用情報の公開や、応募者の受け付けが増加している。今回の各社事例でもほとんどの企業が積極的に活用しており、多くの学生に機会を提供できるオープンな採用方法の一つとしてインターネットの利用は一段と進むであろう。ちなみに、97年の経団連調査では、採用活動にインターネットを利用している企業は回答企業の約4割であった。
      さらに、学生時代に企業の実状を知り、しっかりとした職業意識を持って企業選択を行なえるようにと、学生が短期間企業において就業体験する「ジョブインターンシップ」を導入・検討する企業も出てきている。

    2. 採用方法の多様化〜機会拡大と専門性・即戦力を求める動き
      採用方法のオープン化の流れとともに、通年採用、経験者(中途)採用などを実施する企業も確実に増加中である。これまでのように新卒者を一時期に限定して一括して採用する方法は、学生側の機会を狭めることにつながる他、企業にとっても、個人の能力を時間をかけて適切に評価することが難しい。加えて、近年、企業にとって、企業環境の変化にスピーデイに対応するためにも、高度の専門性を有する人材や新しいビジネス要員を確保する必要性が格段に高まってきている。
      このため、必要な時期に必要な人材を必要な数だけ採用する「通年採用」・「秋期採用」、予め配属部門や要求するスキルを明確にして募集する「職種別採用」・「目的別採用」、即戦力や異質の人材を積極的に確保するための「経験者(中途)採用」、国籍・性別・新卒・既卒などの条件をとりはずした「ボーダレス採用」など、採用方法の多様化が進んできている。
      今後、このような採用方法はますます増加していくものと予想され、単なる学歴よりも多様な個性・能力や専門的知識・技能、さらには経験などが従来以上にものをいう時代になりつつあるといえよう。
      この他、企業は採用方法の多様化とあわせて、「弁護士・デザイナーなどの特別な資格・能力を有する人材を、一般職員と区別し年俸契約社員として採用する」「1年契約の年俸制で時間管理の自由度を高めた『スペシャリスト・コントラクト社員』制度を導入し、社内外から募集した」など、雇用形態の柔軟化にも取り組んでいる。
      また、社内分社化に伴い、事業戦略毎に独立した各カンパニーが、目的別採用や通年採用を通じて必要とされる人材を独自に採用するなど、社内組織体制の変化に併せて、採用方法を変える動きも始まっている。

    なお、多様な採用方法の導入が進む一方、「長期的観点から、人材を確保・育成していくことが基本方針であり、極力一定数をキープするとともに、新卒を中心に優秀な人材を採用する」など従来通りの採用方針を掲げる企業もある。

2.個人の能力を最大限に活用する処遇・評価システム

今や企業は、創造性と革新を生み出す経営を行なうことが強く求められており、組織の目的を実現していく中で従業員の主体性を従来以上に尊重し、多様な個人が個々の目的意識や能力に基づいていきいきと活動できるような組織運営が不可欠となっている。
こうした目的を達成するためには、前述の採用方法の見直しと併せ、社内人事システムの再構築が重要となる。なぜなら、企業が採用面での改革を進め、多様な人材を受け入れても、入社後にそうした人材が自らの意欲、志向に基づいてキャリアを組み立て、能力や個性を最大限発揮できるような仕組みがなければ、所期の成果は期待できないからである。
こうした中で、企業の最近の動きを見ると、従来わが国企業の多くで見られた終身雇用制度や年功序列的な評価方法など、わが国特有の雇用・賃金制度は次第に変革を遂げてきており、個人の「能力」と「選択」を重視するシステムが大きな流れになりつつある。

  1. 「能力」重視のシステムへの変革〜能力・業績給導入の進展、目標管理制度との連動
  2. ここ数年、企業においては、従来の年功的・生活給的な処遇体系から、能力主義・成果主義に基づき個人の能力を十分に発揮させる処遇体系への転換が急速に進んでいる。
    今回の各社事例でも、大半の企業において「能力・業績給、職務給」や「職能資格と職位の分離」などが導入されており、さらに「全面的に業績・成果による処遇とし、その評価を賞与・給与・昇格に反映させる」「昇給的要素を完全撤廃し、毎月の給与部分にも業績給を導入」など、一層これを徹底する企業もある。
    また、業績・実績に応じて給与が決定される「年俸制」も管理職を中心に次第に拡大している。具体的には、「組織業績と各職位に応じた重点課題達成度合いの総合評価により年俸額を決定」「半期毎の業績に応じて給与も上下する半期年俸制を導入」するなどの例が見られる。
    なお、このような処遇を行なう上で、社内における人事評価の精度を高め、評価される側の理解を高めていくことも不可欠である。このような観点から、各社の取り組み事例を見ると、「目標管理制度」との連動で運営されているケースが多い。現在各社で行われている「目標管理制度」の多くは、従業員それぞれに年間・半期などの目標を設定し、期間終了後に上司との面談や自己評価を通じて達成度を決定し、それを各人にフィードバックすることにより、評価の公平性確保と能力開発効果を目指すものである。さらに、直属の上司の評価以外の評価(部下や同僚等)を加味する「多面的評価」を導入する企業など、より客観的で透明度の高い評価を行なう工夫も進んでいる。

  3. 個人の「選択」を重視〜意欲・能力の最大限の活用
  4. 「能力」重視の各種の制度に加えて、個人の「選択」を重視したシステムへの取り組みも活発化している。こうしたシステムの活用により、企業は専門的能力の向上や個人の意欲・能力に基づく適材適所が実現できる一方、従業員にとっても、自らの意欲・志向に基づいてキャリアを組み立てることが可能となり、その能力・個性を最大限に発揮できる効果が期待できる。
    まずは、「専門職制度」や「社内公募制」がその代表としてあげられよう。97年の経団連調査でそれぞれ48%と43%の企業で導入が見られたが、今回の各社事例でも大半の企業で活用されている。具体的には、「専門職制度」に関しては、「一般的なマネジメントコースに加え、スペシャリスト、プロフェッショナル、クリエイティブなどの複線型専門キャリアコースを導入」「役付以上の希望者を対象に、特定分野で専門職制度を導入し、従事期間中は、専門能力を発揮できる部署間での異動に限定」するなどの取り組みが見られる。
    また、「社内公募制」に関しても、「適材適所を人事部でなく社員自らが見出そうという企業風土があり、この風土を支える人事制度の一つが社内募集である」「全ての部門の増員、欠員の補充は、管理職層を含め、全て社内公募を第一優先」「社内ベンチャー事業や業務改革プランを社内公募で推進」などの例があげられている。「上司に内密に、自由に安心して応募可能とする」など、これを一層徹底する企業もある。
    さらに、個人のライフスタイルや価値観に合わせて、「勤務地の限定」などの方策を講じる動きも見られる。例えば、「業務の高度化・専門化と価値観の多様化に対応して、勤務地、職種を限定した『特定総合職』を含む、きめ細かなコース建資格制度」「勤務体制や勤務地を社員が選択できる『社員群制度』」などである。今後、少子化・高齢化や、女性の社会進出が一層進展する中で、柔軟で選択的な雇用形態や処遇制度への動きはますます高まることになろう。
    また、退職金や福利厚生費等を給与に上乗せする「退職金給与組み入れ制度」や経営者や従業員に自社株購入権利を付与する「ストック・オプション」、能力や専門性などに応じた「初任給からの格差付け」など、新しい処遇システムを導入する動きも一部企業で見られる。

3.専門性・主体性重視の能力開発・研修システム

以上のような採用、人事、処遇面の変革に伴い、企業は人材育成、能力開発の面でも新たな対応が求められる。
今後、企業は、従業員の持つ専門的能力の一層の向上・高度化に向けた能力開発策の強化を図るとともに、従来のように企業が一方的・一律に人材を育成していくのではなく、個人の意欲やキャリア開発を重視した、いわば自立・選択型の人材育成・能力開発への要請が次第に高まるものと考えられる。

  1. 専門的能力の向上・高度化〜「プロ」人材の育成強化
  2. 内外の急激で激しい環境変化の中にあって、各企業は高度化する業務や国際競争力の強化に向けて、専門知識・スキルの付与などを通じた専門的人材の育成強化に注力している。具体的には、「各部門での『プロ』を育成する」「一人一人が得意とする分野を確立する」ことに加え、「変化に対応できる自立型、創造型、革新型人材の育成に向けて、2つ以上の仕事でプロになる『ダブルジョブスペシャリスト制度』の導入」「それぞれの得意分野で社内外に通用する高い専門性を身につける」など、一段とその強化を図ってきている。
    また、人事ローテーションも、「入社10年までに組織をまたがるローテーションを経験させた上で専門家として育成」「出向、海外、本社などの勤務経験」などにより、多様な業務経験と専門的知識を持った人材の育成が図られている。
    一方、環境変化の激しい時代にあって、先見性、指導力、真の意味での国際性などを備えた将来のビジネスリーダーとなる人材の早期育成を重視する企業もあり、社内に塾や経営スクールを設置するケースも見られる。さらに、人事制度の国際共通化を目指すとともに、「人的資源の国際的活用のため、海外現地幹部社員を本社社員とともに研修・育成する」などの動きも出てきている。

  3. 主体的・選択的研修制度の拡充へ
  4. こうした中で、各企業は人材育成・能力開発の具体的手法においても、「授業員の主体性の尊重」「挑戦機会の拡大」「個の自立」などを重視し、「キャリア・ディベロップメント・プログラム(CDP)」に基づき、自らのキャリア開発に必要と思われる研修を自ら選択し、受講できる研修制度への移行が高まりつつある。
    具体的には、従来の「階層別研修」「部門別研修」などの集合教育の他、企業の用意した研修メニューを希望者が選択・受講する形の「カフェテリア型研修」「社外セミナーや通信教育など自己啓発チャレンジの奨励・補助」などに取り組む企業も増えてきている。
    現在、労働市場の流動化は、経験者(中途)採用などにより次第に進みつつあるとはいえ、社会全体としては未だ定着していない状況にあるが、今後、企業間労働移動など労働市場の流動化が一段と進展すれば、自己責任・自己研鑚中心の能力開発のウェイトが一層高まることが予想される。

4.組織変革・社内活性化への取り組み

グローバル化・情報化等の進展に対応し、各企業は、国際競争力強化、意思決定の迅速化、情報の共有化など社内活性化を目指して、「情報化」「組織のフラット化」をはじめとした様々な取り組みを行なっている。こうした動きは、個人の多様な能力や個々人が現場で持つ情報を迅速に共有し、効果的に活用しようとする仕組み作りであり、組織内情報伝達や意思決定システムの革新的変化を通じて、従業員の価値観や人事・能力開発などのあり方にも影響を与えることが予想される。

  1. 情報化への取り組み
  2. 「情報化」の推進により、情報共有による業務のスピードアップ、電子化による業務効率化・スリム化などの効果が期待されるが、影響はこれに止まらない。社内LANによる一人一台パソコン体制やテレビ会議の導入等の情報インフラの飛躍的な整備は、社内におけるコミュニケーションや意思決定に革新をもたらすことになろう。
    また、情報化を進める一方で、「ダイレクト・コミュニケーションにより、各レベルでの問題点の確認と対応に取り組む」など直接対話により社内意識や情報の共有化を図る企業もあるが、今後とも企業活動やそのための意思決定がスピードアップする中で、インフラの整備を通じた「情報化」への取り組みはますます重要となると思われる。
    導入後の課題として、「情報化に対する利用者の意識改革等を含む、新しい企業文化の醸成」「情報ツール利活用向上のための研修・啓蒙の徹底」などを指摘する企業もあり、本格的な情報化推進のためには日本独自の企業風土や業務そのものの変革も必要になると予想される。

  3. 組織のフラット化・分社化
  4. 従来の重層的な組織を改め、例えば、「部長−グループマネージャー−グループ員」など、組織構造をよりフラットな形にする企業や、社内分社化やカンパニー制を導入する企業も現われている。これらの改革により、企業は、(1)新たな経営課題への柔軟かつタイムリーな対応、(2)意思決定・伝達の迅速化、(3)大幅な権限委譲と適材適所、年功ではなく能力本位での登用・処遇などを図り、組織力の一層の強化と社内活性化を実現しつつある。組織のフラット化、カンパニー制などを通じて、企業家精神の高揚やチャレンジ機会の増大など、人材育成面での効果も期待できる。

  5. 女性の活用促進等による社内活性化
  6. 新たな戦力として女性の活用を促進し、管理職への積極的な登用等により、社内の活性化を目指す企業も出てきており、例えば、「社内で成功している女性を選出し、一層女性が活躍できる環境を整備するための対策を作成してもらう」企業もある。一方、中間管理職の活性化を図るため、「マネジメントの基本と新しい役割をまとめたガイドブックを作成・配布する」などの動きも見られる。
    なお、今回の調査では、高齢者の活用を特に重点として取り上げる企業はなかったが、今後、少子化による労働力不足等を勘案すると、中高年の活用・活性化に向けた取り組みも加速していくものと思われる。

5.教育界に向けた企業の支援・貢献

企業・経済界としては、創造的な人材の育成に向けて、企業自身の改革を進めるとともに、家庭・学校・地域の取り組みに対しても、支援を強化していくことが重要である。

  1. 家庭教育支援につながる制度の充実
  2. 創造的な人材の育成には、家庭の教育力の回復・向上、中でも、社会経験豊かな父親が積極的に家庭教育に参加することが重要である。企業としては、各々の事情が許す限り、家庭教育への「側面的支援」として、従業員が家庭教育に参加しやすくなるような環境作りに努めていくことが期待される。
    今回の各社の事例によると、多くの企業が「育児休業制度の設置」(39社)、「半日休暇制度」(30社)、「フレックスタイム制度」(30社)などを取り入れており、この他「従業員の休暇取得促進」(97年経団連調査、78%)、「労働時間(残業時間)を減らす」(同、75%)なども含め、家庭教育支援につながる大枠の制度が整備されてきている。
    しかし、「学校行事参加のための休暇制度」や「学齢期の子供を持つ従業員に対する転勤時期・地域の配慮」など、より具体的な形で支援策を講じている企業は少ない。

  3. 教育現場への支援
  4. 一方、子供たちにとっては、学校だけが勉強の場ではなく、現実の社会に接することで、多くを学ぶことも重要である。こうした中で、企業・経済界の持つ幅広い情報や資源を、教育の現場や地域社会に提供することも有効な支援策である。
    具体的には、教育界に対する「寄付・寄贈」は多くの企業(31社)が行なっている他、「大学への講師派遣」や「工場見学の実施」「大学からの研修生の受け入れ」についても、半数以上の企業が取り組んでいる。
    この他、「企業施設の開放」や「教員研修への協力」「奨学金助成」なども含め、回答企業42社中40社が、なんらかの形で教育支援を行なっている。


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