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わが国の高コスト構造の是正
−新たな経済システムの構築を目指して−

3.日本型経済システムがもたらす高コスト


日本型経済システムの特徴である政府・企業の緊密な関係は、政府による外部環境の変化に対する積極的な産業調整策として機能する限りは評価されるが、実際には特定産業を「経済的弱者」として過度に保護し続けることが多く、結果として、過度な規制や介入による低生産性部門の温存につながってきた。特にわが国の場合、弱者保護策が政治的理由から過剰なものとなったり、あるいは特定産業に属する企業を一律に保護することによって、本来は弱者にあてはまらない者までも保護してきた面が強い。このような過度の保護策は、個別企業の生産性向上努力や創意工夫のインセンティブを弱め、業界内での横並び意識を助長してきた結果、長期にわたって高コスト構造が維持されてきた。

もう一つの大きな特徴は、終身雇用、年功賃金、企業別組合及びこれらを支える退職金・年金制度などの雇用制度・慣行である。これは若年者の比重が高いピラミッド型の人口構造と毎年定昇を可能とするような経済成長を前提としたもので、既にその硬直性から労働の高コスト化を引き起こしているばかりでなく、今後の高齢化や低成長の下では更なる高コストを確実に惹起するものになっている。また、生産性が十分に反映されずに決められる年功賃金体系は、コストとの関係を極めてわかりにくいものにするばかりか、労働の成果よりも投入時間・量を重んじ、また会社への忠誠心を強いるシステムとなっている。


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