[ 目次 | ポイント | 第1章 | 第2章 | 第3章 | 第4章 | 第5章 ]

わが国の高コスト構造の是正
−新たな経済システムの構築を目指して−

5.おわりに−日本型経済システム変革の必要性


本報告では、日本型経済システムのもたらす大きな弊害のひとつとして、高コスト構造を取り上げ、その是正策を検討してきた。先に述べた取り組みに加え、高コスト構造の是正に向けては、諸外国に比べて重い法人税負担の見直し、社会保障制度の抜本的改革などを行うことが不可欠であり、さらには地価の問題、農産物価格などについても見直す必要がある。

日本型経済システムについては、高コスト構造を是正していくことに加えて、海外から見た閉鎖性、企業中心の社会構造や人間関係、環境や市民社会との共存などの観点からも、早急な見直しが必要となっている。例えば、直接金融のウェイトの増大やメインバンク制からの脱却及び格付機関による信用力評価の進展、企業のディスクロージャーの充実、従業員以外のステークホルダーへの配慮などが日本型経済システム変革のために必要とされている。

そこでは、企業は引き続き経済社会の重要な一員であり続ける一方で、政府や市民などとも等距離の関係を保ちながら、最も効率的で合理的な経済主体として貢献していかなければならない。その場合の基本的ルールは透明性、公平性、デュープロセスであり、結果としての公平性を当初から義務づけられることがあってはならない。

経団連では、これからの経済社会にふさわしい企業行動のあり方を確立するため、96年12月に「経団連企業行動憲章」を改定し、内外に強く訴えたところであるが、企業としても同憲章の趣旨を踏まえて、行政依存や業界内の依存体質、横並び意識から脱却し、自己責任の貫徹、法律、ルール及びその精神の遵守、社会的良識を持った行動などに努めていかなければならない。また、企業情報の積極的かつ公正な開示による経営の透明性の向上を図るとともに、グローバル・スタンダードの観点から商慣行(例えば、返品制、多頻度小口配送、過剰包装等)について、不断の見直しを行うことが重要である。新たな経済社会において、企業は、その一員としての役割を十分に果していくことがこれまで以上に強く求められている。同時に個人においても、自立自助を原則に自己責任が徹底して求められる社会になる必要があり、政府・行政も小さく効率的になることが必要である。

わが国は21世紀にかけて本格的な高齢化を迎えるが、高齢化社会を大きな政府を中心とした過保護な社会にしていくことは許されない。真の弱者に対しては社会的援助が公的措置やボランティアをはじめ多様な形で供給される必要がある一方で、市場参加者には市場の価格メカニズムを中心とした透明なルールが適用されなくてはいけない。

魅力ある日本を実現していくためには、(1)参入規制等の経済的規制を撤廃し、(2)市場ルールとして独禁法を明確に位置づけた上で市場の透明性を拡大し、(3)情報開示を徹底していくことが重要である。さらには、真に実効ある改革の断行とそのスピードアップを図ることが不可欠である。今、我々には、旧来型のシステムから脱却し、時代の変化に対応しうる多様で柔軟で透明な経済システムを構築することが強く求められている。


日本語のホームページへ