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経団連企業行動憲章 実行の手引き

8.海外においては、その文化や慣習を尊重し、現地の発展に貢献する経営を行う。


  1. 背 景
    1. 経済および産業のグローバル化・ボーダレス化が世界各地で急速に進む中で、プラザ合意以降の円高等により、日本企業の海外投資・海外進出も急増している。特に近年では、従来からの欧米諸国との貿易、投資交流に加えて、世界の成長センターとして発展の目ざましいアジア太平洋諸国との間の貿易、直接投資も増えており、全世界レベルで海外企業との提携、協力が展開されている。

    2. こうした世界の経済および産業の大きな構造変化の中で、資源小国である日本を自覚をする一方、世界の経済大国として、日本経済・企業が国際社会において果たすべき役割はますます重要なものになっていることも認識されつつある。

  2. 基本的な心構え・姿勢
  3.  グローバル化・ボーダーレス化した国際社会において、日本企業の経営のグローバル化を積極的に進め、世界の経済、社会の発展に積極的に貢献することが大切である。
     そのために各企業は、世界共通の企業理念と経営方針を確立し、国際ルールや現地の習慣および文化を尊重しつつ、現地の発展に貢献する経営を行う。

    1. 経営の現地化の促進
    2.  現地社会に溶け込み、信頼される企業となるため、経営の現地化を積極的に進める。特に、従業員のみならず役員、トップについても、平等な機会を提供すると共に、人材育成に力を入れ、現地社会からの人材登用を積極的に推進する。

    3. 良き企業市民としての活動
    4.  現地社会を深く理解し、地域からの信頼を得、しっかりと根をおろすために、「良き企業市民」として、さまざまな文化・社会貢献活動を展開する。また本社は、現地の日系企業やその従業員による活動を積極的に支援する。

    5. 経営理念・行動規範をグローバルに反映させるシステムの構築
    6.  国際ルールの遵守や現地の慣習・文化の尊重のみでなく、企業行動憲章に基づいた企業の経営理念や行動規範を、自社の海外オペレーションにも確実に反映させるよう努める。そのための経営システムをグローバルに構築する。

  4. 具体的アクション・プランの例
    1. 経営の現地化の促進
      1. 日系企業の経営の現地化を進めるため、現地社会の人材を積極的に登用し、 必要な教育、研修を十分に行う。
        1. 現地従業員を現地企業のマネジメントに積極的に登用する。
        2. 国籍を越えた "Right Person for the Right Position"を進める。
        3. 教育、研修を実施する。
          • 現地従業員を対象とした教育、および業務研修の実施
          • 現地サイド主導のマネジメント・セミナーの実施
          • 現地従業員、日本人駐在員を区別しない研修機会の提供

      2. 海外駐在員の教育研修を拡充する。
        1. 現地社会の文化、慣習の尊重と現地社会への適応を念頭に置いて、海外に派遣する駐在員を選考し、その家族も含めた教育、研修および情報提供を行う。
        2. 異文化対応、言語習得、現地の慣習理解等に最大の関心を払った研修を行う。
        3. 赴任する駐在員は、日本企業を代表するとの自覚を持ち、それにふさわしい現地社会についての知識と理解を身につけるよう心掛ける。

      3. 本社と現地企業との間のコミュニケーション・システムを確立する。

          

      4. 現地企業との相互協力関係を緊密化する。
        1. 部品の現地調達の拡大
        2. 現地企業とのアライアンス、提携の強化
        3. 現地商工会議所などの地域経済団体への積極的協力、参加

    2. 「良き企業市民」となるための行動
      1. 現地社会事情を理解し、現地の文化や慣習に十分配慮した事業活動を行う。
        1. 現地社会の一員として現地の抱える社会問題(マイノリティ、教育、犯罪、貧困等)に十分配慮し、かつ適切に対応する。
        2. 商工会議所等の地域の経済団体、コミュニティ、政府、州、市町村の活動に積極的に参加する。
        3. 現地教育機関への支援、ビジネス・インターンの実施、奨学金付与などを通じて現地の人材育成に貢献する。
        4. 寄付、ボランティア活動などの社会貢献活動を積極的に行う。

      2. 現地のニーズにあった寄付を実施する。
        1. 現地企業側に寄付検討委員会を設置し、寄付に関する手続きの整備や透明性の向上に努める。
        2. 本社側も、現地における寄付の重要性を理解し、現地の判断を最大限に尊重するとともに、必要に応じて資金面などで支援を行う。

      3. ボランティア活動を推進する。
        1. 現地の駐在員は率先してボランティア活動を行うとともに、本社側もボランティア活動の必要性を十分認識し、現地での活動を奨励する。
        2. 現地企業従業員によるボランティア活動を推進する。

    3. 本社のグローバル化
      1. グローバル化社会において本社は、各地の現地企業における事業が、国際ルールや現地の慣習・文化を尊重したものとなっているかどうかを常にチェックできるようなシステムを構築し、指導する。

      2. 同時に、企業行動憲章に基づいた行動が海外でも行われるよう、本社の経営理念や行動規範が現地の事業に的確に反映できるシステムを構築し、指導する。
        1. トップによる経営方針を、文書、会議、研修等を通じて伝達する。
        2. 国籍不問の多様なキャリア・パスによる国際的な人材育成に努める。
        3. グローバルな規模で、人材の適材適所を実現する。
        4. 本社でのグローバル・マネジメント研修を実施する。
          (内容:本社の経営トップが直接経営方針を説明するとともに、国際的な人的ネットワーク作りを推進する 等)

【関連資料】
「海外投資行動指針」1987年 経団連、日本商工会議所、経済同友会、日経連他
「OECD国際投資及び多国籍企業に関する宣言―多国籍企業の行動指針―」 1976年 OECD加盟国政府
「米国の企業フィランソロピー」 1990年 海外事業活動関連協議会、経団連、日本国際交流センター
海外事業活動関連協議会機関誌 "Stakeholders"

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