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経団連企業行動憲章 実行の手引き

4.環境問題への取り組みは企業の存在と活動に必須の要件であることを認識し、自主的、積極的に行動する。


  1. 背 景
    1. 地球環境問題の発生
    2.  わが国は高度成長期における公害問題への取り組みや、2度にわたる石油危機の経験を通じ、極めて高い公害防止、省エネの技術やシステム体系を構築している。しかし、今日の環境問題は、単に産業公害の防止に止まらない。廃棄物問題や生活排水による水質汚濁問題など、「都市型・生活型」の環境問題、さらには、地球温暖化、オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少、砂漠化、酸性雨、生物多様性の保護などの「国境を越えた」地球規模の環境問題への対応が求められている。

    3. 一人ひとりが被害者でありかつ加害者である今日の環境問題
    4.  今日の環境問題の特徴は「一人ひとりが被害者であり、かつ加害者」という点にあり、その問題の解決のためには、これまでのような「被害者対加害者」という図式ではなく、政府、企業、市民、NGO等それぞれの主体が自主的、積極的に取り組むとともに、それぞれが連携・協力していくことが不可欠となっている。

  2. 基本的心構え・姿勢
    1. 持続可能な発展のための取り組み
    2.  92年6月のブラジル地球サミット(環境と開発に関する国連会議)において、参加各国は「持続可能な発展」という理念のもと、経済発展と環境保全の両立を図ることに合意した。
       その後わが国は、この理念を実現するため「環境基本法」および「環境基本計画」を制定し、その中で「経済社会活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減する」よう行動し、その行動は「全ての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われる」ことが重要であると指摘している。
       とりわけ、比較的豊富な資金、人材、技術、ノウハウ等を抱える企業の役割は重く、企業は自主的かつ積極的に環境保全活動に取り組んでいく責務がある。

    3. 経営課題としての環境問題
    4.  経営方針に環境保全義務を盛り込むなど、経営課題として自主的・積極的に環境問題へ取り組んでいくことが必要である。
       なお、これまでの環境問題への取り組みは、ともすれば製造業の課題という見方がされてきたが、温暖化対策や循環型社会の構築が大きな課題となっている今日、製造業・非製造業を問わず積極的な取り組みが求められる。

    5. 環境問題の取り組みにあたってのキーワード
    6.  環境問題への取り組みの際には、以下のキーワードを重視する。
      1. 個人や組織の有り様としての「環境倫理」の再確認
      2. 技術力の向上等、経済性の改善を通じて環境負荷の低減を図る「エコ・エフィシェンシー(環境効率性)」の実現
      3. 「自主的取り組み」の強化

       具体的には、環境対応のための経営方針・社内体制を整備するとともに、事業活動面で、省資源・省エネルギー、環境保全型の技術開発、生産活動、商品開発・提供を推進していく必要がある。とくに商品の開発、提供にあたっては、国民のライフスタイルを省資源、省エネルギー型へ変革していくといった視点も重要である。

    7. 国際的な環境保全活動への貢献
    8.  また「世界から信頼され、尊敬される日本」をめざし、技術移転などを通じた地球の温暖化対策への貢献や生物の多様性の保護など、国際的な環境保全活動に積極的に貢献していくことが重要である。

  3. 具体的アクション・プランの例
    1. 環境対応のための経営方針の策定、社内体制の整備
    2.  環境問題に関する経営方針を策定するとともに、環境問題を担当する役員の任命、組織の設置等、社内体制を整備する。また、自社の事業活動に関する環境関連規定を策定し、遵守する。

    3. 事業活動における環境影響の評価と環境負荷の低減
    4.  生産施設の立地をはじめ、製品等の研究開発、設計段階から資材の購入、生産、販売、廃棄にいたる事業活動の全段階において、環境への影響を科学的な方法で評価するシステムを確立するとともに、各段階での環境負荷をできる限り低減するよう努める。

    5. 環境に配慮した製品、サービスの開発と環境技術の移転
    6.  省エネルギー、省資源、環境保全を同時に達成する革新的な技術、製品、サービスの開発に努め、社会に提供する。また国内外を問わず、適切な手段により積極的に技術の移転に努める。

    7. 地球温暖化対策
    8.  使い捨て経済の見直し、循環型経済社会の構築、エネルギー効率・炭素利用効率の改善等を基本方針とし、世界最高の技術レベルを維持するとともに、利用可能な技術を途上国に移転することで、地球規模のエネルギー利用効率の改善を目指す。
       また、地球温暖化の原因、影響等に関する科学的研究、各種対応策の経済分析等に協力する。

    9. 循環型経済社会の構築
    10.  資源の浪費につながる使い捨て型経済社会を見直し、循環型に転換すべく、製品の設計から廃棄までの全ての段階で最適な効率を実現する「クリーナー・プロダクション」に努める。
       同時に、旧来の“ゴミ”の概念をあらため、個別産業の枠を超えて廃棄物を貴重な資源として位置づける。リサイクルを企業経営上の重要課題とし、計画的に廃棄物削減・リサイクルに取り組む。

    11. 環境管理システムの構築と環境監査
    12.  環境問題に対する自主的取り組みと継続的改善を担保するために、環境管理システムを構築し、これを着実に運用するため内部監査を行う。その際、ISO(国際標準化機構)の環境管理・監査規格を有力な手段としてその活用を図る。
       また、ISOにおける環境ラベル、環境影響評価、ライフサイクル・アセスメント等の国際基準作りに積極的に参加する。

    13. 海外事業展開における環境配慮
    14.  経団連地球環境憲章に盛り込まれた「海外事業展開における10の環境配慮事項」遵守はもちろんのこと、海外における事業活動の多様化・増大等に応じた環境配慮に一段と取り組む。

    15. 国際的な自然保護活動への支援
    16.  日本の産業界の国際協力の視点から、生物多様性の保全や森林の保全を目指し、経団連自然保護基金への支援など、自然保護活動への支援を積極的に行う。
       また、環境問題におけるNGOの役割の重要性を認識し、資金的支援にとどまらず、企業人の専門性やノウハウをNGO運営に活かす人的協力や情報提供、技術支援、ならびに企業が保有する施設利用の便益の提供など多様な支援やプログラムの共同実施などにより、NGOの育成、NGOとのパートナーシップの強化に努める。

【関連資料】
「経団連地球環境憲章」1991年 経団連
「経団連環境アピール―21世紀の環境保全に向けた経済界の自主行動宣言―」1996年 経団連
「産業毎の環境自主行動計画」1996年 経団連
「循環型社会の構築に向けた課題―廃棄物対策の促進に向けて―」1996年 経団連

【経団連関連活動】
『経団連自然保護基金』1992年設立。
〔主な活動〕
  1. 内外の環境NGOが発展途上国において実施する自然保護プロジェクトの支援
  2. 国際的な自然保護活動に携わるわが国人材の育成
    1. 会議・セミナー等の開催
    2. NGOへの支援
  3. 国際協力推進のためのネットワークの構築
    1. 世界銀行との協力
    2. 国際自然保護連合(IUCN)への加盟

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