[ 目次 | 概要 || はじめに | I.考え方 | II.視点 | III.課題 < 1.環境整備 | 2.公的分野 | 3.リテラシー > ]

情報化の推進に関する提言
−構造改革のツールとして−

III. 情報化推進のための具体的課題

1. 産業の情報化のための環境整備


  1. 情報化に対応した制度の確立
  2. 電子商取引に関する環境の整備
  3. 低廉で使いやすい情報通信インフラの整備
  4. コンテンツ拡充のための基盤の整備
  5. 減価償却制度の拡充

  1. 情報化に対応した制度の確立
  2. 保存義務づけ書類の電子化について、個別案件ごとに今後の実施スケジュールを明示するとともに、書面や対面によるやり取りを前提とした既存の制度を見直し、企業負担の軽減や情報化に対応した新たなビジネスの発展を促すべきである。
    さらに、国民のネットワーク利用を促進する手段の開発・普及を図ることが求められる。各省庁が具体化を図る場合には、経済性や利用者の利便性向上といった側面からの検討を行ない、相互に整合性をもたせるとともに、民間取引との共通利用を図ることが重要である。

    企業は新たな事業機会に対応すべく、市場原理に則って情報化を進めているが、書面や対面によるやり取りを前提とした現行の法規制等の存在が、情報化によるコスト削減効果を減殺したり、新たなビジネスの創出を妨げている。したがって政府は、産業の情報化の動きに遅れをとることのないよう、環境整備の一環として、行政手続きの電子化など官民の接点の情報化と併せて、情報化に対応した制度等の見直しを急ぐべきである。 さらに、日本に固有の漢字外字についても、相互運用性を確保しやすい環境づくりが重要である。

    1. 保存義務づけ書類の電子データによる保存の推進
    2. 97年2月閣議決定の「申請負担軽減対策」では「原則として、97年度末までに電子媒体による保存が可能となるようにする」とされており、保存義務づけ件数858件中、97年度末までに335件(39.0%)を容認する方針が明らかになっている。この点については、まず、国民負担軽減の観点から、義務づけ自体の見直し、保存内容の簡素化、保存期間の短縮等を行ない、その上で、電子保存を可能とする作業スケジュールを個別案件毎に広く国民に明示し、実施が遅れる場合には、その理由と対応スケジュール等を個別案件毎に公開すべきである。電子媒体を利用するための条件は必要最小限にとどめるとともに、新しい技術を速やかに利用できるよう柔軟なものとする必要がある。

    3. 新たなビジネス創出にむすびつく制度の見直し
    4. 現行の商取引においては、主として消費者保護の観点から、法律によって、事業者に対し、事前に契約内容を記した書面を取引相手に交付したり、対面販売によることを義務づけるなど、書面や対面による取引を想定した規制が行なわれているものがある。これらの商取引をパソコン通信やインターネットを通じて行なおうとする場合、これらの規制が障害となり、情報化に対応した多様なサービスの提供ができなくなっている。ネットワーク上の本人確認技術の開発など、技術進歩の成果を踏まえつつ、これらの規制を見直し、事業者の創意工夫に基づく新たなサービスの提供を可能にすべきである。
      具体的には、商取引に関する書面交付義務や対面販売義務(宅地建物取引や医薬品など)の見直し、酒類小売販売規制の緩和、さらに古物営業における電子的な身元確認の容認等が求められる。また、技術進歩の成果を積極的に活用する観点から、遠隔医療を法的に認知し、診療報酬を設定するとともに、処方箋交付の電子化の解禁等を行なうべきである。

    5. 国民のネットワーク利用を促進する手段の開発・普及
    6. 国民がネットワークを通じてさまざまな財やサービス、データ等の授受を行なう際、通信技術を利用して、本人確認や行政とのインターフェイス等を容易に行なうための手段が開発され、広く普及することにより、ネットワーク利用が拡大することが期待される。
      そのためには、民間において、国民が手軽に利用できるような情報通信機器の開発・普及を推進する必要がある。また、現在、各省庁や民間において、本人確認、決済、行政とのインターフェイス等の機能を備えた汎用ICカードの役割が大きくなると思われるが、これらについては、利用者ニーズに敏感な民間事業者が創意工夫を凝らし、多彩なサービスの提供を可能にすることが何よりも重要である。
      各省庁においては、重複投資を極力排除するとともに、民間のノウハウを最大限活用すべきである。少なくとも開発・実験データの共有を図るとともに、ワン・ストップサービス実現の観点から、民間事業者も含めた共通利用についても検討を行なうべきである。
      その際、個人情報の保護について技術的側面からの対応が求められることは言うまでもなく、プライバシー保護策に関する情報開示を十分に行ない、利用者の理解を得ることが求められる。

  3. 電子商取引に関する環境の整備
    • 電子商取引が揺籃期にあることに鑑み、「原則自由」「自己責任原則」の考え方に則り、民間主導で電子商取引の推進に積極的に取り組む必要があり、諸外国同様、民間主導で、市場における競争を基本とするような枠組みとすべきである。電子商取引に関する信頼確保に当たっても、新たな規制は極力排除すべきであり、当面、標準約款や自主的ガイドラインなどの民間の主体的な取組みに委ねることが望ましい。
    • 政府としても、国際的な議論を踏まえ、高度情報通信社会推進本部がリーダーシップを発揮し、電子商取引を政府全体として推進するとともに、各省庁固有の行政分野や制度・ルールについては内閣の高度情報通信社会推進本部の下に各省庁が積極的に見直しを進めるべきである。

    97年7月1日、米国大統領が「グローバルな電子商取引の枠組み」を発表し、EU等においても同様の議論が進んでいる。 OECDなどの国際機関においても電子商取引推進に向けた政策の枠組みに関する議論が始まりつつある。諸外国政府では、産業の効率化、高度化を目指して、高度情報通信技術を活用して商取引を行う電子商取引の普及を積極的かつ戦略的に進めている。わが国においても、標準EDI、CALSなど企業間取引の電子化へのニーズが高まりつつあり、消費者向け電子商取引の試みも始まっている。
    今後、電子商取引発展のための課題としては、「電子商取引の現状と課題」中間とりまとめ(97年7月流通委員会企画部会)が指摘している通り、ハードのインフラの整備や各種標準化・データベース化、決済システムの整備、制度・仕組みの見直し、物流システムの整備、コンテンツの充実、商慣行の近代化・取引の標準化などがある。これらは、基本的には、民間が自ら努力しなければならないものであり、企業が業界の枠組みを超えて他企業、他業界と連携して課題に取り組むことが期待される。また、制度の整備にあたっても、個人・企業等における倫理観と自己責任とを前提に、民間の創意工夫が十分活かされる新しい発想が求められる。その意味で、電子商取引はわが国が目指すべき「活力あるグローバル国家」を創造する試金石と言えよう。
    政府もまた民間の自主的取組みを阻害しないよう、以下に述べるような考え方に沿って、省庁横断的に環境整備に取り組む必要がある。

    1. 電子商取引の制度的枠組みに関する基本的考え方
    2. 取引の電子化を推進するための政策は、とくに、「原則自由」「自己責任原則」の考え方に則りつつ「政治のリーダーシップ」の下に官民が連携していく必要がある。

      (「原則自由」と民間の積極的取組み)
      電子商取引は内外とも揺籃期にあり、今後の発展経路、技術革新の展開、消費者向けのニーズの顕在化の方向などについてあらかじめ想定し、固定的な制度をはめ込むことは困難であり、かえって電子商取引の発展の可能性を狭めることになりかねない。したがって、民間企業が自由に創意工夫を凝らして積極的に電子商取引に取り組み、利用者がニーズに応じて自由に選択し、互いに試行錯誤を重ねることによって電子商取引が定着・普及し、高度化していくことが望ましい。原則自由の理念のもと、新たな経済的規制は導入すべきではない。
      民間としても、早急に民間主導の実用化に向けた実証実験を進めていくとともに、電子商取引や電子マネーを新産業・新事業の創出につなげるよう積極的に取り組むことが求められる。また、電子商取引の時代においては世界経済はネットワークを通じて統合されていくことが予想され、わが国でおいても、海外の企業や組織との情報交流・人的交流や共同プロジェクトを実現させることが必要である。そのためにも、不透明あるいは競争制限的な取引慣行や体質は是正していかなければならない。

      (自己責任原則を重視した電子商取引への信頼性の確保)
      電子商取引の円滑な発展のためには、取引の安全性と信頼性について国民、企業の信任を確保することが大事である。サービス提供者である企業側としては、何よりも企業倫理の徹底と厳格なディスクロージャーによって安全性をアピールし、国民の信頼感を得るよう努力することが求められる。
      消費者向け電子商取引においては、消費者保護を図ることが不可欠であり、各取引分野の特性に応じ、自己責任原則を重視しつつ、損失負担、消費者の個人情報の保護、企業情報の開示など消費者保護のためのルールが形成される必要がある。消費者サイドでも、リスクがあることを十分に自覚の上、ニーズにあったサービスを選択・利用することが求められる。

      (高度情報通信社会推進本部のリーダーシップによる電子商取引の総合的推進)
      官民が一丸となって電子商取引を効率的に推進していくためには、政府が全体としての統一見解を明らかにするなど、政治のリーダーシップの発揮が求められる。その意味で、橋本総理のリーダーシップによって政府が本年5月にとりまとめた「経済構造の変革と創造のための行動計画」において、企業間、企業・消費者間、行政・企業間等取引の電子化の推進の方向が示されたことは評価できる。
      今後、高度情報通信社会推進本部のリーダーシップの下で電子商取引普及への認識が必ずしも十分でない省庁を含め、全省庁の積極的な取組みを促すとともに、多省庁にまたがる課題が生じた場合には、迅速に対応すべきである。その一環として、電子商取引の普及に関する具体的な数値目標を設定するなど民間的手法を導入することを検討する必要がある。とくに、行政は、電子商取引の先導的なユーザーとして政府取引・決済の電子化を推進することが期待されており、そのスケジュールを、数値目標を含めて明らかにすることが考えられる。
      また、現在民間の協力のもとで進められている電子商取引の実証実験については、今後、実験の第一線において省庁、外郭団体同士が縦割り意識を排して相互に連携していくとともに、民間主導の環境整備や電子商取引関係者の国際交流の推進などにつなげていくべきである。

    3. 電子商取引をめぐる制度・ルール
    4. 取引が電子化された経済活動のあり方を考える場合、従来の取引と同様に、取引が自由かつ安心して行なわれることが重要である。現在、電子商取引は試行的な段階のものがほとんどであり、今後、試行錯誤を繰り返しながら、多様な展開をしていくことが予想される。急速な技術革新による無限の発展の可能性をもっている電子商取引については、何よりも自由かつ安定した取引のためのビジネス・ルールを定着させることが重要である。性急に法制化を行なうのではなく、多様な取引ができるよう、当事者間の契約や標準約款、自主的ガイドラインで対応することが望ましい。拙速に立法化を行なうと、実態と乖離した制度になりかねないばかりか、電子商取引の技術進歩に支障が出ることが懸念される。
      また、暗号鍵技術で本人確認や改ざん等の防止を図る、あるいは技術的対応によって重大な過失の認定を容易にするなど、技術面での工夫を重ねることが重要である。まずこうした民間主導による自主的対応を促進するべきであり、それが困難な事態が具体的に生じた段階で、法制面での対応について、取引実態をふまえつつ検討することが望ましい。
      現在、電子認証・電子公証に関する議論が行なわれているが、これについては、電子化された取引の安定性を確保するための手段の一つという観点から、電子商取引の実態や利用者ニーズを踏まえた検討がなされる必要がある。
      改ざん、なりすまし、取引否認等を防止するための手段である電子認証の法制化の問題ついては、取引には多様な形態があること(企業内、特定企業間、不特定企業間、企業・消費者間、企業・行政間など)、電子認証は取引するに相応しい相手かどうかを確認するための一つの手段にすぎないこと、利用者が必要とする電子認証に関する信頼性のレベル・費用・手間・責任負担等も利用者毎に多様であること、将来の技術革新のテンポやその内容を予想することは困難なこと等を考慮する必要がある。また、わが国では電子商取引は始まったばかりであることにも留意すべきである。
      民間の電子商取引に関しては、多数の電子認証サービス提供者が自らの責任において多様なサービスの開発・提供を行ない、その中から利用者がニーズに応じて適切な認証機関を選択することが望ましい。むしろ利用者が信頼できる認証機関を選択することが可能であることが重要であり、当面は、例えば自主的ガイドラインに基づいて、各認証機関が、安全性、技術内容、財務内容、内部管理体制等について利用者に分かりやすく積極的に情報を公開する必要がある。ガイドラインづくりは、行政の不必要な介入の懸念を回避するため、民間によって作成されるべきである。また、将来的には、認証機関を評価する格付けが広く普及することが望まれる。
      契約日付や契約書内容の証明等を行なう機関についても、その目的、内容、責任負担、費用等に応じて多様なニーズがあり、それらに対応した多様なサービスを提供できるようにすべきである。
      公的な機関が認証・公証サービスを行なう場合には、利便性向上の観点から、一定の要件を充たす民間機関との相互運用を図るとともに、常に技術革新の成果を採り入れてシステムを高度化し続けなければならないことから、民間機関にアウトソーシングを行なうことも検討することが望ましい。
      電子署名の法的効果に関する法制化の問題については、一律ではなく、分野毎に必要性の有無を検討する必要があると考える。なぜなら、諸外国における立法例に関し、その法的な背景やわが国との違い等につき、詳細な吟味を行なう必要があり、また、わが国の民事訴訟法においては証拠の自由心証主義がとられていること、さらには、米国での電子署名の法的効果に関する議論は主として行政府宛て電子データに関する電子署名の証拠能力を対象とし、民間取引に関する電子署名を対象としている場合でも民間同士の契約が優先されている等の理由からである。

    5. EDIの推進
    6. 受発注や決済をオンラインで行なうEDIについても、産業界全体としては欧米よりも取組みが遅れているのが実情である。中小企業や小売店等では、取引の相手先毎に異なった端末機器を置き、異なった操作方法で異なった帳票を扱う、いわゆる多端末現象が発生している。それがまた中小企業の情報化意欲を削いでいる面もある。EDIを実効あるものとするためには、中小企業も参加できる安価なシステムを構築するとともに、効率的なグローバル・ネットワークの構築が可能となるよう国際標準との整合性を確保することが大事である。したがって、今後、国際標準をベースとして中小企業を含めて広く産業界全体で活用できるようなEDIの仕組みの導入を検討すべきである。また、商流、金流、物流等に関する受発注から決済まで一貫したデータを統合処理する業際EDIについても、産業界のニーズをふまえて開発・普及を図る必要がある。
      とくに、貿易金融EDIについては、既に、欧米ではEUが中心となって欧米企業が多数参加した実験が行なわれている。また、アジアにおいても、香港、台湾、韓国、マレーシアなどにおいて取組みが進んでいる。わが国においては、貿易金融取引に関するネットワーク化は、通関情報処理システム、港湾物流情報ネットワーク、銀行ファームバンキングシステムなど部分的に行なわれているものの、貿易・金融に関する情報に関する総合的なネットワーク化は進められていない。今後、国際標準化への動きに遅れないように、官民一体となって統合的な貿易金融EDIを推進していかなければならない。

    7. 電子マネー導入のための環境整備
    8. 電子マネーに関する実証実験が始まり、電子マネーへの関心や議論が高まってきているが、現時点ではまだ初期段階にあり、電子マネーの導入・普及に向けた実証実験はこれから本格化する。また、暗号技術をはじめ電子マネーの鍵を握る技術は、今後飛躍的に発展する可能性が高い。したがって当局においては、当面、民間による自由な商品開発と市場原理に基づく競争を尊重し、民間の様々な実験から得られた情報を収集することが求められる。その意味で、民間の自由な創意工夫が可能となるような環境整備を急ぐ必要がある。
      電子マネー普及のためには、一般の消費者が安心して電子マネーを利用できるよう努力する必要がある。何よりも、消費者がそのサービス内容や取引ルールを把握できるよう、電子マネーのサービス提供者は、消費者が利用しやすい環境の整備やトラブルの対処方法、危険負担、個人情報保護等の取引ルールを十分に説明することが求められる。電子マネーの安全技術対策についても、利用者の視点に立った情報の開示がなされることが必要である。
      消費者保護のための施策のあり方については、民間が実証実験を行なう中で、その成果をふまえて検討すべきである。その際、電子マネーの発展・普及を図る観点から、消費者への自己責任原則の啓蒙や適切な情報開示を前提として、必要最小限の範囲、内容に止めることが求められる。
      電子マネーに対する不正行為により利用者の信頼が損なわれれば、その健全な発展の支障となり、効率的な決済秩序の形成が阻害されるので、必要に応じて、不正行為に対する刑事罰の導入についても検討を行なう必要がある。
      これらを踏まえて、競争原理による自由な商品開発、電子マネーの普及を促す観点から、発行体の破綻リスク対策等を考慮しつつ、一般事業会社を含めた多様な主体に電子マネーの発行ができるようにすべきである。
      なお、金融分野において日本版ビッグバンを通じた市場原理の徹底が指向されていることをふまえ、郵便貯金による電子マネーの発行については、例えば特殊会社に経営形態を変更し、民間金融機関とのイコールフッティングを確保した上で検討すべきである。

    9. その他
      1. 暗号政策について
        現在、PHS電話機(親機)、DVD−ROMドライブ、デジタル衛星放送受信機、ICカード等の暗号を用いた一般的な製品の輸出についても、一部の例外を除いて輸出許可審査が行なわれ、時間がかかっている。近年の暗号技術の進展、わが国の暗号製品の開発状況、米国における暗号規制の緩和の動き等を踏まえ、規制すべき暗号装置の定義や輸出許可の基準を明確にすることが求められる。なお、暗号鍵復元制度について、プライバシー・企業秘密の保護や各国の動向を踏まえ、幅広い観点から議論が行なわれることが望まれる。

      2. 国際課税について
        情報化の進展に伴い、ボーダレスな経済活動が活発化する結果、各国の課税主権が衝突する場面が増える可能性がある。国際課税のあり方や電子商取引への税制の対応について、OECDなど国際的な場における議論を踏まえて議論を行なうことが望まれる。

  4. 低廉で使いやすい情報通信インフラの整備
  5. 情報化を促進するためには、通信料金の低廉化やサービスの多様化、回線容量の拡大・情報伝送の高度化が急がれる。
    そのため、情報通信市場における一層の規制緩和・撤廃等を推進する必要がある。 

    高度情報通信技術の普及を促し、これらを活用するためには、まず通信料金の低廉化やサービスの多様化を図るとともに、回線容量の拡大・情報伝送の高度化を急ぐ必要がある。

    そのため、情報通信市場において、より一層の規制緩和・撤廃の推進、競争促進型ルールの策定など競争促進措置を講ずるべきである。具体的には、電気通信事業法における料金・約款規制の緩和や役務規制の見直し等を通じて電気通信事業者の創意工夫の発揮や事業者間の競争を促進することにより、通信料金の定額制の導入や複数のサービスを包括したサービスの提供など、利用者ニーズに即した、多様なサービスの提供が期待できる。

    併せて、従来の通信・放送の枠組みでは対応が困難な中間領域的なサービスが増加していくことが期待されており、技術革新の成果を活かした多様なサービスの迅速な提供が阻害されることのないよう配慮する必要がある。技術進歩等の趨勢を踏まえつつ、現在の電気通信事業法、放送法、有線テレビジョン放送法などのあり方について検討していくべきである。

    また、高速・大容量の伝送に向けて、光ファイバー網の低廉化、着実な拡充を図るとともに、既存の電話回線を活用した高速伝送方式の導入を急ぐ必要がある。

    さらに、企業が高度なグローバル・ネットワーク化を推進できるよう、政府においては、グローバルな通信ネットワークの構築のための基礎的研究開発に取り組むとともに、発展途上国における通信インフラの整備支援ならびに通信事業規制の緩和に積極的に取り組むことが望まれる。

  6. コンテンツ拡充のための基盤の整備
  7. 魅力あるコンテンツを創造するため、企業は創造力に富んだ人材が活躍できる場を提供すべきである。また、利用価値の高いコンテンツの拡充を図る観点から、利用者ニーズに配慮しながら行政情報の電子化を進めるとともに、情報の相互利用・共通利用を促進するためのデータ基盤や相互利用技術を確立すべきである。行政情報の電子化に当たり、民間活力を積極的に活用するとともに、民間主導の技術開発を促進すべきである。

    社会のニーズに適したコンテンツが提供されなければ、せっかく高度情報通信技術が導入されても、情報化のメリットは活かされない。したがって、利用価値の高いコンテンツの拡充を図ることが不可欠である。その際、海外からの情報アクセスを容易にするため、国際的にも通用するコンテンツを提供していくことが重要である。

    1. 魅力あるコンテンツを創造していくためには、創造力に富んだ人材が活き活きと活躍できる場を提供することが重要である。企業においても、多様な人材が能力を発揮できるよう、複線型の人事・雇用システム、複眼的な評価システムを構築する必要がある。

    2. 価値の高いコンテンツを創造するためには、行政情報の電子化を進めるとともに、インターネット等の利用を含めて、電子的手段による情報公開をより一層推進する必要がある。民間が保有する情報、行政が収集・整備している行政情報・統計情報・地理情報等を有機的に連携させ、流通させることが重要である。例えば、米国、カナダのように、プライバシー保護に十分配慮した上で、詳細情報(マイクロデータ)をデータベース化して民間に広く提供すべきである。同時に、情報やデータの入手に際して適正な対価を支払う慣行を確立することが求められる。また、情報化社会においても、著作権者の権利は引き続き尊重されるべきであるが、著作権者の権利保護と著作物利用の円滑化とのバランスに十分配慮する必要がある。両者のバランスがとれなければ、著作物の幅広い活用ができず、結果として、権利者と利用者双方の利益が損なわれることになる。したがって、現行の著作権制度全体の再検討を行なうことが望まれる。

    3. その際、データの相互利用や共通利用を可能とするため、データ基盤と相互利用技術を確立することが肝要である。また、これらの基盤をもとに作成されたコンテンツが社会全体で広く活用されるためには、EC、ITS(高度道路交通システム)、国土空間データ基盤等を有機的に連携させることが重要である。

    4. 国際間の情報交換を積極的に進めていくことが求められる一方、言語の多様性を尊重し、技術面から支援していくことも重要な課題である。例えば、日本語をはじめとする英語以外の電子文書の文字化け等を防止するための技術の確立・普及は、特にアジア太平洋諸国における共通の課題となっており、日本の積極的な貢献が求められる。

  8. 減価償却制度の拡充
  9. 情報関連機器の法定耐用年数の短縮や、少額資産の損金算入限度額の引き上げを行なうべきである。

    高度情報通信技術分野は、技術革新が速く短期間に技術が陳腐化するため、現在の情報通信機器の法定耐用年数は現実に合っていない。したがって、最新の高度情報通信技術を積極的に導入・活用するためには、情報関連機器の法定耐用年数を短縮する必要がある(例えば、パソコンについて現行6年を3、4年に短縮)。また、少額資産の損金算入限度額についても(現行20万円)、一人一台パソコン時代の到来をふまえ税制簡素化の観点から、これを引き上げる必要がある。


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