[ 目次 | 概要 || はじめに | I.考え方 | II.視点 | III.課題 < 1.環境整備 | 2.公的分野 | 3.リテラシー > ]

情報化の推進に関する提言
−構造改革のツールとして−

III. 情報化推進のための具体的課題

3. 情報リテラシー、コンピュータ・リテラシーの向上


  1. 行政、教育界の取り組み
  2. 企業の取り組み

わが国が21世紀に向けて新たなフロンティアを切り拓いていくため、個性と創造力に富んだ人材が活躍できる社会を構築する必要があるが、情報化はその契機となることが期待される。そのため、情報機器を使いこなすコンピュータ・リテラシーに加え、適切な情報を選びとり、さらに付加価値をつけて発信することができる情報リテラシーを兼ね備えた人材が求められる。また、わが国の情報通信技術を支える高い能力を持った人材を育む環境作りも重要である。
そのため、行政や教育界において、カリキュラムの見直し、インターネットの活用、マルチメディア教材の利用等を推進するとともに、教員のコンピュータ・リテラシー、情報リテラシーの向上や学校における回線数の増加等を図るべきである。また、企業人の活用を含め、生徒・学生や教育関係者と産業界の交流を推進する必要がある。
企業においても、経営者が自らの打ち出した経営戦略に従い、社内全体のコンピュータ・リテラシーや情報リテラシーの向上に努めるとともに、情報化の成果が最大限に発揮されるよう、社内組織や慣行の見直しを推進すべきである。

戦後のわが国では、欧米に「追いつけ、追い越せ」を目標に、定められた目標を効率的に実現する人材を重点的に育成してきた。その結果、社会全般において、知識の量は多く、与えられた課題への対応は得意だが、自らの目標、解決すべき課題の設定や総合的・戦略的な思考に不得手な人々が増大している。しかし、21世紀に向けてわが国が新たなフロンティアを切り拓いていくためには、主体的に行動し、自己責任の観念に富んだ、創造力あふれる人材が不可欠である。コンピュータを操作するコンピュータ・リテラシーだけではなく、コンピュータを用いて説得力ある表現を行なう能力、氾濫する無数の情報の中から適切な情報を選択し、適切な判断を行なう能力、ネットワーク利用のモラルなどの情報リテラシーを身につけた人材の育成が課題となっている。

  1. 行政、教育界の取り組み
  2. 情報化時代の到来に伴い、教育方法にも大幅な変更が起こる可能性が出てきた。優れた素質・才能を伸ばすための教育の試みとして情報化を活用する必要がある。例えば、双方向メディア等の活用や、インターネットを活用した生きた英語教育など一人ひとりに適切なプログラムを作成し、子ども・学生の素質を伸ばすことが必要である。そのため、既存のカリキュラムを見直すとともに、情報通信機器を自由に利用できる環境の整備、各種の規制や慣行の見直しが必要である。
    初等中等教育においては、単なるパソコン導入にとどまらず、パソコンを活用するためのソフトウェアの積極的導入や回線数の増加、カリキュラムの見直しによる情報化教育の充実を図る必要がある。とくに公立学校での情報化教育の推進、教員のコンピュータ・リテラシーや情報リテラシーの向上(小中学校の場合、コンピュータを指導できる教員は全体の16%にすぎない)、教員資格の一層の弾力化(企業人の活用等)が急務である。また、教材のマルチメデイア化やインターネットによる教材調達などを推進すべきである。
    高等教育機関においては、初等中等教育で培った基本的なリテラシーをもとに、情報通信技術の可能性を追求するとともに、適応策について深く考えることのできる人材の育成が重要である。産業界としては、単にパソコンに精通していることよりも、情報通信技術を活用して、これまでの慣例にとらわれることなく、創造力豊かな発想で取り組み、それを果敢に実行していくことのできる人材を求めている。また、わが国の情報通信技術を支える高い能力を備えた人材の育成も重要である。そのような観点から、従来の枠組みにとらわれないカリキュラムの開発と充実が必要であると考える。とくに、社会的ニーズに即した教育を可能とするため、産業界と教育機関の人的交流を促進すべきである。
    このような教育体系やカリキュラムの検討に当たっては、高度情報通信ネットワークの利用に精通した若手教育者・研究者、企業人などの声を反映させる必要がある。
    企業としても、最前線の情報通信技術に触れる機会を生徒・学生や教育関係者に幅広く提供することが求められる。具体的には、企業見学、施設の開放、教材の提供など、既存の取組みを一層拡大するとともに、学校への教師派遣など企業のさまざまな取組みを教育界に紹介するため、教育支援ネットワークの構築を図るべきである。
    また、高度情報通信技術は国民生活における基本的なツールであることに鑑み、高齢者、障害者を含めできるだけ多くの国民がこれらを活用できるようにする必要がある。高齢者、障害者等に対し操作の容易な情報通信機器やソフトを提供するなど情報アクセスの機会を幅広く提供していくことにも配慮が必要である。
    なお、政府の情報処理技術者資格試験は、実務において必要な知識の習得と、その普及を目的としたものとすべきであり、内容についても、技術進歩に対応して、機動的に見直しを行うことが求められる。

  3. 企業の取り組み
  4. 企業の情報化は、単に情報通信技術を導入するものではなく、企業の経営戦略に沿って、その推進の手段として進めるべきものであり、経営者が企業の経営戦略を明確に打ち出し、その一環として主体的に情報化やそのための人材の育成にじっくりと取り組むべきである。また、既存の概念にとらわれず、新たな事業機会に果敢に取り組んでいくことのできる人材が能力を発揮できるような環境づくりに取り組まなければならない。
    そのため、役員の情報化研修等を積極的に行ない、自ら率先して情報通信技術を活用することを通じて、従業員のコンピュータ・リテラシー、情報リテラシー向上を促すとともに、情報化によってもたらされる個人の自由な発想の芽をつむことのないよう、前例踏襲主義や官僚組織的な手続き、慣習等を改め、社内の意識改革に取り組む必要がある。
    勤務面でも勤務時間帯、勤務場所、さらには評価基準等について、これまで以上に柔軟な対応を図ることが求められる。
    また、雇用の安定確保の観点から、情報リテラシー面での従業員再教育をより一層充実することが重要である。

以 上


日本語のホームページへ