経団連の最近の動き

(1998年10月)

「経団連インフォメーション」の記事より


No.192 (10月30日発行)より

21世紀への架け橋となる事業を
−緊急経済対策の具体化を求める

経団連では、10月12日に緊急経済対策要望を取りまとめ、今井会長から小渕首相に手渡したが、さらに対策の具体化を求めるべく、重点的に投資すべき事業等を分野別に取りまとめ、30日に再度、今井会長から小渕首相に申し入れることとした。
今回の要望「緊急経済対策の具体化に向けて−21世紀への架け橋プロジェクトの推進」では、公共投資の基本方針として、

  1. 21世紀の日本にとって必要なプロジェクトへの重点的・効率的な投資、
  2. 経済効果の高いプロジェクトに関わる長期計画の延長方針の転換、
  3. 国、地方の予算配分の弾力化、
  4. 民間投資を誘発し、景気に即効性が期待される事業の推進、
  5. 切れ目のない予算の執行、執行状況の開示、
を求める予定。
また都市、物流、情報、福祉、環境、科学技術・エネルギー、新産業・新事業等の分野別に重点的に投資すべき項目を例示するとともに、住宅減税等、効果的な政策減税の即時実行を要望する予定。

No.191 (10月23日発行)より

証券等健全化機構(仮称)の創設について

経団連では、10月20日に「証券等健全化機構(仮称)の創設について」をとりまとめ公表した。
持合の解消進展による市場への悪影響を回避するため、すでに8月5日に「持合株式の交換制度に関する提言」を公表しているが、自己資本が過少な一部の金融機関等、現時点で自己株式消却が困難なケースにどのように対応するかが課題となっていた。そこで、機構を通じて消却時期等の弾力化が図れるよう改めて要望した。
機構は5年程度の時限的な公的機関とし、機構に対する持合株式の譲渡と自己株買付に係る債権債務を相殺することで現金の授受は行なわないこととしている。
また、税制、商法、会計上の所要の措置を求めている。あわせて、持合解消の受け皿として、受託機関が希望した場合には、企業年金基金に対し株式で掛金を拠出することを容認し、拠出時の譲渡益課税を軽減するよう求めている。

21世紀政策研究所
「日本経済再生のための処方箋」を提言

21世紀政策研究所では、深刻な危機に直面するわが国経済の再生を目指し、

  1. 市場原理を尊重した公的資金の投入、
  2. 国による株式買い入れ、
  3. 企業家にやさしい税制、
  4. 税制改革セーフティネットの見直し、
  5. 公共投資の重点配分、
  6. 郵便貯金の民営化、
という6本の政策提言から成る、「日本経済再生のための処方箋」を10月23日経団連会館国際会議場において発表する。
田中直毅理事長の基調講演および宮沢喜一大蔵大臣の来賓講演が予定されている。
また、同研究所では来る10月29日、大阪のリーガロイヤルホテルにおいて、関西地区の経団連会員に対し報告会を開催し、今回の提言内容を説明すると同時に、これまでの研究成果を報告する予定である。
さらに、11月9日には、会員および全国の地方自治体を対象に麹町会館において、「明日を拓く〜21世紀の地域社会の担い手として〜」と題し、地方分権の担い手としての地方自治体のあるべき姿を探るシンポジウムを開催する。
基調講演は、池尾和人慶応大学教授、又パネリストとしては末吉興一北九州市長、土屋正忠 武蔵野市長等を予定している。

No.190 (10月16日発行)より

経済再生に向け規制緩和要望をとりまとめ

規制緩和については、本年3月に終了した旧規制緩和推進3か年計画に続き、本年4月より、新たな規制緩和推進3か年計画が実施されている。経団連では、来年3月に予定される3か年計画の第一回改定において、同計画の大幅拡充を求める立場から、去る7月に全会員企業・団体を対象にアンケート調査を行ったが、その結果264社・団体から1800件余りの具体的要望が寄せられた。
経団連では関係各委員会の協力を得て、これら要望を精査してきたが、今月9日に開催した行政改革推進委員会において「経済再生に向け規制緩和の推進と透明な行政運営体制の確立を求める」と題する要望案をとりまとめた。
この規制緩和要望は、

の三部で構成されている。
個別要望を見ると、新産業・新事業の創出につながる情報通信分野や環境分野の規制緩和、企業の自助努力を支援するための会社組織再編法制の整備、効率的な社会資本整備につながるPFI、国民負担の上昇が予想されている年金、医療・福祉分野等の規制緩和が求められている。
経団連では10月20日の理事会の了承を得て、当要望を政府・与党ならびに規制緩和委員会に建議する予定である。

第1次アジア・ミッション帰国後、小渕総理に3点を提言

経団連では、昨年来の通貨・金融危機により経済の低迷が続いているアジア諸国の実情を把握し、今後の協力のあり方を探るため、今井会長を団長とする第1次アジア・ミッションを10月1日〜8日にかけてベトナム、タイ、フィリピンに派遣した。各国では政府首脳をはじめ経済担当閣僚や民間経済界等と意見交換を行ない、経団連側から日本経済の現状と景気回復の見通しについて説明するとともに、日本政府や経済界に対する要望を聞いた(詳細は、「経団連くりっぷ」10月22日号を参照)。
帰国後の10月14日、今井会長は小渕総理を訪問し、同ミッションの成果を踏まえ、以下の点を提言した。

  1. 各国とも、日本経済の回復こそがアジア経済再活性化の鍵との認識を持ち、一日も早い日本の景気回復を求めている。わが国としては、金融再建関連法案を一刻も早く成立させ、加えて、減税ならびに公共投資により実体経済を着実に回復させることが急務である。
  2. 日本のODAや総額430億ドルにのぼる対アジア支援策など、日本政府のこれまでの取り組みは各国から非常に高く評価されていた。加えて、先般発表された総額300億ドルの「新宮沢構想」に対する関心と期待は極めて高い。これら支援策が迅速に実施されることを期待する。
  3. 他方、現地に進出している日本企業が、厳しい経済状況の中でも事業活動の継続と雇用の維持に努めていることも、各国から高く評価されていた。こうした企業の努力に対し、引き続き支援をお願いしたい。また、相手国政府には、投資環境のさらなる整備を求めていきたい。

No.189 (10月 9日発行)より

経済戦略会議への提言を取りまとめ

わが国経済の再生を最重要課題に掲げる小渕内閣は、「経済戦略会議」を発足させた。同会議では、年末ないし年度末を目処に答申をまとめる予定であるが、経団連としても、経済界の要望をこの答申に反映させるべく、提言のとりまとめを行なう予定である。
本提言では、経済再生と豊かで活力ある経済社会構築のための基本理念として、

  1. 市場経済体制のもとで活力あふれる経済を構築する、
  2. 社会環境の変化に柔軟に対応できる制度を再構築する、
  3. 日本の未来を切り拓く技術開発環境を整備する、
の3点を掲げたうえで、具体的施策を要望する。
そのなかでも、
  1. ビジネスインフラの整備
  2. 公共部門の抜本改革
  3. 税制抜本改革
  4. 少子高齢化への対応
  5. 労働市場の構造改革
  6. 都市・住環境の整備
  7. 技術振興への取組み
については、今後1年以内に方向性を打ち出すべき課題と位置付け、経済戦略会議で重点的に検討するよう提言する予定である。

No.188 (10月 2日発行)より

わが国のエネルギーをめぐる情勢と課題に関する報告書を取りまとめ

昨年12月、COP3で温室効果ガス削減目標が採択されたことにより、エネルギーをめぐっては、経済活力の維持、エネルギーセキュリテーの確保、地球温暖化問題への対応といった、必ずしも整合性の取れない三つの課題に直面している。
こうした情勢の変化を踏まえ、経団連資源・エネルギー対策委員会(委員長:篠崎昭彦住友金属鉱山相談役)では、あくまで経済活力を維持しつつ、それぞれの課題のバランスのとれた解決を図ることが重要であるとした報告書をまとめた。その中で、中長期的には、社会そのものを省エネルギー型社会に変革してくことが必要であるが、地球温暖化問題は、対応如何によっては経済・社会に大きな影響を及ぼすことが懸念されることから、

  1. 企業のトップはエネルギー問題を経営の中心的課題のひとつに明確に位置づけるべきこと、
  2. 原子力を強力に推進すべきこと、
  3. 民生・運輸部門の省エネルギーを徹底すること、
を当面の課題として提言した。

2000年問題に関してコスキネン米国大統領補佐官と懇談

コンピュータ西暦2000年問題については、かねてより、わが国企業の多くは、自らの事業に係わりの深い問題として受け止め、計画的に取り組んでいるが、さる9月28日、クリントン米国大統領の特使として緊急来日されたコスキネン大統領補佐官(大統領「2000年問題諮問委員会」議長)との懇談会を開催し、本問題に関する今後の取り組みのあり方について、説明を伺うとともに種々懇談した。当日、コスキネン補佐官は、日米両国が、この問題の社会的な広がりの大きさや国際性を認識し、密接な情報交換を行なうとともに、これまでに積み重ねたノウハウを活かして共同して2000年問題に対応することの重要性を強調した。経団連では、今後も、2000年に向けて念入りな対応を図るよう、関係方面に呼びかけていく予定である。

政府の「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」改定作業への対応

現在、政府の高度情報通信社会推進本部(本部長:小渕総理)では、11月上旬を目途に「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」(1995年2月策定)の改訂作業を行なっているが、経団連では、これまで同本部有識者会議等を通じて、

  1. 各省庁の施策の寄せ集めではなく、グローバルな情報化の中で、わが国がとるべき基本戦略を示すこと、
  2. 内閣のリーダーシップの発揮、民間人の積極活用など推進体制を強化すること、
  3. 公的分野、教育分野の情報化や、情報通信サービスの低廉化、多様化のための環境整備等を重点的に推進すること、
などを意見具申してきた。現在、具体的課題等について主要会員企業を対象とするアンケート調査を実施中であり、それをもとに近く経済界の意見をとりまとめ、その実現を働きかける予定である。


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