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魅力ある日本

第2部 我々が目指す日本の未来

【総論:基本的な理念】


わが国としては、内にあっては「真に豊かで、活力ある市民社会」の構築、対外的には「世界の平和と繁栄に貢献する国家」の確立を通じて、「活力あるグローバル国家」となることを目指す。その結果、「世界から信頼され、尊敬される日本」になる。

  1. 真に豊かで、活力ある市民社会
    1. 「真に豊かで、活力ある市民社会」とは、個人が、自己責任原則ならびに厳格なモラル・コード(倫理規範)の遵守を前提に、自由、平等な市民として活動することが制度的に保障され、かつ実際にそのような機会に恵まれている社会である。それは、国民は物質的にも精神的にも豊かさを実感し、また世界の多くの人々に「魅力あるビジネス機会を提供」するとともに、「住んでみたい」「学んでみたい」と思われる社会である。

    2. 具体的には、次のような特徴を備えている。

      1. 機会の均等が確保されるとともに、努力が正当に評価される社会である。老若男女、健常者・障害者を問わず、他者の自由を侵害しない限り、個人は自分の能力を最大限に発揮して創意工夫を行い、自己実現を図ることができる。社会も、リスクへの挑戦、独創性の発揮に対してポジティブ(肯定的)な態度をとっている。

      2. 「官から民へ」、「中央から地方へ」という原則の下で、「脱規制社会」、「脱行政依存社会」、「透明で小さく効率的な政府」が実現している。政治のリーダーシップのもとに、国の進路が決定され、中央政府がそれを着実に実行している。

      3. 企業は、自己責任原則と厳しい企業倫理の下で自由に活動し、国民の真の豊かさに貢献する商品・サービスの開発、提供や経営を行っている。

      4. 科学技術の進歩は、人類が直面する諸問題の克服に資するとともに、新産業・新事業の創造や産業構造の高度化に寄与している。

      5. 企業、行政、政治は、経済社会の活動にとって真に必要な情報を適時適切に開示している。

      6. 個人は、生活全般にわたって多様な選択肢をもつ。また、自立、自助、連帯のもとに、政治、行政、社会の運営に主体的に参画するとともに、政治家や政府の動向をチェックしている。

      7. 個人は、家庭・地域・職場での生活のバランスがとれた暮らしを送っている。職場において個性を活かしているほか、家庭、地域コミュニティ、市民活動団体(NPO、NGO等)、共通の趣味・関心を有するグループなどの横型の共同体・ネットワークに主体的に参画している。それによって、家族や社会の絆、心のふれあい、自らの存在意義を実感している。また、社会の連帯や信頼関係は強いものとなっている。

      8. 市民活動団体は、社会の多様なニーズと行政の限界をふまえて、機動的かつ多彩な活動を展開し、国民生活、政治にとって不可欠な存在となっている。その前提として、市民活動団体は、市民、企業等からの支援のもとに、自律的に活動できる条件が整備されている。その結果、個人、市民活動団体、企業、行政との間に透明度の高いパートナーシップが形成されている。

      9. 21世紀の高度情報通信ネットワーク社会に対応して、情報通信基盤が整備され、各種の規制が撤廃・緩和された結果、個々人や各種の組織は複合的なネットワークで結ばれている。その結果、国民、企業は、行政事務をはじめ、医療、福祉、教育等の面で情報ネットワークを用いたサービスを自由に利用するなど多彩な活動を展開している。また、国内はもちろん、全世界に向けても情報を発信し、世界中の人々と、自由な意思の疎通、相互理解が可能となっている。

      10. 環境に過大な負荷を与えない循環型経済社会システムの構築に向けて、産業界、行政、消費者がそれぞれの機能、役割を果たしながら、パートナーとして協力し合って取り組んでいる。また、自然とともに生きようとする心が育まれ、自然と共生する生活様式が普及する結果、豊かな自然が保護されている。

    3. このような「真に豊かで活力ある市民社会」を建設するにあたっては、国民一人ひとりが、
      1. 多様な個性、能力を活かして、主体的に経済社会の運営に参画する能動性、
      2. 行政・会社への依存意識、もたれ合い意識を払拭し、自己責任原則をわきまえ、自助・自治意識に基づいて行動する自律性、
      3. 倫理規範の遵守、権利と表裏一体の関係にある義務の履行を図るとともに、社会と個人的利益とのバランスをとる社会性、
      を備えることが基盤となる。

    4. 社会のチェック機能、オピニオン・リーダーとしてのジャーナリズムの役割も極めて大きい。ジャーナリズムは、事実を冷静に追求し、問題の本質を正しく把握し、国民に必要な情報を的確かつわかりやすく提供したり、問題提起を行うことが期待される。
      これに対応して、企業においても、株主や顧客に対する守秘義務を守りつつ、トップ自らが最大の広報マンとして、企業の情報公開に努めるとともに、企業が変革していく姿を社会に積極的に示していくことが必要である。そのためには、社内の広報体制、危機管理体制を整備することが重要である。

  2. 世界の平和と繁栄に貢献する国家
    1. 「世界の平和と繁栄に貢献する国家」とは、世界の中の日本として、自由、民主、人権、環境、自由主義経済などの理念に基づき、わが国の果たすべき国際的責務を内外に明確に示し、それを着実に実行していく国のことである。

    2. そのためには、これまでのような世界の政治・経済秩序に合わせるという外交スタイルを改め、世界各国と協力して国際的なルール・メーキングの一翼を担う覚悟が必要である。

    3. また、わが国を世界に開かれたものとし、「真に豊かで、活力ある市民社会」のメリットを世界の人々が享受できるように努めなければならない。国内の制度・政策の透明性を高め、国際的にも整合性のあるものにするとともに、わが国の市場を一層開放し、貿易・投資の自由な交流も拡大していく。

    4. 冷戦の終焉後、世界的規模の武力衝突の可能性は小さくなったものの、依然として地域紛争は続き、アジア地域においても不安定要素を抱えており、今後、紛争が発生することもありうる。また、南北問題や、人口・食料・エネルギー・環境といった地球的規模の問題も依然として深刻である。
      世界の平和と繁栄が自らの「存立」、「発展」の大前提であることからも、日本は、国際的な平和の実現と国際社会の繁栄に積極的に参画する必要があり、国際的な平和維持活動にできる限りの協力をしていく。

    5. わが国が得意とする経済分野において、持てる知恵、人材、資金および技術を活用し、開発途上諸国の経済発展と自由化の推進、国際援助機関への支援を拡充していく。さらに地球環境の保全に最大限努力していくとともに、科学技術によって人類が直面する問題を解決し、世界に貢献していく。
      総じて、わが国は、「経済協力」「環境」「科学技術」の3分野に重点を置いて、世界に貢献していくべきである。

    6. 今後は、企業、経済団体、市民、自治体等は国際交流の拡充に一層努力していく必要がある。政府は、このような民間交流をバックアップしていく役割を担うべきである。特に、今後は、国際会議や国際機関をはじめとする国際的な場において、多くの日本人が活躍できるような仕組みを早急に構築する必要がある。

    7. 国際交流を拡大するには、個々人が、真の国際人として活躍するための努力が必要となる。グローバル化の時代こそ日本のアイデンティティを確立することが不可欠であり、一人一人が相手の立場や歴史・文化的背景を尊重するとともに、自分の国を愛し、自国の歴史や文化についての理解を深めることが重要である。

以下の各論においては「経済・技術」「政治・行政」「外交・国際交流」「教育」「企業」の5分野について、次のような理念のもとで、望ましい姿ならびに改革すべき課題と提言を述べていきたい。


  1. 市場経済体制のもとで、活力あふれる経済を構築する

  2. 政治のリーダーシップを確立し、透明で小さく効率的な政府を実現する

  3. 世界の平和と繁栄に積極的な役割を果たす

  4. 創造性を引き出す人材育成システムを確立する

  5. 企業は、「真に豊かで活力ある市民社会」づくりの中心的役割を担うとともに国際社会から信頼される企業市民となる


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