1. トップ
  2. Policy(提言・報告書)
  3. 産業政策、行革、運輸流通、農業
  4. 力強い農業の実現に向けた提言

Policy(提言・報告書) 産業政策、行革、運輸流通、農業 力強い農業の実現に向けた提言

2011年2月10日
(社)日本経済団体連合会

1.はじめに

政府は、「新成長戦略」(2010年6月18日閣議決定)に示されている「強い経済」を実現するため、「国を開き」、「未来を拓く」決意を固め、高いレベルの経済連携を進める旨を閣議決定した(「包括的経済連携に関する基本方針」2010年11月9日)。その推進には、グローバル競争に耐えうる産業競争力の強化に集中的に取組むなど、様々な分野において抜本的な国内改革を断行する必要がある。

取り分け農業は、国民に食料を供給するとともに、地域の基幹産業として地域社会の維持にも重要な役割を果たしている一方で、上記「基本方針」で示す通り、「農業従事者の高齢化、後継者難を踏まえれば、将来に向けてその持続的な存続が危ぶまれる状況にあり、競争力向上や海外における需要拡大等我が国農業の潜在力を引き出す大胆な政策対応が不可欠」である。日本経団連は、まさにこのような問題意識を共有している。

今こそ、国内に優良な農地を確保しつつ、新規就農や企業の参入促進等により経営感覚あふれる多様な担い手を確保するとともに、地域の合意形成によりこれら担い手へ農地を集積し、経営規模の拡大と生産性の向上等を通じた農業の競争力強化を実現すべきである。同時に、6次産業化や農商工連携の推進、農産物等の輸出促進等による農業の成長産業化を図るべきであり、これらの実現に向け、あらゆる政策手段を総動員した改革を迅速かつ強力に推進していかねばならない。

同時に、環太平洋パートナーシップ(TPP)はじめとする経済連携協定の交渉に参加し、高いレベルの経済連携を目指しつつ、わが国の事情を踏まえた国境措置の取扱いなどを確保するとともに、国内改革と国際交渉の進展を踏まえ真に必要な国内対策を総合的に講じることなどにより、国を挙げて経済連携の推進と国内農業の強化との両立を実現していくべきである。経団連としても農業界の改革努力に最大限協力していきたい。

政府では、「食と農林漁業の再生推進本部」(本部長:内閣総理大臣)を設置し、かかる政策の具体化に向けた検討を進めており、本提言を踏まえ実効ある改革方策が取りまとめられることを強く期待するとともに、これら国内改革の早期実現に向けた政治の強いリーダーシップが発揮されることを強く要望する。

2.農業の競争力強化と成長産業化

(1) 新規就農や企業の農業参入促進等による多様な担い手の確保

わが国は、農業従事者の約6割が65歳以上という高齢化と後継者不足に直面するとともに、耕作放棄地が全耕地面積の約1割に相当する40万ヘクタールに拡大するなど、国内の食料生産基盤が崩壊しかねない深刻な状況に陥っている。

このため、2009年12月に施行された改正農地法・農振法の厳格な運用等により国内に優良な農地を確保しつつ価格の適正化を図るとともに、新規就農や企業の農業参入、法人化の一層の促進等により、国内に経営感覚あふれる多様な農業の担い手を育成・確保していくことが喫緊の課題である。このため、農業生産法人の要件緩和等の農地規制の更なる見直しや運用の適正化を進めるとともに、新規就農研修や新規雇用への助成、新規就農者への農地斡旋はじめ施設・設備の確保、農業生産法人設立時の初期投資への支援等を拡充すべきである。

(2) 農地集積等による経営規模の拡大と生産性の向上

経営感覚あふれる多様な担い手の確保とともに、これら担い手に農地をまとまった形で集積し経営規模の拡大と生産性の向上を加速するための支援措置も不可欠である。とりわけ、わが国の稲作農業は国民の主食である米を生産し単一品目では最大の産出額を持つ基幹的農業分野であるものの、平均経営規模は1ha程度と野菜や畜産などの他の経営部門に比較し規模拡大が進んでいない。農林水産省「米生産費調査」が示すように、経営規模の拡大は生産費の低減を通じた農業所得の増大につながることから、地域での合意形成を図り農地の集積を推進することは、産業としての農業の魅力向上を通じた地域全体の活性化と後継者の育成・確保のためにも極めて重要である。

このため、地域における農地集積推進方策の強化や農地情報の整備を推進しつつ、規模拡大を行う農業経営への財政上・金融上の支援措置や農業経営基盤強化準備金制度の拡充等の税制上の特例措置、農地の大区画化・汎用化や水利施設等の基盤整備への支援、遊休農地に関する裁定制度の積極的活用と再生への助成などとともに、農地の出し手に対する優遇措置として、担い手へ農地を売却・賃貸した際の売却収入・地代収入や農業生産法人へ農地を現物出資した際の配当収入に対する所得控除措置、贈与税・相続税の納税猶予制度の拡充等を講じ地域における共助・共存を実現していくべきである。

また、畜産・酪農分野の更なる規模拡大・生産性向上への支援、飼料の安定供給体制の充実、施設・設備整備への助成や基準の見直し、防疫体制の強化、経営再建への支援等も重要である。

併せて、都道府県や資材の製造、流通、販売事業者の団体が策定している行動計画の推進による資材費の低減や集荷・卸・小売を通じた流通構造の改革により、農産物の生産から流通に至るコスト全体の削減を実現していかねばならない。

(3) 農商工連携・農産物輸出等の促進

経営感覚あふれる多様な担い手の確保と農地集積・経営規模の拡大等による国内における農業生産基盤の維持・強化とともに重要なのは、国民や市場のニーズに対応し消費者やユーザーに選択される農産品を安定的・効率的に供給するための開発から生産・流通・販売に至る体制を確立し、農業所得の向上と収益性の高い経営の実現により農業の成長産業化を図っていくことである。

同時に、良質な農産品の提供等が地域のブランドイメージの向上に貢献することから、農産品の販売のみならず宿泊・飲食施設での付加価値をつけた食材・料理としての提供や農業の観光資源としての活用など、農業の振興と観光交流拡大の連携による地域活性化策を推進すべきである。

このため、政府の「新成長戦略」(2010年6月18日閣議決定)で示されている通り、「いわゆる6次産業化(生産・加工・流通の一体化等)や農商工連携、縦割り型規制の見直し等により、農林水産業の川下に広がる潜在需要を発掘し、新たな産業を創出していく」ことや、「日本の農林水産物・食品の輸出の拡大」を図るべきであり、その実現に向け、農商工等連携促進法の改正と6次産業化人材の育成、輸出有望品目・新品種への転換支援、GAP等の国際規格の認証取得や海外市場開拓・確保への支援などとともに、政府間交渉による輸出有望品目の検疫条件の改善や関税引き下げ、知的財産権の保護強化等を早急に進めるべきである。

併せて、行政刷新会議における農林・地域活性化分野の規制・制度改革をはじめ関係省庁が一体となって農業と観光の連携強化に取り組んでいくべきである。

(4) 「農業成長産業化促進法(仮称)」の制定

上記(1)〜(3)の政策手段の効果を最大限に発揮させるためには、かかる措置を5年後、10年後を見据えて競争力を強化し、効率的かつ安定的な農業経営を将来にわたって担いうる経営体に集中的に講じていく必要がある。

このため、国は新たに「農業成長産業化促進法(仮称)」を制定し、主要品目の競争力強化目標を設定するとともに、かかる目標を達成するための計画を作成した農業経営を農業生産法人以外の法人も含め認定することにより、上記の支援措置を集中的に適用すべきである。競争力強化目標は5年後及び10年後の達成目標を設定し、その実現状況を踏まえて5年後に見直すととともに、目標水準や認定を受ける農業経営については、地域の状況や合意形成を反映させる仕組みも構築するものとする。

3.真に必要な国内対策の総合的な実施

農業の競争力強化と成長産業化を進めると同時に、冒頭指摘の通り、環太平洋パートナーシップ(TPP)はじめとする経済連携協定の交渉においては、高いレベルの経済連携を目指しつつ、わが国の事情を踏まえた国境措置などわが国の国益に不可欠な取扱いを確保していくべきである。かかる交渉の結果、上記競争力強化目標を達成してもなお輸入品との内外価格差が存置するなど競争条件に不利が生じる場合には、認定を受けた農業経営の安定を確保するため、競争力強化目標水準をベースとして農業経営体に対する不足払い(直接支払い)を実施すべきである。併せて、国産原料の使用を確保するため、国産原料の最大の使用者である加工業者等の国際競争力を維持すべく、原料と加工品の国境措置の整合性が図られなければならない。

また、産業政策としての農業競争力強化や成長産業化では対応できない地域や品目についての支援措置については、農業の多様な機能等に着目し真に必要なものについて別途講じていかねばならない。

4.「元気なふるさと共創プラン」(仮称)等経済界の取組み強化

日本経団連では、農業経営の安定と消費者に豊かな食生活を提供する観点から、また、開発・生産・加工・流通・販売・消費まで一貫したわが国のフードシステムの活性化の観点から、農業者、製造業、流通・販売業者等が互いに連携・協力して付加価値を高めていくこと等を目指して、経済界と農業界との連携・協力等の強化のための取組みを進めている。そして、これらの連携・協力等の事例は、製造業、商社、流通・小売、金融、輸送等の幅広い業種において、契約栽培、農業生産法人への出資やリース方式での農業参入、資金調達やリース、生産技術・資機材等の提供やコンサルティング、新品種・新商品の開発・普及促進、輸出促進や販路開拓に向けたビジネスマッチング、社員食堂等における地産地消の推進、農山漁村との交流促進、食育の推進等、様々な広がりを見せている。

経済界としては、今後ともこれらの取組みを推進するなど、農業の競争力強化と成長産業化、ならびに農山漁村の活性化に向けた出来得る限りの活動を進めていく所存である。とりわけ、日本経団連の会員企業・団体による農業界との連携・協力については、改めて事例の収集・公表を行い経済界全体で優良事例の情報を共有・活用するとともに、企業・団体との連携・協力を模索する農業界や地方公共団体等の参考に供することなどにより、また、「元気なふるさと共創プラン」(仮称)により広く企業・団体に取組み強化を促すことにより、一層の拡大・深化を図っていきたい。

以上

「産業政策、行革、運輸流通、農業」はこちら