日本経済は、毎年着実に成長を続けており、国内の設備投資や賃金引上げの力強いモメンタムの下で、本格的な成長軌道への道を着実に歩みつつあります。
他方、国際情勢に目を転じれば、自由貿易体制の揺らぎや、深刻化する分断と対立により、地政学的リスクと経済安全保障上の危機がかつてなく高まっています。わが国も、少子高齢化・人口減少、自然災害の激甚化・頻発化、さらには資源・エネルギー上の制約等、経済社会の根幹に関わる課題に直面しています。
こうした時代にあって、経団連は、様々な将来リスクへの対処とイノベーションの創出を通じて強靭な経済社会を構築するとともに、中長期的に力強い経済成長を生み出していく覚悟です。そのためには、企業・経営者がマインドセットを転換し、国内の設備投資、研究開発投資、そして賃金引上げを含む人的投資を積極果敢に実行し、潜在成長率を着実に引き上げていくことが求められます。
経団連は、このような経済社会の姿を「投資牽引型経済」と位置付け、その確立により日本経済の基盤と自律性を強化し、「成長と分配の好循環」の実現を目指してまいります。
こうした観点から、次の7つの主要政策分野を掲げています。
第1は、絶え間ないイノベーションが創出される「科学技術立国」の実現です。デジタルトランスフォーメーションの推進、スタートアップ振興を加速させます。また、AI・半導体、ロボットといった戦略分野への官民での国内投資拡大によって産業競争力の強化等に取り組みます。
第2は、税・財政・社会保障の一体改革の推進です。市場の信認維持に向けた官民連携によるダイナミックな経済財政運営が求められます。また、全世代型社会保障制度の構築や給付と負担のあり方の見直しを含めて、公正・公平で持続可能な中福祉・中負担の制度を構築しなければなりません。
第3は、人的投資の拡充・促進に向けた労働改革です。サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を通じた取引適正化等に引き続き取り組みつつ、賃金引上げの力強いモメンタムの「さらなる定着」を図ります。併せて、裁量労働制の拡充等を働きかけてまいります。
第4は、わが国経済社会の強靭性を高めるための地域経済社会の活性化です。「新たな道州圏域構想」の実現とともに、防災・減災・被災時の対策を含む国土強靭化の推進等に取り組みます。
第5は、「貿易・投資立国」としての自由で開かれた国際秩序の維持・強化と経済安全保障への配慮です。ルールに基づく自由で公正な貿易投資環境とともに同志国との連携による経済安全保障の確保が重要です。併せて、特定の国・地域に過度に依存しない強靭な経済構造の確立に向けて、民間経済外交を展開してまいります。
第6は、経済活動の基盤となるエネルギーの安価で安定的な供給確保とグリーントランスフォーメーション(GX)の推進です。エネルギー源の多様化と天然資源の安定的な確保によってエネルギー安全保障を強化しながら、脱炭素への投資を産業競争力強化に繋げていくことが重要です。また、脱炭素電源の最大限の活用に向けて、特に原子力発電所の再稼働の加速、リプレース・新増設の推進等が求められます。
第7は、持続的な成長とマルチステークホルダーへの還元を志向したコーポレート・ガバナンス改革です。中長期的な企業価値向上に向けた投資家との建設的な対話の促進等に取り組みます。
これらの主要政策分野に加えて、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)の成功に向けて、政府、地方自治体、地元経済界等との連携の下で開催準備に尽力いたします。
本年、経団連は創立80周年を迎えます。この節目に原点に立ち返り、経済界の公正な意見をもとに政策を立案し、その実現に邁進する「Policy & Action」を実践してまいります。私も経団連会長として、「中長期の視点」と「日本全体の視点」を大切にしつつ、国民一人ひとりが物質的にも精神的にも豊かさを実感できる社会を実現し、将来世代への責任を果たしてまいります。会員企業の皆様には、変わらぬご理解とご協力のほど宜しくお願い申しあげます。
会長 筒井 義信