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Policy(提言・報告書) アジア・大洋州 ASEAN政策対話ミッション団長所見 (クアラルンプール)

2011年7月9日
(社)日本経済団体連合会
国際協力委員会

  1. 1.昨年10月の東京ならびに本年2月のジャカルタでの懇談会において、スリンASEAN事務総長から経団連に対し、マレーシアで開催される日ASEAN経済大臣とASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)との会合への参加依頼があった。そこで、7月8日および9日、海江田経済産業大臣とともにマレーシアを訪問し、上記会合に出席したほか、地域経済統合の推進ならびにASEAN連結性の強化などでの協力について、スリン事務総長ならびにASEAN各国の経済大臣と懇談を行い、あらためて経団連のアジア重視の姿勢を関係国に示すことができた。

  2. 2.各会合の冒頭で、3月11日に発生した東日本大震災に際してASEAN各国から寄せられたお見舞いに対し、謝意を伝えるとともに、サプライチェーンや生産活動の復旧の状況を伝えることができた。併せて、復興を着実に進めるためにもわが国が諸外国との経済活動や交流活動を維持・継続し、グローバル経済における役割をしっかりと果たしていくことが重要であるとの認識を伝え、関係者の理解を得た。

  3. 3.地域経済統合については、特に2020年のアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構築をにらみ、ASEAN諸国との間で人の移動や物品・サービス貿易の一層の自由化を図る必要があるという点でASEAN各国大臣と一致した。また、各国からは、FTAAPの実現のために、環太平洋経済連携協定(TPP)ならびにわが国が提唱した東アジア包括的経済連携(CEPEA)の2つの枠組みを推進するためのリーダーシップを発揮することが求められた。さらに、一刻も早くTPPに参加すべきであるとの率直なご意見をいただいた。これを踏まえ、わが国がTPPに早急に参加し、積極的にアジアと米国を含む太平洋諸国との架け橋としての責務を果たしていくことが、アジアひいては世界の持続的成長のために求められているとの思いを強くした。

  4. 4.また、当方から連結性強化を中心とするインフラ整備、特にわが国企業が世界最先端の技術やノウハウを有する高効率火力発電、高速鉄道、上下水道などの分野で協力していきたいと述べた。これを具体的に推進するため、官民の政策対話の推進、プロジェクトの基礎的部分をODAで整備し、採算のとれる運営については民間投資が担う官民連携(PPP)スキームの整備が不可欠であるとの認識で一致した。
    スリンASEAN事務総長からは、ASEANが制度面を含めた連結性の強化を推進する中で、今後10年を見据えた戦略が必要であるとの発言があった。さらに、シンガポールのリム・フンキャン貿易産業大臣およびマレーシアのムスタパ国際貿易産業大臣と、インフラ整備のための資金需要を効率的に満たすためにはアジア債券市場の整備が有効であるとの認識で一致し、引き続きアジア地域における債券市場の整備推進の枠組み作りで対話を継続していくこととなった。

  5. 5.今回のミッションでは、スリン事務総長との懇談会ならびに日ASEAN経済大臣が一堂に会する会合において、地域経済統合やASEAN連結性の強化など、地域全体を俯瞰した具体的な協力策やそれを実行に移す道筋について踏み込んだ意見交換を行うことができた点が非常に有益であった。
    また、ASEANの経済大臣が集結する機会を活かして、シンガポール、マレーシア、フィリピンの経済担当大臣と相次いで懇談し、二国間の経済関係強化についてより具体的な意見交換を行うこともできた。また、インドネシアのマリ商業大臣に対し、冷延鋼板のアンチダンピング調査が開始されたことに関し、わが国を対象から外すことを申し入れるとともに、フィリピンのドミンゴ貿易産業大臣には、長期滞在の日本人ビジネスマンが多いことに鑑み、社会保障協定の交渉開始を求めるなど、2日間という限られた日程の中で有意義な意見交換を行うことができた。
    経団連では今後、第2回アジア・ビジネス・サミット、日タイ合同貿易経済委員会、また来春予定されているASEAN各国経済大臣の訪日などの機会を捉え、今回のミッションの成果をアジアの一層の経済発展につなげてまいりたい。

以上

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