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Policy(提言・報告書) 税、会計、経済法制、金融制度 平成24年度税制改正に関する提言

2011年9月14日
(社)日本経済団体連合会

I.はじめに

わが国経済は緩やかに持ち直しつつあるものの、原発事故やその後の全国的な電力供給制約の影響、復興政策の停滞による需要喚起の遅れ、足もとの想定を上回る円高、厳しさが続く雇用情勢に加え、海外経済の減速など、景気の下押しリスクが存在しており、依然として予断は許されない。

また、わが国の財政状況は、一段と深刻さを増している。国・地方を合わせた政府の長期債務残高は既に先進国の中で最悪の危機的な水準に達しており(2011年度末には対GDP比で184%となる見込み)、歳出・歳入両面からの改革を通じた財政健全化は喫緊の課題である。経済の停滞下において本格的な少子高齢化、人口減少社会が到来しており、社会保障制度の持続可能性に対し、国民の多くが将来に不安を抱いている。さらに、グローバル競争が激化する中で、わが国の立地条件は年々悪化しており、持続的な成長と国内での雇用確保に懸念が持たれている。

このような将来不安、閉そく感を払拭し、再び経済を成長軌道に乗せ、豊かで明るい国民生活を実現するためには、まず、民主導の経済成長に向けた政策をタイムリーかつ着実に進めるべきである。経済活動の主体は国民と企業であり、雇用の主体は企業である。企業活動の活性化が果たされなければ、安定した国家運営は実現できない。また、社会保障と税・財政の一体改革をスピード感を持って推進することが不可欠である。バブル崩壊以降、日本の経済構造は大きく変化している。民間消費支出がGDPの約6割を占める経済構造に対応した税体系の再構築を急ぐ必要がある。特に高齢化の進行により社会保障を中心に増大が避けられない歳出に対しては、消費税の拡充による歳入確保が欠かせない。さらに、経済活力の維持・強化に向けて、課題は山積しており、平成24年度税制改正において確実な対応を図る必要がある。

II.復興財源論と平成23年度税制改正における残された課題

まずは復興のための第3次補正予算を成立させる必要があるが、8月9日の3党合意(民主党・自由民主党・公明党)において、その際、あわせて、平成23年度税制改正における未決着事項について議論することとされている。

第3次補正予算は、復興基本方針に基づき相当な規模となることが見込まれているが、まずはその所要額について十分精査する必要がある。その上で、無駄の排除や効率化に資する行政改革への取組み及び税外収入の確保に最大限努めていかなければならない。こうした取り組みをもってしても、なお財源が足りない場合には、東日本大震災復興基本法で規定された復興債の発行により調達することもやむをえない。

復興債に係る償還財源については、基幹税(消費税、所得税、法人税)を中心とする臨時的な増税が検討課題とされているが、単に「取りやすいところから取る」という安易な発想に陥るべきではない。必要額、経済への影響、企業の競争力強化等を総合的に踏まえ、国民的な議論を行い、特定の税目に負担が偏らないかたちで結論を出すべきである。

消費税については、「社会保障・税一体改革成案」中の税制抜本改革との関係を整理する必要があるものの、経済への影響が最も中立的であり、数兆円単位の財源を短期間で捻出することが可能であることから、選択肢として排除すべきではない。一方、所得税・法人税については、増税と引き換えに、経済活力が大きく損なわれ、負担が納税者・利益法人に偏る。

経済界としては、オール・ジャパンで復興を支える観点から、法人税につき一定の負担を分かち合うことを否定するものではない。しかし、震災後、わが国では、法人実効税率の引き下げの必要性は益々、高まっている。国内の立地競争力は、重い法人税負担、想定を上回る円高の継続、柔軟性を欠く労働市場、行き過ぎた温暖化対策、経済連携協定の締結の遅れの五重苦により低落傾向をたどっていたが、震災後には、これに全国的な電力供給不足が重なり、いわば六重苦となっている。海外企業による直接投資の呼び込みはおろか、企業の国内における立地の維持すらままならない状況である。当然のことながら、震災を機に、サプライチェーン問題でシェアを奪われるなど、グローバル競争は激しさを増している。

こうした負の流れを少しでも食い止め、国内雇用を維持・増加させるためには、まずは法人実効税率の5%引き下げを早急に実現すべきである。したがって、第3次補正予算とあわせ議論されることとなる平成23年度税制改正法案の未決着事項のうち、特に法人税改革については、一体として成立・施行すべきである。

復興財源として法人税についても何らかの負担増を行うのであれば、そのネット減税分を限度として付加税を時限的に課すか、施行を一定期間遅らせる方式とすべきである(いずれも3年以内)。現行制度をもとに単純に付加税を課したり、平成23年度税制改正法案のうち課税ベースの拡大のみを先行実施したりすることによって、純増税を行うことは絶対に容認できない。

なお、第3次補正予算の編成にあわせ、震災復興に係る税制措置の第2弾を講じるべきである。例えば、特区制度を通じた所得税、法人税、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税等の減免、耐震・防災・電力供給不足対策に係る課税の特例等が考えられる。また、税務行政においても、損金算入要件の緩和等、柔軟な対応が求められる。

これらの措置を前提に、以下では、税制抜本改革と平成24年度税制改正のあり方について、経済界の考え方を示すこととする。

III.税制抜本改革

先般、政府・与党社会保障改革検討本部が決定し、閣議報告がなされた「社会保障・税一体改革 成案」については、社会保障制度改革の各論や個別税目について、経済界と考え方が異なる部分があるものの、消費税率の引き上げを含む税制抜本改革の実現が不可欠であることについては、基本的な方向性を共有している。可及的速やかに超党派による議論を開始し、平成21年度税制改正法における附則104条の要請に従い、時間軸を明確にしつつ、本年度中に法制上の措置を講ずるべきである。そのうえで、一刻も早く税制抜本改革を実現する必要がある。

個別税目に関する具体的な課題は、以下の通りである。

1.消費税

高齢者の急速な増加、生産年齢人口の減少が続く中、増え続ける社会保障給付費を企業や現役世代が負担する社会保険料の引き上げで手当てすることには限界があり、社会保障制度を現役だけでなく高齢者も含め、国民全体で支えるかたちへと転換する必要がある。その際、消費税は、年齢・属性にかかわらず、国民で負担を広く分かち合う税目であり、経済活動に最も中立的であることから、財源として最もふさわしい。また、民間消費支出がGDPの約6割を占める経済構造においては、消費こそが担税力を有する。そこで、消費税を社会保障給付費に充てる方針を明確化したうえで、税率を引き上げ、基礎年金、高齢者医療、介護、子育て支援に係る給付の自然増や税負担割合の引き上げ分に充当すべきである。その際、一層の社会保障給付の効率化・重点化もあわせて実施すべきである。

改革の第一段階として、税率を2015年度までに10%まで、段階的に引き上げるべきである。必要額や税率変更に伴う事業者のコスト等を勘案すれば、1回の引き上げ幅は1%ずつでなく、少なくとも2〜3%とすべきである。その際、社会保障制度を国とともに担う地方に対し、安定的な財源を手当てする必要がある。

その後も、社会保障の持続可能性を高めるためには、改革の第2段階として、2020年代半ばまでに10%台後半に引き上げることは避けられない。

消費税に係る逆進性対策としては、税率が10%を超えた段階で、給付と負担の全体像を踏まえつつ、給付付き税額控除の導入等を検討すべきである。例えば、カナダのGST(Goods and Services Tax)控除制度を参考に、低中所得者層に対し、生活必需品に係る消費税率引き上げ相当額を定額で交付する制度が考えられる。複数税率については、事務負担の増大を招くばかりか、高額所得者にも軽減効果が及び効率的ではないことから、慎重な検討が必要である。

なお、消費税については、自動車取得税等との二重課税、石油関係諸税等とのTax on Taxについても、解消を図るべきである。また、住宅の取得時にも、消費税、不動産取得税、登録免許税、印紙税など重層的な課税がなされていることから、諸課税の整理、簡素化を行うなど、消費税を含む税制抜本改革の際には、住宅の取得に係る税負担が住宅市場の縮小を招かないよう措置する必要がある。

仕入税額控除に係る95%ルールの廃止については、事業者の事務負担等に配慮し、税制抜本改革時まで施行を見送るべきであり、関係者の意見を十分に踏まえつつ、改めて検討を行う必要がある。

2.法人所得課税

現在、世界各国で法人税率の引き下げ競争が行われる一方、日本の法人実効税率は未だに40%と世界最高水準に貼りついたままとなっている。高コスト構造、低成長に加えて、企業は先に述べた円高、経済連携協定の締結の遅れ等に直面しており、この結果、外資系企業の撤退のみならず、日本企業についても、販売、生産や研究開発拠点に加え、本社機能までも海外に移さざるをえない事態が現実化しつつある。日本企業の海外シフトは売上高、営業利益ともにすでに実態として相当程度進んでいるが、震災後、こうした状況に一層、拍車がかかっている。このままでは、国内において十分な投資や雇用の水準を維持することは到底、不可能であり、わが国経済がグローバルな競争から劣後し、衰退に向かうことは必至である。

企業は税引後当期純利益の増大を目指し、グローバルに優れた技術力の強化、新製品・新分野の創出・拡大、価格競争力の強化を図って、伸びる市場の需要を獲得し、さらに成長するために創出した利益を技術開発や生産力増強に再投資している。こうした企業の事業活動において、税はコストである。法人所得課税を代表とする、これらのコストを軽減することで、企業の競争力が向上し、売上・利益拡大が実現すれば、投資意欲は必然的に増大し、企業の海外移転の抑止にもつながる。これによって、国内雇用の維持・増加を図ることができ、国民の将来不安が軽減され、個人消費も喚起され、国内需要の増大によってデフレからの脱却も可能となる。

かかる観点から、まず、平成23年度税制改正法案に盛り込まれた法人実効税率の5%引き下げを先行して実現するとともに、早期に法人実効税率を主要国並みの30%まで引き下げるべきである。その後も、さらにアジア近隣諸国と均衡する水準、すなわち25%程度まで速やかに引き下げるべきである。

なお、法人実効税率を30%〜25%まで引き下げる際には、国税の法人税率の引き下げのみならず、地方の安定財源確保とあわせ、地方法人所得課税についても、大幅な縮減を含む見直しが不可欠である。まずは、平成20年度税制改正の経緯(地域間の税源偏在の是正に対応するため、消費税を含む税制抜本改革がなされる間の暫定措置として、法人事業税の一部を分離し、地方法人特別税および地方法人特別譲与税を創設)に鑑み、税制抜本改革の際には、地方法人所得課税の改革の第一歩として、地方法人特別税を廃止すべきである。

3.個人所得課税

個人所得課税については、所得再分配機能、税収調達機能の回復の観点から、各種控除の見直しを行うとともに、給付付き税額控除制度を導入し、子育て世帯や低中所得層に対し、重点的な支援を行うべきである。平成22年度税制改正では年少扶養控除が廃止され、平成23年度税制改正法案でも給与所得控除、退職所得課税、成年扶養控除の見直し等が盛り込まれている。国民的な合意を得つつ、改革を推進する必要がある。

なお、個人所得課税の最高税率の引き上げ(恒久措置)については、経済活力に悪影響を及ぼす可能性があり、国際的な整合性の観点からも慎重に検討すべきである。

一方、金融所得課税については、高齢化社会における金融資産の効率的な運用、金融資本市場の活性化、企業の円滑な資金調達等の観点から、実務面の課題に十分に配慮しつつ、損益通算の範囲拡大や損失繰越の容認等、さらなる一元化を推進すべきである。

4.資産課税

相続・贈与税については、富の再分配機能の強化や社会への還元という観点から適切な負担を求める声があるが、過重な負担は、資産の蓄積・形成に対する個人のインセンティブを損ない、経済の活力を低下させるおそれがある。

中堅資産家層の経済基盤を損なわないよう十分に配慮しつつ、相続税の課税ベースの拡大や、高齢世代から現役世代への生前贈与を促進し消費の拡大および資産の形成を図るための贈与税の負担軽減など、経済の活性化の観点から総合的な見直しを検討すべきである。

5.自動車・燃料関係諸税

自動車・燃料関係諸税については、道路特定財源として国際的に見て過重な負担が課されてきたが、平成21年度に一般財源化された時点で課税根拠を喪失している。また、自動車取得税は消費税と、自動車重量税は自動車税と二重課税の状況となっている。

自動車関係諸税については、「当分の間税率」(旧暫定税率)の廃止に留まらず、自動車取得税、自動車重量税を本則部分も含めて廃止し、簡素化・負担軽減を実現すべきである。燃料関係諸税(揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税)についても負担軽減が不可欠であり、少なくとも「当分の間税率」を廃止すべきである。また、消費税とのTax on Taxの解消を図るべきである。

6.番号制度

社会保障・税共通の番号制度を早期に導入すべきである。制度が導入されれば、消費税の逆進性対策をはじめとするきめ細かい制度設計が可能となる。また、制度の活用を東日本大震災の被災者支援やより幅広い行政分野、民間にも拡大することで、国民のさらなる利便性の向上が期待され、社会全体が効率化する。まずは「社会保障・税番号大綱」に基づく番号法案を早期に成立させる必要がある。また、制度設計につき、金融機関をはじめとする企業の実務に配慮しつつ、具体的な検討を推進すべきである。

この他、電子帳簿保存法の見直し、e-Tax(国税電子申告・納税システム)の改善・普及促進、年末調整の税額通知の電子化、全地方自治体のeL-Tax(地方税ポータルシステム)への参加等、納税手続きの電子化を推進すべきである。

7.環境関連税制

東日本大震災を踏まえ、まずはわが国のエネルギー政策を再検討することが不可欠である。したがって、地球温暖化対策税は導入すべきではない。

同時に、環境・エネルギー技術の開発・普及を推進するため、これらの取り組みに対するインセンティブとしての税制のグリーン化を推進する必要がある。

IV.平成24年度税制改正に関する提言

経済活力の維持・強化に向けて、税制抜本改革とあわせて、平成24年度税制改正では、次の点を実施すべきである。

1.法人課税

(1) 研究開発促進税制

日本が持続的な成長を遂げるためには不断のイノベーション創出により科学技術の優位性を保つことが不可欠であるが、研究開発投資は不確実性が高く、事業化までに長期間を要することから、基本的には資金を内部留保から充てざるを得ない。研究開発投資をキャッシュ面で支える措置は極めて重要である。

「新成長戦略」では、官民合わせた研究開発投資を2020年までにGDP比4%以上とすることが目標に掲げられているが、わが国の研究開発投資総額における政府負担割合は主要国と比較して最も低い水準にある。また、諸外国では、産業の国際競争力強化のために競い合って研究開発促進税制の拡充が行われている。こうした中、わが国が他国の追随を許さない先端的研究開発を強力に推し進め、わが国産業の国際競争力を維持・強化し、中長期的に社会全体の効用を高めていくためには、景気変動に関わらず、研究開発促進税制を常に拡充するとともに、活用メリットを十分に享受できるよう制度設計の改善を図ることが必須である。また、本来、制度全体を法人税法本則に盛り込み、恒久化すべきである。

平成23年度税制改正法案では、総額型の税額控除限度額の時限的上乗せ措置(法人税額の20%→30%)の廃止が盛り込まれたが、その決着の如何にかかわらず、税額控除限度額については30%を恒久化すべきである。標準的な売上高利益率、売上高試験研究費率の企業においては、そもそも20%の税額控除限度額では、試験研究費を税額から控除しきれないという現行の総額型の計算方法そのものに欠陥がある。また、税額控除限度超過額の繰越期間についても3年間とし、これを恒久化すべきである。この他、今年度で期限を迎える増加型・高水準型の特例についても、少なくとも延長することが不可欠である。

(2) 原料用途免税の本則化・恒久化

諸外国には原料用ナフサ等や原料炭への課税は存在しない。原料用途免税は世界の常識である。厳しい国際競争の中、原料への課税が行われれば、わが国企業は壊滅的な打撃を受け、国内での産業の存立は不可能となる。そもそも、原料用途免税の適用期限が到来するたびに企業が不安定な立場に置かれ、事業の予見可能性が著しく阻害される現状は、極めて問題と言わざるを得ない。かかる観点から、ナフサ等に係る揮発油税・石油石炭税の免税・還付措置、鉄鋼・コークス・セメント製造に係る石油石炭税の免税措置を本則化・恒久化すべきである。

(3) 地方法人課税
  1. 償却資産に係る固定資産税の抜本的見直し
    償却資産に係る固定資産税は、設備投資に対するペナルティともいえる課税であり、企業の国内における設備投資意欲を低下させ、雇用の増加を阻害する要因となっている。また、特定の設備型産業に負担が偏重しているため、課税の公平性の観点からも問題が大きい。かかる観点から、償却資産に係る固定資産税は、速やかに縮減・廃止すべきである。少なくとも、平成19年度税制改正における減価償却制度の抜本的改革を踏まえ、残存価額の廃止等、法人税の課税所得の計算方法との整合性を図るべきである。

  2. 事業所税の廃止
    事業所税の従業者割は、法人事業税の外形標準課税と同様、給与課税となっており、雇用の促進に逆行している。また、資産割は固定資産税および都市計画税との二重課税となっている。都市部への事業所の設置を阻害する事業所税は速やかに廃止すべきである。

(4) 国際課税
  1. 租税条約
    租税条約ネットワークは、国際的な二重課税を排除し、わが国企業の安心かつ確実な海外事業展開を確保するための重要なインフラである。ブラジル、中国、タイ、インド、インドネシア、シンガポール、マレーシア、韓国、ドイツ、ロシア等との租税条約を改定するとともに、アルゼンチン、コロンビア、ベネズエラ、チリ、ナイジェリア等の未締結国との租税条約締結交渉を推進すべきである。その際、親子間配当および貸付金利息に係る源泉徴収の免除規定、使用料に係る源泉徴収の減免規定、移転価格税制に係る対応的調整規定、仲裁規定等を租税条約に盛り込むことが重要である。
    なお、日米租税条約の改定交渉については、日米経済関係の重要性、今後の米国以外の国との租税条約締結・改定交渉への影響を踏まえ、注視している。国内法の整備等も含め、経済界の意見を十分に踏まえることが必要である。

  2. 移転価格税制
    昨年のOECDガイドラインの改定に伴う移転価格税制の改正について、混乱のない執行が望まれる。また、無形資産の取り扱いについては、企業の実態を踏まえた検討を促進すべきである。
    事前確認制度および相互協議の一層の迅速化、効率化を行うとともに、国外関連者要件について、実際には支配権が及ばない株式保有比率50%の場合を除外し、50%超とする等の見直しを行うべきである。

  3. 外国税額控除
    直接外国税額控除制度については、繰越期間経過により国際的な二重課税が排除されない可能性が依然として残されているため、企業の海外活動の制約とならないよう、繰越限度超過額・控除余裕額の繰越期間を延長する等、適切な措置を講じるべきである。

  4. 総合主義と帰属主義
    平成23年度税制改正大綱において、非居住者及び外国法人に対する課税原則について、総合主義から帰属主義に見直すことが検討課題として位置づけられたが、仮に国内法を改正する場合、非居住者及び外国法人に対する課税原則の見直しの影響は極めて広範になる。企業の国際的な事業展開の促進、わが国金融資本市場の活性化、適正な課税の実現等、様々な観点を総合的に勘案し、また、関係者の意見を十分に踏まえつつ検討すべきである。

  5. 国際連帯税の導入反対
    国際連帯税の導入には反対である。特に国際線出発便の航空券に対する課税については、受益と負担の関係が明らかではなく、また訪日外国人を2020年までに2500万人まで伸ばすとした「新成長戦略」との整合性がとれておらず、強く反対する。仮にわが国に本税が導入されれば、訪日外国人を含む航空利用者の負担が増えることによるわが国の国際競争力の低下や、外国航空会社に比べ日本発の国際線の便数が多い本邦航空会社の国際競争力の低下が懸念される。

(5) 税と会計

わが国法人税制は、これまで企業会計と密接に関係してきた。国際会計基準(IFRS)との間のコンバージェンスの流れの中で、その動向が課税ベースの拡大等、わが国法人税における課税所得計算に大きな影響を及ぼさないよう、例えば減価償却制度における損金経理要件の撤廃等、税制上の対応を図る必要がある。

(6) 欠損金の繰越期間延長及び繰戻還付の復活

わが国の現行の欠損金の繰越期間は7年と欧米諸国に比べ非常に不利な制度となっている。平成23年度税制改正法案では、繰越期間を9年に延長する一方で、欠損金の繰越控除限度額を繰越控除前の所得の80%相当分とする方向での見直しが盛り込まれた。欠損金の繰越控除に制限を設けているのは、主要国ではドイツのみであり、しかもドイツでは、繰越期間が無期限であることから、わが国の欠損金の繰越期間について、大幅な延長が必要である。

一方、欠損金の繰戻還付については、法人税法に規定されながら、中小企業を除き、財源措置として停止されている。早期に復活させるべきである。

(7) その他
  1. 特定の事業用資産の買換え特例(9号)の延長
    本特例は、企業の事業再編等に係るコストを低減させ、経済活力の向上に寄与しており、また、広範な業種に活用され、地域の企業立地にも貢献していることから、適用期限を延長すべきである。

  2. 受取配当金益金不算入割合の引き上げ
    受取配当金への課税は、法人段階で課税済みの所得の分配に対する課税である。二重課税排除の観点から、法人の受取配当金における益金不算入割合を引き上げるとともに、負債利子控除を廃止すべきである。

  3. 海外投資等損失準備金の延長
    国際的な資源獲得競争が激化する中、資源・エネルギーの安定供給に向けたわが国企業による探鉱開発の促進の観点から、海外投資等損失準備金制度を延長すべきである。

  4. 産活法に係る登録免許税の特例の延長
    事業の再構築の円滑化を図るためには、会社設立や増資に係るコストを低減させる必要がある。「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」に基づいた計画に従って会社設立や増資などを行う場合に登録免許税を軽減する本特例措置について、適用期限を延長すべきである。

  5. トン数標準税制の適用対象船舶の拡充
    世界の主要海運国においては、全運航船を対象とするトン数標準税制が相次いで導入されているが、わが国ではその対象は全運航船の4%に過ぎない日本籍船に限られている。わが国外航海運事業者の国際競争力を維持・強化し、その結果として、わが国産業への安定的な国際海上輸送サービスを確保する観点から、トン数標準税制の適用対象船舶を諸外国並みに拡充すべきである。

  6. 通信業用設備等に係る法定耐用年数の短縮
    ルーターおよびスイッチは技術革新の激しい機器であり、またインターネット関連のインフラが速い通信速度を要求するようになっているため、サーバーやPC等のインフラ機器の入替えと同時に、5〜6年で更改されている。事業者に過度な負担を負わせることのないよう、法定耐用年数を実態に合わせる必要があり、ルーターおよびスイッチについて、9年又は10年となっている法定耐用年数を6年に短縮すべきである。

  7. 特定同族会社の留保金課税の廃止
    企業の経営戦略における自己資本の充実の観点から、特定同族会社の留保金課税は廃止すべきである。

2.土地・都市・PFI・住宅税制

(1) 土地に係る固定資産税の負担軽減

固定資産税の過大な負担は企業の事業コストを増大させ、経営圧迫の大きな要因となっている。平成24年度の評価替えを機に、商業用地等への過重な負担を解消するなど土地に係る固定資産税の負担を軽減すべきである。

少なくとも、地方公共団体の条例で定めるところにより負担水準の上限を評価額の60%から70%の範囲で税額を一律に減額することができる条例減額制度を延長すべきである。

(2) 各種特例措置の延長・拡充等

住宅投資は内需の柱として、経済や雇用に対して極めて大きな波及効果を有する。また、わが国が持続的な成長を遂げるには、民間のノウハウや資金を活用し、土地や建物の有効利用、流動化を図りつつ、大都市・地域を活性化させることが不可欠である。かかる観点から、以下の税制措置を講じるべきである。

  1. 新築住宅に対する固定資産税の減額措置の維持・恒久化
  2. 住宅の取得に係る贈与税の非課税限度額及び相続時精算課税の特例の維持・拡大
  3. 住宅及び土地の取得に対する不動産取得税の課税に関する特例の延長
  4. 認定長期優良住宅に対する減税および課税の特例の延長
  5. 居住用財産の買換え特例、譲渡損失の繰越控除等の延長
  6. PFI等民間活力の活用促進に資する税制の拡充
(3) 地価税、土地譲渡益重課制度の廃止

土地バブルの抑制という政策目的が失われていることから、平成10年以後課税が停止されている地価税および法人の土地譲渡益重課制度を速やかに廃止すべきである。本制度の廃止は、予見可能性を向上させ、不動産取引の活性化につながる。

3.金融証券税制

税制抜本改革の項で論じた改革の方向性に沿って、金融所得課税のさらなる一元化に向けた検討を推進すべきである。

日本版ISA(Individual Savings Accounts: 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置)については、投資家の利便性強化、金融機関の事務に配慮しつつ、引き続き具体的な制度設計を推進すべきである。

個人投資家が受け取る配当に関して、法人・個人間における二重課税の調整を図る必要がある。

また、産業活力再生法により手続きの簡素化が図られた自社株対価TOBに関して、同制度が活用されるためには、株主段階の課税の繰延が必要である。

4.年金税制

公的年金の給付水準は、今後、低下が避けられず、税制措置を通じた企業年金制度の発展が求められる。しかし、企業年金等の積立金に対する特別法人税は、掛金の拠出時・運用時非課税、給付時課税の原則に反する国際的にも稀な課税であり、平成23年度税制改正において3年間の凍結措置が延長されたが、本来、速やかに廃止すべきである。

また、確定拠出年金について、私的年金制度の中核として相応しい仕組みとなるよう、拠出限度額のさらなる引き上げ、脱退一時金の受給要件の緩和、災害時特別引き出し措置の導入、加入対象者の拡大等を行うべきである。さらに、確定給付企業年金について、財政の健全性確保に資する過去勤務債務の一括償却を広く認めるべきである。

5.環境関連税制、自動車・燃料関係諸税

税制抜本改革の項で述べた通り、地球温暖化対策税は導入すべきではない。また、自動車重量税・自動車取得税を廃止し、燃料関係諸税についても「当分の間」税率を廃止すべきである。  その上で、以下の措置を講じる必要がある。

(1) 税制のグリーン化

地球温暖化防止の観点から、自動車関係諸税の抜本的な見直しが行われた後も、環境性能に優れた先進環境対応車の普及促進に資するインセンティブは必要であり、新たな制度を創設すべきである。また、電力需給対策の観点も踏まえれば、省エネ・創エネ機器やシステム(例えば燃料電池、蓄電池、EV/PHV等を活用した充放電システム、太陽光発電、エネルギー・マネジメント・システム等)への支援措置をグリーン投資減税(環境関連投資促進税制)において拡充すべきである。

(2) 航空機燃料税の廃止・縮減

本邦航空会社が使用する航空機燃料に課される航空機燃料税については、平成23年度税制改正において3年間の軽減措置が実現されたが、世界的にみて極めて稀な課税であり、オープンスカイにより激化する国際競争に必要なイコールフッティングの阻害要因となっている。大規模な空港整備が終了した現在、航空機燃料税はその役割を終えており、廃止・縮減すべきである。

(3) その他

軽油引取税に係る免税措置を延長すべきである。

6.消費税

税制抜本改革の項で述べた通り、仕入税額控除に係る95%ルールの廃止については、事業者の事務負担等に配慮し、税制抜本改革時まで施行を見送るべきであり、関係者の意見を十分に踏まえつつ、改めて検討を行う必要がある。

7.その他

(1) 印紙税の廃止

近年、インターネット電子商取引が一般化し、経済取引のペーパーレス化が著しく進展する中、紙を媒体とした文書のみに課税する印紙税は合理性が失われていることから、公平性の観点から、印紙税を廃止すべきである。

(2) 寄附金控除の年末調整対象化に係る慎重な検討

社会保障・税共通の番号制度が導入されれば、確定申告に必要な事務は大きく軽減されることから、あえて年末調整の手段が導入されなくとも、寄附金控除を受ける際の障害になるとは考えにくい。また、寄附先NPOの実態確認等を個々に行うことは企業単独では困難であり、事務負担の増大は避けられない。寄附金控除の年末調整対象化については、慎重に検討すべきである。

以上

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