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Policy(提言・報告書)  産業政策、行革、運輸流通、農業 国際競争力強化に向けた港湾・輸出入諸制度の改革

2012年3月21日
(社)日本経済団体連合会

国際競争力強化に向けた港湾・輸出入諸制度の改革【概要】

1.はじめに

わが国が再び活力を取り戻し、成長軌道を歩み始めるには、今後もモノづくりとサプライチェーンを国内に維持し続けることが不可欠である。そのため、投資環境を改善することによる立地競争力強化の一環として、わが国港湾の国際競争力を強化し、国際航路ネットワークにおける拠点としての地位を維持し続けることが重要である。

経団連では、こうした観点から、2004年6月に「輸出入・港湾諸手続の効率化に関する提言」#1を、また、2006年11月には提言「貿易諸制度の抜本的な改革を求める」#2を取りまとめるなど、かねてより企業のグローバルなサプライチェーンにおいて重要な位置を占める出入港・輸出入制度の改革を通じた港湾オペレーションにおける高コスト構造の是正を求めてきた。あわせて、米国の同時多発テロ以降、国際貿易におけるセキュリティ確保に対する国際的な関心の高まりを受け、貿易の円滑化とセキュリティ確保をバランスよく両立させていくことの重要性も指摘してきた。

こうした中、政府では、2008年10月に府省共通ポータル#3を稼働させるなど、電子化の推進による手続の簡素化・効率化に向けた取組みを着実に前進させている。また、2011年3月の関税法改正では、保税搬入原則#4の見直しが実現し、わが国輸出入制度は円滑化に向けて大きく前進した。産業界としても、こうした政府の積極的な取組みを評価するところである。

しかしながら、日々熾烈な競争が繰り広げられている国際貿易の舞台では、中国、韓国を始めとする台頭著しいアジア諸国やEUなどでも、国際競争力強化に向けた制度の見直しを着実に進めている。わが国としても、こうした諸外国の動向を踏まえ、競争環境のイコールフッティングの観点から、改革を不断に進めていく必要がある。

2.港湾諸制度の改革

(1) 基本的な考え方

わが国産業の国際競争力の維持・強化のためには、輸出入のゲートウェイたる港湾が、ソフト・ハードの両面において、その障害となってはならない。わが国の出入港制度では、2005年9月のFAL条約#5批准を契機に申請項目が約600項目から約200項目へと大幅に削減された。また、2008年10月には府省共通ポータルが稼働し、ワンストップでの電子申請が可能となるなど、制度の簡素化、利便性向上に向けた取組みが着実に進められている。

その一方で、実際のビジネスの現場からは、電子申請が認められず、窓口での申請しか受け付けられないケースや、行政機関によっては他の行政機関と申請のタイミングが異なるため、ワンストップでの電子申請ができないといったケースが指摘されており、煩雑な手続が依然として解消されていない実態が浮かび上がってきている。政府は、こうした指摘を踏まえ、これまでの改革が実際のビジネスの効率化に直接効果を発揮しているかどうか出入港制度の運用実態を改めて調査し、利便性向上に努める必要がある。

併せて、将来的な課題として、運用管理体制が整っている船社に対しては、自社船舶や長期傭船の出入港に係る手続を大幅に簡素化するなどの優良船社認定制度の導入についても検討すべきである。

(2) 具体的な方策

1. 港湾戦略の一貫性確保

政府は、選択と集中の考え方に基づき国際コンテナ・バルク戦略港湾および日本海側拠点港湾を選定するなど、わが国港湾の国際競争力強化に向けた取組みを着実に進めている。今後は、こうした戦略港湾、拠点港湾がネットワークとして機能し、その役割を十分に果たせるよう、政府は改めてわが国全体の港湾戦略に係るグランドデザインを策定する必要がある。
また、国際コンテナ戦略港湾に選定された京浜港、阪神港では、2015年までに港湾運営の民営化を実現するとしている。これを前倒しし、他の港湾運営におけるモデルとして位置付けるとともに、個別自治体の垣根を超えた広域港湾管理者を実現すべきである。

2. 地域毎・行政機関毎の独自の制度運用の見直し

府省共通ポータルからの電子申請では、他の行政機関とは異なるタイミングでの申請を求められる#6など、地域毎または行政機関毎に異なる運用が行なわれているのが実態である。そのため、わが国の複数の港湾に入港する船舶は、個別港湾毎に異なる対応をとらざるを得ず、業務の効率化が妨げられている。
わが国港湾の相対的な地位が年々低下#7していく中、こうした状況を放置し続ければ、わが国港湾は国際航路ネットワークにおける拠点としての地位を失うことにもなりかねない。出入港制度に関わる各行政機関は、府省共通ポータルによるワンストップサービスを徹底するなど、港湾の利便性向上に取組む必要がある。

3. 開庁時間の延長とそれにあわせたシステム運用時間の統一

府省共通ポータルは24時間稼働しており、昼夜を問わず出入港に係る申請を行なうことができるようになっている。しかしながら、行政機関毎に執務時間外の申請に対する対応が異なっており、電子申請と窓口での申請が混在するなど手続が煩雑#8となっている。加えて、申請に対する許可が翌日開庁時間まで下りず、夜間に出入港ができないといった問題点が指摘されている。
船舶の出入港に対するニーズは昼夜を問わずあることから、各行政機関は24時間申請を受け付けられるよう、また、土日祝日および夜間の出入港手続にも対応できる体制の構築を検討すべきである。あわせて、府省共通ポータルからの申請をもって出入港手続が完結するよう、府省共通ポータルと各行政機関の持つシステムとの間で、運用時間を統一すべきである。

3.輸出入制度の改革

(1) わが国認定事業者(AEO)制度#9の更なる拡充

1. 基本的な考え方

米国の同時多発テロ以降、国際物流におけるセキュリティ確保と貿易円滑化の両立が世界的な課題となっている。こうした中、各国でAEO制度の導入が進められ、わが国でも2006年3月にAEO制度が導入された。その後も政府の積極的な取組みにより認定対象事業範囲の拡大をはじめとする制度改革が実現している。

今後も、引き続きこうした積極的な姿勢を維持し、AEO制度を質・量ともに一層充実させることによりセキュリティ確保に対するわが国の姿勢を対外的に示し、国際貿易の秩序維持に貢献していくことが重要である。

また、貿易円滑化策では、輸出許可内容の訂正等の簡素化をはじめ、2011年10月に政府が公表した「貿易円滑化ワーキンググループ座長とりまとめ」で示されているAEO事業者に対する緩和措置を実現する必要がある。また、それに加え、セキュリティレベル及び法令順守レベルの維持を前提に、事業者のAEO取得に向けたインセンティブ、あるいは現在のAEO事業者がAEO事業者であり続けることのインセンティブを一層高める取組みについても引き続き推進すべきである。

これらの方向性については、官民一体となってAEO推進官民協議会などを通じて精力的に検討が進められているところであり、今後もこうした枠組みの中で議論の深化が図られることを期待する。

2. 具体的な方策
  1. AEO相互承認#10の成果の拡大に向けた諸外国との協議の継続
    わが国政府は、米国、EU(27加盟国)、シンガポール、韓国をはじめとする諸外国とのAEO相互承認を積極的に進めており、相互承認数は世界最多である。今後は、わが国のAEO事業者にとって相互承認の効果が拡大するよう、実施済みのAEO相互承認を一層深化させる取組みを進めるべきである。
    具体的には、諸外国がサプライチェーンセキュリティの確保に向けて導入を進めている船積24時間前ルールでは、リードタイムの増加による在庫の増大など、わが国事業者にとって大きな負担となっている。そのため、AEO相互承認の枠組みを通じて、わが国AEO事業者については同ルールの適用を緩和する措置の導入に向け、今後も引き続きAEO相互承認相手国との協議を粘り強く進めるべきである。

  2. AEO輸入者に対する担保要件の緩和
    わが国AEO輸入者は、特例輸入申告制度#11を利用すれば、保税地域に貨物を搬入する前に輸入申告を行ない、輸入許可を受けることができる。しかしながら、輸入者からは、特例輸入申告をせずとも、一般的な輸入申告で迅速な通関が確保されていることから、AEO輸入者になることのインセンティブが低いとの指摘がある。政府は、こうした点を踏まえ、AEO輸入者による特例輸入申告の際の担保提供要件の緩和を、「貿易円滑化ワーキンググループ座長とりまとめ」において論点として提起しているが、早期実現に向けて検討進めるべきである。
    また、AEO輸入者は貨物のセキュリティ確保や法令順守体制の整備、財務健全性を要件に税関長から予め認定されている事業者である。こうしたことから、今後は、AEO輸入者による特例輸入申告以外の輸入申告についても担保提供要件を緩和する措置の導入の可能性について検討すべきである。これによりAEO輸入者の担保保証料が削減され、キャッシュフローが改善することによって、わが国産業の競争力強化につながる。

  3. リターナブルパレットに関する手続緩和
    サプライチェーンの円滑化とセキュリティの確保を両立させるため、メーカー等が輸出者及び輸入者としてAEOの承認を得ている場合には、リターナブルパレットの再輸出・再輸入に係る通関手続の簡素化を行なう等、サプライチェーンを意識した緩和も行なっていく必要がある。リターナブルパレットに係る手続簡素化はリターナブルパレットの利用促進につながり、環境保全にも寄与するものである。

  4. AEO制度の更なる普及に向けた取組み
    わが国AEO制度では、通関業者、輸入者、輸出者、製造者、運送者、倉庫業者が制度の対象となっているが、計455者のAEO事業者うち、輸出者が242者となっている。AEO制度を質・量ともに一層充実させていく観点からは、質的レベルを維持しつつ、輸出者以外の者についても広くAEO制度を普及させていく必要がある。そのため、官民一体となって、更なる普及活動に努めるべきである。
    例えば、AEO事業者が関与しない輸出入貨物に対しては、審査・検査の重点配分の実施を強化するなど、AEO事業者に認定されないことによりデメリットが生じる制度としていく方向性も検討すべきである。また、将来的な課題としては、多段階型のAEO制度のあり方についても検討を始める必要がある。事業者のセキュリティ確保と法令順守体制の整備状況に応じて承認レベルを引き上げていく制度とし、その承認レベルに応じて通関手続等の緩和措置も段階的に拡大していけば、事業者がAEO制度に参画しやすくなる。また、その過程で、税関当局と事業者の対話を通じて双方の信頼関係を醸成していけば、事業者のセキュリティ確保と法令順守に対する意識を高めることにもつながる。
    産業界としても、AEO取得がセキュリティ対策を実施していることの証左であり、「選ばれる事業者」の条件となるようサプライチェーン全体でセキュリティ意識の向上に取組む必要がある。AEO事業者は、自社のセキュリティ確保と法令順守体制の整備に加え、自社が関与するサプライチェーン全体にも目を向け、セキュリティ向上への取組みを他の関係事業者にも積極的に働き掛けていく必要がある。

(2) 輸出入手続の電子化・ペーパーレス化の実現

1. 基本的な考え方

わが国では、輸出入通関申告の約98%が電子的に処理されており、府省共通ポータルの稼働によりシングルウィンドウ化も実現している。今後は、輸出入手続全体の効率化、円滑化の観点から、関税関係法令以外の法令に基づく手続(以下、「他法令手続」)のうち、薬事法に基づく手続をはじめ、未だ電子化されていない手続の電子化を進めていく必要がある。

その際、手続入口部分の電子化に留まるのではなく、行政内部処理の電子化や省庁間のデータ連携など、これまでの手続電子化の議論では対象とされてこなかったプロセスにも焦点を当てていく必要がある。

また、手続電子化に向けた取組みの結果が、添付ファイルによる電子メールでの申請や紙と電子データが混在するといった手続のあり方に留まることになっては、却って手続が非効率なものとなり、事業者の負担を強めることになりかねない。そのため、既存の手続のあり方をそのまま電子化するのではなく、関係法令の改正も含め、制度のあり方そのものの見直しと並行して電子化を進める必要がある。

2. 具体的な方策
  1. 行政内部処理の電子化促進
    政府は、未だ電子化されていない他法令手続について、申請件数の状況等を見極めつつ、関係省庁と協議しながら電子化の推進を検討する必要があるとしている。今後、他法令手続の電子化を検討するにあたっては、単に手続入口部分の電子化に留まるのではなく、処理結果を通知するプロセスまで含め、申請受理後の行政内部の処理についても電子化を進める必要がある。
    これにより、事業者は処理結果としての承認・許可等の証明を電子的に受け取ることができるため、後続の手続のために証明書類を持ち回るといった手間を省略できる。また、処理プロセスを可視化する仕組も構築できることから、事業者は自らの申請の処理状況を確認でき、事業の予見可能性が高まる。
    こうした取組みを推進するためには、行政手続の電子化率を示す指標のあり方も見直す必要がある。申請入口部分の電子化率のみならず、行政内部の処理、処理結果の通知など、手続のプロセス毎に電子化率を指標化し、公表すべきである。

  2. 統合データベースの構築による行政機関間でのデータの共有
    行政内部処理の電子化とともに、行政機関間の統合データベースの構築も実現すべきである。既に貿易管理手続に係るシステムについてはNACCS#12との統合が実現しているほか、食品衛生手続、植物防疫手続、動物検疫手続に係るシステムについても2013年10月にNACCSとの統合が予定されている。今後は、電子化されていない薬事法等のその他の他法令手続についても電子化を推進するとともに、NACCSへ統合し、真の統合データベースを構築すべきである。
    輸出入関係手続の全てがNACCSに統合されれば、事業者がNACCSの画面から必要な項目を1度入力するだけで、他法令手続から輸出入通関申告に至るまでの一連の輸出入手続の全てが完結する真のワンストップサービスの実現が可能となる。また、検査・検疫担当者が同一のデータを閲覧できるようになるため、柔軟かつ効率的なCIQ#13体制が構築できる。さらに、輸出入通関申告では、ICTを活用して、すべての輸出入者等に係る過去の申告実績等のデータベースを充実させ、税関内でこれを共有することにより、適正かつ迅速な通関ができるなど、信頼性の高い行政システムの構築が可能となる。

  3. 電子手続の更なる普及に向けた取組み
    電子手続の普及に向けた取組みも必要である。具体的には、官民手続では、行政内部の事務処理コストがかさむ「紙」による手続を廃止し、輸出入申告及び添付書類の電子化を義務付けるべきである。このため、システム投資余力に乏しい事業者でも電子手続が行なえるよう、国による税関窓口への専用端末の設置を一層拡充していく必要がある。
    他方、官民手続と並行して、民民手続の電子化も推進していく必要がある。現状では、各事業者がそれぞれ独自にシステムを構築しているため、データフォーマットが一致せず、事業者間でデータの受け渡しができないケースがある。船舶の予約や貨物の運賃、保険等の請求に係る手続をはじめ、民民手続の多くで電話や紙により手続が行なわれている。関係事業者間でデータフォーマットを統一するなど、事業者側も電子手続を促進させるべく努力し、国際物流情報プラットフォームであるNACCSと連携を図っていくべきである。なお、その際には、事業者がNACCSと柔軟に連携できるよう、政府によるNACCSの利便性向上に向けた継続的な働き掛けが行なわれることが望ましい。

(3) 日本における「出港24時間前ルール」への対応

1. 基本的な考え方

世界各国の税関にとって、国際物流におけるセキュリティ確保と貿易円滑化の両立が最重要課題となる中、2005年6月、「国際貿易の安全確保及び円滑化のためのWCO基準の枠組み」がWCO#14総会にて採択された。これを受け、米国、EU、中国、韓国などの諸外国では、積荷情報を活用したリスク管理に基づく水際取締りの強化を図るため、船積24時間前ルールの導入を進めている。

わが国政府も、こうした国際的な潮流を踏まえ、わが国における出港24時間前ルールの導入に向け、「貿易円滑化ワーキンググループ座長とりまとめ」において具体的な方向性を示している。わが国のセキュリティレベルが国際的な基準と比べて脆弱な場合、セキュリティホールとなってテロ等の標的となる可能性があるほか、わが国を通じてテロ等が国際的に拡散するおそれも生じることから、わが国においても出港24時間前ルールの導入は不可避である。

ただし、導入に際しては、わが国産業の国際競争力強化の観点から、実務的な実効性を確保し、手続の煩雑化など事業者への新たな負担増になるような事態は避ける必要がある。また、海上コンテナ貨物は、関係省庁が多岐に渡ることから、他法令との関係にも十分配慮する必要がある。

加えて、出港24時間前ルールの導入が、真にわが国社会および国民の安心・安全確保に資するものとなるよう、わが国政府は、貿易相手国政府に対して、自国内の貿易関係事業者に本ルールを周知・徹底するよう働き掛けていく必要がある。

2. 具体的な方策
  1. 近海諸国との貿易を考慮した制度設計
    現在、わが国における積荷情報の報告期限は、本邦入港24時間前となっている。政府は、セキュリティを目的としたリスク分析の強化を図るため、報告期限を原則出港24時間前とする必要があるとしている。
    しかしながら、中国、韓国、台湾を始め、アジア近隣諸国・地域からの輸入については、本邦入港まで24時間を要さない。そのため、積荷情報の報告期限を一律「出港24時間前」へ前倒しするのではなく、リードタイムの実態を十分調査した上で例外措置を講じる必要がある。
    政府も、近隣諸国において船積みされる海上コンテナ貨物に関し、一定の範囲内の近海航路については、出港前の報告を確保しつつ、報告期限の緩和を検討していきたいとしており、物流実態に配慮した制度設計がなされることを期待する。

  2. わが国AEO輸入者に対する緩和措置の導入
    わが国のAEO輸入者に対しては、例えば、日系現地法人を含む輸出国側の企業が輸出国側のAEO認定を受けており、かつ本邦と相互承認を交わしている国との貿易であれば、本ルールの適用を緩和する措置を講ずるべきである。

  3. ルールの段階的導入
    政府は、本ルールの実施時期について、貿易関係事業者への十分な周知とリスク分析に必要なシステム変更、および体制整備が必要であることから2年程度の期間を置くのが望ましいとしている。激変緩和の観点からは、こうした措置に加えて、事前報告の早期化と詳細化を同時に導入するのではなく、段階的に導入することも検討すべきである。例えば、制度導入時はマスターB/L#15だけを出港前に報告することから始め、海外のNVOCC#16の対応能力や情報の正確性等を見極めながら、ハウスB/L#17情報の出港前報告を検討するなどの対応が考えられる。
    また、実際の制度設計にあたっては、パイロットプロジェクトなどを通して問題点を明確化し、その対応策を構築したうえで導入に踏み切るべきである。

4.改革推進体制のあり方

これまで述べてきた改革の具体的方策を真に実効性のあるかたちで実現するには、政治の強力なリーダーシップのもと、官民一体となった取組が必要である。特に、港湾・輸出入諸制度に係る法令は多岐に渡ることから、省庁横断的な取組みが不可欠である。

例えば、米国では、同時多発テロを契機として国家安全保障省(DHS)を発足させ、セキュリティの強化と貿易円滑化に取組んでいる。また、韓国では、電子貿易促進法に基づき国務総理のもとに国家電子貿易委員会が設置され、スピーディな意思決定が実現している。

わが国もこうした諸外国の事例を参考に、関係省庁間の連携を促すための総合調整機能を構築すべきである。また、総合調整機能の実際の運営に際しては、制度の利用者である事業者とともに事業者の立場から改革を進めていく観点から、民間有識者をメンバーに加え、民間事業者のニーズを把握する体制を整備する必要がある。

以上

  1. http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/054.html
  2. http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/080.html
  3. 輸出入・港湾等関連手続きを処理する為に関係省庁が提供している各種電子申請手続きシステムを相互に接続・連携を図ることを目的として開発したシステム。2008年10月から稼働。輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社が運営。
  4. 関税法第67条の2により、わが国では、原則として輸出通関申告に際して、保税地域に貨物を搬入した後でなければ申告ができないとされていた。
  5. 国際海上交通簡易化条約(Convention on Facilitation of International Maritime Traffic)。国連の機関であるIMO(国際海事機構)のもと、50余りある協定の1つ。国ごと、当局ごとに異なる情報を異なるフォーマットで要求されることで海上輸送が複雑化する傾向にあることに対する懸念から、手続の簡易化を統一的に推進していくために1965年に制定された。
  6. 出港前に提出した出港届を受け付けない港長がある。そのため、税関、入管、港湾管理者には出港前に出港届を提出し、その後、港長には出港後に出港届を提出しなければならず、府省共通ポータルからの申請を二度行なわなければならない。
  7. 1980年の神戸港、横浜港、東京港は、いずれもコンテナの取扱量で世界の20位以内にランクされていた。しかし、アジア近隣諸国の主要港との競争が激化する中、2009年には、東京港は25位、横浜港は38位、また当時世界4位にあった神戸港は46位となるなど、わが国港湾の国際的地位は年々低下している。
  8. 港長宛の停泊場所指定願では、土日祝日および平日17時以降は府省共通ポータルからの電子申請を受け付けないため、窓口で申請を行なわなければならない。また、平日17時前であっても閉庁時間近くの申請に対する回答は、翌日開庁時間まで下りないなどの事例が報告されている。
  9. 国際貿易の安全確保と円滑化を両立させるため、貨物のセキュリティ管理と法令順守の体制が整備された国際貿易に関連する事業者(輸出者、輸入者、倉庫業者、通関業者、運送者、製造者)について、税関長が承認又は認定を行なうことにより、当該事業者に係る貨物の通関手続きの簡素化・迅速化を図る制度。AEOはAuthorized Economic Operatorの略。
  10. 税関当局同士で、それぞれの国のAEO制度を相互に認証し、相手国のAEO制度の参加者に対して、自国における通関手続上のベネフィットを付与するもの。
  11. AEO輸入者について、輸入申告と納税申告を分離し、貨物が本邦に到着する前に輸入申告を行ない、輸入許可を受けることができるとともに、納税申告前に貨物を引き取ることができる制度。輸入貨物の迅速かつ円滑な引取りが可能となる。
  12. Nippon Automated Cargo and Port Consolidated Systemの略。税関、関係行政機関及び関連民間事業者をオンラインで結び、税関手続や港湾手続などの輸出入等関連業務とこれに関連する民間業務を処理するシステム。運営主体は輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社。
  13. Custom(税関)、Immigration(出入国管理)、Quarantine(検疫)の略。
  14. World Customs Organization(世界税関機構)の略。
  15. 船会社が発給する船荷証券(Bill of Landing)。
  16. Non Vessel Operating Common Carrier(利用運送事業者)の略。自らは船舶の輸送手段を保有せず、船会社のサービス(船舶輸送)を使って貨物を輸送する事業者。
  17. NVOCCが発給する船荷証券。

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