Policy(提言・報告書) 総合政策  決断と実行で日本を再生する - 2012年度事業方針 -

2012年6月5日
一般社団法人 日本経済団体連合会

わが国はいま、歴史的な岐路に立っている。グローバル競争が激化する中で、歴史的な円高水準の是正、デフレからの脱却、少子・高齢社会に即した社会保障制度の再構築、財政健全化、経済連携の推進などの従来からの課題に加えて、昨年発生した東日本大震災からの復旧・復興やエネルギーの安定供給と経済性の確保などが喫緊の課題となっている。その対応に遅れをとれば、産業の空洞化、雇用喪失は加速し、経常収支も悪化する。日本の再生には、国内改革の断行により国を開くとともに、成長戦略の具体的な工程表を策定し、スピード感を持って実行する必要がある。政治の強いリーダーシップと党派を超えた国益重視の大局的な決断を求めたい。

我々は「行動する経団連」として、下記の政策課題の解決を強く迫るとともに、自ら「未来都市モデルプロジェクト」の推進やグローバル人材の育成をはじめとする様々な取り組みを通じてイノベーションの創出に努め、日本再生に中核的な役割を担う。併せて、これまで企業活動を通じて培った知識と経験を活用し、国民各層の理解を得るための分かりやすい情報発信に努めていく。

1.本格的な復旧・復興の加速化

震災からの本格的な復旧・復興に向け、市町村の行政能力向上のための支援を行なうとともに、国民一丸となった取り組みを強化する。特に、復興庁の権限を強化し、強力なリーダーシップの下に、被災地の復興の基盤整備の加速化、復興特区制度の充分な周知による最大限の活用ならびに更なる制度拡充を通じて、内外からの投資の促進と雇用の拡大を図り、経済成長を牽引する。

2.成長の実現と雇用の創出

国際競争力の強化に向けて、大胆な規制・制度改革、法人実効税率の更なる引き下げ、歴史的な円高水準の是正など競争条件のイコールフッティングを図る。併せて、政府研究開発投資の対GDP比1%及び5年間で総額25兆円の予算目標や研究開発促進税制の拡充などイノベーションの加速に資する施策の実現を目指す。また、道州制導入による広域経済圏の形成、都市機能の国際競争力強化、観光産業の振興、次世代成長産業としての農業の再生、さらには環境、医療・介護など今後更なる成長が期待できる分野の開拓を通じて、実質2%、名目3%程度の成長を実現し、全員参加型社会に向けた多様な雇用機会の創出を図る。

3.持続可能な社会保障・財政構造の確立

世界に類例を見ない速さで進む高齢化の中、経済社会の変化に対応した社会保障制度の再構築を図るため、自立・自助を基本に、給付の効率化・重点化に踏み込んだ制度改革を進めるとともに、当面の財源確保に不可欠な消費税率の引き上げを実現する。これと並行して、徹底的な行財政改革による歳出削減ならびに税制の更なる改革にも取り組み、中長期的に財政健全化への筋道をつける。また、待機児童解消をはじめとする少子化対策への取り組み強化を図る。さらに、国民生活の基盤インフラとして、共通番号制度の早期かつ円滑な導入を実現する。

4.エネルギーの安定供給とエネルギー・環境政策の再構築

成長戦略の実現に不可欠なエネルギーの安定供給と経済性の確保に向け、エネルギー政策と温暖化対策を一体的に見直す。その際、短期・中期・長期の時間軸を意識した対応が肝要であり、短期的には、安全性の確認された原子力発電所について、地元の十分な理解を得ながら再稼働を進める。中長期的には、再生可能エネルギーが重要な役割を果たせるよう、コスト低減や系統安定化のための技術革新を図る。また、わが国が誇る世界最高水準のエネルギー・環境技術を活用し、グリーン・イノベーションを実現する観点から、経団連低炭素社会実行計画等の産業界の主体的取り組みと政府の施策との連携を強化する。

5.経済統合の促進と海外インフラの整備

TPPへの早期参加を梃子として、日中韓FTA、ASEAN+6による経済連携協定、日EU・EPAなどのEPA/FTAを通じた主要国・地域との経済統合を目指す。併せて、人材育成、技術協力、PPP(官民連携)によるパッケージ型インフラの輸出を通じて、経済統合を支えるハード・ソフト両面のインフラを整備し、わが国の成長につなげる。その前提となるわが国企業の国際競争力強化に向けて、国際標準化戦略の強化、PFI実現に向けた最適な官民連携体制の構築、M&Aの推進を図るとともに、民間金融機関との連携を進めつつ、JBIC(国際協力銀行)やNEXI(日本貿易保険)による国際金融機能の強化やJICA(国際協力機構)の海外投融資の活用等に取り組む。

以上