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Policy(提言・報告書) 都市住宅、地域活性化、観光 観光関連産業の競争力強化に向けて ~観光庁観光産業政策検討会「中間骨子案」へのコメント~

2013年2月22日
経団連観光委員会企画部会

観光立国の実現には、新たな観光立国推進基本計画にも示されている通り、観光産業の国際競争力の強化及び観光の振興に寄与する人材の育成が不可欠である。

こうした中、観光庁が、わが国観光産業のブランドを確立し、世界最高・最先端の観光産業への飛躍を目指す観点から、「観光産業政策検討会」を設置し、検討を進めていることは時宜を得たものである。

同検討会で2012年12月19日に示された「中間骨子案」は、「観光サービスの品質の維持・向上を通じた日本ブランドの確立」など6つの論点を打ち出すなど意欲的な内容になっている一方、政府が施すべき政策と産業界が創意工夫の下に取り組むべき施策との整理が不十分なところもある。

当部会としては、官民が適切な役割分担の下で国際競争力ある観光サービス産業を創出し、国を挙げた観光立国を実現するとの観点から、民間の自発的な取組みの促進策、共通のインフラ整備といった政府・自治体に期待する政策を中心に、「中間骨子案」の項目に沿って以下コメントする。

政府には、世界最高・最先端の観光産業の実現に向けて、具体的な目標を示し、戦略的かつ継続的な取り組みを行うことを強く期待する。

1.「論点1 観光サービスの品質の維持・向上を通じた日本ブランドの確立」

訪日外国人観光客の満足度向上に向け、ランドオペレーター等への認証制度の導入を図るのも一案である。なお、制度構築の際には、海外の規制や認証の動向、品質・コスト両面での競争、官民の適切な役割分担等を念頭に置きつつ、当事者の意見も十分に踏まえながら検討することが望ましい。

国を挙げた訪日外国人観光客へのサービスの向上という観点からは、民間の取組みに加え、政府も、東北の観光振興も含めて訪日客のビザ発給要件のより一層の緩和、入国審査の迅速化・効率化など、国の制度面・手続面を見直すとともに、「おもてなし」を意識した窓口対応の改善を図るべきである。韓国の事例も参考に、日本政府観光局(JNTO)の下に多言語・24時間対応のコールセンターの設置や、苦情相談窓口を設置することも検討すべきである。

2.「論点2 先進的な旅行産業への挑戦」

多様化する顧客ニーズに対応するため、介護旅行、復興ツーリズム、若者旅行の促進や豊かな地域観光資源の活用など、新たな市場に向けた地域・民間における取組みに対し、政府・自治体は積極的な後押しをすることが望ましい。

また、将来の市場創造とグローバル人材の育成の観点からは、若年層のパスポート取得について財政的な支援を行うべきである。

一般旅行者やMICE等の誘致は、世界的には国家間の競争になっている面もある。地域・民間が営業力を強化するためは、まずは政府がインバウンドやMICE誘致の意義を認識し、国民の理解を得ながら、総理や大使等のトップセールスを行い、国際社会の中で日本の存在感を高める必要がある。こうした取組みについては、政府が進めるクールジャパン戦略の一環として、各省庁連携による政府を挙げた取組みとしていく必要がある。

また、JNTOの体制・財政基盤の強化、IR(Integrated Resort)も視野に入れた大規模MICE施設等のインフラ整備についても、国の積極的な取組みが不可欠である。

3.「論点3 宿泊産業におけるマネジメント・生産性等の改善・向上」

宿泊産業の再生・競争力強化に向けて、民間では食材の一次加工やプロモーションの共同化による効率化を図る取り組みが見られる一方、「地域ならではの食」を求める旅行者への対応や地域活性化の観点から、宿泊業と地域の農水産業・食品産業、さらには宿泊業と金融機関等との異業種連携の動きも見られる。

政府は、観光庁に加え、経済産業省や農林水産省などの施策も活用しつつ、こうした取組みを促進することや、必要に応じて行政が観光の観点から地域における話し合いの場を設けることも検討すべきである。

4.「論点4 IT技術の発展・旅行の安全に対するニーズの高まり等新しい事象への対応」

訪日外国人観光客の利便性向上の観点から、わが国はインターネットによる多言語での情報発信など積極的にICTを利活用したサービスを展開すべきであり、地域・民間における無料Wi-Fiサービスの提供やデジタルサイネージの整備等の取組みに対して、政府・自治体は予算・税制措置やコンテンツの提供などの支援を図るべきである。

経営戦略の策定、国を挙げたプロモーションに向けては、様々な情報の収集が不可欠である。国は引き続き観光・MICE関連の統計データを整備するとともに、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)、ICCA(国際会議協会)をはじめとする国際的なネットワークに国を挙げて積極的に参加すべきである。

5.「論点5 観光産業における優秀な人材の確保・育成」

観光関連産業の国際競争力の強化にあたっては、それを担う人材の育成・確保が急務である。政府においては、マネジメント層の育成に加え、フロント業務等を担うホスピタリティ人材の育成(語学・国際教育を含む)、外国人留学生やその卒業生、海外人材の積極的な活用・登用を図るための在留資格の柔軟化・明確化を推進すべきである。

6.「論点6 地域との関わり・地域における観光産業のあり方」

交通網の整備に伴う観光客の行動範囲の拡大にあわせた魅力的な旅行商品や観光地域づくりを促進するため、国は引き続き市場の動向を踏まえつつ、「地域限定第三種」など旅行業の種別のあり方や「観光圏」等の広域連携の促進策を検討すべきである。

また、県境を越えた広域連携の取組みの促進に向け、地域の自主性を尊重しながら、広域観光組織と地方運輸局との連携強化や広域観光組織の体制・財政基盤強化を行うべきである。

なお、国際空港・巨大クルーズ船発着可能な港湾・大規模MICE施設等については、グローバル競争の観点から選択と集中が不可欠である。政府のリーダーシップによる戦略的な整備と地域間の役割分担に基づく連携促進に強く期待する。

以上

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