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Policy(提言・報告書) 税、会計、経済法制、金融制度 地方法人課税のあり方に関する意見

2014年4月24日

税制調査会会長 中里  実 様
法人課税DG座長 大田 弘子 様

政府税制調査会 特別委員 佐々木 則夫

地方法人課税のあり方に関する意見

経済の好循環を継続していくためには、法人実効税率の引き下げがグローバル競争の中で不可欠であり、実質的な税負担軽減となるよう、着実に25%程度まで税率を引き下げていくことが重要である。

1.地方法人課税について

法人実効税率の10%引き下げのためには、地方法人課税の改革が不可避である。

地方法人課税は地域間の偏在性が大きく、税収も不安定で地方税としては不適切であるばかりか、近年の改正で地方法人特別税や地方法人税が創設されるなど、より複雑化している【添付1】。また、地方法人課税の見直しにもかかわらず、現行の自治体の区分を前提とする以上は、一部の自治体を除き、財源不足の解消の見込みはなく、税収の再配分により、格差を是正する以外の道はない。応益性を徹底すればするほど、人口が多くサービスが充実している東京等大都市圏に税収は集中し、地域間格差は助長される。

このため、地方法人課税の見直しにあたっては、単なる財源確保の観点からではなく、税の基本原則を踏まえ、個人住民税、固定資産税等も含めて地方税全体の見直しを行うべきである。地方法人特別税、法人事業税及び法人住民税の所得に対する課税部分は国税の法人税に統合し、国際的イコールフッティングを踏まえた税率引き下げを行い、交付税等により適切に配分することが偏在是正、効率性、税制の簡素化の観点から望ましい。

また、「地域社会を支える会費」としての地方税については、赤字企業でも、固定資産税、事業所税、住民税均等割等、所得にかかわらず多くの税負担があることを忘れてはならない。平成23年度で推計すると、欠損法人でも約4.5兆円を負担している【添付2】。

2.外形標準課税について

事業税における外形標準課税の強化は赤字法人課税の強化に他ならない。国際的にみても企業の固定的な負担となる外形標準課税は廃止、縮減の方向である【添付3】。

特に付加価値割は、「賃金への課税」が中心であり、人を雇用するほど増税となることから、雇用の維持、創出に悪影響を及ぼす【添付4】。なお、雇用安定控除を適用すればよいとの意見が一部にあるが、雇用安定控除を適用しても賃金増加額の7割は課税対象となり、また、現在も報酬給与額が収益配分額の7割を下回り、賃金増加後も7割を下回る場合には適用が受けられず、賃金増加額の全額が課税対象となる為、現在、政府一体となって取り組んでいる賃金上昇に向けた取り組みにも逆行する【添付5】【添付6】。

しかも、外形標準課税だけでは税収の偏在是正には大きな効果は期待できない【添付7】。また、所得割を縮減して、資本割、付加価値割を拡大し、見かけ上の実効税率を下げるといった手法では、全体としての実質負担は変わらず、議論の目的から外れている。ただし資本割については、課税されない事例も生じており、技術的な見直しは必要である。

外形標準課税を見直すのであれば、付加価値割の課税標準をより簡素化する、法人住民税均等割と併せた税として検討する、といったことが必要である。

また、現在、資本金1億円超の法人に課されている外形標準課税の対象を資本金1億円以下の法人にまで拡大するならば、一般的に人件費の比率の高い中小企業の経営を大きく圧迫することとなる。中小企業は地域の雇用の約8割を支えており、雇用の喪失、地域経済全般の衰退、ひいては日本経済の衰退という、経済の悪循環を引き起こす恐れがある。

3.法人事業税の損金算入について

事業税は、その本質上、所得に課せられる法人税や法人住民税とは異なり、「事業」に対して課せられる税である。よって、固定資産税や都市計画税等と同様、損金算入できるのは税理論として当然である。財源捻出のために理論を無視したような議論を行うのではなく、前述の通り、事業税の所得割部分は、国税の法人税と統合するといった税体系全体としての議論を行うべきである。少なくとも利益に関連する金額を課税標準とはしない付加価値割及び資本割は企業会計上、営業費用項目として処理することとされており、損金算入は認められるべきである。

以上

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