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Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 日米IED民間作業部会共同声明 ~グローバルなデータ流通と活用強化を求める~

2014年9月16日
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日米産業界は、本年3月にとりまとめた共同声明#1において、イノベーション創出の前提として自由なデータ流通の維持を望む立場より、日米両政府の協力推進を提言した。

その後、4月に官・民・学・市民団体・技術コミュニティが参加し、ブラジルで行われた「インターネット・ガバナンスに関するグローバルなマルチステークホルダー会合」(NETmundial)がインターネット・ガバナンスの原則とロードマップを発表した。また、5月の国連「開発のための科学技術委員会」(CSTD:Commission on Science and Technology for Development)第17回年次総会以降は、IGF(Internet Governance forum)をはじめとする、2005年世界情報社会サミットの成果についての2015年全体総括レビューに向けた議論が具体化している。

一方、世界各国で、安全性を高めるなどの理由で、データの現地保管や、保管設備・要員の現地化を求める動きが見られることに対し、上述の自由なデータ流通の維持を求む立場から、日米産業界は懸念を有している。このような現地化要件は、新しいサービスの創出を阻害すること、いたずらなデータの分散を招いて利用者の利益と機会を損なう恐れがある。

こうした状況を踏まえ、日米産業界は、以下の共同声明を取りまとめた。

1.ITU全権委員会議に向けた意見

2012年12月のITU世界国際電気通信会議においてインターネットへの政府の関与をめぐる考え方の相違が顕在化したことに鑑みれば、本全権委員会議におけるインターネット政策議論の行方は決して予断を許さない。

日米両政府には、全ての企業にとって必要不可欠な事業基盤としてのインターネットの安定した運用が危機にさらされることのないよう、本全権委員会議におけるインターネット政策議論が政治的・外交的な駆け引きに使われることなく、経済的観点を重視しつつ適切なマルチステークホルダーによるコンセンサスをベースに新興国等に対してイニシアティブをとることを望む。具体的には、インターネットの先進的な利用を確保するため、政府は、越境データフロー、データ主権問題等への関与・管理を最小限とし、さらに、民間主導のグローバルなインターネット・ガバナンス議論を阻害せず、自主的な規律と発展を支援するよう努めるべきである。一部の国がITU世界国際電気通信会議で行ったような、セキュリティや国家主権の名目で、インターネットを規制する試みなどは、国家の過度な干渉であり、避けられるべきである。

2.IANA機能の監督権限移管に向けた意見

2014年3月に米国商務省国家電気通信情報庁(NTIA:National Telecommunications and Information Administration)は、NTIAが有するIANA(Internet Assigned Number Authority)機能の監督権限を、グローバルマルチステークホルダーコミュニティへ移管する意向を表明した#2。この意向に含まれる4原則#3、および政府主導ではなくマルチステークホルダープロセスによる解決という方向性は、日米産業界として支持する。

IANA機能の監督権限移管はふたつの側面で新たな時代に向けた要素を含む。ひとつは、インターネットの根源的機能たるIANA機能の監督権限移管という管理形態自体の進歩、もうひとつは、マルチステークホルダーが関与するICANNを中心とした移管検討を通じ、マルチステークホルダープロセスの成熟性を確認することができることである。この移管検討では、並行するICANN自身のアカウンタビリティの向上等の構造改革と併せて、拙速に結論を出さず必要な議論を尽くすことが重要である。このIANA機能の監督権限移管の意義を、日米両国が政府レベルでも共有し、グローバルな連携に積極的に参加することを期待する。

3.サイバーセキュリティ

日米産業界は、本年3月にとりまとめた共同声明において、日米両政府に対し、サイバーセキュリティに関する具体的な協力体制の構築を求めていたところ、日本政府の体制強化を推進するサイバーセキュリティ基本法案が国会提出された。この法案が成立することにより、経済的・技術的観点でも日米連携が強化される。日米両政府には、さらなる国際連携に向けたリーダーシップを発揮することを期待する。

4.個人情報保護

日米両政府は、個人情報保護とデータ利活用促進のバランスを取る施策を推進中である#4。データ利活用は国境を超えて促進されることが有益であり、日米両政府は、APEC等において個人情報保護ルールの議論と執行について主導しつつある。マルチステークホルダープロセスと自主規制を包含した個人情報保護ルールについて、日米間で可能な限りの整合性と相互運用性を図るべきである。このように、適切な保護と活用のバランスの取れたアプローチをグローバルに展開することを望む。

***

日米産業界は、この共同声明発表の機会に、「国境を渡るデータが産む経済効果とその事例」を付属資料にて提示する。これらの事例によりデータの自由かつグローバルな流通がイノベーションを促し、アジア太平洋地域をはじめとする世界中の消費者・生活者の利益や地域の繁栄に貢献することへの理解が深まることを確信する。

日米両政府におかれては、インターネットエコノミーの健全な発展が、世界の国々が直面するさまざまな課題への有効な解決策となりうることを認識し、インターネットをめぐる政策的課題を重要な外交政策の一環と位置づけ、統一的、横断的に実施する体制を整備していただきたい。そして、日米両政府間の緊密な協力体制を構築し、国際的な議論をリードすることを改めて期待する。

〔付属資料〕
「国境を渡るデータが産む経済効果とその事例」

以上
本共同声明は、経団連情報通信委員会企画部会とACCJ(在日米国商工会議所)が共同で作成し、2014年9月16日、17日に、総務省と米国務省がワシントンDCで開催した「インターネットエコノミーに関する日米政策協力対話」(日米IED:Internet Economy Dialogue)において、経団連とACCJから提出したものです。

  1. 「日米IED民間作業部会共同声明2014」(2014年3月11日)
    http://www.accj.or.jp/en/about/committees/committee-materials/doc_view/487-usjapan-internet-economy-industry-forum-joint-statement-2014
  2. 「重要なインターネットドメイン名機能の移管の意向表明」(2014年3月14日)
    http://www.ntia.doc.gov/press-release/2014/ntia-announces-intent-transition-key-internet-domain-name-functions
  3. 4原則:「マルチステークホルダーモデルを支持し、強化する」「インターネットにおけるDNS(Domain Name System))のセキュリティ、安定性、回復力を維持する」「IANAサービスに対する全世界のカスタマーおよびパートナーの要求と期待に対応する」「インターネットのオープン性を維持する」
  4. 例えば日本では、本年6月に個人情報保護法の改正を含む「制度見直し大綱」が決定され、2015年の通常国会に改正法案が提出されるロードマップが改めて示された

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