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Policy(提言・報告書) アジア・大洋州 日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム2015共同報告書

(和文仮訳/英文正文
2015年12月11日

はじめに

日印のビジネス・リーダーは、日印首脳が両国間の特別な戦略的グローバル・パートナーシップを一層強化することにより、民主主義、法の支配など普遍的価値観を共有する両国が世界経済の牽引役を果たすことを強く望むものである。また、昨年9月の日印首脳会談共同声明の「日印投資促進パートナーシップ」における今後5年以内に日本の対印直接投資等を倍増するという目標達成に向け、ビジネス環境整備等の両国政府の支援に期待する。

日印のビジネス・リーダーは、安倍総理の「アベノミクス3本の矢」ならびに「新3本の矢」の政策が日本経済を成長に導き、日本市場に新たな機会をもたらし、両国企業の貿易投資を加速する効果があるものとして、引き続きその強力な推進に期待を表明した。

また、インド政府がこの18ヶ月間に実施した諸改革は、日本企業のインドへの関心を深め、インド経済への信頼を強化した。日印のビジネス・リーダーは、モディ首相が懸案の諸改革を加速することに強い期待を表明した。日印双方は、昨年9月にモディ首相が表明され、10月にインド政府に設置された日本専用窓口「ジャパン・プラス」を歓迎するとともに、同機関がインドにおけるビジネス円滑化に活用されることを求める。加えてモディ首相が、インドのビジネス環境を改善して、世界銀行のDoing Business報告書におけるインドの順位を現在の130位以下から3年内に50位以内に引き上げる目標を表明したことは、インドをグローバル経済の牽引者に導くものと評価する。これらのモディ首相の取り組みは、強いインドの実現に資することから、両国経済界は強く支持する。

さらに日印のビジネス・リーダーは、2015年末にASEAN経済共同体が誕生することから、アジア全体の経済連携の一層の強化に向け、日印が大きな役割を果たす必要があるとの認識で一致した。

本フォーラムは、2007年の設置以来、日印双方のメンバーが協力し、日印包括的経済連携協定(IJCEPA)の実現を含め、両国間の多くの2国間の課題を解決してきた。日印経済界は、日印両国が世界経済の成長エンジンとしての役割を継続して果たすべく、ビジネスの立場から両国政府に協力していく。

日印のビジネス・リーダーは、両国首脳に以下のとおり共同報告書を提出する。

1.ビジネス環境の改善のための日印包括的経済連携協定(IJCEPA)の活用

日印のビジネス・リーダーは、両国間の貿易投資拡大のため、両国間のビジネス環境上の諸問題の解決を引き続き求める。

まずは、両国が署名し3年以上経過する日印社会保障協定の早期発効は、両国ビジネスマンが抱える将来不安の解消と企業負担の軽減のために、極めて重要である。

インド側は、日印両国間のサービス貿易を拡大するために、両国政府が、日本で課している配当・ロイヤルティ・技術サービス料に対する10%の源泉課税の廃止についてIJCEPAの「ビジネス環境の整備に関する小委員会」の場において取り組むよう求めた。

また、日本企業の対印貿易投資拡大のため、インドにおける土地収用の円滑化、物品サービス税(GST)の早期導入、知的財産権制度の国際的整合性の確保を求める。同時に、幾つかの進展がみられるものの、別表に記載するこれまで日印経済界が提起してきた数々の課題の早期解決が重要である。

さらにインド側は、両国の税務当局に移転価格税制上の問題を解決するための新たな制度(MAP: Mutual Agreement Protocol)を導入することの必要性を指摘した。

日印のビジネス・リーダーは、世界経済の回復とともにIJCEPAの一層の活用が、今後の日印貿易投資の拡大につながることに期待を表明した。そのためにも、IJCEPAの諸規定の更なる理解と活用が必要である。日印双方は、IJCEPAに基づき設置されている「ビジネス環境の整備に関する小委員会」が、2011年のIJCEPA発効以来一度のみの開催に留まっていることに懸念を表明した。同会合を両国官民が参加して毎年定期的に開催すべきであり、その成果を両国政府が速やかに政策に反映することが重要である。

2.インフラ整備の重要性と日印協力

日印のビジネス・リーダーは、日本政府のODA(政府開発援助)の供与がインドの貧困削減や社会資本整備に果たしてきた役割を高く評価する旨を表明した。

日印のビジネス・リーダーは、デリー・ムンバイ産業大動脈(DMIC)とチェンナイ・バンガロール産業回廊(CBIC)などの回廊計画とその関連プロジェクトを推進することが、「メイク・イン・インディア」や「クリーン・インディア」などのインドの政策目標に合致するとの認識を共有した。インドにおける製造業を発展させるべく、電力・スマートグリッド、水処理、道路、鉄道、港湾、空港、工業団地等の整備を引き続き推進すべきである。

日印のビジネス・リーダーは、インフラ整備に関連する日本企業の参入促進の観点から、インドにおける各種規制の撤廃・緩和や、中央政府と州政府の許認可権限の明確化と手続きの簡素・迅速化・電子化、PPP(官民パートナーシップ)を促進するための政府保証の付与等の官民の適切な役割分担を引き続き求める。

3.戦略的分野における協力

日印のビジネス・リーダーは、先進技術の導入や農業、情報通信、水処理、衛生、リサイクル等の分野における両国間の技術交流が重要であるとの認識を共有した。

また双方は、本年7月に日印共同調査が終了したムンバイ・アーメダバード間に加え、ムンバイ・デリー・コルカタ・チェンナイの4都市をむすぶ高速鉄道整備計画をインド政府が決定したことを歓迎した。

インドにおける電力部門のインフラ改善の一環として、原子力発電プラント建設における日印協力は戦略的に重要である。こうした観点から、日印のビジネス・リーダーは、両国政府が原子力発電所の安全性を最大限確保しつつ、原子力協定の締結を前提とした協力に取り組むことを求めた。

また、日印間における防衛ならびに安全保障分野の合意に基づき、両国民間におけるハイテク分野の協力強化が求められる。

これら戦略分野での共同事業を推進する上で、ソフトインフラとしての良質な人材の育成・確保が不可欠であるとの認識の下、日印のビジネス・リーダーは、技能訓練、大学生や企業内におけるインターンシップ、語学研修制度等の充実の重要性を改めて指摘した。

4.グローバルな協力

日印間の特別な戦略的グローバル・パートナーシップに基づくグローバルな協力強化は、アジア太平洋地域の経済を発展させる。日印のビジネス・リーダーは、本年末のASEAN経済共同体発足がアジア全体の経済連携の深化と拡大に資するものであるとの認識で一致した。とりわけASEAN地域全体を通じた連結性強化の進展は、インドのベンガル湾諸州における日本企業の貿易投資拡大に資する。インド政府ならびに各州が日本政府と推進している日本企業向け工業団地についても、この観点から歓迎する。

双方は、現在交渉中の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が包括的で高水準な法的基盤として有益なものとなるよう、その早期妥結に向け引き続き共同でイニシアティブを発揮することで合意した。とりわけRCEPは物品貿易、サービス貿易、投資の自由化に加え、原産地規則の統一と累積制度の導入を通じて地域における生産ネットワークの拡大やサプライチェーンの強化に貢献し、モディ首相が推進する「メイク・イン・インディア」政策の充実にも資するとの認識で一致した。

今後を見据えて

本フォーラムの両国における事務局を務めているインド工業連盟と経団連は、本共同報告書の内容を実行に移すための共同作業部会の設置を含むフォローアップ・メカニズムの構築で合意しており、IJCEPAの「ビジネス環境の整備に関する小委員会」を通じて、両国政府が本共同報告書の提言を速やかに実施に移すための各種フォローアップを定期的に実施していくことで合意した。

総括

日本とインドは、相互の尊敬と協力の精神に基づき、歴史的に強い結びつきを構築してきた。加えて、両国には、相互補完的な関係および地政学的重要性に基づいて戦略的経済連携を発展させうる大きな潜在性がある。

日印のビジネス・リーダーは、アジアで主要な二つの民主主義国家の共同の取り組みが、アジア太平洋地域の安定と繁栄に寄与することを確信する。

最後に、本フォーラムのメンバーは、日本の安倍総理とインドのモディ首相より我々に寄せられた信頼に対し、深い謝意を表するものである。

印日ビジネス・リーダーズ・フォーラム共同議長
ババ カリヤニ
日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム共同議長
榊原 定征
以上

共同報告書別表 日印要望事項一覧

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