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Policy(提言・報告書) 経済連携、貿易投資 投資協定等の締結加速を求める ―21世紀型の国際投資ルールの構築に向けて―

2015年12月15日
一般社団法人 日本経済団体連合会

1.はじめに

グローバル化、とりわけ国境を越える投資の活発化を背景に、国際投資がわが国の経済成長に果たす役割の重要性がますます高まっている。

経団連では、かねて、二国間・地域間の経済連携協定(EPA)、投資協定の締結などにより、国際的な投資ルールの構築と、それを通じた国境を越える投資の保護・自由化・円滑化を強く求めてきた#1。なかでも、2008年4月、わが国の対外投資の法的基盤整備等の進め方について、包括的な考え方を提示し、働きかけを進めてきたところであるが、本提言では、2008年以降のわが国の取組みの進捗と、国際投資をとりまくグローバルな環境の変化を踏まえ、改めて、投資協定ならびに投資章を含むEPA(以下、「投資協定等」と総称)の具体的な進め方に対する経団連の考え方を示すとともに、重点的に取り組むべき国・地域を例示する。

2.現状と課題

(1)国際投資の経済的な意義と法的規律の必要性

国際投資の活発化により、1990年に9.8%であった対内直接投資残高のGDP比が2014年には33.7%に拡大するなど、世界経済に占める国際投資のウェイトは急速に拡大している。この意味で国際投資は、投資受入国を含む世界経済の成長と雇用にとって極めて重要である#2。国境を越える投資交流は、投資国側の企業にとって事業機会の拡大につながるのみならず、投資受入国にとっても、国内雇用の創出や、外資、新たなビジネス・モデル、技術といった経営資源を導入する契機となる。したがって、外国投資に関する適切な法的規律の整備は、投資元の国家ならびに外国投資家の利益に資するだけでなく、投資受入国にとっても必要不可欠である。

そのような法的規律として、投資受入国が外国投資家と投資財産に対し、差別的・恣意的な扱いや収用等を行わないことを約束するなど、外国投資を保護する目的で、二国間投資協定(BIT)が締結されるようになった。その数は1990年代に飛躍的に増加し、2014年末現在で3,271#3に達している。近年では投資保護に加え、投資許可段階の内国民待遇やパフォーマンス要求の禁止といった自由化を含む内容も約束されるようになっている#4

(2)わが国の取組み

近年、TPP協定の大筋合意を含め、わが国の投資協定等の締結には一定の進展がみられた#5。また、2013年の「日本再興戦略」においては、わが国の産業界のニーズに即した投資協定の締結を進める方針が策定された#6

対外投資のなかでもわが国が強みを活かせるインフラ・システムに関しては、経団連は2013年より「戦略的なインフラ・システムの海外展開に向けて」と題する提言を取りまとめ、本年も去る11月に新規のアンケートに基づく提言(以下、2015年インフラ提言)を公表したところである。2015年5月に安倍総理が「質の高いインフラパートナーシップ」を提唱するなど、わが国としてもインフラの海外展開を成長戦略の柱と位置づけて推進しており、過度なローカルコンテンツ要求の排除、ビジネス環境整備、収用やコンセッション契約の一方的変更・破棄等に直面した際の仲裁手続等、インフラ事業を行う際、投資協定等の役割は大きい。

しかしながら、投資協定等の締結は経済界が期待するスピードでは進んでいない。前述の2008年提言では、対外投資保護・自由化の必要性が高い11カ国を例示したが、コロンビアを除き、協定の発効には至っていない#7。また、投資協定ならびに投資章を含むFTA・EPAの数においても、依然としてわが国が諸外国に大きく劣後している#8

わが国にとって重要な相手国・地域との間で、わが国からの投資に対する質の高い法的枠組みを提供するため、投資協定等の締結の加速が急務である。

3.基本的な考え方

(1)三つの分類

以上の観点に基づき、わが国政府には、以下の三つの分類と基本的な考え方に沿って、投資規律の整備を求める。

  1. (1) 現在交渉中の投資協定等の早期妥結と発効
  2. (2) 投資協定等が未締結の重要な国・地域との間での交渉の早急な開始
  3. (3) 既存の協定について、投資の保護・自由化の水準を引上げるための継続的な見直し。及び、必要性の高い国について、改訂交渉への着手

(2)協定に盛り込むべき内容

協定に盛り込むべき内容としては、投資家対国家の仲裁(ISDS:Investor-State Dispute Settlement)条項、公正衡平待遇義務、投資の自由化ないし外資参入規制への規律(投資前の内国民・最恵国待遇、パフォーマンス要求の禁止等)、投資活動の円滑化(法令の公表、パブリックコメント等による透明性の確保)、送金規制の撤廃(ロイヤルティを含む)#9、清算・撤退の自由、ビジネス環境整備#10、投資に合理的に関連する契約をカバーするアンブレラ条項#11などが必要である#12

あわせて、投資協定等を補完するものとして、わが国企業がグローバルな規模で投資を円滑に進めていくうえで直面する課題を効率的かつ継続的に解決していくため、当該国との間で官民の協議・対話の枠組を整備・強化すべきである。

(3)留意事項

  1. (1) 適切な保護範囲の確保
    近年の投資協定等への懸念の高まり#13も背景に、国際投資に関する規律内容の見直しの動きも拡大している#14
    このようななかで、投資協定等の内容には改善もみられる。過去の判例を踏まえ、公正衡平待遇や収用といった既存の概念の条文上の明確化、ISDS手続の透明化や、新たな投資形態を含む実際のビジネスニーズに即した投資の範囲の明確化・拡大など、投資保護の強化・自由化の推進がはかられる場合、その意義は大きい。
    他方、保護される投資の範囲が限定されたり、そのような方向での提言がなされたりする傾向も見られることが懸念される#15。例えば、国家の規制権限を担保するための提言として、保護の例外を規律する内容の挿入などもあげられている#16。しかしながら、保護内容に限定や例外を設けることは、恣意的あるいは不当な内外差別の正当化や、隠された外国投資の制約が容認される結果となりかねない。また、過度な制約は対外投資の阻害要因となる。ビジネス活動を円滑に保つため、協定のもとで保護の対象とする投資は明確かつ広範囲をカバーすべきである。あわせて、対外投資に対し公平かつ恣意的でない保護を提供する観点から、業種による適用除外を設けるべきではない。
    国際投資の適切な保護と自由化の担保という投資協定等の本来の意義を損なうことないよう、十分に留意する必要がある。

  2. (2) 投資家対国家の仲裁
    投資協定等をとりまくグローバルな環境をみると、とりわけ、ISDS条項を警戒する向きもある#17。その背景として、ISDSの利用が増加#18しており、外国投資家からの投資受入国政府への提訴や外国投資家への賠償金の支払いは主権国家の規制権限に対する侵害であるとの指摘もある。
    しかしながら、このような指摘のなかには、国家による規制の理由#19や賠償金額の大きさのみに着目した、一方的あるいは感情的な批判が散見される。背景にはISDSの仕組みへの理解の不足がある。また、当該の外国投資の結果として、当該国内経済・雇用にもたらされた利益や、国家の行為によって投資家が損害を被った点への認識も薄い。
    ISDSは、投資協定等に基づく義務#20に国家が違反したことにより、外国投資家の投資財産に損害が生じた場合にのみ、当該投資家が損害の補償を受けることを可能とするものである。また、仲裁判断によって当該政策・規制の撤回・変更の義務を課すものではない。過去の仲裁判断においては、内外無差別かつ適正な手続に基づく、正当な公共目的の規制の場合、損害の補償は認められないとされている#21。したがって、ISDSが投資先の国家の規制権限を侵害するとの指摘は妥当でない。
    むしろISDSを含め、外国投資に対する無差別かつ恣意的でない保護を担保する投資関連の法的規律は、外国投資受け入れの円滑化、投資ビジネスの予見可能性の向上に重要な役割を果たしており、当該国の経済成長と雇用促進に資する制度である。

  3. (3) 投資協定等と企業の社会的責任
    近年、企業の社会的責任に関する条項が投資協定等に規定される例も見られる。しかしながら、投資関連の協定の目的は、自国の管轄を離れて他国において活動する投資家に対する領域国政府による恣意的な権力の行使を防止するため、他の締約国に対して負う義務を規律することにある。他方、企業の責任や義務に関しては、外国投資が投資受入国の政府の管轄下において行われる以上、当該国政府による権力の行使に服し、当該投資家が当該国の法令の遵守を義務付けられることは当然である。そのため、企業の社会的責任を含む規律を投資協定等の中に設ける必要性は認められず、かえって外国投資の萎縮を招く要因ともなりかねない。したがって、協定により規律される義務は政府を対象とする内容に限定すべきである。

4.国・地域の例

以下では、基本的な考え方に示した三つの分類に沿って、投資協定等が必要な国を例示する。なお、下線は、2015年インフラ提言において重点国に位置づけた国である。

(1)交渉中等の協定の早期妥結・発効

〔投資協定〕
アンゴラ(大筋合意、中断中)、アルジェリア、カタール、アラブ首長国連邦、ケニア、ガーナ、モロッコ、タンザニア、イスラエル、イラン(大筋合意)、サウジアラビア(2013年4月署名)、オマーン(2015年6月署名)
(※交渉開始/署名順)

〔投資章を含むEPA/FTA〕
バーレーン(交渉延期)、GCC、日中韓FTA、RCEP、日EU EPA、TPP(大筋合意)、日トルコEPA
(※交渉開始順)

上記の協定について、質の高い内容での早期の妥結と発効を求める。

大筋合意に達したTPP協定については、早期の署名・発効を望む。また、これを受けて、アジア太平洋地域全体をカバーする自由経済圏を構築すべく、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)ならびに日中韓FTAを早期に実現すべきである。特に、ASEAN+6のGDPの7割を占めていながら、EPA/FTAの空白地帯である日中韓においてFTAを実現するために交渉を加速するよう求める#22

特に、日中韓FTAにハイレベルな投資章を設けることが重要であり、約束方式については、中国が他国と締結済みないしは交渉中の協定(例えば中豪FTAや米中投資協定)に倣い、ネガティブ・リスト方式を採用すべきである。

日EU EPAにおいても、ハイレベルな投資章を設けるとともに、ネガティブ・リスト方式を採用すべきである。EUは、(1)わが国の直接投資残高の約22%(2014年末)を占める一大投資先であること、(2)2014年11月に発表した新投資計画に基づき、インフラ・イノベーション関連および中小企業関連プロジェクト(3年間で総額3,150億ユーロ)を支援するとともに、市場統合の一層の推進に注力していること、(3)米国、中国との間でそれぞれFTA、投資協定を交渉中であること、等を踏まえれば、EPAの早期締結が求められる。

(2)新規の交渉開始

ブラジル南アフリカセネガルキューバ、ナイジェリア、ボリビア、エクアドル、アルゼンチン、パナマ

上記の国々との間に関しては、投資章を含むEPAまたは投資協定が存在しないため、早急に新規の交渉を開始すべきである。その際、わが国にとって戦略的に重要な国、即ち、ブラジルなど貿易・投資関係が深い国については、二国間投資協定の締結はもとより、貿易・投資関係の総合的な改善に資するEPA交渉の可能性を探るべきである#23。少なくとも、第三国との協定によりわが国の投資に対する競争条件が当該第三国に劣後することのないよう確保する必要がある。

ブラジルについては、協定に基づかない「日伯貿易投資促進産業協力合同委員会」が設置されているが、法的枠組みが整備されることが望ましい。なお、ブラジルは、近年、いくつかの国と投資保護協定を締結する動きがあるが、現地進出企業からのニーズが多い、投資自由化、ビジネス環境整備、ISDS条項等を含む包括的な協定が求められる。

エクアドル、ボリビア、アルゼンチンを含む南米においては、エネルギー分野を中心に、外資系企業の国有化の動きがみられることが懸念される。

(3)既存の協定の改訂またはEPA締結交渉の開始

エジプト(1977年投資保護協定)、スリランカ(1982年投資保護協定)、香港(1997年投資保護協定)、パキスタン(1998年投資保護協定)、バングラデシュ(1998年投資保護協定)、ロシア(1998年投資保護協定)、フィリピン(2006年EPA)、タイ(2007年EPA)、インド(2011年EPA)、イラク(2012年投資保護協定)
(※署名順)

上記は、既存の協定の改訂交渉が必要と考えられる国の例である。特に、外資参入の自由化、投資活動の円滑化、投資家対国家の仲裁条項の確保などを実現すべきである。

特にバングラデシュは、2015年インフラ提言において、世界経済の成長のエンジンでもあるアジアにおける重点国として位置づけており、1999年に発効した伝統的な保護協定を改訂する必要性が高い。

その他の国・地域については、相手国との貿易・投資関係や相手国のビジネス環境の変化、既存の協定の締結時期等を勘案しつつ、EPAの締結も検討すべきである。

日フィリピンEPAについては、ISDSが含まれていない#24。日タイEPAについては、WTO・TRIM(貿易に関連する投資措置に関する協定)#25のレベルにとどまるなど、投資自由化度合いが低い。

5.おわりに

国際投資が世界経済における重みを増すなか、国際投資ルールは、世界経済の発展を支える制度的枠組みとして極めて重要である。このような観点から、わが国政府は、上記の提言内容を含め、国際投資の保護の強化・自由化・円滑化を実現する21世紀にふさわしい国際投資ルール作りを主導すべきである。協定ごとの投資規律や仲裁法廷等の混在が加速する現状に鑑みれば、国際投資ルールの将来のあり方を見据えてそれぞれの交渉に臨むことが極めて重要である。多角的自由貿易体制の基盤である世界貿易機関(WTO)における取組みの推進を含め、多国間での国際投資ルールの整備を進めるべきである#26。また、TiSA(新サービス協定)交渉#27は、外国に設置した拠点を通じて行うサービス提供を自由化の対象範囲としていることから、投資協定等の締結を補完する意味でも、TiSA交渉の積極的な推進が必要である。

わが国政府には、上記提言の実現に向けて、速やかに戦略を構築し、取組みを強化することを求める。

一方、企業においても、ISDSを含む各種協定に基づく規定、ビジネス環境整備のための枠組等を活用し、投資先政府に対して積極的に投資環境の改善・是正を求めていくことが重要である。

以上

  1. 提言「国際投資ルールの構築と国内投資環境の整備を求める」(2002年7月16日)において、グローバルな投資環境のマルチラテラル(WTO)、プルリラテラル(OECD等)、リージョナル(ASEAN+3等)、バイラテラル(中国、韓国、ASEAN、NAFTA諸国等)、EPAにおける投資章等、多面的なチャネルの戦略的活用を提言、様々なツールの活用を求めた。そのほか、EPAにおける投資章に関して、「経済連携協定の『拡大』と『深化』を求める」(2006年10月17日)等の提言において、投資許可段階での内国民待遇・最恵国待遇の原則付与や現地人の雇用義務をはじめとするパフォーマンス要求の原則禁止など、高いレベルの投資ルールの整備を求めた。2007年10月には、わが国におけるグローバルな対外経済戦略の総合的な指針として、提言「対外経済戦略の構築と推進を求める」をとりまとめ、グローバルなビジネス環境の整備の一環として、相手国・地域との関係に応じて、EPAのみならず、投資協定、租税条約、社会保障協定等の分野別協定の締結を推進すべき旨、指摘した。
  2. World Investment Report 2015
  3. うち、投資協定が2,926、投資章を含むFTA等が345。(World Investment Report 2015)
  4. 2014年末現在で3,271の投資協定等のうち、228が自由化を含む協定。(World Investment Report 2015)
  5. 提言「グローバルな投資環境のあり方に関する意見-わが国海外投資の法的基盤の整備等に向けて-」(2008年4月)(以下、2008年提言)において、交渉を進めるべき国として挙げた25カ国中、提言発出後、5カ国が投資協定あるいは投資章を含む経済連携協定(EPA)の署名または発効に至った。
  6. 日本再興戦略(2013年6月14日)は「投資協定・租税条約の締結・改正推進」につき「企業の海外展開の推進、鉱物・エネルギー資源の安定的な供給確保等の観点から、わが国産業界のニーズ、投資章を含む経済連携協定の締結状況等を踏まえ、投資協定の締結を加速する。このため、投資協定の締結促進及び効果的活用に向けた指針を策定・推進する」と記載する。
  7. 2008年提言で、対外投資保護・自由化の必要性が高いとした11カ国のうち、コロンビアとの投資協定が2015年9月に発効した以外、アラブ首長国連邦とは、投資協定を交渉中。ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア、ルーマニアに関しては、日EUEPAを交渉中。ブラジル、南ア、アルゼンチン、ベネズエラとの交渉はなされていない。
  8. 2015年12月時点で、発効中の二国間投資協定、投資章を含む協定等の数は、日本は35、ドイツ186、フランス148、英国147、中国125、韓国93、米国89。(出典:日本以外はUNCTAD International Investment Agreements Navigator)
  9. 日ミャンマー投資協定、日モザンビーク投資協定、TPP協定等において、投資家が締結するライセンス契約に関するロイヤリティ規制の禁止、ならびに、送金の自由の内容としてロイヤリティが明記されている。わが国経済界のニーズと要望を反映するものとして高く評価でき、今後の投資協定等においても同様の規律を設けることが重要である。
  10. 例えば、日本モザンビーク投資協定等にビジネス環境整備に関する両国間の議論について規定する条項あり。
  11. 締約国が他の締約国の投資家になした約束の遵守義務を規定。
  12. 日韓、日越投資協定等が参考となる。TPP協定(暫定テキスト)においては保護される契約の範囲が限定されている。
  13. 例えばブラジルは、署名した14の投資協定のいずれも批准していない。インドネシアはオランダ等とのBITの終了を通告した。World Investment Report 2015は、投資協定等への懸念の背景について、投資協定が他の条約同様、合意の範囲において国家を拘束し、ISDSを通じ国家への強制力を有することが認識されるようになったと言及。2008年の経済危機や国家の「持続的な開発」への意識の向上により、公共目的に基づく国家による規制権限を確保する必要性が認識されるようになった旨、指摘している。
  14. 公共目的のために国家が規制を行う権限を明文化するなど、これまでの仕組みの範囲内で規律の明確化を図る内容にとどまらず、上訴を可能とする固有の投資裁判所の設置等、新たなメカニズムのアイデアも提案されている。例えば、EUのアプローチについては、"European Union's proposal for Investment Protection and Resolution of Investment Disputes" (2015年11月)を参照。また、UNCTADは World Investment Report 2015において、将来の国際投資レジームのデザインと称し、改革のオプションを提示している。
  15. ISDSの除外、特定分野のISDSからの除外、アンブレラ条項の不採用等。
  16. World Investment Report 2015においては、衡平公正待遇の限定・不採用、ISDSの不採用や投資家の提訴権限の剥奪などを含め、保護範囲を減ずる提案が広く例示されている。
  17. 豪州と米国とのFTA、日豪EPAはISDS(投資家対国家の仲裁条項)が含まれない。ボリビアは2007年にICSID(国際投資紛争解決センター:International Centre for Settlement of Investment Disputes)から脱退し、エクアドルはICSIDを2010年に破棄。また、エクアドルは9のBITを2008年に終了させるとともに、4のBITのISDS条項を違憲と判断。
  18. 2008年以降、国際投資協定に基づく投資仲裁の提起件数は増加傾向にあり、2013年には過去最高の年間59件、2014年末の累積件数は608件に達した。(出典:UNCTAD, May 2015,INVESTOR-STATE DISPUTE SETTLEMENT:REVIEW OF DEVELOPMENTS IN 2014)
  19. 例えば、環境、健康の保護等
  20. 外国投資家・投資財産に関する内外差別の禁止・適正手続、投資に際して一定の要件(現地調達要求等)を設けることの禁止、収用の制限と適切な補償、資金移転の自由等
  21. Methanex vs. United States (2005), Saluka Investments B.V. vs. The Czech Republic (2006)
  22. 提言「質の高い日中韓FTAならびに東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の早期実現を求める」(2013年5月)参照。
  23. 経団連はブラジル全国工業連盟との間で共同報告書「日本ブラジル経済連携協定」実現に向けたロードマップ(2015年9月1日)をとりまとめ、包括的なEPAの必要性を主張している。
  24. 例えば、ドイツ・フィリピン投資協定にはISDS条項があり、これに基づくICSID仲裁が行われている。(Fraport AG Frankfurt Airport Services Worldwide v. Republic of the Philippines, ICSID Case No. ARB/03/25, August 16, 2007)
  25. WTO・貿易に関連する投資措置(Trade-Related Investment Measures:TRIM)協定では、内国民待遇及び数量制限の一般的禁止に違反する貿易関連投資措置(ローカル・コンテント要求、輸出入均衡要求、為替規制及び輸出制限(国内販売要求))を明示的に禁止。
  26. 「多角的自由貿易投資体制の再構築を求める-TPPの先を見据えて-」(2015年5月19日)においては、WTOとドーハ・ラウンドにつき、次の通り提言。「(中略)加盟国は、「NAMA(非農産品)」「サービス」「アンチ・ダンピング」など残りの交渉事項を速やかに成立させ、以ってラウンドの区切りをつけるべきである。その上で、WTOでメガFTAや分野別プルリ協定など各種協定を多国間協定に昇華するための検討を開始することが求められる。(中略)ポスト・ドーハ交渉は、従前より交渉のボトル・ネックとなっているコンセンサスならびにシングル・アンダーテイキングの見直しが不可欠である。交渉をより円滑に進めていくために、プルリ(複数国間協定)の枠組みを活用して、現行WTO協定やドーハ・ラウンドでカバーされていない分野(ICT、投資、競争政策、環境等)でのルール整備に取り組むべきである。」
  27. 新サービス協定:TiSA(Trade in Services Agreement)は、WTOに加盟する有志国・地域により、サービス貿易の一層の自由化に向けた新しい協定を策定するための交渉。WTOドーハ・ラウンド交渉(2001年開始)の停滞も背景に、これとは別の取組みとして、有志国・地域が議論している。現在TiSA交渉には、23カ国・地域が参加(わが国のほか、米国、EU、カナダ、豪州、韓国、香港、台湾、パキスタン、ニュージーランド、イスラエル、トルコ、メキシコ、チリ、コロンビア、ペルー、コスタリカ、パナマ、パラグアイ、ノルウェー、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン)。

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