Policy(提言・報告書) 経済連携、貿易投資  九州の農水産物
―香港向け輸出の取組み
-経団連シンポジウム 「TPPを活かす」 パネルディスカッション第2部

小田 保 九州経済連合会 農林水産部長

九州経済界と農業界が直販会社を設立

2015年8月、九経連主導のもと、輸出拡大・生産農家の所得増大を目的に「九州農水産物直販株式会社」を設立した。JA宮崎経済連からの要請を受け、麻生、JR九州、九電工ほか農業に参入している企業と日通、三井住友信託銀行が出資した。

海上輸送を通じたコスト削減と課題

海外に安い単価で届けるため、福岡大同青果のCA(大気調整)コンテナシステムを使って海上輸送することで、物流コストを航空便の5~10分の1に抑えた。香港流通大手デイリーファーム社との直接取引契約により、輸出入業者等による中間流通マージンを大幅にカットした。その結果、香港では、日本での販売価格の2倍以内で販売できるようになり、ボリュームゾーンである中間層の取り込みが可能となった。一種の流通改革と考えている。

なお、鮮度保持のコンテナ技術にはまだ向上の余地がある。また、航空便の運賃が低下すれば、農産物の輸出は飛躍的に伸びるだろう。香港では航空便の放射能検査は速やかに実施されるが、海上輸送は2日留め置かれるため、放射能検査の撤廃と通関時間の短縮を求めたい。

香港流通大手との提携によるメリット

1886年創業の老舗デイリーファームと直接取引契約が締結できたのは、同社の創業家と九経連会長の麻生家の古くからの親交がきっかけである。同社とは買い取り契約を締結しており、野菜・果物に多い消化仕入れ方式(販売実績代金のみ支払い、売れ残った品は返品する方式)ではない。

同社傘下の流通ブランド店舗では九州産コーナーを設け、昨年11月から販売を開始し、いちご、みかん、さつまいも、トマト、きゅうりや、旬の果物である青森のりんご等も販売した。現在、20数種類以上の九州産を中心とする農産物をまとめて販売している。

香港では4店舗から16店舗に拡大し、売り上げが順調に伸びている。今後は店舗をさらに拡大するとともに、富裕層・中間層だけでなく一般層向けの店舗での販売も視野に入れたい。

他のアジア諸国に展開へ

デイリーファームグループはアジア10カ国に食品スーパーを約1500店舗を展開しており、このネットワークを通じて個々の店舗に納入できる。シンガポールでの販売を始めるべく、新年度早々に折衝を開始する予定である。続いて、マレーシア、台湾、インドネシアでの販売も検討している。香港での物流・商流が確立すれば、水産物、加工品も提案していきたい。

以上

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