一般社団法人 日本経済団体連合会
Ⅰ.はじめに
アベノミクスのもと、経済の好循環が実現しつつある。
企業としても、様々な投資の拡大や賃金の上昇に積極的に取り組んでいる。財務省の法人企業統計によれば、2015年度の設備投資は全産業で前年度比7.1%増(製造業で10.9%増、非製造業で5.4%増)となっており、2016年度も日本政策投資銀行の全国設備投資計画調査(大企業)によれば、全産業で前年度比10.9%増となり、引き続き高い水準の設備投資が計画されている。また、人材への投資についても、2013年以降、企業は労働者への教育訓練に支出した費用を増加させている(厚生労働省『平成27年度「能力開発基本調査」』より)。さらに、2016年の春季労使交渉賃上げ率(経団連調査)では、前年比で大手企業において2.27%増、中小企業において1.76%増と引き続き上昇傾向が続いており、大手企業では、2014年以降、3年連続で前年と比べて2%以上上昇、2012年と比べて9%以上増となっている。
他方、世界経済の先行きの不安定さが増し、企業収益や事業活動にも影を落としつつある。あわせて、個人消費は横ばいの状況が続いており、わが国の経済成長の下振れが懸念されるところとなっている。
今後、わが国が長引くデフレから真に脱却し、経済再生を果たし、名目GDP600兆円を実現するために、成長戦略の根幹となる第四次産業革命(Society 5.0)を強力に推進することが極めて重要となる。あわせて、企業の収益力のより一層の強化や、産業競争力の強化・潜在成長率の向上に資する先を見据えた投資の充実、世界にアピールできる都市機能の強化を見据えたインフラ投資の充実、生産性向上を支援する環境整備等が重要である。これらの点を踏まえ、わが国企業の競争力の根幹を支える税制について、維持・拡充を図り、経済成長をさらに加速させるべきである。
また、国の財政状況は、2016年度末に国・地方をあわせた長期債務残高が約1,062兆円、対GDP比205%となる見込みである。経済財政運営と改革の基本方針2016(骨太の方針)に掲げた経済・財政一体改革を着実に推進し、財政健全化を達成すべく、何よりもデフレ脱却と経済再生を図り、社会保障制度改革を中心とする歳出改革、2019年10月の消費税率10%への確実な引上げなどの歳入改革に取り組み、2020年度のプライマリーバランスの黒字化を実現すべきである。
経済界としても、民主導のイノベーションを通じて、企業業績の向上や様々な投資の拡大、雇用・賃金の改善につながる経済の好循環を創り出すべく、引き続き積極的に取り組みを進める。
Ⅱ.平成29年度税制改正に関する提言
1.GDP600兆円経済の実現に向けた法人課税のあり方について
(1) わが国の成長に資する法人課税の措置の維持・拡充
平成28年度税制改正により法人実効税率の20%台(標準税率ベース:平成28年度29.97%、平成30年度29.74%, 東京都ベース:平成28年度30.86%、平成30年度30.62%)への引下げが実現した。今後、将来的にOECD諸国平均や競合するアジア近隣諸国並みの法人実効税率25%の実現を目指し、企業の国際的な税負担のイコールフッティングに留意して、税負担水準の引下げに向けた道筋を検討していくべきである。また、法人課税では、地方まで広く投資を促進すべく中小企業の活性化策(中小企業投資促進税制、法人税の軽減税率)に十分に配慮すべきである。
経済界としては、GDP600兆円経済の実現に向け、成長に資するよう研究開発投資や設備投資をより一層活性化させる必要があると認識している。そのため、関連する税制措置について、以下のとおり提言する。
研究開発税制の維持・拡充
経済のグローバル化がより一層進展するなかで、わが国が引き続き世界経済において主要な地位を保ち、豊かな国民生活を維持し続けるためには、イノベーションを通じて新しい価値を創出し、成長戦略を実現することが不可欠である。
この点、骨太の方針ではさらなる成長に向け、「民間における研究開発投資の促進を図る」とともに、「2020年までに官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上とすることを目標とする」と明記されている。日本再興戦略2016でも同様にイノベーションを通じて第四次産業革命を強力に推し進めることを掲げている。また、2016年の第3四半期からGDPの計算に研究開発投資を加えることが予定されている。これらの点を踏まえ、研究開発投資を促進させ、企業の持続的な発展・中長期的な利益の増大につなげていくことは、GDP600兆円の実現のための重要なポイントとなると考える。
こうした研究開発投資を通じた成長戦略を実現するためには、研究開発税制の存在が不可欠である。リーマンショック後、企業の研究開発投資は一旦落ち込んだものの、平成21年度の税制改正により税額控除限度額を拡充したこと等により2010年以降増加傾向にあり、2014年の研究開発投資はリーマンショック前の水準まで回復している。研究開発税制を縮小すれば、わが国の民間セクターにおける研究開発の促進に深刻な影響を与え、骨太の方針における目標の達成が困難になるおそれがあるとともに、景気が減速した際に、企業の研究開発投資が大きく落ち込み、研究開発の継続によるイノベーションの創出を阻む可能性が高い。また、税収の増加を目的として、研究開発税制を縮小することは、経済成長の足かせとなるだけではなく、制度の趣旨からいっても不適切である。
わが国が今後も持続的に成長していくためには、産業のコアとなる研究開発拠点を日本に残し、研究開発に携わる資金・人材を確保して、付加価値を生み出していくことが不可欠である。そのため、研究開発税制は制度の維持・拡充が求められる。また、企業が積極的に活用できる簡素な制度とすることが重要である。その観点から、以下のとおり、個別の制度について意見する。
総額型については、わが国の研究開発を支えるまさに根幹であり、維持が不可欠である。とりわけ、総額型における25%の控除上限については、引下げるべきではない。総額型の縮減は、わが国における研究開発の規模の縮小をもたらし、イノベーションの創出においても他国に劣後する状況を招きかねず、今後の持続的な経済成長にも大きな影を落とすおそれが強いと懸念する。
また、増加型・高水準型についてもわが国での研究開発投資を促進する観点から有用な制度であり、存続が前提である。とりわけ、研究開発に重点を置く企業の活動を中長期的に支援するため、高水準型の果たす役割は大きい。
さらに、IoTやビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの様々な技術の進展を踏まえ、幅広い産業で第四次産業革命(Society 5.0)を推進するために、これらの技術を活用したサービスの改善を研究開発税制の対象に含めるなどして、対象範囲の拡充を目指すことが適当である。
また、オープンイノベーション型については、成長戦略の要であるIoTやビッグデータ、AI、ロボットなどの分野の研究などに関し、大学や研究開発法人との連携を促進するために極めて重要な制度である。日本再興戦略2016においても、2025年に企業から大学・研究開発法人への投資を3倍増にするとの目標が明記されていることから、今後、より一層活用が求められる。もっとも、現在は、オープンイノベーション型に関する要件等が厳しく十分に活用が進んでいない。そのため、契約書記載条件の簡素化・緩和や委託研究などにおける費用の内訳確認作業の簡素化、費用別の項目の記載事項の緩和、共同研究・委託先の拡充等を行い、オープンイノベーション型を多くの企業が活用できる制度へと変革すべきである。
あわせて、研究開発ベンチャーについては、資金確保も含めた支援を充実させるべく、今年度末で期限切れとなるベンチャー投資促進税制の延長を含め、研究開発ベンチャーに対して出資した企業について税制上の支援策を講じるべきである。
また、旧公益法人から移行した一般社団・財団法人の学術研究用資産については、研究開発法人の機能強化の観点から、固定資産税を非課税とすべきである。
経済の活性化・さらなる成長の加速化に向けた設備投資等の喚起
GDP600兆円経済の実現に向け、これまで以上に企業が積極的に設備投資を行うことが不可欠である。そのため、引き続き、企業の設備投資に対する意欲を喚起する税制上の措置を検討することが重要である。新たに有望な市場となるIoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどの第四次産業革命(Society 5.0)に関わる分野について、今後、投資を大きく増やすことが求められる。このため、前述の研究開発投資の促進など、幅広い地域において未来投資を促進し、アベノミクスの好循環が浸透するよう企業の投資意欲を活性化させる方策を検討することが重要である。
あわせて、都市部においても、アジア大都市間での競争が激しくなるなかで、既存の建物等を有効活用し、新規の投資を促進するとともに、都市の魅力を向上させ、その活力を維持するために、インフラ整備を充実させて、国際競争力を強化することが不可欠である。その観点から以下の措置が重要となる。
特定事業用資産の買換特例の維持・拡充
特定事業用資産の買換特例は、業種や企業規模、地域にかかわらず広く活用されており、投資促進はもとより、地方活性化においても重要な政策ツールである。とりわけ、製造業などが不稼動遊休資産等を処分する際にも広く活用されており、制度の維持が必要である。また、本制度は設備投資拡大の観点からも非常に重要であり、例えば、買換先に機械装置および工具を加えるなどして、幅広く設備投資を促進すべきである。
また、外航船舶の圧縮記帳制度についても適用期限を延長すべきである。都市再生税制の延長
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、都市部の再開発をより一層加速させるとともに、大街区化、木密地域解消等による防災・減災力の向上を図り、より一層都市機能を強化することが必要である。あわせて、成長戦略にもある観光立国のさらなる推進に向け、セキュリティ対策を含め、再開発等により都市の魅力を更に向上させ、訪日観光客に十分にアピールできる都市づくりが必要である。そのため、都市再生税制を延長し、わが国のインフラ整備をより一層充実させるべきである。
(2) 国際課税
外国子会社合算税制(CFC税制)の見直し
外国子会社合算税制(CFC税制)は、平成28年度の与党税制改正大綱で、「喫緊の課題となっている航空機リース事業の取扱いやトリガー税率のあり方、租税回避リスクの高い所得への対応等を含め、外国子会社の経済実体に即して課税を行うべきとするBEPSプロジェクト最終報告書の基本的な考え方を踏まえ、軽課税国に所在する外国子会社を利用した租税回避の防止という本税制の趣旨、日本の産業競争力や経済への影響、適正な執行の確保等に留意しつつ、総合的な検討を行い、結論を得る」とされている。
この点、まず、OECD/G20のBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトは、各国間の税制の隙間を利用した国際的な租税回避を防止するために、各国における税制の調和を図るものとされているが、もとより日本の現行のCFC税制はBEPSプロジェクトの最終報告書の考え方と相反するわけではないため、留意が必要である。また、公平な競争環境の実現にも留意すべきである。
もっとも、現行のわが国のCFC税制については、租税回避とは言えない実体のある航空機リース事業が合算課税の対象となっているなど国際的にみても過剰合算の状態が存在するため、これらを解消するために、CFC税制の見直しについて検討することは有意義だと考える。その際、平成28年度与党税制改正大綱にある「軽課税国に所在する外国子会社を利用した租税回避の防止という本税制の趣旨」という文言を十分に踏まえ、実務負担に配慮しつつ、本来、日本で納めるべき税が意図的に浸食され、軽課税国で租税回避を生み出しているといえる場合のみを合算対象として考えることが適当である。
具体的には、今後、日本企業において更なるグローバル化が進展することを考えると、CFC税制について、事業実体のある航空機リース収入や、グループ内組織再編成から生じるキャピタルゲインなど、税源浸食や租税回避と言えない取引については、CFC税制の適用除外とする見直しを行うことが適当である。また、外国関係会社に関する50%超の支配判定における少数株主排除措置の導入や合算基準の10%からの引上げを検討するとともに、無税国に所在する場合でも実質税負担率が水準以上の子会社はCFC税制の対象としないことが望ましい。
一方、所得の詳細な分類・判別を行う制度の導入や、トリガー税率や適用除外要件を根本から見直しCFC税制の適用を検討する対象となる外国子会社数を大きく増加させる制度の導入は、企業の無用な事務負担が極めて大きくなるうえ、他国と比較して極めて短期の税務申告期限のため、実務上は実行することが不可能または困難である。このような制度の導入には賛成できない。特に、現行のトリガー税率が、実務の簡便性を維持するうえで果たしてきた役割を十分に踏まえる必要がある。
また、これまでの改正の経緯やわが国企業の競争力の強化の観点から、CFC税制の合算課税の対象とはされてない事業持株会社や物流統括会社、グループ金融会社、英国ロイズの保険会社等が、CFC税制の対象となることは適切ではない。これらが合算課税の対象となれば、わが国企業の海外拠点のあり方が大きく変容し、日本再興戦略2016で示されたわが国による海外の成長市場の取り込みに向けた大きな足かせになると懸念する。国際的なイコールフッティングの確保のために、諸外国に劣後しないよう配慮してCFC税制を設計することが必要であり、硬直的な制度とすることは、わが国企業の国際競争力を阻害する結果となると考える。
なお、改正CFC税制の施行時期については、移転価格文書化や帰属主義への移行等により負担が増加しているなかで、十分な期間を確保することができるよう、慎重に検討することが不可欠である。
租税条約ネットワークの充実
わが国に対する直接投資を増加させるとともに、日本企業の海外投資を増加させ、海外の成長を取り込み、収益の向上・国内投資への還流を図るため、日本再興戦略2016にもあるとおり、租税条約ネットワークをより一層充実させることが不可欠である。租税条約の拡充により国際的な二重課税を排除することは、わが国企業の海外における安心かつ確実な事業展開の大前提であり、そのための相手国における執行体制の整備・確立への協力も欠かせない。また、投資所得に係る源泉地国課税を軽減することは、海外からの資金還流および国内における再投資という好循環の実現に資する。そのため、租税条約の改定・締結について、早期に取り組むべきである。
具体的には、中国、インド、タイ、インドネシア、ベトナム、ブラジル、ロシア、シンガポール、韓国、マレーシア等との租税条約を改定するとともに、ミャンマー、アルゼンチン、ベネズエラ、コロンビア、ナイジェリア、モンゴル等の未締結国・地域との租税条約締結交渉を推進すべきである。
また、租税条約の内容として、仲裁規定や移転価格税制に係る対応的調整規定、親子間配当および貸付金利息に係る源泉徴収の免除規定、使用料に係る源泉徴収の減免規定等を盛り込むことが重要である。
BEPS対応に関する一貫性ある実施と残された課題への対応
BEPSプロジェクトでは、2015年10月に最終報告書が公表された。今後、最終報告書の内容について、各国で一貫性あるかたちで実施することが課題となる。一方で、BEPSプロジェクトの趣旨は税源浸食と租税回避の防止にあることから、国内法制化にあたっては、日本における租税回避リスクの程度を見極めたうえで、企業の競争力強化の視点や企業のコンプライアンス・コスト等とのバランスにも十分に配慮したうえで検討を進めることが重要である。
また、残された課題についても、同様に、競争力強化とコンプライアンス・コスト等とのバランスに配慮して検討を進めることが重要である。経団連としても、OECDなどに対し、公開討議草案や公聴会を通じて、日本企業の考えを働きかけていく。個々の課題については、すでに本年4月に公表した「BEPSプロジェクトを踏まえた今後の国際課税に関する提言」で述べたとおりだが、以下、簡単にコメントする。
租税条約の濫用防止、PE(恒久的施設)認定の人為的回避の防止(行動6、行動7)
各国での一貫性ある実施と実施状況のモニタリングが必要である。とりわけ、先進国と新興国・途上国間においてPEの範囲・帰属利得について一貫した取り扱いがなされるよう、国際社会が注視する必要がある。効果的な紛争解決メカニズムの策定、多国間協定(行動14、15)
相互協議を効果的に実施するためには、各国がミニマムスタンダードを遵守することが求められる。OECDにおいて各国の実施状況のモニタリングが適切になされるよう、経済界も含めて、わが国が積極的に関与していくことが重要である。また、多国間協定により仲裁を推進し、仲裁導入国を拡大することで、より実効性ある紛争解決メカニズムが整備されることになる。移転価格税制(行動8~10)
国内法制化の検討の際には、国外関連者要件について、実際には支配権が及ばない株式保有比率50%の場合を除外し、50%超とする見直しを行うべきである。さらに、50%超の支配権を有する場合でも、実質的な意思決定権を持たない場合には、対象とすべきではない。また、透明性・納得性ある移転価格税制の執行が求められる。支払利子(行動4)
わが国における支払利子による租税回避リスクを見極めたうえで、国内法制化にあたっては、改正の必要性や制限対象の利子の範囲、EBITDAの範囲、固定比率の水準について、慎重に検討することが必要である。移転価格文書化(行動13)
移転価格文書化については、平成28年度税制改正でわが国でも制度化されたが、各国が国別報告事項の「守秘・一貫性・適切な利用」という入手及び利用の条件を確実に遵守するよう、経済界の意見も反映しつつ、課税当局・納税者向けのガイドラインを整備するとともに執行状況に係るモニタリングを十分に実施することが必要である。
また、OECDの最終報告書における合意に反するEUの国別報告書の公開提案については、引き続きこれが制度化されることにわが国として反対の声を表明することが必要である。あわせて、主要新興国での法制化についても注視すべきである。タックス・プランニングの報告義務(行動12)
まずは日本におけるタックス・プランニングによる租税回避リスクを検証することが重要である。
その他、国際課税に関する課題
外国税額控除制度の繰越限度超過額及び控除余裕枠の繰越期間の延長
外国税額控除制度における繰越限度超過額及び控除余裕枠の繰越期間は3年と短いため、期間の経過により国際的な二重課税が排除されない可能性が依然として残されている。企業の海外活動の制約とならないよう、現行の3年から繰越期間を延長するなど、適切な措置を講じるべきである。地方法人税における外国税額控除の繰越制度の適用
外国税額控除に関し、地方法人税については繰越制度の適用がなされていないが、地方法人税は法人税額を課税標準とすることから、法人税と一体といえるものであり、外国税額控除の繰越制度は当然に地方法人税についても適用されるべきである。投資法人が海外不動産に投資した際に支払う直接外国税額の控除方法の改正
投資法人が海外のSPC(特別目的会社)等を通じて投資し、海外で直接外国税額を支払っている場合において、投資主が分配金を受け取る方法として株式数比例配分方式を選択した場合、投資法人から投資主への分配金に係る国内源泉所得税の徴収義務者が証券会社等となることから、直接外国税額控除はできないものとされている。この点、配当金の受取方式を問わずに控除できるようにすべきである。外国子会社配当益金不算入制度の益金不算入割合を95%から100%へ見直し
海外で獲得した資金を国内へ還流させ、国内における生産・研究開発等を促進することは、わが国企業が国際競争力を維持するために極めて重要である。その観点から、外国子会社配当益金不算入制度の益金不算入割合を95%から100%へと拡充すべきである。
(3) 地方法人課税の改革
償却資産に係る固定資産税の抜本的見直し
成長戦略で掲げられたGDP600兆円経済の実現のためには、地方も含め、日本全国で設備投資を増大させることが不可欠である。そのため、償却資産に係る固定資産税の負担を軽減すべく見直しを行うことが必要である。特に機械装置への課税は米国やカナダの一部の州などのみで行われている極めて稀な税である。その米国でも近年、一部の州で廃止の動きが見られる。また、わが国製造業が競合するアジア近隣諸国においても例がない。今後、アベノミクスによる経済の好循環の継続に向けて、設備投資を促進する観点から、少なくとも新規取得した機械装置及び工具については固定資産税を縮減・廃止すべきである。あわせて、残存価額の廃止等、法人税の課税所得の計算方法との整合性を図るべきである。
また、幅広いインフラを担う産業の負担を軽減する観点から、今年度末に期限を迎える鉄道車両やコジェネレーション設備、低公害車への燃料供給設備等の償却資産に係る軽減措置を延長すべきである。
地方法人課税の偏在是正への対応
地域経済の活性化による「地方創生」の実現のためには、安定した地方歳入を確保するとともに、自治体間の税収の格差を是正していくことが必要となるが、地方法人課税、とりわけ法人所得課税は地域間の偏在性が大きく、税収も不安定で基幹的な地方税としては不適切である。また、近年の改正で地方法人特別税や地方法人税が創設されるとともに、法人を対象とした超過課税が多くなされており、税体系が極めて複雑なものとなっている。
この点、平成28年度税制改正では、地方法人課税である法人住民税法人税割を縮減し、地方法人特別税を廃止する一方、国税でありその全額が交付税の原資となる地方法人税が拡充され、今後、消費税率の引上げ時期とあわせて偏在是正に向けた取り組みが進められることとなった。今後とも、偏在是正の観点から国・地方全体の税体系の見直しを行い、地方の法人所得に対する課税部分を国税の法人税に統合して、交付税等により適切に配分する方向を引き続き推進することが必要である。
あわせて、これらの税体系の見直しにあたっては、単なる財源確保の観点からではなく、国際的イコールフッティングを踏まえ、法人の負担水準のあり方も含めて検討を行うことが望ましい。
地方法人課税の簡素化
地方法人課税は、税目やその課税ベースが多様である上に、申告書類が多く、計算が複雑である。また、税率の異なる都道府県、市町村毎に申告・納付を要することから、特に全国に展開している法人にとっては、納税に係る事務負担が大きい。
このため、地方法人課税については抜本的な簡素化が不可欠であり、事業者の事務負担を軽減する観点から、申告書類の削減、フォーマットの統一、自治体毎の税率の一覧性向上等の見直しを進めるべきである。さらに、法人番号制度を活用し、本店が所在する都道府県等への地方税の一括納付を可能とするシステムについても、導入を検討すべきである。また、法人住民税法人税割と法人事業税所得割について、企業の事務負担の軽減を図る観点から、連結納税制度の導入の可能性を検討すべきである。
また、外形標準課税についても、計算等が複雑になっており、企業実務にとって負担となっている。例えば、付加価値割の報酬給与額の計算については、労働者派遣や出向者、福利厚生費用などについて会計上の処理とのズレが大きく計算が煩雑である。また、明細書の記載事項が多岐にわたっており、調査・申告の負担が大きい。さらに、個別の規定の適用を巡って、自治体間の解釈に差異も見られる。このため、外形標準課税の簡素化について引き続き検討すべきである。
あわせて、事業所税の従業者割は法人事業税付加価値割や法人住民税均等割と同様、賃金・雇用への課税となっており、賃金の上昇への足かせとなっている。さらに、資産割は固定資産税及び都市計画税との二重課税である。これらの点を踏まえ、事業所税は他の税目と整理・統合すべきである。
電力・ガス事業における収入割基準の見直し
法人事業税の課税標準について、現在、地域独占と総括原価主義を根拠として収入割が適用されているが、2016年度(電気)、2017年度(ガス)の小売全面自由化により、地域独占と総括原価主義が廃止されるため、収入割を採用する根拠が失われることとなる。また、現状でも法人事業税が要因のひとつとなり、電力・ガス事業者の売上高に対する税負担率は、一般企業と比べて高い水準にある。
このため、電力・ガス事業にかかる法人事業税の課税標準については、一般企業と同様に所得割および外形標準課税に統一すべきである。
(4) その他、法人課税にかかる項目
事業再編を促進するための税制措置の延長・拡充
日本再興戦略2016で事業再編の円滑化が第四次産業革命の重要な課題とされているところ、引き続き事業再編を促進すべく、産業競争力強化法のもと、特定事業再編損失準備金制度を延長すべきである。また、一部の事業についてスピン・オフにより分割や現物配当を行う場合に、株主および法人における課税を繰り延べるよう手当てすることを検討すべきである。あわせて、連結納税開始・加入時に、時価評価課税(特に、のれん)が行われることで、事業再編の障害となっていることから、見直しが必要である。この他、連結納税制度や組織再編税制について不断の検証を行うとともに、必要な見直しを行うべきである。
また、事業再編をさらに促進すべく、LLP(有限事業責任組合)に対する現物出資時の簿価譲渡を可能とする制度を創設するとともに、LLC(合同会社)についてパススルー課税を整備すべきである。
外航船舶にかかる特別償却制度の延長
国際競争力ある船舶の建造を促進し、物資輸送などの基礎的インフラを担うわが国の商船隊を安定的に整備していくために、本年度末で期限切れとなる外航船舶にかかる特別償却制度を延長すべきである。
トン数標準税制の拡充
世界の主要海運国において、ほぼ全ての運航船を対象とするトン数標準税制が相次いで導入されているが、わが国ではその対象は最大で全運航船の約17.6%に過ぎない。国際的なイコールフッティングの観点から、トン数標準税制を拡充すべきである。
欠損金の繰越期間の延長、繰り戻し還付
欠損金の繰越期間については、諸外国では無制限の国も多いため、国際的イコールフッティング、対日投資促進の観点から、延長を検討すべきである。あわせて、企業業績の変動に対処すべく、大法人における繰り戻し還付についても復活および還付期間の延長を検討すべきである。
原料用途免税の本則非課税化
ナフサに係る石油石炭税・揮発油税の免税・還付措置、鉄鋼・コークス・セメント製造に係る石油石炭税の免税措置について、そもそも諸外国ではこれら原料に課税している例はないため、国際的なイコールフッティングの観点から、原料用途免税を本則非課税化すべきである。
役員報酬制度の改善
平成28年度税制改正により、役員報酬の損金算入にかかる規定について見直しがなされたが、中長期的な企業価値を向上する観点から、幅広い役員報酬制度をより企業が活用しやすいようさらに改善していくことが必要である。
例えば、事前確定届出給与に関し、信託を活用できるよう制度を改善するとともに、譲渡制限付株式や利益連動給与について持株会社の子会社への適用の拡大等を検討し、より幅広く適用できるように制度を改善すべきである。
留保金課税の見直し
企業の自己資本の充実による投資促進の観点から、特定同族会社の留保金課税は廃止すべきである。
公害防止用設備に係る特別償却の延長
民間事業者における環境負荷低減対策への投資を促進するために、公害防止用設備にかかる特別償却の期限を延長すべきである。
受取配当益金不算入制度における負債利子控除の廃止
受取配当益金不算入制度に関し、関連法人株式等については負債利子控除が依然として存置されている。負担軽減の観点から負債利子控除制度を廃止すべきである。
当初申告要件の見直しの検討
平成23年12月改正により、控除可能な金額が当初申告の際に記載された金額に限定される「控除額の制限」がある措置について、修正申告又は更正の請求により正当額まで控除額を増額させることができることになった。しかし、課税庁による増額更正の場合は控除額を増額できず、バランスを欠くため、増額更正の場合も控除額の増額を認めるべきである。
建設業など人手不足の産業における研修等にかかる費用への支援措置の創設
建設業などの人手不足の産業では、担い手育成のための取り組みが急務となっている。そのため、技能向上などのための研修等の実施について、支援措置の創設を検討すべきである。
個人番号および法人番号の告知・記載書類に関する見直し
個人番号については、個人情報の漏洩リスク及び事業者の保管コスト等に鑑み、平成28年度税制改正において記載対象書類の大幅な削減が行われ、評価する。今後も適正な課税の実現と事業者負担のバランスを踏まえつつ、記載対象書類のあり方を不断に検証するとともに、必要に応じ制度改正や柔軟な執行を行うべきである。その際、地方自治体における電子申告・電子通知の取り組みが進展するよう、できるだけ速やかに対応する必要がある。
また、法人が金融機関で金融商品等の取引を行う場合、法人番号を示す書類等の提示が必要とされているが、そもそも法人番号は国税庁のHPで簡単に検索できるものであるため、法人番号の提示は不要とすべきである。
印紙税の廃止・軽減
電子商取引が一般化し、経済取引のペーパーレス化が著しく進展する中、紙を媒体とした文書のみに課税する印紙税は合理性が失われている。また、課税対象にあたるかどうかの判別が企業実務上の負担になっている。本来的には廃止すべきであり、少なくとも一層の簡素化・負担軽減を図るべきである。
防災・震災復興等に関する税制措置の創設・延長
先般、大きな被災に見舞われた熊本地域に係る復旧・復興支援の取り組みを後押しするために、東日本大震災等と同様の税制上の特別措置を講じるべきである。
2.消費税
財政の健全化や社会保障制度の持続可能性の確保により安定した成長基盤を創出するとともに、2020年度のプライマリーバランスの黒字化の目標を達成するために、引き続きわが国にとって消費税率の引上げは不可欠である。消費税率8%への引上げ以来、消費の回復が遅れている現状も踏まえ、需要減・反動減対策を万全にしつつ、2019年10月に予定通り着実に消費税率10%へと引上げるべきである。
消費税の仕入税額控除制度については、95%ルールの復活や事業者の事務負担軽減策を検討すべきである。
福祉車両や損害保険料など仕入税額控除ができない非課税取引については、転嫁の難しさにより事業者の負担が大きく、また、非課税取引の性質から業務の内製化を志向させる税の中立性の課題(セルフ・サプライ・バイアス)を拡大させる。このため、非課税取引について一定の配慮をすべきである。
あわせて、酒税などの個別間接税との関係を整理する必要がある。
3.自動車関係諸税の簡素化・負担軽減
自動車関係諸税は、欧米諸国と比べ極めて過重なユーザー負担が課されてきた。特に、道路整備目的で創設された自動車取得税と自動車重量税は、道路特定財源が平成21年度に一般財源化された時点で既に課税根拠を喪失しており、さらに自動車取得税は消費税と、自動車重量税は自動車税との二重課税となっている。このため、自動車関係諸税について、負担軽減・二重課税の解消の観点から見直しを行うことが重要である。また、消費税率の引上げ時期の延期に伴い、関係する措置について、所要の調整を行う必要がある。
こうした観点から、まず、期限切れとなる自動車重量税のエコカー減税、及び、自動車税・軽自動車税のグリーン化特例を延長すべきである。また、同様に期限切れとなる自動車取得税のエコカー減税について、平成28年度改正で決定された自動車税・軽自動車税の環境性能割と同水準で見直したうえで延長すべきである。
また、保有にかかる税負担の軽減や国内需要の喚起の観点から、諸外国と比べて過大となっている自動車税の税率引下げを実施すべきである。さらに、取得時の負担を軽減するため初年度月割課税を廃止すべきである。あわせて、自動車重量税について、将来的な廃止に向け、まずは「当分の間税率」を廃止すべきである。
なお、自動車関係諸税の負担軽減に際しては、代替財源を自動車ユーザーに求めるべきではない。
さらに、中長期的には、極めて複雑な自動車関係諸税を納税者にとって分かり易くなるよう簡素化すべきである。
4.住宅・土地・都市税制
住宅投資は地域経済や他産業への高い波及効果、雇用創出効果を有する内需の柱であり、さらなる需要を喚起する観点から、実効性ある措置を継続し、住宅取得にかかる消費の維持・拡充を図る必要がある。
(1) 租税特別措置の延長・拡充・創設
住宅・土地・都市等に関して以下の措置を延長・拡充・創設することが重要である。
- 土地の売買等に係る登録免許税の軽減税率特例の延長
- 住宅用家屋の登録免許税の軽減税率特例の延長
- サービス付き高齢者向け住宅に対する割増償却、軽減措置の特例の延長
- 長期優良住宅化リフォームに関する税制特例措置の創設
- 国家戦略特区における税制措置の拡充
- 市街地再開発事業に係る固定資産税の特例の延長・拡充
- Jリート、SPC及び不動産特定共同事業法上の特例事業者が取得する不動産に係る登録免許税・不動産取得税の軽減措置の延長および要件緩和
- 投資法人がヘルスケア施設等を用途とする不動産を取得した場合の不動産取得税の軽減措置の拡充
- エリアマネジメント団体に対する支援措置の創設
- 都市防災機能の強化に係る軽減措置の延長、免震・制震装置の整備や省エネ性能の向上等に対する税制支援措置等の創設
- 買取再販で扱われる住宅の取得に係る不動産取得税の軽減措置の延長・拡充
(2) 地価税・土地譲渡益重課制度の廃止
土地バブルの抑制という政策目的が失われていることから、地価税及び法人の土地譲渡益重課制度について、速やかに廃止すべきである。
5.環境・エネルギー関係諸税
(1) 非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置の延長
石油製品の精製プロセスで不可避的に発生する非製品ガスは、燃料・原料利用が困難で製品としての価値を有さないため、これらに対して石油石炭税をかけることは事業者の大きな負担となる。社会全体を支えるインフラとしての石油製品の安定供給および国際的なイコールフッティングの観点から、製油所で発生する非製品ガスに係る石油石炭税の還付制度の適用期限を延長すべきである。
(2) 地球温暖化対策税の廃止を含めた抜本的な見直し
東日本大震災後、わが国では、産業用の電気料金の上昇などにより、企業の国際競争力に大きな影響を与えている。地球温暖化対策税はエネルギーコストの上昇に拍車をかけている一方、税収実績が明らかにされておらず、政策の効果が検証できないといった問題があり、課税の廃止を含め、抜本的に見直すべきである。あわせて、税収の森林吸収源対策等への使途拡大は、「エネルギー起源CO2排出抑制のための諸施策を実施する観点から」(平成25年度与党税制改正大綱、2013年1月24日)導入された経緯に反するものであり、受益と負担の関係を損なうことから、反対である。
さらに、国民に広く多面的な便益をもたらす森林吸収源対策のための費用は一般財源で手当てすべきであり、法人負担を伴うような新税は創設すべきではない。
また、とりわけ国民生活にかかるインフラ等を支える産業の負担軽減を継続すべく、特例措置として設けられている航空機・鉄道・船舶にかかる地球温暖化対策税還付措置について延長するとともに、苛性ソーダに係る地球温暖化対策税の免税措置について延長・拡充すべきである。
(3) 石油関係諸税の負担軽減
航空機燃料税に関する軽減措置の延長
航空機燃料税は、世界的にみて極めて稀な課税であり、オープンスカイにより激化する国際競争に必要なイコールフッティングの阻害要因となっている。また、観光立国の実現に向け、訪日観光客への地域の魅力の発信や国内の日本人の観光需要の喚起が重要な課題とされているなかで、今後、より様々な地域にアクセスできるよう、国内において航空機の利用を促進していく必要がある。このため、平成29年度税制改正で適用期限が到来する軽減措置を維持することが不可欠である。消費税とのTax on Taxの速やかな解消、当分の間税率の廃止
石油関係諸税(揮発油税、地方揮発油税等)は消費税との関係でTax on Taxとなっているため、速やかに解消する必要がある。そもそも、石油関係諸税の「当分の間税率」は、一般財源化された時点で課税根拠を喪失しており、廃止すべきである。
6.年金税制
(1) 退職年金等積立金に係る特別法人税の廃止
公的年金の給付水準がマクロ経済スライドの発動に伴い低下するなかで、老後の所得確保を図る観点から、企業年金の普及・拡大がますます重要となる。その観点から、退職年金等の積立金に係る特別法人税が、2016年度末で課税の凍結期限を迎えるが、課税の再開などはあってはならない。企業年金の拡充の方向性とも逆行するものであり、国際的にも稀な税であることから、退職年金等の積立金に係る特別法人税は速やかに廃止すべきである。
(2) 確定拠出年金(DC)における制度の検討
年金の運用においても、中長期的な投資による資産形成を支援すべく、確定拠出年金(DC)の拡大・利便性の向上を図ることが重要である。とりわけ、わが国の将来を担う若い世代を中心として、預金等からより積極的な資産形成を行うよう、様々な施策を検討すべきである。これらの施策により、わが国の資本市場を活性化させることが期待できる。
その観点から、確定拠出年金(DC)については、拠出限度額の大幅な引上げ、中途引き出し要件の見直しなどを実施すべきである。
7.個人所得課税等
(1) 個人所得課税の見直しへの対応
個人所得課税については、経済活力をそがないように配慮しつつ、経済社会の構造変化を踏まえ、各種控除の適正化に関し、十分に検討を行うことが必要である。とりわけ、わが国が今後も持続的に発展していくためには、将来の成長の担い手である若年層・子育て世代の活力維持を図るとともに、女性の活躍推進の観点から働き方に対して中立的な税制を構築すべきである。
(2) 金融・証券・保険税制
NISA及びジュニアNISAの恒久化、拡充及び簡素化
中長期的な投資による資産形成の支援、継続的な市場の活性化の観点から、NISA及びジュニアNISAの非課税期間、口座開設期間を恒久化すべきである。また、スイッチング(NISA口座及びジュニアNISA口座で取得した上場株式等の売却代金の範囲内での他の上場株式等の再取得)について検討すべきである。上場株式等の相続税評価額等の見直し
上場株式(ETF 及びREITを含む)並びに公募株式投資信託について、価格変動リスク等を考慮すれば、他の相続財産と比較して、相続税の負担感が相対的に高いため、相続税評価額を見直すべきである。それにより比較的長期間保有する個人株主が増加し、個人によるリスクマネー供給促進の効果が期待できる。金融所得課税のさらなる一元化の検討
金融所得課税については、高齢化社会における金融資産の効率的な運用、金融資本市場の活性化、企業の円滑な資金調達等の観点から、実務面の課題に十分配慮しつつ、今後も、さらなる一元化を検討すべきである。生命保険料控除制度の拡充
社会保障における国民の自助の取り組みを支援する観点から、生命保険料控除制度を拡充すべきである。
(3) 相続税制
日本に居住していた外国人材が日本国内で死去した場合、または、外国人材の親族が外国で死去し、相続を受けた場合、それまで国外で形成した財産まで相続税の課税対象となるため、とりわけ高度外国人材などについて、日本への赴任を見合わせる事例が見られる。成長戦略で掲げられている外国人材の活用をより一層促進するために、課税対象となる範囲について見直しを検討すべきである。