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Policy(提言・報告書) 経済連携、貿易投資 日EU規制協力に関する共同提言

KEIDANRENBUSINESSEUROPE

日EU規制協力に関する共同提言

〔仮訳(英文正文)〕
2016年12月13日

Ⅰ.日EU EPA/FTAと規制協力

経団連とビジネスヨーロッパは、日EU EPA/FTAの主要な交渉事項の一つである非関税措置に関し、日EU双方にメリットのある解決策を見出すために業界対話を促進してきた。日本とEUは、双方の市場で障壁となっている非関税措置の削減と撤廃に向けて引き続き努力すると同時に、日EU間の協力をより高いレベルにギアチェンジする必要がある。即ち、安全基準を低下させることなく、規格・基準の調和や相互承認等の規制協力を進めることによって、シームレスなビジネス環境を求めていかなくてはならない。積極的に共通点を創り出していくことが重要となっている。特に、反グローバリゼーション、保護主義が高まる中、外に開かれた通商政策の確立と実行が不可欠である。交渉では未だに数多くの論点が残されているが、本提言を通じて、規制協力の分野における日欧産業界の共通点を強調したい。

長期にわたる取組みが必要な規制協力をEPA/FTAなしに推進していくことは困難である。本提言に盛り込まれた措置は、可能な限りEPA/FTA(仮に付属文書がある場合はそれらを含む)に組み込まれるべきである。双方の関係省庁の関与のもと、日EU間の規制協力を推進する仕組みをEPA/FTAに盛り込む必要がある。日EUは、日EU EPA/FTAが規制協力の制度的基盤として機能するよう、できる限り早期に、かつ十分に野心的なレベルで合意すべきである。

EPA/FTAに限らず、次のような枠組みで規制協力を推進する必要がある。即ち、経済協力開発機構(OECD)、国連欧州経済委員会(UNECE)のような国際フォーラム、二国間または地域間の相互承認協定(MRAs)、国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)や日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)など特定分野について規制当局が組織している国際枠組み、ISO規格を含む国際規格の適用、あるいはOECDの指針・原則などである。

政治のリーダーシップのもと、関係省庁が下記の規制協力をすべての産業分野において一体的に実施しなくてはならない。その際、適切な人的資源や十分な時間を投入する必要がある。

Ⅱ.分野横断的な協力

1. 規制・制度の整合性・透明性の確保

  1. (1) 日EUは、規制の策定にあたり、他方の規制手法、関連する国際規格ならびに日EU間の貿易投資への影響等を考慮する。
  2. (2) 日EUは、新たな規制を導入する場合あるいは既存の規制を改変する場合、他方に対してそれを科学的・技術的データとともに通報・協議し、早期に意見照会を実施する。

2. 規格・基準の調和・相互承認

  1. (1) 日EUは以下の方法で規格・基準の調和ならびに相互承認を推進すべきである。
    1. 規制目的が一致する場合、国際的なレベルで規格・基準を策定する。
    2. 相互の規格・基準を調和させる。関連する国際規格が存在する場合、双方でこれを適用するとともに、国内の規則に反映する。
    技術的な要件が一致している場合、または既に調和された規格・基準が存在する場合、当該規制当局またはいずれか一方の認定適合性評価機関は、試験結果を受け入れる。それにより不必要な試験の重複を避けることができる。規格・基準の統一や調和が困難な分野については相互承認を推進する。これは、ある産品が一方によって適法に取引され、同等の規制要件(例:安全性)を満たしている場合は、他方による輸入・販売が可能との前提に立つものである。このような相互承認の実施を所管官庁が定義し監督する。現行の日・EC相互承認協定(MRA)が十分に活用されていない理由の一つは、相互承認の対象が相手方の適合性評価機関が行う適合性評価結果の受け入れに限定されているからである。この点を考慮し、適切な場合には、同等の要件(例:安全性)を要求している、それぞれの規格・基準の相互承認を推進する。

3. 継続的な規制協力のための仕組み

  1. (1) 日EU EPA/FTAは日EU双方の規制当局、産業当局などの関係省庁の代表から構成される規制協力推進のための仕組みを規定すべきである。
  2. (2) 当該仕組みには、規制協力に関する約束の実行監視、および技術進歩や社会ニーズの変化を反映した改訂提案などの機能を付与する。
  3. (3) 上記の仕組みが政治のリーダーシップのもとで所定の機能を十分に果たすよう、日EU双方の閣僚が関与する。
  4. (4) 社会のニーズに対応した有効な規制を最も低いコストで実施するために、また、当該仕組みが上記の機能を遂行するために、企業の声を最大限反映する。

Ⅲ.個別分野の規制協力

1. 各業界における規制協力

以下に、経団連とビジネスヨーロッパが促進してきた日EU業界対話のこれまでの成果に基づき、将来の規制協力に関する提言を示す。

(1) 自動車

日本自動車工業会(JAMA)は、1990年以降、欧州自動車工業会(ACEA)と定期的に会合し、環境、安全等について対話を行っている。JAMAとACEAは、経団連とビジネスヨーロッパが共催した過去5回#1の業界対話会合に参加している。

JAMAとACEAはアジアを中心により多くの国に対し、政府による型式認定を基礎とする「国連の車両・装置等の統一基準と型式認定相互承認協定(1958年協定)」への加盟を働きかけていく。1958年協定に加えて、日本とEUはグローバル技術基準(GTR)の策定・確立の促進を目指す「1998年協定」に署名している。EUと日本、米国はこの協定の履行促進に向けて共同で取り組んでおり、ACEAとJAMAもこれを支援している。

GTRがまだ国内法制化されていない分野や、完全に策定されていない分野(例:燃料電池用ガスタンク)の技術要件については、日本とEUは技術レベルで協力して現実的な方法、例えば、UNECEの自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の枠組みで完全な調和を図る前段として、相互の要件と承認手続きを認識するための、特別な二国間の取り決めを通じて対処することを共通の目標としている。ACEAとJAMAはこのアプローチを支援している。

特に新興国市場への先端技術の普及に伴い、当該国における環境・安全技術に関する必須要件が増えており、規制遵守にかかる社会的コストが高まっている。完成車・部品の開発・生産・輸出入コストを削減するため、UNECEのWP29は、認証の相互承認を、装置・部品単位から車両単位へと発展させる「国際的な車両認証制度(IWVTA)」の導入計画をまとめつつある。JAMA とACEAは、EU域内各国と日本政府に加え、1958年協定の現行および潜在的な加盟国に対し、IWVTAの実施を働きかけ、消費者が最新の技術を導入した新製品をより容易に購入できるよう促していく。新興国の政府にとっても最先端の安全・環境技術の早期導入からメリットを得ることになる。JAMA とACEAは、引き続き、両団体同士だけでなく、国際自動車工業連合会(OICA)の枠組みでも協力することによって、WP29における基準調和の作業の円滑化に努める。

(2) 化学

日本化学工業協会(JCIA)は、欧州化学工業連盟(Cefic)と国際化学工業協会協議会(ICCA)を通じて緊密な関係を築いている。JCIAは、経団連とビジネスヨーロッパが共催した過去5回の日EU業界対話会合にいずれも参加している。Ceficは、初回から4回までの会合に参加している。

規制協力の必要性についても、両団体で一致しており、現在、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)におけるEU米国間の規制協力に関する交渉の動向も睨みながら、具体化を検討中である。規制協力については、日EU間のほか、アジア太平洋経済協力(APEC)の化学対話においてワーキンググループが設置され、政府を含めた情報交換が行われている。また、ICCAにおいてもタスクフォースが設置されており、最近、規制協力に関する一連の基本原則を取りまとめた。各国は自国の基準を低下させることなくこれを遵守することができる。ICCAは規制協力の3つの中心分野を特定している。すなわち、(1)規制プロセスの透明性の向上、(2)化学物質評価に関する見直しと協力の対象となる物質の優先順位付けに関する協力、(3)規制面の新たな問題を中心とした科学的な協力の強化、である。さらに同タスクフォースでは現在、規制協力に関する参考資料をまとめており、上記3つの中心分野に関するより詳細な情報と具体例を示している。化学物質評価へのアプローチを共有することで、貿易の第三国への転換を防ぎ、相互に有益な経済統合を支援することになる。また、この取り組みは、中小企業や一般人を含む様々な利害関係者の理解と関与の向上にも貢献するとともに、規制制度への信頼を醸成する。規制協力を進めるにあたっては、EU米国間が日EU間に先行する結果、EU米国中心に標準化が進められることのないよう、TTIP交渉の動向に十分に目配りするとともに、日EU EPA/FTA交渉も有効に活用する必要がある。

様々な規制による不必要なコストの発生を可能な限り回避するため、規制当局間の協力を改善できる可能性がある。適切な仕組みとして、新たに表面化しつつある科学面の問題について規制当局間で情報交換を行うことが挙げられる。たとえば、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)、OECDテストガイドラインなど、関連する国際規格を利用することも考えられる。OECDなどの国際機関における化学物質管理に関する議論に留意することで、JCIAとCeficは、産業界の意見をタイムリーかつ適切な方法で確実に反映することができる。

REACHのような規制が標準として世界に広がりつつある中、日本においても、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」を国際的な化学品管理の流れに沿ったものとする必要がある。具体的には、ポリマーに関する規制アプローチの調和を含む化学物質のハザードおよびリスクの評価に関する協力は、国際的な規制協力の対象として検討されるべきである。

(3) ICT

電子情報技術産業協会(JEITA)と欧州情報通信民生電子技術産業協会(DIGITALEUROPE)は、連携して業界が直面する様々な課題に取り組んでいる。JEITAとDIGITALEUROPEは、経団連とビジネスヨーロッパが共催した過去5回の日EU業界対話会合にいずれも参加している#2

JEITAとDIGITALEUROPEは規制協力の強化のため相互に協力することにコミットしている。特に力を入れているのは、日本と欧州の制度・規格の国際水準での調和に向けて可能な限り技術要件を統一するとともに、デジタル技術製品の流通において高い安全基準を維持しつつ、簡素化を進めることである。規制協力を加速させるとともに、ルールの不必要な違いを排除し、高度な消費者保護を確保するという共通の目標に向けて、JEITAとDIGITALEUROPEは業界対話を継続する。また、両団体は、交渉官に対して、日本とEUが保護主義的政策の台頭に対抗できるような国際ルールの策定を推進するよう呼びかける。こうした取組みは、とりわけ技術移転要求、現地調達要求など現地化を強制する傾向の拡大を念頭に置いている。データに関する現地化強制要求、すなわちデータの国内保存義務もますます俎上に上っているのが現状である。以下はそのような取組みの例であり、まずは米国を含めた先進国間で整合性のある制度を構築することが第三国における保護主義的な措置の拡大を防ぐことにつながるとの考え方に立って取り組んでいる。

〔現地化を強制する措置:FLMsへの対応〕
自国の技術力・研究開発力・生産力を強化する目的で各種の現地化を強制する措置(FLMs: Forced Localization Measures)が新興国を中心に広がりを見せており、対応措置を採らなければ、情報サービスのグローバル化を阻害、ひいては全ての産業にマイナスの影響を及ぼしかねない状況にある。JEITA、DIGITALEUROPE、そして米国におけるパートナーである米国情報技術工業協議会(ITI)は、データの現地保存の義務づけ(data localization requirements)が世界経済の成長にもたらす深刻な影響について、とりわけ強い警鐘を鳴らしている。
このような取組みのほか、既存の政策対話に加えて、欧州と日本の産業界は、日EU EPA/FTAや世界貿易機関(WTO)、新たなサービス貿易協定交渉(TiSA)、国際電気通信連合(ITU)、OECD等も活用しながら、データの自由な流通ならびにグローバル・バリューチェーンの確保の観点から各国・地域の制度の国際的な整合性確保に努める。

EUに対する要望
EU指令に基づき21か国が相異なる私的複製保障金制度を導入している。対象製品は多岐にわたっており、補償金額も総じて高い。厳しい競争の中で製品価格への転嫁ばかりか、対象製品および対象となる恐れのある製品の製造・販売自体を阻害しかねない。同制度は廃止されるべきであり、少なくとも制度の見直し、または、適切に実施された損失の実態評価により正当化される他の代替手段によるべきである。

(4) 医療機器

日本画像医療システム工業会(JIRA)と欧州放射線医用電子機器産業連合会(COCIR)は、DITTA(Diagnostic imaging, radiation therapy, healthcare IT, electromedical and radiopharmaceutical manufactures)を通じて連携している。JIRAとCOCIRは経団連とビジネスヨーロッパが共催した過去5回の日EU業界対話会合にいずれも参加している#3

日本、欧州、米国、カナダ、豪州の規制当局と産業界代表が参加したGlobal Harmonization Task Force(GHTF)における、医療機器のクラス分類、基本安全要件など各国の規制のベースとなる文書の発行等の成果を基に医療機器規制の国際的整合性の確保を目指して、2011年に国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)が設立された。同フォーラムの議論に産業界の意見が実際に反映されるようにするため、日米欧の産業界が中心となって上述のDITTAが組織されている。DITTAを通じて、日欧米の産業界が協力して、IMDRFに参加しているブラジルおよび中国ならびにその他の新興国とも規制の整合性を確保すべく取り組んでいく。

EUに対する要望
EUでは、医療機器指令を医療機器規則へ改訂すべく、現在審議中である。新規則において、(ア)市販後監視の報告対象の拡大、(イ)EUによる独自の安全基準の設定、(ウ)市販後監視データ、臨床試験データの医療従事者や一般への開放、が行われることがないようにする必要がある。

(5) 医薬品

日本製薬工業協会(JPMA)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)は、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH: International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use)および国際製薬団体連合会(IFPMA)をはじめとする製薬業界団体会合を通じて緊密な関係を築いている。JPMAとEFPIAは経団連とビジネスヨーロッパが共催した直近4回の日EU業界対話会合に参加している。

1990年より、日本、EU、米国は、各試験の不必要な繰り返しを防いで医薬品開発・承認申請の非効率を減らし、結果としてより良い医薬品をより早く患者のもとへ届けるべく、新薬の承認審査に必要な各種試験の実施方法、提出書類フォーマット等に関する規制の調和に取り組んでいる。ICHは、日米欧の三極に加え、他国の規制当局・産業界代表も参加するグローバルな枠組みとなる予定である。この中で日EUとしては、米国とも協力して、新興国に対して規制調和を働きかけていく。また、ICHでは取りあげない規制についても、様々な機会を捉えて日EU米国が協力して新興国に対して調和を働きかけていく。

EUと日本は、高コストとなる研究の重複、資源・時間の浪費につながる規制要件の違いを削減すべきである。科学的に正当化されない追加的な要件は、メーカーの開発コストを増やし、その結果、患者へ医薬品が届くのを不必要に遅らせるだけであり、グローバルな医薬品開発を促進する観点から削除すべきである。2002年以来、日・EC相互承認協定(MRA)が実施されているが、対象範囲は限定的である。同協定を見直し、医薬品有効成分、無菌製剤、バイオ医薬品(ワクチンを含む)などの製品も対象とするべきである。対象をワクチンに拡大すれば、日本におけるワクチンの流通を加速させ、いわゆる「ワクチンギャップ」の解消に役立つ。

(6) 繊維

日本繊維産業連盟(JTF)と欧州繊維産業連盟(EURATEX)は、年1回トップレベルの対話を継続して行っている。JTFとEURATEXは、経団連とビジネスヨーロッパが共催した第1回日EU業界対話会合に参加した#4

JTFとEURATEXは引き続き、以下の点について合意の可能性を探っていく。

第一は、消費者情報の水準を維持しつつ、ラベル表示に関する要件を最小限に抑えることである。具体的には、(ア)製品に添付して表示を義務付ける要件の数を最小限に抑えること、(イ)ISO規格に基づいて繊維に使用する名称を近づけるか整合化させること、(ウ)ISO規格に基づいて取扱説明の記号を相互承認する、もしくは可能な場合は調和させること、について日EU間の合意を追求する。

第二は、日本とEUでは、規制や取組みが異なるため不必要なコストがかかっていることから、技術基準や取組みを調和させることである。具体的には、(ア)繊維製品への使用を禁じる有害化学物質を統一すること、(イ)技術要件を最小限に抑え、関連する試験方法・表示方法を調和させること、(ウ)高機能・高性能繊維など特殊な繊維に関する特性測定方法の標準化を目指すこと、について日EU間の合意を追求する。

以上二点は、TTIPにおいて欧米産業界が要望している事項とも一致しており、日EU米国間の規制協力の強化にも資するものと考えられる。

第三は、テキスタイルや衣料品デザインのライフサイクルが短いことを踏まえ、WTOの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)25条第2項に基づき、その迅速な保護のためのルールを設ける。

(7) その他

鉄道

上記の業界に加えて、経団連とビジネスヨーロッパが主催する日EU業界対話会合には、日本の鉄道事業者が直近4回の会合に参加している。欧州鉄道産業連合(UNIFE)は第2回~4回の対話会合に参加した。他の分野と異なり、対話の対象は規制協力ではなく、日本の鉄道事業者による調達が中心である。

鉄道に関する「ワン・イヤー・パッケージ」を受けて、日本の複数の鉄道事業者は、資材調達に関する行動基準、主要な調達品に関する年度の調達見込みリスト、契約手続きと審査等で考慮する要素等を見直し、それらをウェブサイトに掲載した。さらに、JR6社の中には、車両の公募調達を実施した事業者もある。また、EUのサプライヤーとの相互理解を促進するため、技術関係交流会を開催し、調達手続や技術開発等に関する情報交換を行うなど海外のサプライヤーへの働きかけを行っている事業者もある。経団連とビジネスヨーロッパとしては、更なる進展を歓迎するものである。

並行して、日EU両政府の主催により、日EU鉄道産業間対話が過去5回開催されており、この分野における相互理解の向上に役立っている。産業間対話は、日EU EPA交渉と足並みを揃え、定期的に開催されるべきであり、市場アクセスの向上という点でより目に見える形で結果につなげるべきである。経団連とビジネスヨーロッパは、日欧政府当局に対して、交渉の妥結までに残された課題を解決するよう求めるものである。

食品

EUの食品・飲料業界が日EUの規制協力を支持しており、食品・飲料分野における不必要な規制の相違の解決、縮小、防止を目指していることに留意する。この分野では、これまで業界対話は成立していないが、欧州の食品・飲料業界は、同様の考えを持つ日本側カウンターパートとの協力の可能性を探ることに強い関心を有している。EU側が取り組みたいと考えている課題のいくつかは基準の調和に関連しており、(1)非関税措置の解決に関する提言の策定、(2)国際的に認知されている基準の普及・適用、(3)当該分野での政府間協力の強化、などである。

2. 個別事項に関する規制協力

個別事項に関する協力の方向性を以下に示す。

(1) 越境データフロー

インターネット・ICTサービスは、貿易・経済・社会の強力な牽引役に成長してきた。国境を超えるデータの自由な流通は、今や国際的なビジネスに取り組む全ての企業にとって不可欠である。日EUは、越境データフローを確保するとともに、強制的かつ不当なデータの現地保存の義務づけを拒否するための横断的な規定を含めて、デジタル貿易の原則を設定すべきである。

日本とEUの産業界はデータ保護に関する当該国の法律遵守にコミットしている。越境データフローを容認すると同時にデータ保護に関する法律を遵守することは可能である。

日本において、昨年、改正個人情報保護法が成立し、個人情報保護行政の一元化を担う第三者機関が設置されるとともに、グローバル化に対応するための規定が整備されるなど、個人情報の保護に関する規律が格段に強化された。昨年交渉が妥結した環太平洋パートナーシップ(TPP)協定には、個人情報を含む情報の越境移転を認めることが規定されている。こうした最近の動きを踏まえ、日EU は、EUデジタル単一市場戦略の一環として2016年4月に採択されたEU一般データ保護規則、ならびにわが国の改正個人情報保護法の下で個人情報を保護しつつ、個人情報の日EU間の自由な越境移転を相互に確保する合意の実現に向けて努力すべきである。

さらに、OECDの「プライバシー保護の個人データの国際流通についてのガイドライン」(1980年採択、2013年改訂)に盛り込まれた施策を軸に第三国を含めた国際的なルールづくりを日EUで協力して推進すべきである。

(2) 欧州特許制度の統一

現在、特許出願の際に必要となるバリデーション手続において必要な明細書および図面については、各国公用語への全文翻訳が求められる。2008年5月からロンドン協定の加盟国では翻訳文の提出が不要となったが、未加盟国では依然として翻訳文の提出が必要であり、翻訳コスト等の出願費用が非常に多額に上ることが欧州において特許出願数を増やせない一因となっている。また、欧州で特許訴訟を提起する際、複数国での提起が必要な場合があるが、それには高額の訴訟費用を要する。このような中にあって、施行が期待される欧州統一特許制度にはスペイン、クロアチアが、統一特許訴訟制度にはスペイン、ポーランド、クロアチアが参加していないのが現状であり、全EU加盟国の参加を働きかけていく必要がある。

(3) 模倣品・海賊版への対策

国際協力および効果的な国際的法執行を行っている模倣品・海賊版への対策において、日EU双方は、不正行為や被害状況を把握し、その予防と対策を実施するために、税関同士の連携や警察と現地代理人との連携を強化すべきである。

(4) EUの紛争鉱物規則への対応

現在、EUにおいては、紛争鉱物規則案(責任ある輸入業者などのサプライチェーン・デューデリジェンスシステム)が議論されているが、対象地域の範囲、対象者(「責任ある輸入者」)の認証基準などが、紛争地域等における武装勢力の資金源となることを防ぐという目的に照らして企業等に過度の負担をもたらすことがないよう、米国における紛争鉱物規制の運用状況も考慮しつつ、実効性の高いルールとする必要がある。それに向けて日EUの産業界が協力していく必要がある。


  1. 2012年3月、2013年4月、2014年3月、2015年4月はブリュッセルで開催。2016年6月は東京で開催。
  2. 第5回について、DIGITALEUROPEは書面参加。
  3. COCIRについては、第2回は書面参加
  4. JTFは書面を提出。

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