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Policy(提言・報告書) アジア・大洋州 第8回アジア・ビジネス・サミット共同声明

(仮訳/正文英語
2017年7月25日

2017年7月25日、アジアの12の経済団体がソウルに集まり、第8回アジアビジネスサミット(ABS)を開催した。アジアの10の国・地域の経済界のリーダーは、各国・地域の経済が現在直面している主要な課題、とりわけアジアの成長戦略、イノベーション、グローバリゼーションに焦点を当てて広範な議論を行うとともに、北東アジアの平和がアジアに経済的繁栄をもたらすとして、朝鮮半島の平和と安定の継続を求めた。最後に以下の共同声明を採択し、アジアの経済界の期待と要望を表明した。

1.アジアの成長戦略

アジアは世界経済を支える成長エンジンであり、その巨大な人口と市場規模は、アジア地域の強みである。世界的に経済の低成長が続く中で、アジアの持続可能な成長を確実なものとしていくためには、各国・地域経済が、効果的な戦略を立て、実行することが不可欠である。さらに、アジアの国・地域の中には、少子化と高齢化の課題に直面していることを認識し、経済界のリーダーは、その課題から生じる問題に対処する方法について議論を行ってきた。

サミットでは、適切な政府の政策支援の下、制度改革や規制緩和、新産業の創出、優秀な人材の育成等の取り組みを通じた成長戦略が、競争力を高めると強調された。とりわけ、IoTや人工知能(AI)、バイオテクノロジー、ビッグデータ、スマートシティ、フィンテック、カルチャー、ヘルスケア、医療科学等の成長産業が、将来有望な主要分野であると指摘された。

サービス分野もアジアの将来の成長にとって必須の要素である。アジア各国・地域の経済力を高めていくため、とりわけサービス業が大きな役割を占める国・地域においては、サービスセクターの発展と成長をサポートするための規制の枠組みが必要である。

情報技術の進歩に伴い、製造セクターを含め、全ての分野でデジタル化の重要性が高まっている。しかしながら、本サミットでは法制度ならびに人材育成やインターネットの普及等の各種の課題が、情報技術の発展と成長を阻害しているケースが多くあるという共通認識を得た。この点について、アジアのビジネスセクターは、引き続き自国政府に対して改善を求めていく。

2.イノベーション

イノベーションの推進にあたっては、研究開発分野における幅広い協力と連携が重要であり、アジアの経済界は可能な全ての分野での協力・連携促進に努めていく。また、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に資する第4次産業革命、超スマート社会を目指すSociety5.0、ならびに大衆創業・万衆創新をはじめ、各種のイノベーション関連政策に対しては、各国・地域が共同で対応していくことで合意した。

また、今後継続的にイノベーションを創造していくためには、域内における知的財産権の公正且つバランスの取れた利用を確保することによりデータが自由に国境を超えて行き交う環境整備が望まれることから、アジアの経済界はこれらの環境整備のための必要な各種方策を明らかにし、各国・地域において、その実現を求めていくことで一致した。

また、サミットは、パリ協定が2016年11月に発効したことを歓迎した。環境問題は一つの国・地域では解決できない問題であり、アジア各国・地域の経済界のリーダーは域内における各国・地域の政府が協力してこの問題に対応することの重要性を強調するとともに、環境負荷が少ない技術の開発に努め、その技術を民間部門に広く普及させていくことで合意した。加えて、アジアにおける持続可能な発展を実現するため、エネルギー消費を減少させ、再生可能エネルギーの利用を拡大させるための具体的なアクションを実行すべきとの認識で一致した。

3.グローバリゼーション

本サミットは、近年の世界的な反グローバリゼーションや保護主義の高まりに強い懸念を示し、アジアの各国・地域は自由貿易の旗を共に高く掲げ、自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に協力して取り組んでいくべきであるという共通認識を得た。

グローバリゼーションにより引き起こされる課題には、より広範な協調した対応策が必要である。かかる観点から、政府と経済界が、グローバリゼーションにより得られる利益についての認識を共有するとともに、その公平な分配を確保していかねばならない。国際機関や本サミットのような国際的なプラットフォームは、関係者が集まり、開かれた貿易システムの価値を確たるものとするために重要な役割を担っている。保護主義は、刹那的かつ大衆に迎合した策であり、全体的な成長という根本的な必要性には対応できていない。アジア地域の持続可能な経済成長を確実なものとするために、アジアの経済界は地域経済統合を推進していく必要性を認識しており、高水準で包括的なFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)やRCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)の早期実現に向けて協力して推進することに合意した。さらに、経済連携協定(EPA)と自由貿易協定(FTA)は、排他的であってはならず、また、貿易はWTO協定に整合する形で自由化され、全世界の全ての人々の利益に合致すべきことに同意した。特に、本サミットは中間財にかかる関税の削減は、サプライチェーン全体の製造コストを引き下げ、地域全体の価格競争力の強化へと繋がると考える。

アジア地域における経済発展の不均衡を解消するとともに、全ての人々がグローバリゼーションの恩恵を受けるためには、連結性は不可欠であり、質と量の両面での地域のインフラ開発や、連結性向上につながる一帯一路構想等の各種取り組みの推進により実現し得るものであるとの認識で一致した。そのため、アジアのビジネスセクターは、官民連携(PPP)において積極的な役割を果たすとともに、かかるインフラプロジェクトにおいては、その組成から実施において、官民がリスクやリソース、意思決定を共有すべきことを政府に対して求める。

以上

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