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Policy(提言・報告書) 税、会計、経済法制、金融制度 平成30年度税制改正に関する提言

2017年9月19日
一般社団法人 日本経済団体連合会

はじめに

わが国では経済が緩やかながらも成長過程にある中、GDP600兆円経済に向けて、デフレ脱却、経済再生に取り組む必要がある。潜在成長率の底上げを図るべく「未来投資戦略2017」で掲げられたSociety 5.0の実現に向けた施策を確実に実行し、設備投資や研究開発投資等を更に活性化させるべきである。

平成30年度税制改正では、Society 5.0の実現に向けた取り組みを加速させるとともにビジネス環境を改善する観点から、事業再編の円滑化、投資促進、行政手続の簡素化・IT化、人材育成・労働生産性向上に資する税制措置を整備することが喫緊の課題となる。また、景気の腰折れを防ぎ、消費を喚起するとともに、消費税率引き上げの環境整備を行う観点から、土地・住宅に係る法人・個人の税負担を増加させない措置の延長等が不可欠である。

国際課税については、ポストBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)の環境の中で、各国による制度・執行の協調を目指しつつ、引き続きわが国企業の競争力強化、円滑なグローバル事業展開に資する制度を構築すべきである。

企業のコンプライアンス・コストは近年、BEPS勧告の国内法制化や今後見込まれる消費税の軽減税率対応等により大幅な増加傾向にある。今後の税制改革は働き方改革と企業の生産性向上の視点も踏まえ行う必要がある。

さらに、国・地方の長期債務残高が2017年度末に約1,093兆円、対GDP比198%に達する見込みとなる中、社会保障制度と財政の持続可能性を確保する観点から、消費税は予定通り10%へ引き上げるべきである。

なお、幼児教育や子育て支援などの喫緊の課題に対する安定的な財源は、社会全体で支える観点から、社会保障などの財政の効率化と新たな税財源によって確保することを基本とすべきである。

経済界としても民主導のイノベーションを通じて経済の好循環に引き続き貢献していく。

平成30年度税制改正に関する提言

1.未来投資戦略2017に関連する税制措置の整備

持続的な成長を実現する上で税制が果たす役割は大きい。

昨年度、法人実効税率20%台が実現したが、改革は道半ばである。米国でも大胆な税率引き下げの動きがあり、経済成長による税収増を織り込んだ複数年度税収中立の議論も行われている。また、フランスでも法人税率引き下げの動きがある。これら動向も踏まえながら、引き続きOECD諸国平均・アジア近隣諸国並みの25%程度を目指すべきである。その際、重要なことは、実質的な税負担の軽減を伴う改革を行うことである。税率の引下げに見合う分、課税ベースの拡大を行ったのでは、日本の立地環境の改善と企業の国際競争力強化という改革の本来の目的を達成することができないことに留意すべきである。

研究開発税制については平成29年度税制改正で発展的改組が行われたが、日本の産業競争力の強化、官民合わせた研究開発投資対GDP比率4%以上の実現に向け、今後も総額型の堅持、サービス開発やオープン・イノベーション型の使い勝手改善を含め、制度全体を維持・拡充することが不可欠である。例えば、サービス開発については、Society 5.0の実現に向けたサービス開発を加速する観点から、情報解析専門家の意義に関する柔軟な解釈を許容するとともに、顧客との協創等の新しい活動によるものも広く対象に含めるべきである。

なお、パテント・ボックスについても、引き続き導入を検討すべきである。

未来投資戦略2017に関連する税制措置のうち、平成30年度税制改正で取り組むべき主要課題は以下の通りである。

(1) 事業再編の円滑化

平成29年度税制改正でスピンオフ税制が導入され、既存の組織再編税制についてもスクイーズ・アウト関連をはじめ各種適格要件が見直された。また、連結納税についても開始・加入時の時価評価課税の見直しなど対応する改正が行われた。これらはいずれも事業再編の円滑化に資するものと評価できる。

ただ、制度改善の余地は残されている。事業再編の円滑化が未来投資戦略2017で引き続き重要課題とされていることを踏まえ、スピンオフ税制に関する適格要件の緩和、産業競争力強化法の改正に伴う税制措置の新設・延長等を行うべきである。

  1. スピンオフ税制に関する適格要件の緩和
    親会社が単独新設分社型分割を行った後に適格株式分配を行う場合、親会社と分割承継法人との間の完全支配関係継続要件は適格株式分配の直前まで満たせば足りるとされ、その分割は適格となる余地があるが、仮に親会社が先に100%子会社である受皿法人を設立し、その法人に対し吸収分割により事業を移転した上で株式分配を行う場合には、その分割は株式継続保有要件を満たすことができない。受皿法人の設立には関連する免許や許認可の先行取得等、事業上の理由があることから、吸収分割によるものも適格とすべきである。また、この他にも、株式分配によるスピンオフ準備のためのグループ内再編について、幅広く適格とすべきである。

  2. 産業競争力強化法の見直しに伴う税制措置の新設・延長
    産業競争力強化法は事業再編の円滑化に資する税制措置の基盤として重要な役割を果たしてきた。同法は平成30年度末に見直しの期限が到来するが、存続となることを前提に、引き続き関連する税制措置を講じるべきである。例えば、事業の組み換えを行った場合における譲渡益に対する課税の繰り延べなどが必要となる。また、現行の産業競争力強化法における登録免許税の特例については、事業再編に伴う税負担を軽減する観点から延長すべきである。
    なお、事業者が特例措置の適用を受けるためには改正法の下で計画認定等のプロセスを経る必要があると考えられるが、できるだけ簡便なものとすべきである。

  3. 株対価M&Aに関する検討等
    事業再編をさらに促進すべく、株対価M&A時の株主における譲渡損益に対する課税の繰り延べ措置を検討すべきである。また、LLP(有限事業責任組合)に対する現物出資時の簿価譲渡を可能とする制度を創設するとともに、LLC(合同会社)についてパススルー課税を整備すべきである。
    なお、連結納税制度や組織再編税制については、今後も不断に検証を行い(例えば、連結グループの範囲、連結納税企業が研究開発税制を適用する場合の売上高の計算方法等)、必要な見直しを行うべきである。

(2) 投資減税(データの高度活用を促す税制措置の整備等)

Society 5.0を実現するためには、あらゆる分野・産業に対しAI、IoT関連システム・サービスの社会実装を促し、データの連携・活用により生産効率を向上させる必要がある。また、情報ネットワークがあらゆる階層に張り巡らされ、2020年に東京オリンピック・パラリンピックも控えるなか、社会インフラのサイバーセキュリティの強化も不可欠である。そこで、社内外のシステム・データの連携を進め、データの高度活用により競争力の強化を図るとともに、セキュリティ確保に向けた取組みを進める観点から、関連資産(センサーやドローンなどのセンシング、工作機械や建設機械などのアクチュエータ、サーバなどのストレージ、データ分析や機器制御、あるいはセキュリティ対策のためのソフトウェア等)の取得、関連役務(セキュリティ対策サービスやデータ分析サービス等)の購入に関し、税制上のインセンティブを設けるべきである。

また、未来投資戦略2017と一体をなす骨太方針2017においてバイオ医薬品等の研究開発支援方策等を拡充することとされていることを踏まえ、関連設備への投資に対する支援措置を検討すべきである。

(3) 行政手続の簡素化・IT化

  1. 納税者の事務負担軽減・利便性向上に資する電子申告制度等の構築
    未来投資戦略2017では規制改革・行政手続簡素化・IT化を一体的に進めることとされており、税務分野も改革の対象となっている。具体的には現在、「行政手続コスト削減のための基本計画」(国税・地方税)に基づき、大法人につき法人税や地方法人二税の電子申告の義務化等が検討されている。
    改革の方向性には賛同する。規制改革推進会議が指摘しているように、諸外国も電子申告の利用率を大幅に向上させるとともに、電子申告の利便性を改善させる中で、税務分野の行政手続コスト削減を進めてきており、日本においても、電子申告の普及が重要である。
    ただし、電子申告の義務化は、あくまでも行政手続コストを削減するための手段であって、それ自体が目的ではないということにも留意すべきである。「基本計画」では、「原則として添付書類も含めて電子申告を義務化」とされているが、現状、データ形式が限定されているなどの理由により紙媒体で提出せざるを得ない書類について、指定様式により電子媒体で提出することが求められるだけでは、企業の事務負担は減少しないおそれがある。とりわけ、勘定科目内訳明細書について一律、指定様式での電子的な提出が義務付けられれば、納税者側でシステム変更が必要となり、容易に対応できない事態が想定される。
    したがって、電子化の対象とされる申告書や添付書類については、企業が現在、作成しているデータがe-Tax、eLTAXでそのまま受け入れられるよう、受入ファイル形式を柔軟化すべきである。また、このほかにも、「基本計画」に掲げられている項目を含め、書類の簡素化やe-Tax、eLTAXの利便性向上などもあわせて進める中で、電子申告の義務化の円滑な実施を図ることが重要である。
    これに加えて、本件に関する議論の手順としては、まず、現状、紙又は電子媒体で提出している各種申告書・添付書類について、真に提出が必要か否かの確認を行うべきである。適正課税を確保するため企業からの提出が必要不可欠な書類以外は、この機会に申告時の提出を省略し、保存義務へと転換することも考えられる。
    その上で、提出が必須とされる書類についても、その電子化は、法人税と地方法人二税の共通入力事項をはじめ、電子化により納税者の事務負担軽減に資するものを中心として進めるべきである。すなわち、電子化の徹底という「デジタルファースト原則」は、事業者が提出した情報について、同じ内容の情報を求めないという「ワンスオンリー原則」に資する方向で検討を進める必要がある。
    電子申告の義務化の施行時期については、電子申告の対象書類に応じ検討すべきである。機械的・一律に平成30年度分の申告から適用するのではなく、納税者の準備期間を踏まえた合理的な設定とすべきである。
    電子申告の義務化に関連する他の論点としては、個別帰属額届出書の連結子法人からの提出の不要化(連結親法人による一括送信)、一度の手続きで全地方団体に対して電子納税可能な共通電子納税システム(共同収納)の導入などが挙げられる。電子申告義務化の対象となる大法人の定義についても、企業の実態を踏まえた制度設計が求められる。
    なお「基本計画」に定められたe-Tax、eLTAXの利便性向上策(電子署名の簡素化、サーバの強化等)は一部、前倒しを含め、確実に実施すべきである。また、地方税の申告書様式についても、できるだけ早期に自治体間で統一を図る必要がある。
    関連して、電子帳簿保存法についても不断に見直しを行うべきである。具体的には、国税関係書類のスキャナ保存要件について、タイムスタンプ・画質・申請・入力方式等の要件緩和が課題となる。

  2. 特別徴収税額通知の取り扱い

    1. 特別徴収税額通知(特別徴収義務者用)における個人番号記載の不要化
      市区町村から交付される個人住民税に係る特別徴収税額通知(特別徴収義務者用)には個人番号の記載が義務付けられているが、電子交付が徹底されていないため、紙媒体で交付される通知書に関し事業者の保管コストが多大なものとなっている。
      政府の規制改革実施計画では電子交付の推進に必要な支援を継続的に行うとされており、引き続き全市区町村が電子交付できるよう推進し、少なくとも紙媒体で交付される通知書については、個人番号の記載を不要とすべきである。

    2. 特別徴収税額通知(納税義務者用)の電子交付化
      市区町村から事業者に紙媒体で郵送される特別徴収税額通知(納税義務者用)についても、開封、確認、システム入力、従業員への配布、保管等、膨大な作業が発生している。事業者の負担軽減に向け、政府の規制改革実施計画に則り、納税義務者にとっての利便性も考慮しつつ、同通知書の電子交付化を図るべきである。

(4) 人材育成等

平成29年度末に所得拡大促進税制の適用期限が到来する。仮に延長を行う場合、雇用者給与等支給増加額を計測するための基準年の見直しといった技術的な検討も必要となろうが、むしろ、未来投資戦略2017が人材育成の重要性を強調していることを踏まえれば、賃金の増加のみに着目した現行の制度設計から、従業員(下請企業の従業員を含む)に対する教育訓練費も対象に含め、幅広い人材投資への支援という観点から改組することが考えられる。

2.土地・住宅税制

(1) 土地に係る固定資産税の負担軽減

商業地等に係る固定資産税の過大な負担は現状においても企業の収益力向上の足かせとなっているが、平成27年から平成29年の三大都市圏や地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)等における地価上昇を踏まえると、平成30年度の評価替えに伴い、さらに税負担が上昇する地域が多数現れると見込まれる。これに加え、商業地等に係る負担調整措置に関し、負担水準が60%~70%となる商業地等について課税標準を前年度課税標準に据え置く特例、および条例によって課税限度額を引き下げる条例減額制度が廃止されれば、地価の回復が直ちに増税につながり、経済を牽引する都市部の活力を阻害するとともに、経済成長の地方への波及にも水を差すこととなる。

現行の負担調整措置については、評価額に対する地域間の税負担率のバラつきを許容することとなるとの指摘があるが、問題は税負担の率というよりも実額であり、消費税率の10%への引き上げが控えられている中、固定資産税についても税負担をこれ以上増加させない措置が強く求められる。

かかる観点から、デフレからの確実な脱却に向け、負担調整措置は堅持した上で延長すべきである。その上で、更なる税負担の軽減策についても検討すべきである。

(2) 新築住宅に係る固定資産税の軽減特例の延長

住宅投資は地域経済や他産業への高い波及効果、雇用創出効果を有する内需の柱であり、建替えも含め新築住宅供給の果たすべき役割は引き続き重要である。新築住宅に係る固定資産税の軽減特例は、住宅取得に係る初期負担軽減に寄与し、全国的な住宅需要を安定的に支えているものであり、延長すべきである。

(3) 各種特例措置の延長等

上記に加え、土地・住宅に関する以下の特例措置の延長等をすべきである。

  • 土地及び住宅用建物に係る不動産取得税の税率の特例
  • 宅地評価土地に係る不動産取得税の課税標準の特例
  • 住宅及び住宅用土地の取得に係る不動産取得税の特例
  • 居住用財産の買換え・譲渡に伴う特例
  • 住宅の買取再販に係る特例(延長及び拡充)
  • 長期優良住宅及び認定低炭素住宅に係る特例
  • 老朽化マンションの建替え等の促進に係る特例
  • 耐震・省エネ・バリアフリー改修に係る特例
  • 都市の低未利用土地対策のための特例(創設)

なお、地価税・土地譲渡益重課税制度は廃止すべきである。

3.法人課税の諸課題

(1) 地方法人課税改革

  1. 償却資産に係る固定資産税の抜本的見直し
    GDP600兆円経済の実現のためには設備投資を増大させることが不可欠であり、償却資産に係る固定資産税については廃止を含め抜本的に見直すべきである。特に機械装置への課税は米国やカナダの一部の州などのみで行われている極めて稀な税であり、その米国でも近年、一部の州で廃止の動きが見られる。また、わが国製造業が競合するアジア近隣諸国で例がない。少なくとも新規取得した機械装置及び工具に係る固定資産税については中小企業に係る特例も参考にしながら縮減すべきである。あわせて、残存価額の廃止等、法人税の課税所得の計算方法との整合性を図るべきである。

  2. 地方法人所得課税のあり方
    地域経済の活性化のためには、安定した地方歳入を確保するとともに自治体間の税収格差を是正することが必要となるが、地方法人所得課税は地域間の偏在性が大きく、税収も不安定という課題を抱えている。また、税目の多さは、納税者の申告作業を複雑化させている。
    近年、地方法人所得課税については、偏在是正の観点から累次の改正が行われており、消費税率の10%への引き上げ時にも地方法人税の拡充等、さらなる取り組みが行われる予定となっているが、最終的には、地方の法人所得に対する課税部分は国税の法人税に統合し、地方交付税により各自治体に配分する仕組みへと一本化すべきである。法人所得に係る税目の削減は、納税者の事務負担軽減にも資する。また、法人住民税法人税割と法人事業税所得割について、連結納税制度の導入可能性を検討することも考えられる。加えて、外形標準課税について、計算等が複雑になっており、企業実務にとって負担となっていることから、簡素化を検討すべきである。
    なお、地方法人所得課税の課題は財源確保・偏在是正、事務負担軽減に留まらない。法人の負担水準のあり方についても引き続き検討を行う必要があり、段階的に引き下げるべきである。

  3. 電気・ガス供給業における収入金課税の見直し
    電気・ガス供給業における法人事業税の課税標準について、現在、地域独占と総括原価主義を根拠とした収入割が適用されているが、2016年度(電気)、2017年度(ガス)の小売全面自由化により、地域独占と総括原価主義が廃止されたため、収入割を採用する根拠が失われている。
    また、小売全面自由化に伴い、一般の事業と同様の競争環境に移行することから、電気・ガス供給業にかかる法人事業税を一般企業と同様の課税方式に統一すべきである。

  4. 事業所税
    事業所税の従業者割は法人事業税付加価値割や法人住民税均等割と同様、賃 金・雇用への課税となっており、賃金の上昇への足かせとなっている。さらに、資産割は固定資産税及び都市計画税との二重課税である。これらの点を踏まえ、事業所税は他の税目と整理・統合すべきである。

(2) 収益認識基準の開発に伴う税制上の対応

現在、企業会計基準委員会において、収益認識基準の開発に向けた検討が行われており、平成30年度から同基準の早期適用が予定されている。7月に示された同基準の公開草案では、実質的に現行の会計処理の多くが踏襲される見込みであるものの、長期割賦販売や返品調整引当金など、一部では現行の実務と異なる取り扱いが提示されている。会計と税務上の取り扱いが異なり、納税額や実務負担が過度に増えることのないよう、税制上の所要の措置を講じるべきである。

(3) 印紙税の一層の軽減

電子商取引が一般化し、経済取引のペーパーレス化が著しく進展する中、紙を媒体とした文書のみに課税する印紙税は合理性が失われている。本来的には廃止すべきであり、少なくとも期限の到来する工事請負契約書、不動産譲渡契約書に係る特例については延長の上、軽減率を更に拡充すべきである。また、この機会に、金銭又は有価証券の受領書についても、課税文書となる最低金額を引き上げるなどの見直しを行うべきである。

(4) 原子力発電施設解体準備金の見直し

現行会計上、原子力発電設備の廃炉費用は運転開始時から原則50年にわたり引当てることとなっているが、廃炉前に引当てを終えていることが廃炉の円滑な実施に資するとの観点から、今後、引当期間が原則40年に短縮される等の見直しが行われる見込みとなっている。

そこで、原子力発電施設解体準備金についても、会計と同様、引当期間を40年とするとともに、計画外廃炉に伴う未引当分については分割計上を行う場合の損金算入を認めることとすべきである。また、発電所に固有の廃炉見積額についても損金算入を可能とすべきである。

(5) 各種特例措置の維持・存続・延長・拡充

  1. 海外投資等損失準備金の維持・存続
    資源メジャーによる市場の寡占化、新興国の参入などを背景に国際的な資源獲得競争が激化する中、資源・エネルギーの安定供給に向けたわが国企業による探鉱開発の促進の観点から、海外投資等損失準備金を維持・存続すべきである。

  2. 金属鉱業等鉱害防止準備金の維持・存続
    金属鉱業では、廃鉱後も確実かつ永続的に鉱害対策を実施することが金属鉱業等鉱害対策特別措置法によって義務付けられている。金属鉱業等鉱害防止準備金はその実効性を担保するための税制措置であり、同法が存続する限り確実に維持・存続すべきである。

  3. 国際船舶に係る登録免許税・固定資産税特例の延長・拡充
    国際競争力の強化に向け、諸外国に比べ割高な国際船舶(日本籍船)の取得・保有に係る諸税の軽減を図るべく、国際船舶に係る登録免許税の特例を拡充・延長するとともに、固定資産税の特例を延長すべきである。

  4. 国内線就航機の固定資産税軽減措置の延長
    本税制は国内における地方航空ネットワーク維持に寄与しており、また、世界的に航空機に固定資産税を課している国が稀ななかで、わが国の航空会社が世界に伍していける国際競争力を確保する観点からも、国内線就航機の固定資産税軽減措置を延長すべきである。

  5. 公害防止用設備に係る固定資産税の課税標準の特例の延長
    民間事業者における環境負荷低減対策を引き続き促進するため、本特例措置を延長すべきである。

  6. 倉庫用建物等に係る割増償却、倉庫等に係る固定資産税特例の延長
    災害に強く輸送の効率化に資する倉庫の整備を引き続き支援するため、本特例措置を延長すべきである。

  7. 放送ネットワーク災害対策促進税制の延長
    被災情報や避難情報など国民の生命・財産の確保に不可欠な情報を確実に提供するため、放送ネットワーク災害対策促進税制を延長すべきである。

  8. 国家戦略特区に係る特例の延長・拡充等
    大胆な規制改革による民間ビジネスの成長を税制面でも後押しする観点から、国家戦略特区に係る特例を延長・拡充すべきである。あわせて、国際戦略総合特区に係る特例も延長すべきである。

(6)その他

  1. 投資法人に係る税制措置の整備
    投資法人が海外の特別目的会社等を通じて投資し、海外で直接外国税額を支払っている場合、配当金の受取方式を問わずに控除できるようにすべきである。
    また、90%配当要件(配当可能利益の90%超を分配すべきとする要件)を満たせるよう、配当可能利益から控除できる項目として損益計算書の法人税、住民税及び事業税に含まれる外国法人税を追加すべきである。

  2. 欠損金の繰越期間の延長、繰戻還付の復活
    欠損金の繰越期間については、来年度から10年間とされるが、国際的イコールフッティング、対日投資促進の観点から延長すべきである。あわせて、大法人における繰戻還付についても復活すべきである。

  3. 受取配当益金不算入制度における負債利子控除の廃止
    受取配当益金不算入制度に関し、関連法人株式等については負債利子控除が依然として存置されている。負担軽減の観点から負債利子控除制度を廃止すべきである。

  4. 原料用途免税の本則非課税化
    ナフサに係る石油石炭税の免税・還付措置、鉄鋼・コークス・セメント製造に係る石油石炭税の免税措置については「当分の間」とされているが、そもそも諸外国ではこれら原料に課税している例はない。国際的なイコールフッティングの観点から、ナフサに係る揮発油税も含め、原料用途免税を本則非課税化すべきである。

  5. 留保金課税の見直し
    企業の自己資本の充実による投資促進の観点から、特定同族会社の留保金課税は廃止すべきである。

  6. 一般寄付金の損金算入限度額に関する計算方法の見直し
    一般寄付金の損金算入限度額は資本金等の額に応じ変動するところ、自己株式の取得により資本金等の額が僅少又はマイナスとなる場合がある。法人事業税の資本割を参考に、資本金等の額が資本金及び資本準備金の額を下回る場合には、資本金及び資本準備金の額を基礎に損金算入限度額を算定すべきである。

  7. 国土強靭化に資する税制措置
    地震・津波等の自然災害に対する設備等の強化など事業者の自主的対策を後押しする観点から、関連する投資等に税制上の支援措置を講ずるべきである。

4.国際課税の諸課題

現在、BEPS最終報告書を踏まえ、包摂的枠組の下、4つのミニマム・スタンダード(有害税制への対抗、条約濫用防止、国別報告事項、紛争解決メカニズムの効率化)に関するピア・レビュー作業が開始されている。

わが国経済界としては、とりわけ国別報告事項について、進出先国における不合理な子会社方式の発動、不適切な利用を懸念している。国別報告事項に含まれる機密情報が適切に保護されているかという状況(EUのPublic CbCRに関する提案の趨勢等)を含め、引き続き各国の法制度・執行を注視するとともに、関係方面に必要な働きかけを行っていく。なお、マスター・ファイル及びローカル・ファイルはミニマム・スタンダードに分類されないが、提出・保存の時期や記載情報について可能な限り国際的な調和を図るべきである。

一方、BEPS勧告の国内法制化については、一律の導入ありきではなく、引き続きわが国の抱えるBEPSリスクの有無・程度を充分に勘案しながら、納税者との丁寧な対話を踏まえ、制度設計を行うべきである。

(1) 外国子会社合算税制の見直し

平成29年度税制改正で外国子会社合算税制の抜本的な見直しが行われた。航空機リース等の過剰合算が一部、解消されるとともに、既存制度の基本構造が維持されるなど、納税者の事務負担に一定の配慮がなされことは評価できる。

ただし、積み残しの課題もある。新制度が施行される平成30年度に向けて、速やかに以下の措置を講ずるべきである。

  1. 外国関係会社で発生するキャピタル・ゲインに対する課税の見直し
    外国の多国籍企業買収後、グループ会社間でシナジー効果を生み出すため、被買収企業傘下の外国法人株式を譲渡するなど資本関係を整理する場合がある。その際に生じるキャピタル・ゲインは、もともとグループ外であった外国法人の株式の含み益に起因するものであり、必ずしも日本の税源が浸食されているとはいえず、たとえ被買収企業傘下のペーパー・カンパニーで生じるとしても一律合算は不合理である。企業の円滑な国際展開を後押しする観点から、外国関係会社で生じるキャピタル・ゲインのうち一定の要件を満たすものについては、課税の繰り延べ又は免除を認めるべきである。

  2. 受取利子
    グループ・ファイナンスに係る利子は、その役員又は従業員が通常必要と認められる業務の全てに従事している場合に限り部分合算の対象外とされる。納税者の予見可能性を確保する観点から「通常必要と認められる業務」の意義について、早期に明確化する必要がある。例えば、親会社による承認が必要であることや一定の業務委託が行われていることを以って直ちに要件を充足しないとするのではなく、各企業における現行の運用を幅広く認めるべきである。
    部分合算される受取利子に係る利子費用については、簡便性の観点から改正前の制度を参考に、総資産に占める債権等の割合を用いた按分控除を認めるべきである。

  3. コンテンツ事業者が行う著作権事業に係る事業基準の見直し
    コンテンツ事業を営む外国関係会社がその所在地国で著作権者から著作権を譲り受け、放送会社等に対しその使用許諾を行う場合、その子会社が固定施設及び従業員を有し、能動的な著作権者や著作隣接権者等の市場開拓及びマーケティング、サポート活動を行っていたとしても、無形資産に属する権利の一つである著作権を用いた事業という法令の機械的な解釈により、著作権の提供が主たる事業と判定され、事業基準に抵触し、一律合算となる恐れがある。外国子会社合算税制の趣旨に合致しない過剰合算の問題を誘発しないよう、経済実体を伴って行われる事業で一定の要件を満たすコンテンツに関する著作権事業については、事業基準に抵触しないことを明確化すべきである。

  4. 外国金融子会社等に対する手当て
    金融所得に関する部分合算の対象外となる外国金融子会社等の範囲について、企業実態を踏まえた手当てが必要である。具体的には、ロイズ保険事業が対象となることを明確化すること、期末時の総資産に占める外国金融機関および他の金融持株会社の株式の保有比率要件を緩和すること、内国法人を通じた外国金融子会社等の間接保有を認めること、金融持株会社の要件を緩和することが必要となる。

  5. 非関連者介在取引の明確化
    外国関係会社が非関連者を介在させて関連者と行う資産の取引は関連者間取引に該当するとされているが、ここで想定されている取引は、あくまでも資産が形状を変えずそのまま移転される取引であり、例えば非関連者が関連者から原材料を仕入れ、加工を行い、完成品を外国関係会社に販売するといった加工取引については対象外であることを明確化すべきである。

  6. 化石燃料投資からの配当に係る10%持分要件の鉱物資源投資への適用
    持分割合25%以上の法人から受ける配当は合算課税の対象外とされているが、鉱物資源業においては海外メジャーとの競争もあり、25%以上の持分を確保することは容易でない。資源間の取り扱いの平準化を図る観点から、化石燃料投資からの配当に係る10%持分要件を鉱物資源投資にも適用すべきである。

(2) BEPS勧告の国内法制化に関する課題

  1. 利子控除制限
    BEPS最終報告書で勧告された固定比率ルールを機械的に国内に導入すると、海外との取引が比較的少ない法人を含め、幅広い業種で損金不算入額が生じることとなり、税源浸食の防止という目的を超えた不合理な結果を招くことになる。今後、仮に過大支払利子税制を見直す場合でも、拙速な議論は避けるべきであり、固定比率の水準、制限対象利子の範囲、EBITDAの内容、施行時期や移行措置に関し、極めて慎重な検討が必要である。

  2. 移転価格税制
    所得相応性基準は事後の結果に基づく強力な更正権限を課税当局に付与するものであり、後知恵課税との懸念が拭えない。評価困難な無形資産を利用した租税回避行為の有無を検証した上で、導入の可否も含め検討すべきである。OECDにおいて所得相応性基準に関する実施ガイダンスの策定作業が終了していないことを踏まえれば、早くとも平成31年度税制改正以降の課題と考える。
    なお、経済界としては各国における取引単位利益分割法(PS法)の適用拡大を懸念する。引き続きOECDにおけるPS法のガイダンス策定作業に関与していく。

  3. 義務的開示制度
    移転価格文書化や外国子会社合算税制に関する近年の改正によって、課税当局に開示する情報は増加傾向にある。まずはこれら制度の定着を図ることが先決であり、なお足らざる情報があるか否かについての検討はその後の課題と位置づけるべきである。万が一導入される場合でも、納税者の事務負担を最小化する観点から、報告義務者はプロモータとすべきである。

(3) 租税条約ネットワークの充実

本年6月にBEPS防止措置実施条約(多国間協定)が署名された。今後、各国における批准を経て発効し、個別の二国間条約にも順次、反映されていくことになる。その際、特に重要なのはPEの範囲及び帰属利得に関する解釈・執行の国際的調和である。従属代理人PEや準備的・補助的活動の認定において各国の濫用的な執行を防止する枠組みを構築するとともに、課税当局(AOAを採用しない国を含む)、納税者の双方が受け入れ可能な帰属利得ガイダンスの策定を急ぐべきである。

なお、多国間協定による二国間条約の読み替えは、あくまでもBEPS勧告に関連する部分に限られる。投資交流の促進と二重課税の排除こそが租税条約の本来の目的であり、投資所得に対する源泉税の減免等を実現すべく、別途以下の国との交渉を推進すべきである。

改定:中国、インド、タイ、インドネシア、ベトナム、ブラジル、ロシア、シンガポール、韓国、カナダ、フィリピン、マレーシア、パキスタン

締結:ミャンマー、アルゼンチン、ベネズエラ、コロンビア、イラン、アルジェリア、ペルー、パナマ、モンゴル、カンボジア、ケニア、ナイジェリア

なお、紛争解決の観点からは、多国間協定によるものであれ、個別の条約交渉によるものであれ、対応的調整規定や仲裁規定を導入することが不可欠である。また、改訂日米租税条約については、早期発効に期待する。

(4)その他

  1. 外国税額控除の改善
    外国税額控除制度における繰越限度超過額及び控除余裕枠の繰越期間は3年と短いため、期間の経過により国際的な二重課税が排除されない恐れがある。企業の海外活動の制約とならないよう、繰越期間を延長すべきである。また、地方法人税において繰越規定を整備すべきである。

  2. 移転価格税制における国外関連者要件の見直し
    国外関連者要件は株式保有比率50%以上とされているが、50%では実際には支配権が及ばない場合があること、また、連結財務諸表構成会社を対象とする国別報告事項、事業概況報告事項との整合性を図る観点から、50%超支配要件へと見直すべきである。

  3. 外国子会社配当益金不算入制度の見直し
    海外で獲得した資金を国内へ還流させ、国内における生産・研究開発等を促進することは、わが国企業が国際競争力を維持するために極めて重要である。その観点から、外国子会社配当益金不算入制度の益金不算入割合を95%から100%へと拡充すべきである。

5.環境・エネルギー関係諸税

(1) 地球温暖化対策税の抜本的な見直し

日本経済の国際競争力確保の観点から、経済合理的な価格で安定的にエネルギーを供給することは極めて重要な課題である。2012年に導入された地球温暖化対策税は、エネルギーコストの上昇に拍車をかけているうえ、三段階目の税率引き上げが行われた現在においても税収実績及び使途が明らかにされておらず、政府関係部局統一の削減効果の検証も行われていない。こうした状況を踏まえ、地球温暖化対策税は、課税の廃止を含め、抜本的に見直すべきである。

また、炭素税の導入による明示的カーボンプライシングの強化は、議論する段階ではなく、反対である。

(2) 森林環境税

森林吸収源対策の財源については森林環境税の創設が検討されており、その具体的な制度設計については平成30年度税制改正で結論を得るとされている。森林整備は地球温暖化対策のみならず国土保全や地方創生など国民に多面的な便益をもたらすことから、平成29年度与党税制改正大綱で明記された通り、恩恵を受ける国民一人一人に等しく負担を求める個人住民税均等割の枠組みを活用すべきである。

(3) 省エネ・再エネ投資を支援する税制措置の整備

わが国では地球温暖化防止の観点から、引き続き省エネ・再エネ技術の開発・普及を推進することが不可欠となっている。そこで、グリーン投資減税については、期限の到来にあわせ改組し、引き続き税制上のインセンティブを講じるべきである。その際、例えば省エネ等の推進の観点から、高電圧直流装置、リチウム蓄電池等を対象資産に加えることも検討すべきである。

(4) 石油関係諸税の負担軽減

  1. バイオETBE配合ガソリンに係るエタノール相当分の揮発油税・地方揮発油税免税制度の延長
    わが国では地球温暖化対策の観点からバイオ燃料の利用が進められているが、バイオ燃料を配合したガソリンの製造コストは通常のガソリンよりも割高となる。引き続き消費者負担を軽減するため、バイオETBE配合ガソリンに係るエタノール相当分の揮発油税・地方揮発油税の免税制度を延長すべきである。

  2. 消費税とのTax on Taxの解消、当分の間税率の廃止
    石油関係諸税(揮発油税、地方揮発油税等)は消費税との関係でTax on Taxとなっているため、速やかに解消する必要がある。そもそも、石油関係諸税の「当分の間税率」は、一般財源化された時点で課税根拠を喪失しており、廃止すべきである。

  3. 軽油引取税に係る免税措置の維持・存続
    価格転嫁の難しさ等、本措置の廃止による経営への影響を回避する観点から、鉱山、倉庫に係るものを含め、軽油引取税の免税措置を維持・存続すべきである。

6.自動車関係諸税

自動車関係諸税は欧米諸国と比べ極めて過重なユーザー負担が課されてきた。特に、道路整備目的で創設された自動車取得税と自動車重量税は道路特定財源が平成21年度に一般財源化された時点で既に課税根拠を喪失している。自動車取得税は消費税10%時点での廃止が決定されたが、自動車重量税は「当分の間税率」を維持したまま存続している。自動車関係諸税については、こうした複雑・過剰な税体系そのものを根本から見直し、簡素化・負担軽減を実現していくことが重要である。

とりわけ、平成29年度与党税制改正大綱で「自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討」を行うことが明記されたことを踏まえ、諸外国と比べ過大となっている自動車税の税率引下げを実施すべきである。あわせて、自動車重量税について、将来的な廃止に向け、まずは「当分の間税率」を廃止すべきである。なお、自動車関係諸税の負担軽減に際しては、代替財源を自動車ユーザーに求めるべきではない。

さらに、中長期的には、負担軽減に加え、極めて複雑な自動車関係諸税を納税者にとって分かり易くなるよう簡素化すべきである。

7.消費税

(1) 95%ルールの復活

消費税の仕入税額控除制度については、事業者の事務負担を軽減する観点から、95%ルールを復活させるべきである。

(2) 非課税取引への配慮

福祉車両や損害保険料など仕入税額控除ができない非課税取引については、転嫁の難しさにより事業者の負担が大きく、また、非課税取引の性質から業務の内製化を志向させる税の中立性の課題(セルフ・サプライ・バイアス)を拡大させる。このため、非課税取引について一定の配慮をすべきである。

(3) 外国証券等の譲渡に係る消費税の内外判定基準の明確化

資産の譲渡に係る消費税の内外判定については原則、その資産の所在地で判定するところ、本邦金融機関が外国証券等を譲渡した場合については、その取り扱いが必ずしも明確ではないため、無券面の外国証券等の譲渡については、国外取引であり不課税であることを明確化すべきである。

8.年金税制

(1) 退職年金等積立金に係る特別法人税の廃止

公的年金の給付水準がマクロ経済スライドの発動に伴い低下するなかで、老後の所得確保を図る観点から、企業年金制度等の普及・拡大がますます重要となる。退職年金等の積立金に係る特別法人税は、こうした方向性とも逆行するものであり、国際的にも稀な税であることから、速やかに廃止すべきである。

(2) 確定拠出年金制度の拡充

中長期的な投資による資産形成を支援するとともに、わが国資本市場を活性化させる観点から、確定拠出年金制度を拡充すべきである。具体的には、拠出限度額の大幅な引上げ、中途引き出し要件の緩和などを行うべきである。

9.個人所得課税等

(1) 個人所得課税の見直しへの対応

個人所得課税については、平成29年度税制改正で配偶者控除・配偶者特別控除に係る見直しが行われた。今後、その効果の検証も踏まえながら、経済社会の構造変化を踏まえ、経済活力を削がないよう配慮しつつ、引き続き各種控除のあり方等を検討すべきである。

(2) 金融・証券・保険税制

  1. NISA(つみたてNISA含む)、ジュニアNISAの恒久化・利便性向上等
    中長期的な投資による資産形成の支援、継続的な市場の活性化の観点から、NISA(つみたてNISA含む)及びジュニアNISAの非課税期間、口座開設期間を恒久化するとともに、スイッチング(NISA口座及びジュニアNISA口座で取得した上場株式等の売却代金の範囲内での他の上場株式等の再取得)を認める、口座開設手続きの迅速化を図る等の利便性向上策を講じるべきである。また、企業においても、制度に関する社員への周知等を進める必要がある。

  2. 金融所得課税のさらなる一元化の検討
    金融所得課税については、高齢化社会における金融資産の効率的な運用、金融資本市場の活性化、企業の円滑な資金調達等の観点から、実務面の課題に十分配慮しつつ、今後もさらなる一元化を検討すべきである。

  3. 生命保険料控除制度の拡充
    社会保障における国民の自助の取り組みを支援する観点から、生命保険料控除制度を拡充すべきである。

  4. 上場株式等の相続税評価額等の見直し
    上場株式(ETF 及びREITを含む)並びに公募株式投資信託については、価格変動リスク等を考慮すれば、依然、他の相続財産と比較して、相続税の負担感が相対的に高いため、相続税評価額を見直すべきである。

(3) 高齢者が有する資金等の若年層への移管を促す税制措置の検討

現在、贈与税では、住宅取得等資金、教育資金、結婚・子育て資金に関し非課税措置が設けられているが、消費活性化等の観点から、今後も適宜、高齢者が有する資金等の若年層への移管を促す税制措置を検討すべきである。

以上

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