Policy(提言・報告書) 環境、エネルギー  電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等への意見 ― パブリック・コメント募集に対する意見 ―

2018年3月6日
一般社団法人 日本経済団体連合会
環境エネルギー本部

今般の省令等改正案には、再生可能エネルギーの大量導入と国民負担の抑制の両立を図る改正が多く盛り込まれており、概ね評価する。そのうえで、以下の通り意見を述べる。

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則(平成24年経済産業省令第46号)の一部改正

第3条 再生可能エネルギー発電設備の区分等

(1)風力発電設備

陸上風力について、出力20kWを境とする区分を廃止することに賛成する。小型風力については、離島等での活用を視野に、FIT制度以外の研究開発等支援のあり方について検討すべきである。
洋上風力について、着床式と浮体式を区分することは、両者の技術的成熟度等の観点から一定の合理性がある。ただし、浮体式について据え置きが提案されている36円/kWhという調達価格は、他の再生可能エネルギー電源と比べても高い水準である。今後、未だ実証段階に留まる浮体式風力のコストデータを参照して調達価格を引き上げるようなことがあってはならない。

第5条 認定基準

太陽光以外の電源にも運転開始期限を設定することは、認定量と運転開始量の著しい乖離を避けられるようになると考えられ、賛成する。一方で、最長で認定取得後8年間にわたって運転開始が猶予されるのは、需要家の視点から見ると非常に長い。環境アセスの合理化・迅速化を進め、その進捗に応じて運転開始期限も短縮する方向で取り組みを進めていただきたい。

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の規定に基づき調達価格等を定める件(平成29年経済産業省告示第35号)の一部改正

Ⅰ 平成30年度以降の調達価格及び調達期間

○ 全体:利潤配慮期間終了後のIRRの扱いについて

今般提示された来年度以降の調達価格は、全電源についてIRRを据え置くことを前提としている。これは、太陽光および入札に移行した区分を除く全電源について、利潤配慮期間(2015年6月まで)の上乗せ分を含むIRRが維持されることを意味する。
言うまでもなく、利潤配慮期間の終了後は、同期間の上乗せ分をIRRから差し引くのが原則である。特定の電源について特別にIRRを維持すべき具体的根拠が十分に示されない限りは、IRRを引き下げるべきである。
少なくとも、認定容量の増加傾向が明らかな電源について、利潤配慮分を上乗せしたIRRを維持するのは不適切である。認定済み案件は時を追って運転開始していくことが見込まれるため、運転開始済み容量の増大を待つ必要はない。
併せて、次回以降の調達価格の検討にあたっては、運転開始済み事業者のIRR実績を調査し、調達価格設定時の想定と大きな乖離がある場合には、調達価格の算定方法等を改善すべきである。

○ バイオマス

一般木材等バイオマスについて、昨年度設定した2018年度・2019年度の調達価格等を再検討し、10,000kW以上のものについては2018年度から入札制に移行することに賛同する。なお、太陽光に続いてバイオマスでも大規模な駆け込み認定が発生したことは、今後の制度設計・運用上の教訓とすべきである。
メタン発酵ガス化発電の調達価格の算定根拠である資本費の想定値について、現時点のコストデータは想定値を下回っているものの、立地条件で劣る地域にも立地が進めば「今後必要となる費用が増加する可能性」があるとして調達価格が据え置かれている。今後必要となる設備・費用が増加する可能性は理解できるものの、2020年度時点の資本費の想定を現時点で据え置く根拠とはいえない。

Ⅳ 経過措置

20kW未満の小型風力について、経過措置を設けることに反対する。FIT制度の趣旨にそぐわないと判断された55円/kWhの高額案件を追加的な国民負担により導入することは容認しがたい。
そもそも現行FIT制度は、あくまでも申請時の買取価格を保証している制度であり、申請前の準備状況を考慮して期日を遅らせる理由がない。加えて、調達価格等算定委員会は、「平成29年度以降の調達価格等に関する意見」において、小型風力については、「来年度以降、調達価格の見直しについて議論を深めるべき」としていた。昨年度時点で本年度の価格変更は十分予見可能であったといえる。本年度申請期限後に調達価格の引き下げが決定されたことは、例外的な経過措置を設ける根拠として不足である。

電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の効率的な利用を促進するため誘導すべき再生可能エネルギー電気の価格の水準に関する目標(平成29年経済産業省告示第36号)の一部改正
(1)陸上風力発電及び着床式洋上風力発電

2030年までに発電コスト8~9円/kWhの実現は、目標水準として低すぎる。特に着床式洋上風力については、欧州で売電価格10円/kWh未満の落札案件が増加しているなかで、到底妥当な目標とはいえない。
調達価格等算定委員会の「平成30年度以降の調達価格等に関する意見」にも記載されているように、FIT制度は、需要家の負担により相対的に高い再生可能エネルギーを支援することで導入を促進し、それによって導入コストの低減を実現し、再生可能エネルギーの自立的な導入拡大を図る制度である(p.23)。そもそもFIT制度の費用対効果には大いに疑問があるところ、導入量が増えても効果的にコストが下がらないと見通されるのであれば、制度の意義を根本から問い直す必要がある。

入札対象として指定をする再生可能エネルギー発電設備の区分等における入札の実施に関する指針(平成29年度経済産業省告示第63号)の一部改正

第2 入札の実施に関する基本的事項

3.入札量

入札量の設定は、2030年度時点の導入量がエネルギーミックスと整合するよう、十分な計画性を持って行う必要がある。特に、入札の対象とされている太陽光と一般木材等バイオマスは、いずれも既に認定量が積み上がっていることに十分留意すべきである。

4.供給価格上限額

入札制の導入を国民負担の確実な抑制に繋げる観点から、供給価格上限額については、入札が導入されなかったと仮定した場合に比べて低い価格に設定することを確認すべきである。すなわち、太陽光については2,000kW未満の事業用太陽光の調達価格以下、バイオマスについては10,000kW未満の一般木材等バイオマスの調達価格以下の範囲で定めることを予め明らかにすべきである。

以上

パブリックコメント募集ページ
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620118004