Policy(提言・報告書) 総合政策  GDP600兆円経済に向けて
-Society 5.0を推進する-
《2018年度事業方針》

2018年5月31日
一般社団法人 日本経済団体連合会

名目GDPが550兆円の水準に達するなど、日本経済が安定的に成長を続けるなか、デフレ脱却を確実なものとし、GDP600兆円経済に向けて大きく前進する。そのためにはさらなる成長戦略の推進が不可欠であり、最重要課題となるのが「Society 5.0」#1の実現である。

現在、IoT、AI、ビッグデータ、ロボットなどの技術発展が多くの産業にパラダイムシフトと呼ぶべき革命的な変革をもたらし始めている。Society 5.0は、こうした新たなパラダイムシフトの下でわが国企業が国際競争力を維持していくための切り札であり、革新技術の活用によって生産性の向上、ひいては経済成長を実現しつつ、人々の暮らしや社会全体の最適化につなげることを目指している。また、Society 5.0の実現は、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも大いに資するものである。経団連は、Society 5.0の実現を通じて、わが国がSDGsの達成における世界のフロントランナーになることを目指して取り組んでいく。このため、Society 5.0の社会実装に向けた具体的分野のロードマップを策定する。

人口減少下における成長を実現するため、ワーク・ライフ・バランスに資する働き方改革を通じた労働生産性向上が不可欠であり、多様な人材が活躍できる企業社会をつくり上げていくことが求められている。活力ある地方経済の再生がわが国経済の発展に欠かせないとの認識の下、地方創生も重要な課題である。

また、エネルギー問題は国民生活と事業活動の基盤であることから、経済成長と両立するエネルギー・環境政策の構築が重要である。

同時に、経済社会基盤の強化という観点から、構造改革の推進が欠かせない。国民の将来不安を払拭するため、社会保障制度の持続可能性確保や財政健全化を進めていかなくてはならない。規制改革や行財政改革などを通じて企業活動のさらなる活性化を目指す必要がある。

グローバルなルールづくりと国際的な連携を強化する観点から、経済外交の推進も必須である。世界経済は緩やかな成長が見込まれるものの、特に最近では、保護主義的・市場歪曲的措置や反グローバリズムの拡大など不確実性が高まっている。経済界の立場からルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の重要性を積極的に発信し、その維持・強化に貢献する。

さらに、震災復興を着実に推進し新しい東北を創生するとともに、東京オリンピック・パラリンピック競技大会、2025年大阪・関西万博誘致などの国家的イベントの成功に向けて、引き続き国を挙げて取り組む。

このような認識のもと、下記の重要政策課題に果敢に取り組む。

1.成長戦略の推進

  1. (1) Society 5.0の実現
    ①分野横断的施策の推進
     ア)イノベーションの促進、イ)イノベーションエコシステムの構築、
     ウ)デジタル技術・データ活用の促進、エ)サイバーセキュリティの強化
    ②重要分野の検討
     ア)電子行政、イ)物流、ウ)防災、エ)ヘルスケア、オ)観光、カ)農業
  2. (2) SDGsへの企業の取り組みの推進
  3. (3) 働き方改革と多様な人材の活躍促進
    ①働き方改革、②女性活躍とダイバーシティの推進、
    ③若年社員・高齢社員の活躍推進と介護離職予防の取り組みの促進、
    ④外国人材の受け入れ、⑤人材育成の推進
  4. (4) 地方創生
  5. (5) 都市機能の充実
  6. (6) エネルギー・環境政策の構築
  7. (7) 消費の喚起

2.構造改革の推進

  1. (1) 財政健全化
  2. (2) 社会保障制度改革
  3. (3) 規制改革
  4. (4) 法人税改革
  5. (5) 子育てに優しい社会の実現に向けた環境整備
  6. (6) コーポレート・ガバナンス改革、企業法制改革

3.経済外交の推進

  1. (1) ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化
  2. (2) インフラ輸出の促進
  3. (3) わが国主要経済パートナーとの関係強化

4.国家的イベントの成功

  1. (1) 東京オリンピック・パラリンピック等
  2. (2) 万国博覧会誘致

5.震災復興の着実な推進と新しい東北の創生

以上

アクション・プログラム

1.成長戦略の推進

(1) Society 5.0の実現

Society 5.0の実現に向けて必要な諸施策の推進を図るとともに、重要な分野については、Society 5.0の社会実装に向けたロードマップを策定する。その際、地方自治体・企業の役割にも留意する。同時に、様々な場面でSociety 5.0に関する広報を強化し、世界経済フォーラム(WEF)をはじめとする国内外の関係機関と連携してSociety 5.0の認知度向上、理解促進を図る。

①分野横断的施策の推進

ア)イノベーションの促進
Society 5.0の実現に資する府省横断的で統合的なイノベーション戦略が策定・実行されるよう、政府に働きかける。また、政府研究開発投資の質・量両面での充実を関係方面に働きかける。特に、政府研究開発投資「対GDP比1%」の着実な確保、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の継続・拡大、ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)の後継プログラムの設置等に向けて働きかける。

イ)イノベーションエコシステムの構築
企業が主体となってイノベーションエコシステムの構築に向けて取り組む。具体的には、企業自らも意識改革と組織改革に取り組みつつ、とりわけ大学の思い切った改革を政府に働きかけるとともに、企業・大学・国立研究開発法人間の意見交換を進める。
エコシステムの重要な構成要素であるベンチャーの創出・育成を目指し、省庁横断的な政府司令塔機能の確立を働きかける。また、大学発ベンチャーとの連携加速や、大企業と大学の共同研究成果を活かしたベンチャー企業創出に向けた取り組みを推進するなど、ベンチャーと会員企業との連携を促進する。

ウ)デジタル技術・データ活用の促進
デジタル技術とデータ活用による社会変革・Society 5.0の実現に向けて、官民一体での情報通信政策の推進やデータ流通・利活用環境の整備、人工知能の研究・開発・活用に向けた諸課題の解決、テクノロジーを活用した新たなビジネス展開の推進、マイナンバー制度の活用等に重点的に取り組む。

エ)サイバーセキュリティの強化
Society 5.0実現の大前提となるサイバーセキュリティの確保に向けて、2018年度に改定予定のサイバーセキュリティ戦略等に、提言「Society 5.0実現に向けたサイバーセキュリティの強化を求める」(2017年12月)で示した意見反映を図る。経営者向けセミナーの開催、機関誌での周知・広報等、同提言で示したアクションプランを実行する。経営者向けトップセミナーの開催等により「経団連サイバーセキュリティ経営宣言」(2018年3月)の趣旨を浸透させる。

②重要分野の検討

ア)電子行政
行政のデジタル化の実現に向けて、政府の規制改革推進会議やIT総合戦略本部等の検討状況を注視し、各府省庁の施策に「デジタル化3原則」((1)デジタルファースト、(2)コネクテッド・ワンストップ、(3)ワンスオンリー)に基づく内容が確実に盛り込まれるよう働きかける。並行して地方自治体における行政の電子化を推進する。

イ)物流
物流は産業構造の高度化を支える重要な基盤として、サプライチェーン全体最適の実現を目指すトータル・コーディネーター、いわゆるスマートロジスティクスを推進していくことが期待されている。そこで、道路、空港、港湾、まち、行政手続きシステム等、インフラ別にデータ利活用における課題を整理するとともに、必要な施策等について検討する。

ウ)防災
引き続きSociety 5.0の防災分野における取り組みを進める。内閣府の中央防災会議などにおいて、政府の防災・減災対策に経済界の意見を反映する。政府・与党と連携し、ICTの活用等を通じて、企業のBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)・BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)の実効性向上、防災・減災、国土強靭化を推進していく。

エ)ヘルスケア
提言「Society 5.0時代のヘルスケア」(2018年3月)で描いた総合ヘルスケアサービスや次世代医療の具体的なプロジェクト実施に向け、産学官医が連携して検討を進めるとともに、そのための規制改革やインフラ整備をはじめとする環境整備を働きかけていく。

オ)観光
観光産業の成長力強化、国内消費の喚起・創造に向けて、「観光立国推進基本計画」を着実に推進する。とくに、情報プラットフォームの整備を含め、観光関連データを活用したマーケティングの促進、ユニバーサルデザイン化の推進など、必要な施策の展開を働きかける。国内観光需要の喚起・平準化に向けて、2018年度からスタートする「キッズウィーク」の導入状況を踏まえながら、学校休業日の分散化および企業における年次有給休暇の取得を促進する。

カ)農業
農業の先端・成長産業化に向けて、農林水産業・食品産業におけるSociety 5.0を実現し、次世代を担う人材の育成と併せて生産基盤強化・六次産業化と輸出拡大につなげる。その際、農地所有適格法人への出資規制の緩和などの制度改革を働きかけるとともに、「経済界と農業界の連携プラットフォーム」によるプロジェクトの実施、有識者ヒアリングや先進モデルの視察を通じて、先端技術の活用につながる施策を推進する。

(2) SDGsへの企業の取り組みの推進

Society 5.0の実現はSDGsの達成とも密接に関係することから、企業のCSRの実践にSDGsの概念を取り込み、社会的課題の解決および経済社会全体の持続的発展につながる取り組みを促す。「企業行動憲章」 「同実行の手引き」(2017年11月改定)の普及促進に向けて、アンケート調査を通じて企業のSDGsへの取り組み状況と課題を把握し、さらなる推進に役立つ事例の公表、ツールの開発などを行う。経団連のSDGs推進に向けた取り組みをまとめたレポートを作成し、広く国内外に発信する。同時に、国連や経済団体、NGO等と連携して、企業のSDGs達成に向けた取り組みを支援する。

(3) 働き方改革と多様な人材の活躍促進

①働き方改革

ワーク・ライフ・バランスを実現するために、働き方改革関連法案の確実な成立に向けて政府・与党関係者に働きかける。法案成立後、労働政策審議会で検討される省令等が企業実務に即した内容となるよう経済界の意見反映に努めるとともに、改正法施行を見据えた企業の対応準備を支援する。また、裁量労働制の対象拡大について法案の早期再提出を働きかける。昨年度実施した「働き方改革 CHALLENGE 2017」に引き続き、経済界全体の働き方改革の加速に向けた各種活動を展開する。

②女性活躍とダイバーシティの推進

「女性活躍の次なるステージに向けた提言―攻めのウーマノミクスで未来を切り拓く―」(2017年12月)に基づき、女性市場の創出や女性による経済外交、女性の活躍推進による成果・ビジネスインパクトの共有等を通じて、企業における女性の活躍推進の取り組みをさらに加速する。また、若手女性対象の「女性チャレンジ支援講座」、管理職層を対象とした「ダイバーシティ・マネジメントセミナー」、女性役員対象の「リーダーシップ・メンター・プログラム」等、各キャリアステージに合わせた人材育成プログラムを引き続き実施する。

③若年社員・高齢社員の活躍推進と介護離職予防の取り組みの促進
(若年社員の活躍推進)

キャリア教育の強化に向けて、産学官の連携の下で学校教育段階における仕事体験の機会拡大に取り組む。また、若年社員の定着に向けて、風通しの良い職場づくりや適切な能力開発の機会の付与など、積極的な取り組みを呼びかける。加えて、早期離職した若者の再チャレンジを支援するため、公的職業訓練の強化を求めるとともに、中途採用などの多様な採用機会の拡充を呼びかける。

(高齢社員の活躍推進)

高齢者の活躍に向けた支援として、「定年前からの意欲の維持・向上」「高齢期における活躍の場の拡大」「社内体制の整備と職場風土の醸成」を3つの柱とした取り組みの推進を引き続き呼びかける。

(介護離職予防の取り組みの促進)

介護離職予防の観点から、介護者支援組織等と連携して、シンポジウムやセミナーを積極的に開催し、報告書「仕事と介護の両立支援の一層の充実に向けて」(2018年4月)において示した基本理念である「トモケア」(介護のあり方を「共に」考え、仕事との両立に「共に」取り組むこと)の推進に向けた働きかけを行う。

④外国人材の受け入れ

わが国の社会基盤や生活基盤の維持、経済社会の活性化に向けて、外国人材の活用が不可欠であり、受け入れ促進を図る。現下の労働市場の状況等を踏まえ、真に必要な専門的・技術的分野における外国人材受け入れ体制の整備等、一層の取り組み強化を求める。さらに、ポイント制の見直しやグリーンカードの導入等を踏まえた企業側の動向を把握し、適宜対応を行う。

⑤人材育成の推進

Society 5.0時代を生き抜く人材の育成とわが国国際競争力強化の観点から、大学改革が不可欠である。今後の大学改革のあり方について検討し、政府の「人生100年時代構想会議」における「人づくり革命」に関する議論に反映させる。「高等教育に関するアンケート」結果を踏まえ、大学改革のあり方に関する提言を取りまとめる。引き続き、グローバル人材育成推進事業を推進する。

(4) 地方創生

地方経済懇談会の開催や地方自治体の首長との懇談、会員企業と地域の中核的企業とのマッチング等「地方創生に向けた経団連アクションプログラム」を実行する。人口減少下における地域経済の活性化に向けて、道州制を見据えた地方分権など地域の主体性を発揮しうる統治機構改革を推進する。

(5) 都市機能の充実

わが国産業の国際競争力強化に向け、「コンパクト化とネットワーク化」を軸とした都市機能の充実・競争力向上、スマートシティ化を推進する。

また、東京をはじめとする大都市については、世界の都市間競争を念頭に、国際都市に相応しい機能の充実に資する施策の実施を働きかける。

(6) エネルギー・環境政策の構築

(エネルギー)

政府が、2030年対応と2050年対応の2本柱で検討しているエネルギー基本計画の見直しなどに際し、安全性確保を大前提に、エネルギー安全保障、経済性、環境適合性のバランスのとれたエネルギーミックスの実現を求める。とりわけ、将来にわたって、安定的に経済性ある価格でのエネルギー供給を確保する観点から、原子力(リプレース・新増設を含む)や化石燃料を有効活用していく方針の明確化・環境整備や、再生可能エネルギー導入をめぐる諸課題への対応を求めるとともに、次世代型の系統整備や技術開発など、強靭なエネルギー供給を実現するための投資等を促進する。加えて、エネルギーシステム改革動向をフォローし、必要な働きかけを行う。

(環境)

経済成長と両立する環境政策の実現に向け、引き続き、自主的取り組みを推進し、不合理な規制的・経済的手法が導入されないよう、関係方面に働きかける。「経団連低炭素社会実行計画」を着実に実施し、フォローアップを行うとともに、地球規模での温室効果ガス削減を目指し、グローバルバリューチェーンを通じた削減貢献の見える化を推進する。政府における2050年を見据えた長期温暖化戦略の検討に、経済界の意見が反映されるよう努める。パリ協定の詳細ルールの検討にあたり、協定の実効性と国際的な公平性の確保を関係方面に働きかける。その一環として、COP等の機会を活用し、政府と連携しながら、地球規模での削減貢献を含む、日本の経済界の自主的取り組みの成果や知見を発信し、国際社会の理解増進を図る。

(7) 消費の喚起

消費税引き上げを見据え、各社の環境・状況を加味しつつ、「プレミアムフライデー」等の推進、キャッシュレス化などの利便性向上、インバウンド対応の強化等に創意工夫を凝らして取り組み、消費をより一層喚起する。

2.構造改革の推進

(1) 財政健全化

「経済財政運営と改革の基本方針2015」(2015年6月30日 閣議決定)の「経済・財政再生計画」が目指したプライマリーバランス改善の進捗が遅れていることに鑑み、今夏の骨太方針において新たな財政健全化計画を策定し、2020年代半ばに国・地方の基礎的財政収支を黒字化するための道筋を明確化するよう、政府・与党に対し働きかける。消費増税に伴う景気変動を均す機動的な対策を実行したうえで、まずは2019年10月に消費税率10%への確実な引き上げを求める。さらに将来的には、社会保障制度に対する将来不安を払拭し、広く国民全体で支える観点から、税率 10%超への消費増税も有力な選択肢の一つとし、国民的な議論を喚起する必要がある。

(2) 社会保障制度改革

団塊の世代の全員が後期高齢者になる2025年を見据えて、改革工程表に盛り込まれた44項目#2はもとより、社会保障給付の適正化・効率化、利用者負担の適正化等、社会保障給付費の伸びの抑制に直接的な効果のある踏み込んだ制度改革の実現に取り組む。健康経営の裾野拡大に向け、引き続き周知活動を展開していく。

(3) 規制改革

民間主体による経済社会の活性化を通じ、国全体の競争力を強化するため、2018年度の経団連規制改革要望について、2017年度に実施した重点テーマ設定の効果を踏まえつつ、経済成長に資する要望を打ち出すためのアンケート調査を実施し、優先事項を明確にして取り組む。併せて、規制改革ホットラインの省庁回答や政府の規制改革方針の内容に基づき、2017年度経団連規制改革要望の実現状況を評価する。

(4) 法人税改革

わが国企業の国際競争力強化の観点から、企業活動にかかる実質的な税負担の軽減や研究開発税制の維持・拡充、国際課税制度のあり方等について、税制改正提言を取りまとめ、制度の充実や必要な見直しを働きかける。法人実効税率については、25%程度への引き下げを目指す。

(5) 子育てに優しい社会の実現に向けた環境整備

消費税率10%を前提とする全世代型社会保障制度の確立を求める。

仕事と子育ての両立支援推進の観点から、企業主導型保育事業の企業での活用促進に向けて、好事例の横展開を目的としたセミナー等の開催、制度上の課題に関する政府への働きかけを行う。男性の育児休業等の動向を把握しつつ、男性の働き方改革に向けた意識醸成を図る。

(6) コーポレート・ガバナンス改革、企業法制改革

SDGsの達成をはじめとするグローバルな社会的課題解決を視野に入れたコーポレート・ガバナンス改革への取り組みが企業の持続的成長に不可欠との認識に立ち、内外の投資家を含む幅広いステークホルダーとの対話を一層推進する。また、株主総会資料の電子化など株主総会のデジタル化に向けた環境整備に取り組むとともに、企業活動のグローバル化に対応し、国際競争力の維持・強化に資する独占禁止法の見直しを働きかける。

3.経済外交の推進

(1) ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化

保護主義的・市場歪曲的措置にはWTO協定など国際的なルールに基づいて対処するよう働きかけることで自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に積極的に貢献する。知的財産の保護、電子商取引、国有企業など現行ルールで十分に対処できない問題については新たなルールづくりを求めていく。米国のトランプ政権による一方的措置を中心とする通商政策については、世界経済に及ぼす影響が大きいため引き続き注視していく。

TPP11協定の早期実現を働きかけるとともに、参加国の拡大を求めていく。米国に対しては引き続きTPP協定の戦略的・経済的意義を訴え、復帰を促す。NAFTAの重要性に鑑み、基本的枠組みの継続を訴える。また、日EU EPAの早期批准・発効に向けて働きかけを継続する。アジア・ビジネス・サミット、日中韓ビジネス・サミットなどを通じて、包括的で質の高い日中韓FTAや東アジア包括的経済連携(RCEP)を推進するとともに、日メルコスールEPA等新たな広域経済連携に取り組む。

(2) インフラ輸出の促進

経協インフラ戦略会議等と連携し、インフラシステムの海外展開のための制度改善ならびに相手国におけるビジネス環境整備を推進する。また、一帯一路構想については、開放性、透明性、経済性等を前提として、第三国市場での協力などを推進する。なお、在外邦人保護を含むテロ対策を促すため、最新の国際テロ情勢を官民で共有するための機会を設ける。

(3) わが国主要経済パートナーとの関係強化

(米国)

日本企業による直接投資を通じた米国経済社会への貢献に関する米国政府・議会の理解を引き続き求めていくとともに、「自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議」を含む日米経済対話の進展も睨みながら、グローバルな視点に立って米国との経済関係の強靭化に取り組む。また、日本企業にとって関心の高い政策課題についての発信力を強化するため、米国事務所や対米連携強化タスクフォースと協力し、米国の政策動向の把握、訪米ミッションの派遣、米国政府・議会・経済界要人との懇談や米国経済団体等との対話・連携の強化に取り組む。

(中国)

2018年は日中平和友好条約締結40周年という節目の年であり、官民協力の下、日中交流促進実行委員会を中心に記念行事の実施等各界各層の交流を推進する。また、日中経済協会および日本商工会議所との合同訪中代表団の派遣、日中企業家及び元政府高官対話の開催など、中国政府幹部や経済界首脳との交流・対話を通じて、日中の戦略的互恵関係の強化・発展を図る。
加えて、経済構造改革、外資参入規制、情報セキュリティ、知的財産権保護、輸出管理政策等、中国のビジネス環境の改善を働きかける。

(アジア・大洋州)

ミッション派遣や合同会議の開催等、各国の官民リーダーとの政策対話などを通じて、ビジネス環境の整備を促進し、韓国、ASEAN、インドなど各国・地域との緊密で互恵的な関係を強化・発展させる。また、人材育成やネットワークの形成など、中長期的な視点からの取り組みを拡充する。

(欧州)

2019年3月末に迫った英国のEU離脱に関し、日系企業の活動に大きな支障が生じることのないよう、英国・EU双方に働きかける。また、日EU EPAを土台に日EU間の規制・制度の整合性・透明性の確保や規格・基準の調和・相互承認などの規制協力を推進する。

(ロシア)

ロシア政府・経済界との政策対話を積み重ねつつ、日露間の貿易・投資の拡大とロシアのビジネス環境のさらなる改善という好循環を生み出すことによって、8項目の「協力プラン」に関わる案件の組成や実現に向けた企業の取り組みを積極的に支援していく。

4.国家的イベントの成功

(1) 東京オリンピック・パラリンピック等

2020年東京オリンピック・パラリンピック等の開催成功や開催後のレガシー形成に向けた支援を加速する。全国各地での関心を高めるため、オリンピック・パラリンピック等経済界協議会を通じた活動を拡大する。スポーツの魅力、アスリートや関係者の声などの情報発信を強化し、企業によるスポーツ支援を促進する。また、2019年ラグビーワールドカップの開催成功にも貢献する。

(2) 万国博覧会誘致

11月の博覧会国際事務局(BIE)総会において、大阪・関西万博誘致を勝ち取るため、オールジャパン体制のもとで「2025日本万国博覧会誘致委員会」の活動に協力し、各国への支持の要請、国内機運の醸成に努める。

5.震災復興の着実な推進と新しい東北の創生

「新しい東北」を実現するため、東北復興応援フェスタの開催をはじめ東北の産業の再生・振興や風評払拭に取り組む。また、会員企業・団体に対し、被災地産品の消費・販売拡大、被災地の視察・観光等を呼びかける。併せて、復興庁・被災自治体と連携し、企業人の派遣、産業復興・風評払拭に向けた活動等に協力する。

以上

  1. Society 5.0は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5段階の社会、超スマート社会として掲げられた。超スマート社会の実現を通じ、日本の経済発展と国内外の社会課題の解決を両立し、快適で活力に満ちた生活ができる人間中心の社会を目指した国家ビジョンである。
  2. 「経済財政運営と改革の基本方針2015」(2015年6月30日 閣議決定)に基づく、「経済・財政再生計画 改革工程表2017改訂版」(2017年12月21日 経済財政諮問会議決定)の社会保障分野の改革項目