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Policy(提言・報告書) 産業政策、行革、運輸流通、農業 改訂 Society 5.0の実現に向けた規制・制度改革に関する提言 -2020年度経団連規制改革要望-

2020年10月13日
一般社団法人 日本経済団体連合会

Ⅰ.基本的考え方

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の拡大により、様々な分野において、わが国の経済社会システムの脆弱性が浮彫りとなった。これにより、postコロナのあるべき社会像である「Society 5.0」の実現に向けて、国民一人ひとりの多様なニーズを満たすために、わが国の規制・制度のあり方を抜本的に見直し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する必要性が改めて高まっている。

そこで経団連では、今年3月に公表した「Society 5.0の実現に向けた規制・制度改革に関する提言」を改訂し、会員企業・団体からの要望や意見を基に、以下の観点から、改めてwith/postコロナの時代に必要な規制・制度改革要望75項目を取りまとめた。併せて行政手続の電子化については、書面・対面・押印原則の一掃に向けて、具体的に企業から寄せられた要望を別添「電子化要望リスト」として添付した。

ここに提言する規制・制度改革は、民間の創意工夫を最大限に活かしつつ、日本の活力を高めていくための具体的施策である。政府には、行政の縦割りや前例主義を打破し、既得権益に捉われずに全力で進めるよう強く求める。

1.Society 5.0時代の規制・制度

Society 5.0が目指すのは、デジタル技術の活用による社会課題の解決であり、コロナの拡大によってその重要性はますます高まっている。わが国がpostコロナの社会をSociety 5.0とするためには、既存規制・制度を抜本的に見直し、デジタル技術の開発・実装・普及を前提としたものに作り変える必要がある。

第1に、遠隔監視システムやロボットはじめ先端技術の利活用を前提とした制度の整備を急ぐべきである。常駐・専任要件や定期検査・報告義務の頻度や必要性等を見直すとともに、人の搭乗しない自動運転車、ロボット、無人航空機等を各種制度の枠組みに包含し、社会実装の道を早期に開くことが求められる。

第2に、テレワークを前提とした行政手続の電子化は不可避である。法令等における「書面」「対面」「押印」の記述は、原則としてすべて「電磁的記録」「オンライン面談」「電子署名」を包含するよう発想を転換したうえで、特に書面や直接の対面が必要な場合に限り、規制権者が挙証責任をもって法令等で明記することが求められる。政府が策定している「デジタル・ガバメント実行計画」は、こうした観点から、postコロナの社会に相応しいものに改訂すべきである。

地方分権の推進はわが国の活性化に不可欠であるが、自治体ごとに手続やフォーマットを独自化・煩雑化することは、却って地域横断的な企業活動を損ない、地域経済に不利益をもたらす可能性がある。規制・制度改革の推進は、地方自治体においても主体的に国および自治体同士の横連携を図り、取り組むべき課題である。

こうした足許の規制・制度改革に取り組むだけでなく、規制・制度それ自体の制定プロセスの見直しも欠かせない。Society 5.0時代においては、技術の進歩に柔軟かつ迅速に対応するとともに、イノベーションの促進に資する規制・制度が求められている。政府においてもガバナンス・イノベーションはじめ新たな規制・制度の議論が始まっており、経済界としても、今後、積極的に意見を発信していく。

2.with/postコロナにおいて特に求められる規制・制度改革

コロナの拡大はビジネスのあり方をも大きく変えつつある。あらゆる産業において、企業は人の接触・密集を極力避け、新しい観点から経済活動を見直す必要に迫られている。非対面・非接触を可能とする技術・サービスに関する規制・制度改革は、特に急ぐ必要がある。コロナにより打撃を受けた観光業や飲食業はじめ、地域経済を活性化するうえでも、コロナ時代に即した新たなビジネス領域を拡充していくことが重要である。

また、「新しい生活様式」を導入するうえでは、まず、テレワークの普及にあたり、時間単位年休の使い勝手の向上やガイドラインの見直し等に取り組む必要がある。加えて、職住一体型の生活やワーケーションの拡大を踏まえた建築基準法等のあり方の見直し、これまで書面・対面で行われていたあらゆる手続のオンライン化も求められている。

国民の健康を守る医療体制については、コロナにとどまらず、今後も新たな感染症が発生する可能性を視野に入れた整備・強化が喫緊の課題である。政府においては、感染拡大防止や医療資源が少ない地域の利便性向上といった観点から、オンライン診療・服薬指導等を進めているが、患者の安全性の担保や提供される医療の質の維持、財政影響等も考慮しつつ対象拡大を検討するとともに、デジタル技術を用いた研究開発の加速、医療ビッグデータの構築、民間によるデータ利活用の促進に向けた取り組みも不可欠となる。

Ⅱ.2019年度規制改革要望【更新・再提出】
―Society 5.0時代の規制・制度―

1.社会課題の解決に向けた規制・制度改革

(1)ものづくり・サービス提供における生産性の向上
No. 1. IoT・ロボット等の非防爆機器の設置・使用に関する統一基準の策定
<要望内容・要望理由>

IoT機器やロボット等の非防爆機器(爆発を防止するために電気設備に特別な技術的対策を講じていない機器)を工場内の防爆エリア(爆発や火災が起きる可能性のあるエリア)で設置・使用するにあたり、同一の機器でも自治体(消防)により設置・使用の可否に関する判断が異なる場合がある。政府においては、「危険物施設における可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について」で一般的な指針を示しているが、自治体ごとの規制の差異は残っており、全国規模で活動する事業者は拠点や工場ごとに管轄自治体に相談を行う必要がある。このため、個別の指導内容に対応するコストが大きな負担になるとともに、事業者の予見可能性を妨げ、工場の生産性向上に向けた新技術導入の足枷となっている。

そこで、防爆エリアにおける非防爆機器の設置・使用に関する全国統一の基準を策定するとともに、各自治体が過去に設置・使用の可否を判断した事例を公表すべきである。

<根拠法令等>
  • 危険物の規制に関する政令第9条
  • 危険物施設における可燃性蒸気の滞留するおそれのある場所に関する運用について(2019年4月24日)
No. 2. 監理技術者の配置における専任・常駐要件の緩和
<要望内容・要望理由>

請負金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円)の一定の建設工事に際して、請負事業者は「監理技術者」を配置しなければならない。監理技術者は、他の工事現場に係る職務を兼務しない「専任」であることが求められているため、監理技術者を確保できず工事の受注を見送る例が発生している。

建設業法の改正によって、監理技術者補佐を専任で置いた場合には、監理技術者が複数現場を兼任することが可能となった。しかし、工事に関する品質・原価・工程・安全・環境等に関する管理等の施工管理においては、WEBカメラを用いた現場状況の監視、TV電話システムを用いた作業指示等、デジタル技術を駆使した遠隔管理により代替可能な範囲は十分に拡大している。これら技術を駆使して限られたリソースを複数の工事現場で有効に活用することで、深刻な労働力不足への対応やコスト削減効果が期待できる。

そこで、ICTの活用により常駐の場合と同水準の施工管理の実施を担保できる場合には、監理技術者が遠隔で管理可能な工事現場の上限を撤廃すべきである。

<根拠法令等>
  • 建設業法第26条
  • 主任技術者又は監理技術者の「専任」の明確化について(改正)
No. 3. 建設分野におけるデジタル技術の活用促進
<要望内容・要望理由>

建築分野・土木分野におけるデジタル化の進展にともない、計画・調査・設計・施工・維持管理の各段階で3次元モデルを活用し、建設生産・管理システム全体の効率化・高度化を図るBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)と呼ばれる手法が登場している。

しかしながら、建築確認申請に際しては、施行規則において図書および書類を提出する旨が規定されているために、2次元図面を別途用意することが求められている。また、発注者と受注者(施工業者)間の業務委託契約の内容次第では、受注者の独自技術やノウハウに基づく知的財産を含むBIM/CIMデータの実施権を発注者に制限される可能性があるなど、知的財産に関わるルールが十分整理されていないことで、業界全体での技術の普及を阻害している。

そこで、建設分野のデジタル化を進める観点から、建設確認申請書としてBIMデータを明示的に位置付けるとともに、BIM/CIMデータの権利や使用・保管に関するルールやガイドラインを早期に整備することを求める。

<根拠法令等>
  • 建築基準法第6条
  • 建築確認手続等における電子申請の取扱いについて
No. 4. 一般用医薬品の遠隔による販売・情報提供の実現
<要望内容・要望理由>

医薬品医療機器等法に基づき、店舗販売業者においては、一般用医薬品(第一類医薬品・第二類医薬品・第三類医薬品)の販売を薬剤師・登録販売者により行わせることが義務となっており、第一類および第二類医薬品の販売に際しては、当該薬剤師・登録販売者を通じて必要な情報を提供することも義務付けられている(第二類は努力義務)。

このため、有資格者が店舗に不在の場合には一般用医薬品を販売することができず、顧客の利便性を低下させている。

既に公的医療保険制度上もオンライン診療・服薬指導が一部認められているなか、一般用医薬品を販売する店舗において有資格者が常駐する必然性は乏しい。また、労働力不足やコロナ拡大に伴い薬剤師・登録販売者の確保が従来以上に困難となるなか、店舗の常駐要件の遵守は事業者にとって大きな負担となっている。

そこで、ICTを活用して有資格者が遠隔での情報提供を行うことにより、一般用医薬品を販売可能とすべきである。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第36条の9、第36条の10、第37条
No. 5. アジャイル型のシステム開発に向けた環境整備
<要望内容・要望理由>

情報システムの開発にあたり、短期間で試行錯誤を繰り返す「アジャイル手法」の活用が普及しつつある。アジャイル開発においては、ノウハウやアイディアを共有する観点から、発注者と受託者、受託者の委託先等の関係者による綿密な意思疎通の下で協働することが不可欠となる。特にスタートアップとの協業において、早期に成果を出す手法として有用である。

しかしながら、現行法制下では意思疎通や協働の内容が発注者から委託先のエンジニア等の作業への直接的な指揮命令とみなされ、労働者派遣法が禁止する「偽装請負」に該当すると判断される可能性がある。また、発注者と受託者との間を派遣契約に切り替えた場合でも、受託者から委託先へ開発の一部を再委託していることから、職業安定法が禁止する「二重派遣」に抵触しかねない。特に外部委託先(SIerや個人事業主)がスタートアップのような小規模企業や新興企業である場合、派遣事業の許認可も有していないことから、派遣契約への切り替えは現実的でない。

このため、偽装請負の該当性を回避するため、発注者と受託者、委託先の打合せに際して受託者の管理責任者を出席させ、当該責任者を介して仕様や要件を固めていくなど、発注者・受託者間のコミュニケーション・ルールの配慮と対策に費用と時間を費やさざるを得ず、高いスピード感を持つアジャイル開発のメリットを十分に享受できていない。前述のとおり、受託者が小規模企業や新興企業である場合、上記のようなコミュニケーション体制の確保も容易でない。

そこで、アジャイル開発等のシステム開発における発注者、受託者、委託先との直接的な意思疎通や協働が偽装請負と判断される「直接な作業指示」にあたらないことを明確化すべきである。なお、本要望は、労働者の過重労働や下請事業者の不当な取り扱いが是認されることを求めるものではない。

<根拠法令等>
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第2条第1号、第3号
  • 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示
No. 6. 専属産業医の遠隔化および兼務要件の緩和
<要望内容・要望理由>

一定の条件を満たす事業場では、専属の産業医を選任して労働者の健康管理等の業務を行わせなければならない。当該産業医が事業場に常駐することについて、厚生労働省は、2019年度の規制改革ホットラインにおいて、「常駐しない場合、産業医が、健康診断の実施、健康障害の原因の調査と再発防止対策の樹立等の労働者の健康管理等を、一人一人の作業環境等を踏まえて、適切に実施することが困難になるおそれがあることから、引き続き産業医の駐在が必要」と回答しており、事業場を所管する労働基準監督署においても当該事業場での常勤を事業者に対して求めるケースがある。

2019年施行の働き方改革関連法において労働者の健康確保に向けた「産業医・産業保健機能の強化」が盛り込まれ、質が高く自社に適した専属産業医を確保するニーズは高まっているが、産業医は都市部に偏在しているため、郊外の大規模な事業場では専属産業医の確保が困難となっている。骨太方針2020においても「新しい生活様式」としてテレワークの促進やオンライン診療の検証が掲げられるなか、専属産業医のみが常駐する必要性は乏しい。

また、非専属産業医の選任で足りる事業場においても、他の事業場の専属産業医と契約するためには「事業場間を1時間以内で移動できる」要件を満たす必要があるため、地理的な制約から適切な産業医を確保できない場合がある。

産業医の職務の多く(労働者の健康管理や面接指導、衛生教育等)はICTの活用で対応でき、定期健康診断や作業環境の維持・管理等の職務についても事業場に常駐する必要性は存在しない。労働災害の発生等の緊急時も事業場周辺の医療機関と連携することで必要な措置を行うことは可能と考える。

そこで、ICTの活用および周辺医療機関との適切な連携を前提に、事業場外から遠隔で職務を行う専属産業医の選任を認めるとともに、専属産業医が他の事業場の非専属産業医を兼務するための事業場間の移動要件を撤廃すべきである。

<根拠法令等>
  • 労働安全衛生法第13条
  • 専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務することについて
  • 専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務する場合の事業場間の地理的関係について
(2)安心・安全な社会インフラの整備・確保
No. 7. ドローンを活用した道路分野の定期点検・調査に向けた制度整備
<要望内容・要望理由>

橋梁やトンネル等道路分野の定期点検・調査について、2019年2月に改定された定期点検要領や、点検支援技術性能カタログ(案)(以下、「性能カタログ」)の公表等の効果もあり、一部のユーザーにおいてドローン等を使用する事例が増えている。

一方、現行の定期点検要領は、「自らが近接目視によるときと同等の健全性の診断を行うことができると定期点検を行う者が判断した場合は、その他の方法についても、近接目視を基本とする範囲と考えてよい。」「その他の方法を用いるときは、定期点検を行う者が定期点検の目的を満足するように、かつ、その方法を用いる目的や必要な精度等を踏まえて適切に選ぶものである。」とあり、特に新規に導入する事業者等にとっては、判断基準が不明瞭である。

また、性能カタログは、ドローンを使った定期点検の具体的な事例が示され、利活用を促進する一定の効果が期待できるものの、定期点検要領において性能カタログを判断基準の参考として良いことが言及されていない。また、同性能カタログが(案)にとどまる。その結果、現時点では点検支援技術の利活用を促す効果は限定的となっている。加えて、同性能カタログは具体的な事例が複数示されているが、健全性の診断ができるドローン等の性能等は事例で示されたものに限定されるものではない。

そこで、これらに対処するため、各種定期点検要領において、健全性の判断基準として性能カタログを参考にできる点を明記すべきである。性能カタログにおいては、事例と合わせ性能等の技術要件に幅を持たせた表示をし、点検支援技術を初めて利活用する者でも利活用の可否を容易に判断できるようにすべきである。

<根拠法令等>
  • 道路橋定期点検要領
  • 道路トンネル定期点検要領
  • 点検支援技術性能カタログ(案)
No. 8. ドローンの飛行に係る申請手続の柔軟化
<要望内容・要望理由>

インフラの維持・管理はじめ、より広い分野でドローンが利活用されるためには、ドローンの使用環境の多様化や安全性能の向上にあわせた飛行環境の構築が必要である。

現行制度では、重量200gを超えるドローンは「無人航空機」として定義され、航空法に定める人口集中地区等の飛行禁止区域での飛行や、目視外飛行等の所定の方法以外での飛行を行う場合は、国土交通大臣の許可・承認を受けることとされている。

同法に基づく規制は、機体の重量に応じて一律に適用されるため、現状では、後述のようなエアリスク(有人航空機・無人航空機・その他障害物に衝突する可能性等)およびグランドリスク(不具合等が発生した場合に地上の人・物件に衝突する可能性等)の低い環境下・方法での飛行や、両リスクの回避・低減に繋がる機能を有するドローンの飛行についても、特段の配慮はなされておらず、利用者において安全性の高い機体ないし方法による飛行を活用するインセンティブに乏しい。

現在、政府の「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会」において、飛行する地域・空域や飛行の方法等のリスク要因を踏まえ、飛行を3段階のカテゴリーに分け、リスクが一定以下の飛行は飛行ごとの個別の手続を簡素化する仕組みを目指した制度設計のための協議が進んでいる。

かかる状況下において、以下のような安全性の配慮等がされたドローンないし飛行方法については、リスクの低いカテゴリーへの分類や、同一リスクカテゴリーにおいても飛行ごとの個別の許可・承認を省略するといったルールを検討し、ルール化すべきである。また、それぞれのドローンないし飛行方法に関する具体的な基準は、有識者や事業者との協議を踏まえて設計すべきである。

  1. 煙突等一面が開放された構造の建物内部における飛行のうち、開放された面の面積等が一定以下の場合における当該建物内の飛行等
  2. 機体周囲を遠隔監視可能なカメラ等の搭載により目視と同等の機能・性能が認められる場合における短時間ないしおおよそ人の立ち入りが困難な場所等の目視外飛行等
  3. ワイヤーによる機体の係留等の飛行範囲を制限する措置やプロペラガード等の安全措置が講じられている場合における人口集中地区上空での飛行等
  4. 広大かつ安全管理が行いやすい区域(製鉄所等)における重量500g以下のドローンの飛行
  5. 鉱山内における150m以上の高さの飛行および目視外飛行
  6. 広大かつ安全管理が行いやすい区域(製鉄所等)内にある、ヘリコプター等の接近が想定されない高構造物(高炉等)の周辺における、高度150mを超える飛行
  7. 生活・居住地域ではない区域(製鉄所等)に隣接する海上における、設備・インフラ点検のための一時的な飛行
  8. ドローンの機体開発のために行う試験飛行

さらに、2022年度の有人地帯での目視外飛行(レベル4)実現という政府目標の達成に向けて、必要な制度整備等を着実に推進すべきである。併せて、将来的にドローンの自律飛行を社会実装すべく、機体や飛行方法等に関する制度整備を検討すべきである。

<根拠法令等>
  • 航空法第132条、第132条の2、港則法第31条
  • 国土交通省「無人航空機(ドローン、ラジコン等)の飛行に関するQ&A」
No. 9. 災害時におけるドローンの目視外飛行の柔軟化
<要望内容・要望理由>

災害発生時に、電力供給はじめ重要なインフラ設備の被害状況を確認するにあたり、倒木や土砂崩れにより車両等が通行できない場所の先は、ドローンを飛行させて確認を行うことが効果的である。しかしながら、無人航空機の目視外飛行には原則として補助者の配置が必要となり、配置せずに飛行させる場合には、適合すべき基準として「飛行前に、飛行させようとする経路およびその周辺について、不測の事態が発生した際に適切に安全上の措置を講じることができる状態であることを現場確認すること」が求められているものの、災害時に通行ルートを確保する前にこの基準を満たすのは極めて困難である。

昨今の災害の激甚化に鑑み、電力供給にかかるレジリエンス強化を図ることは不可欠である。重要なインフラ設備の被災状況を迅速に確認し、早期の復旧を図る観点から、災害時のインフラ設備点検に必要なドローンについては、住宅地上空に立ち入らないことを前提として、航空法の適用除外とすべきである。

<根拠法令等>
  • 無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領
  • 航空法第132条の3の適用を受け無人航空機を飛行させる場合の運用ガイドライン
No. 10. リチウムイオン蓄電池の普及に向けた制度整備
<要望内容・要望理由>

リチウムイオン蓄電池に使用される電解液は「第4類第2石油類」として消防法上の危険物に該当し、1,000L以上の電解液量を貯蔵・取り扱うには壁・柱・床等を耐火構造とする「危険物取扱所」で行わなければならない。

リチウムイオン蓄電池は従来の鉛蓄電池等に比べ、小規模で大容量の電力を貯えられるという特長を持ち、データセンター等における非常用電源としての活用期待は高い。しかしながら、貯蔵・取扱場所が危険物取扱所に該当した場合の耐火構造化が負担となるため、事業者が1,000L未満の電解液量で貯蔵・取り扱わざるを得ない事態が生じている。リチウム蓄電池システムの中には、蓄電池が所定の高温状態になると回路の遮断器を開放して火災にともなう燃焼を防止する機能を搭載している製品もあり、一定数量を超えた貯蔵・取り扱いに際して安全性を担保することは十分に可能である。

そこで、適切な機能を備えたリチウムイオン蓄電池については、「危険物の規制に関する政令」で指定する数量を超えた場合の新たな数量基準を設けるべきである。少なくとも、消防法通知における「電解液量の総量が指定数量未満の蓄電池を箱に収納して貯蔵する場合の取扱いについて」を充放電時にも適用可能とすべきである。

<根拠法令等>
  • 危険物の規制に関する政令第1条の11
  • リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について
(3)活力ある地域の実現
No. 11. 宿泊者名簿の完全電子化
<要望内容・要望理由>

旅館業法に基づき、宿泊施設の営業者は宿泊者の氏名や住所、職業等を記載した「宿泊者名簿」を作成・備え付けなければならない。法令上、情報通信機器を用いた名簿の作成・備え付けは禁止されていないが、「旅館業法に関するFAQ」においては、宿泊者本人による名簿の記載を事業者に求める記述が存在する。このため、インターネット予約が主流となり、利用者はネット経由で顧客情報を事前に登録しているにも関わらず、チェックインの際に改めて宿泊者名簿の記載・確認を行う必要が生じ、宿泊施設と顧客の双方の手間となっている。宿泊者名簿の正確性は、本人が画面を確認して承認することで担保することが可能であり、直筆での記述を求める必要性は大きくない。

また、自治体の中には、紙媒体の宿泊者名簿の提出を求めるケースもあるため、作成・備え付け・提出を電子で一貫して行うことができない。

そこで、予約時に登録された情報を用いて事業者が宿泊者名簿を作成できるようにするとともに、同名簿の提出も電子で可能とする措置を講じるべきである。

<根拠法令等>
  • 旅館業法第6条
  • 旅館業法に関するFAQ
No. 12. 宿泊施設におけるフロントレス環境の実現
<要望内容・要望理由>

2017年の旅館業法改正により、玄関帳場(フロント)における対面による宿泊者の確認義務についての見直しが行われた。具体的には営業者が設置したビデオカメラ等により、鮮明な画像で宿泊者の本人確認や出入状況の確認を常時実施すること等の要件を満たせば、玄関帳場(フロント)の設置が免除されることとなった。しかしながら、各地の保健所によって、有人でなければ旅館業の許可を与えない場合がみられ、行政機関の現場において制度改正が十分に浸透しているとは言い難い状況にある。

そこで、各保健所の見解を統一させるため、玄関帳場(フロント)が有人である必要性がない旨を全国の保健所に周知徹底すること、有人であることを求める場合の基準を明確化し、制度の透明性を高めるべきである。

<根拠法令等>
  • 旅館業法施行規則第4条の2
  • 旅館業法施行規則の一部を改正する省令の施行について
  • 旅館業における衛生等管理要領
(4)国民一人ひとりの健康増進
No. 13. 次世代医療基盤法の活用促進に向けた制度整備
<要望内容・要望理由>

次世代医療基盤法の施行により、患者の検査や治療、保健指導に関する情報を活用した医療サービスの高度化・効率化や健康・医療に関する先端的な研究開発、新産業の創出等の効果が期待されている。とりわけ今回のコロナ対策においては、日々の医療データを速やかに取りまとめ、病態の解明、新たな診療方針の決定、予後の予測等に活用する必要性が高まっている。

しかしながら、医療データの取得・活用の観点から、以下2つの問題点が存在する。

  1. 丁寧なオプトアウトによるデータ提供にあたり、初回受診時の書面通知が前提とされるため、医療従事者の負担増につながり、医療機関から認定事業者へのデータ提供が進まない可能性がある。
  2. 認定事業者の増加が見込まれるなか、匿名加工医療情報のデータ提供フォーマットについて規制は存在しないが、他方で統一的なフォーマットの形式が存在しないために、複数の認定事業者からデータを提供された利用者に関する情報の比較・分析が難しくなる可能性がある。

そこで、データ利用者が不適切な情報の取り扱いをした場合の罰則を厳格にする等、患者本人の権利利益の保護に適切に配慮することを前提として、通常のオプトアウトを可能とするなど、患者に対する通知要件を緩和すべきである。加えて、現状規制が存在しない匿名加工医療情報に関する標準的なデータ提供フォーマットを新たに制定すべきである。

<根拠法令等>
  • 医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律についてのガイドライン
No. 14. デジタルヘルスケア製品を対象とした新たな認定制度の創設
<要望内容・要望理由>

アプリケーション等のデジタル技術を活用したヘルスケア関連製品は、患者の診断・治療支援や重症化予防だけでなく、コロナ等の感染症拡大時における国民の健康維持・増進にも寄与することが期待されている。

しかし、直接的な治療効果を持たない製品は、非医療機器として販売することとなり、薬機法および「不当景品類及び不当表示防止法」の規制により、宣伝広告で効能・効果を謳うことは認められない。非医療機器の中には、健康の維持・増進や予防に寄与するエビデンスを有する製品も存在するが、多種多様なヘルスケアサービスが混在するため、利用者が各製品の品質や有効性を判断し、適切な製品を選択する事は容易ではない。

経済産業省では、主に地域包括ケアシステム関係団体等の仲介者が安心してヘルスケアサービスを選択できるよう「ヘルスケアサービスガイドライン等のあり方」を取りまとめ、業界団体等のガイドラインや認証制度が本指針に基づくことを自己宣言した場合にロゴマークが付与される仕組みを整備している。一方、デジタルヘルスケア製品は仲介者を介さずに利用者自身が製品を選択できることが強みのひとつであり、利用者自身が自分に最適な製品を選択するためには、各製品の品質や有効性が容易に判断できる分かり易い仕組みが必要である。また、プログラムの目的だけではなく製品の品質や有効性のエビデンスを示すことは利用者自身が製品を選択する一助となり、公平性・客観性における信頼感を持って製品を選択できるようにするためには、業界団体等だけではなく政府が基準等の策定段階から関与し構築する仕組みが不可欠である。

そこで、利用者自身が自分に最適な製品を安心・信頼して選択できるよう、政府もしくは政府が委託する第三者機関が、薬機法に抵触せずに効果・効能を謳うことができ、健康の維持・増進や予防に関するエビデンスレベルに応じて、非医療機器に該当するデジタルヘルスケア製品を認定する制度を新設すべきである。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)第68条
  • プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について(厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知;薬生監麻発1228第2号)
  • 不当景品類及び不当表示防止法
  • ヘルスケアサービスガイドライン等のあり方(経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課)
No. 15. ライフコース全体にわたり健康・医療情報を円滑に連結する仕組みの整備
<要望内容・要望理由>

被保険者記号・番号が個人単位化されたことに伴い、プライバシー保護の観点から、被保険者記号・番号の告知を要求することを制限する「告知要求制限」が新設された。健康保険事業および関連事務以外に、同制限の適用除外となる手続については、省令で規定することとされている。

症状の把握・管理や重症化予測を高精度化するには、学校健診情報や企業の定期健診情報等の保険医療分野外のデータも含めた個人のライフコースデータを可能な限り集約し、より多くの医療データと照合することが欠かせない。これは、症状の予測が難しいコロナや新興・再興感染症の治療においても有効と考えられる。

しかしながら、「告知要求制限」のため、市区町村や学校設置者、企業の健康保険組合等が上記情報を管理する際にIDとして被保険者番号を活用することができない。このため、母子手帳情報や学校健診情報、企業の定期健診情報等については被保険者番号が付随されず、例えば次世代医療基盤法に規定される認定事業者がこれらの情報の提供を受けた場合、同一人物のデータを高精度で連結することが困難になると考えられる。

そこで、健康保険事業や関連事務以外にも、上述の認定事業者はじめ法令で規定されたデータベースの運営主体への提供、疾患の原因・予防・診断・治療の方法に関する研究のための提供等、公益に資する場合には、当該情報の管理主体である自治体や学校設置者、企業の健康保険組合等による被保険者番号の告知要求を可能とすべきであり、時期を明確にして早期に省令で規定することを求める。

<根拠法令等>
  • 健康保険法第194条の2
No. 16. 個人に対して医療情報を円滑に提供する仕組みの整備
<要望内容・要望理由>

健康寿命の延伸に向けては、個人が自らの健康・医療情報を把握・管理し、健康管理や病気のケアに主体的に関与することが極めて重要である。その手段として、健康・医療に関する情報を集約・活用する仕組みであるPHR(Personal Health Record)への期待は大きいが、手続に要する負担が小さくない。例えば、本人が医療機関から自身の医療情報の開示・提供を受ける際には、医療機関から書面による請求を求められる場合がある。また、申請時と開示・提供時の二度の訪問を求められる場合があり、新興・再興感染症の流行時には開示請求を躊躇することも想定される。加えて、開示・提供の手段やフォーマットが医療機関ごとに異なるため、PHRを通じた医療情報の利活用の阻害要因となっている。

そこで、書面に加えて電磁的方法による請求を可能とし、医療機関への訪問回数を減少させるなど、医療機関に対する開示手続を簡素化するとともに、開示・提供フォーマットを標準化したうえで電磁的形式での提供を国主導の下で推進すべきである。

また、特定健診情報や薬剤情報等を閲覧する仕組みが整備されつつあるマイナポータルにおいて、個人による自発的な健康増進や重症化予防の観点から必要性が高い、医療現場の診療・検査等を通じて発生する検査データや所見データを確認できるようにすべきである。

<根拠法令等>
  • 診療情報の提供等に関する指針
  • 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス
No. 17. プログラムの医療機器の該当性判断の迅速化および適正化の早期検討
<要望内容・要望理由>

コロナ拡大の長期化に伴い、外出機会制限による運動機能・認知機能低下や、対面医療・介護に伴う感染リスクが懸念されている。デジタル技術を活用したヘルスケアアプリケーションは、通院や対面の診療・介護を必要とせず、超高齢社会を迎えたわが国においては、国民一人ひとりが主体的に自らの健康・疾病の重症化を管理する次世代の医療支援ツールとしての役割が期待される。

すでに医学的に妥当性のあるアプリケーションプログラム等が開発され、健康の維持・増進、疾病予防に活用されている一方で、同プログラムが医療機器に該当するか否かの判断は容易ではなく、プログラム開発の遅延要因となっている。厚生労働省は、通知やQ&Aの発出により、該当・非該当の代表的事例の掲載を含めて明確化・随時更新に取り組んでいるが、記載内容は極めて限定的であるため、開発者は個別案件ごとに厚生労働省や都道府県の担当課に相談・照会を行っているのが実情である。

こうした状況を踏まえて、デジタル技術の変化のスピードに対応できていない現状と規制の整合を図るとともに、医療機器への該当・非該当に関する予見可能性を高めることが不可欠である。既に該当・非該当事例の追加に向けた通知の改正が進んでいるが、各国においても関連法整備が進められている現状も踏まえ、早期に以下の2点に取り組むべきである。

  1. 通知やQ&Aにおける医療機器に該当しないプログラムの例示を追加すること。追加例:医学的なガイドライン等でエビデンスが認められている疾患のスクリーニング方法等、検査結果データ(携帯端末等による簡易に測定されたデータを含む)やチェックリストによるスコアを当てはめることで、当該疾患に罹患している可能性を提示するプログラム
  2. 医療機器の該非における事例を可能な範囲で公表すること。
<根拠法令等>
  • プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について
  • 医療機器プログラムの取扱いに関するQ&Aについて

2.デジタル革新に向けた基盤の確保

(1)デジタル・ガバメントの推進
No. 18. 無人航空機飛行に関する関係手続のオンライン・ワンストップ化の実現
<要望内容・要望理由>

無人航空機の飛行にあたっては、飛行場所や飛行方法に応じて多種多様な法令や自治体の条例等を遵守する必要がある。現在、航空法に基づく飛行許可申請については、「DIPS(Drone/UAS Information Platform System、ドローン情報基盤システム)」においてオンラインによる効率的な手続が可能となっているものの、無人航空機を飛行させようとする者はその他関係する法令・条例を網羅的に把握して必要な申請手続を行われなければならない。結果的に、申請者に煩雑な事務負担が発生しており、無人航空機の円滑・迅速な利活用を妨げている。法令・条例ごとに求められる申請事項の中には重複する内容も存在しており、ワンストップ化によるメリットが大きい。

政府は、無人航空機の飛行に際して必要な地域・空域ごとの手続を、特区等に限らず省庁・自治体等を跨いで、一元的かつ網羅的に案内・実施できるオンライン・ワンストップサービスを実現すべきである。

<根拠法令等>
  • 航空法第132条、第132条の2
  • 重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律第9条
  • 河川法第29条
  • 道路交通法第77条
  • 自然公園法第20条、第21条、第22条
  • 港湾法第12条 等
No. 19. 保険募集時の電磁的な情報提供に関するルール整備の加速化
<要望内容・要望理由>

保険会社や保険募集人等は保険募集に際し、契約内容や参考情報を保険契約者等に提供している。その際、当該保険契約者等の承諾を得たうえで、書面交付ではなく電磁的方法による交付が認められている。しかしながら、一部の事項については書面交付が求められており、保険契約者等の利便性を低下させている。

内閣府「規制改革ホットライン」の金融庁回答(2020年7月29日)において、保険募集時等における情報提供を電磁的方法で行えるようにすることについて、パブリックコメント手続を経たうえで府令改正の実施を予定する旨が示された。同回答にしたがい、デジタル技術を活用した情報提供のルールを早期に整備すべきである。その際、既に対応が予定されている施行規則第227条の2第4項に規定する書面だけでなく、施行規則第234条第1項第6号に規定する説明書面についても、併せて電磁的方法による交付を認めるべきである。

<根拠法令等>
  • 保険業法施行規則第11条第1項第6号、第227条の2第4項、第234条第1項第6号、第234条の21の2第2項
No. 20. 特定個人情報の見直し
<要望内容・要望理由>

マイナンバー(個人番号)を含む個人情報は「特定個人情報」に該当し、一般の個人情報と比較して利用範囲・利用目的、収集・保管、安全管理措置、第三者提供、委託、罰則等の面で規制が強化されている。とりわけ、法人格を超えた第三者提供が認められないため、グループ企業間等で顧客のマイナンバーを共有できないばかりか、役員・従業員に関しても、転籍・退職等による雇用先の変更や育児休業にともなう扶養状況の変更に際して再度マイナンバーの提供を受けなければならず、国民・事業者の負担は極めて大きい。

過度に厳格な取り扱いを規定する特定個人情報の存在は、国民・事業者の間でマイナンバーの取り扱いに関する不安や誤解を招いており、番号制度の潜在能力の発揮を阻害している。

そこで、Society 5.0実現の障壁となる特定個人情報を撤廃すべきである。要望実現が困難な場合には、本人同意を前提に、グループ企業間等における特定個人情報の共有を認めるべきである。

<根拠法令等>
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第2条、第19条
No. 21. インターネット投票の実現
<要望内容・要望理由>

2002年にいわゆる「電磁的記録式投票法」が施行され、地方公共団体が条例を制定した場合には、当該地方公共団体の議会議員と首長の選挙における電子投票が可能となっている。

しかしながら、同法で認めている内容は、あくまでも投票所の電子投票機を操作する方式を前提とするため、国民が投票所を訪問する負担は軽減されていない。また、国政選挙においては電子投票の実施が認められていない。

オンライン投票が実現すれば、コロナはじめ感染症流行下において、感染拡大の防止や隔離された患者の投票促進にも資することが期待される。ICTの普及やマイナンバー制度の導入により、自宅のパソコンやスマートフォンを用いてオンラインで投票を行う環境は整備されつつある。

そこで、国民の政治への参画をより一層促進する観点から、選挙におけるインターネット投票の実現に取り組むべきである。

<根拠法令等>
  • 公職選挙法第6章、第7章
  • 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律第3条
No. 22. 公的個人認証サービスにおける住民票の最新情報の提供
<要望内容・要望理由>

事業者が顧客に対して契約書や通知書等を発送するにあたり、当該顧客が住所変更を申し出ない限り、住所の変更を把握できない。このため、新住所を照会した上で再配達の手続を行う必要が生じる。とりわけ、生命保険業界においては、顧客との契約締結後から保険金の支払いに至るまで長期にわたり契約管理を行うため、顧客の最新の住所情報や生死情報の把握に要する負担が極めて大きい。

公的個人認証サービスの「署名用電子証明書」には住民票に記載の基本4情報が含まれるため、証明書の有効性を確認することで最新の住民票情報との差異を把握できる。公的個人認証法の改正にともない、2016年より民間事業者においても、地方公共団体情報システム機構に対する照会を通じて電子証明書の有効性を確認することが可能となっている。しかしながら、住所変更等により電子証明書が失効した場合においても、署名検証により入手できるのは失効の事実にとどまり、変更後の住所内容等は把握できない。このため、事業者は別途顧客に新情報を照会する必要が生じ、業務負荷の軽減効果は小さい。

そこで、電子証明書が失効した場合においても、住民票の変更後の内容を提供できるようにすべきである。

<根拠法令等>
  • 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律第18条
(2)データの取得・活用に向けた環境整備
No. 23. ローカル5G制度における電波利用料の負担軽減
<要望内容・要望理由>

2019年12月より免許申請が開始された「ローカル5G」制度は、携帯電話事業者と異なる一般企業や自治体が自己の建物や敷地内に局所的な5Gネットワークを構築する仕組みであり、工場の生産性向上をはじめ地域の課題解決に寄与することが期待されている。5Gの本格展開にともない、特にIoTの市場拡大が見込まれ、陸上移動局に相当する、ローカル5Gの通信モジュールを搭載した端末数も増加する見込みである。

しかしながら、端末(陸上移動局)1局あたり年間370円の電波利用料を総務省に支払う必要が生じるため、端末数に比例して負担額も増加する。このため、大規模IoTとして多数同時接続を行う場合に電波利用料が負担となり、利用者に対するコストの上昇や提供料金に対する上昇要因となり、特に中小規模の事業体において導入が進まない可能性がある。

そこで、端末数によらない定額制の導入、あるいは端末数に応じた柔軟な料金制度の導入等、電波利用料の負担を軽減する措置を講じるべきである。

<根拠法令等>
  • 電波法第103条の2
  • ローカル5G導入に関するガイドライン
No. 24. PLCの普及に向けた制度整備
<要望内容・要望理由>

既存の電力線を通信回線として利用する技術であるPLC(Power Line Communication、電力線搬送通信)は、電波漏洩等のおそれから屋外利用の範囲が極めて限定されており、同一敷地内においても建物外の設備と建物内との通信手段として利用することは認められていない。このため、同一敷地内の通信には無線通信や商用通信を利用せざるを得ないが、経済合理性や通信品質の観点、景観への影響等から最適な手段と言い難い。

また、高速PLC(周波数2MHzから30MHz)については、電力線の許可申請の型式指定対象に三相交流が認められる方向で検討が進んでいるが、低速PLC(周波数10kHzから450MHz)は検討の範疇に含まれていない。三相交流の電力線設備は個別の許可取得が必要なため、煩雑な申請手続による事務負担が極めて大きい。

デジタル革新の基盤であるIoT推進に向けて、電力線という既存のインフラを有効に活用するPLCの普及促進が求められる。

そこで、以下2点を要望する。

  1. 他の無線利用者への影響に十分配慮することを前提に、同一敷地内での建物外PLC利用を地中・水中配線の電力線に限り可能とすること。
  2. 低速PLCの電力線許可申請の型式指定対象に三相交流を追加すること。
<根拠法令等>
  • 電波法施行規則第44条
  • 無線設備規則第59条
No. 25. 個人情報保護法の適用除外(共同研究事例)の明確化
<要望内容・要望理由>

個人情報保護法では、「大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者」が「学術研究の用に供する目的」で個人情報を取り扱う場合には、同法第4章の規定「個人情報取扱事業者の義務等」を適用しないこととしている。そのうえで、Q&Aでは、学術研究機関と民間企業、私立病院等による学術研究目的の共同研究について、「1つの主体とみなすことができる共同研究が学術研究の用に供する目的で個人情報等を取り扱う場合には、法第4章の規定は適用されません」と明記されている。

しかしながら、「1つの主体」や「学術研究」の定義が不透明なため、大学と企業の間や同一組織の間で認識が異なる場合がある。その結果、学術研究目的での共同研究における個人情報が利活用されにくい、研究の幅を狭めるなどの事態を招いている。

コロナに代表される新興・再興感染症対策を含め、医学研究の発展には大学や医療機関と企業との医療情報を用いた共同研究が重要な役割を果たす。個人情報保護委員会においては、「個人情報保護法相談ダイヤル」や「PPCビジネスサポートデスク」を設置して、個別相談を受ける体制を整備している。

そこで、寄せられた相談事例等を基に、ガイドラインやQ&Aに具体的事例を追加するなど、より迅速に関係者が適用除外の該当有無を判断しやすくなる措置を講じるべきである。

<根拠法令等>
  • 個人情報の保護に関する法律第76条
  • 「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』及び『個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について』に関するQ&A」
No. 26. 独占禁止法第9条の廃止
<要望内容・要望理由>

独占禁止法第9条(一般集中規制)は、国内の他の会社の株式取得・所有により事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立・転化を禁止している。一例として、子会社と実質的子会社を含めた「会社グループ」の総資産額が15兆円を超えたうえで、5つ以上の主要な事業分野(日本標準産業分類の3桁分類における売上高6,000億円を超える業種)において、単体総資産3,000億円を超える会社を保有することはできないと整理されている。このため、一部の会社グループにおいては、既存事業分野の売上や事業会社の資産が基準以下とならない限り、新規分野で競争力を確保できない事態が生じている。公正取引委員会は、ガイドラインで示された上記基準に相当することで直ちに独占禁止法9条に抵触するものではないとしているが、本規制の存在自体が事業者の萎縮効果を招き、自由な事業活動を阻害している。

経済活動のグローバル化が進展し、国内市場においても海外企業が参入して競争が促進されており、特定の国内グループが過度に集中することで支配力を有する状況ではなくなりつつある。加えて、デジタル化の進展にともない、わが国企業は国内外の市場の変化に対応しながら事業構造や事業領域を再構築する必要に迫られている。こうした状況を踏まえると、国内市場の規模のみに着目して規制を課す一般集中規制の存在意義は乏しいと言わざるを得ない。

そこで、独占禁止法第9条を廃止すべきである。

<根拠法令等>
  • 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第9条
  • 事業支配力が過度に集中することとなる会社の考え方

Ⅲ.2020年度規制改革要望【新規】
―with/postコロナにおいて特に求められる規制・制度改革―

1.非対面・非接触型の技術・サービスの導入

〔ものづくり〕
No. 27. 専任技術者の配置における専任・常駐要件の緩和
<要望内容・要望理由>

建設工事に関わる契約の適正な締結・履行を確保するため、見積・入札・請負契約締結等の建設業に関わる営業には、一定の資格または経験を有した「専任技術者」の設置が必要である。建設業法では、営業所ごとに専任技術者にを設置することを定めているため、営業所に常駐している必要がある。

しかし、コロナが拡大する状況において、専任技術者の通勤・移動を抑制することは感染抑止に資する。加えて、建設業界における労働力不足が深刻化するなか、効果的に人的資源を活用する事が求められている。

専任技術者の業務はデスクワークとなることから、ICTの活用により、常駐の場合と同様の環境で作業できることが担保できる場合には、テレワークでも、その営業所に常勤して専ら職務に従事しているものとみなすべきである。また、例えばLAN配線に伴う配管工事を行うような電気通信工事業等については、必ずしも専任である必要性はなく、専任技術者が複数の工事現場に関わる職務を同時に遂行できると考えられる場合には、テレワークによる兼務を可能とすべきである。

<根拠法令等>
  • 建設業法第7条2号、第15条2号
No. 28. フロン排出抑制法における業務用冷凍空調機器の点検の遠隔化
<要望内容・要望理由>

フロン排出抑制法は、フロンの漏洩を防ぐために業務用冷凍空調機器の現場での簡易・定期点検を定めている。遠隔での実施が想定されていないため、移動や点検時にコロナの感染リスクが高まる。IoT技術を活用して、簡易・定期点検と同等以上のフロン漏洩防止効果のある技術はすでに実用化されており、これを活用して簡易・定期点検を行うことが可能となっている。

そこで、業務用冷凍空調機器について、上記IoT技術の導入を前提として、遠隔で簡易・定期点検できる旨を明確化すべきである。

これにより、保安業務におけるコロナの感染リスクを低下させるとともに、新技術を用いた事業の効率化・生産性の向上を実現できる。

<根拠法令等>
  • フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律第16条
  • 第一種特定製品の管理者の判断の基準となるべき事項(経済産業省・環境省告示第13号)
No. 29. 危険物施設の完成検査の電子化
<要望内容・要望理由>

指定数量以上の危険物を取り扱う製造所等は、設置工事または変更工事後に完成検査を受ける必要がある。同検査では、消防職員・設置者(管理者)・工事業者はじめ多くの関係者が集まり、「密」な状態で実施されるため、コロナ感染のリスクが懸念される。

とりわけ、「指定数量」(危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量)の「倍数」(当該製造所、貯蔵所又は取扱所において貯蔵あるいは取り扱う危険物の数量を当該危険物の指定数量で除して得た値(品名又は指定数量を異にする2以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合には、当該貯蔵又は取扱いに係るそれぞれの危険物の数量を当該危険物の指定数量で除して得た値の和))が1未満である容量の装置を多数設置しているために、施設全体で「倍数」が1倍以上となる製造所等では、変更工事やそれに伴う完成検査の頻度が高く、コロナの感染リスクがより高まることが懸念される。

装置1台あたりの「指定数量」の「倍数」が1未満の容量かつ密閉式の装置においては、設置・変更工事にあたり流出・火災等の事故が生じる可能性は極めて低い。そこで、装置一台あたりの指定数量の倍数が1未満の容量である密閉式装置を設置・変更した場合は、自ら完成検査を行える認定事業所でなくても、試験結果および設置場所の写真等のデータを電磁的に提出する方法で完成検査に代替することを認めるべきである。

これにより、「密」な状態の発生を回避し、コロナの感染リスクを抑制できる。

<根拠法令等>
  • 消防法第11条
  • 危険物の規制に関する規則第5条
No. 30. GMP適合性調査における遠隔調査の導入
<要望内容・要望理由>

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)および都道府県は、医薬品等の製造所に対して、新薬の承認等にあたり適切な品質の医薬品等が製造される体制となっているか評価するため、GMP(Good Manufacturing Practice)適合性調査を実施している。その際、調査官が施設に立ち入って、対面により書類や製造所施設を確認している。

しかし、足許のコロナはじめ感染症流行時において、医薬品製造所内の感染症拡大を防止することは、医薬品を継続的に製造・供給するうえで極めて重要である。そのため、製造所では、調査官の立ち入りにあたって厳重な感染防止策の準備・管理に取り組むことが求められる。感染防止の観点からは、調査官の立ち入りを最少化することが望ましく、当該施設・設備の視認等の調査についても、WEBカメラやVRゴーグル等の活用による代替は十分可能である。

そこで、新興・再興感染症流行下における時限的な措置として、調査官が直接製造所を訪問することなく書類および製造所施設を確認できるよう、情報通信機器を用いた遠隔調査も可能とすべきである。

<根拠法令等>
  • (薬食監麻発第0330001号)薬事法及び採血及び供血あっせん業取締法の一部を改正する法律の施行に伴う医薬品、医療機器等の製造管理及び品質管理(GMP/QMS)に係る省令及び告示の制定及び改廃について
No. 31. 工場内における電波利用に関する制限の緩和
<要望内容・要望理由>

工場において、感染症対策の観点から可能な限り少ない人員で修繕管理等の作業を行うためには、ドローンやIoTセンサーの活用が有効である。他方、電波法では、混信等の障害を防止する観点から、電波利用に対して様々な制約を設けており、それが幅広い業務分野での活用の妨げとなることがある。そこで、工場等、区域が管理され、他の無線局と一定以上の距離を取ることが可能であり、居住者もいない敷地内での使用であれば、他の無線局への影響は限定的であることから、以下の通りに電波利用に関する制限を緩和すべきである。

  1. ドローンの画像伝送が容易に行えるよう、5.7GHz帯の無線免許を不要とすべきである。
  2. 工場内は、構造物が多数・複雑に設置され、かつ、高電圧・大容量の電力機器からノイズが発生する環境であるため、ドローンの安定した運転には高出力化が不可欠であり、920MHz帯の送信出力の上限を、現状の20mWから100mW程度に引き上げるべきである
  3. IoTセンサーの高度化等による情報量の増加に対して、現状の送信時間制約ではその能力を十分に発揮できないため、920MHz帯の通信規制(送信時間制限)を、約10倍に引き上げるべきである。
<根拠法令等>
  • 電波法第4条
〔サービス〕
No. 32. 屋外客席の規制緩和および手続の簡略化
<要望内容・要望理由>

コロナの影響を受ける飲食店等を支援するための緊急措置として、2020年6月5日に国土交通省道路局長から各地方の整備局長宛てに、沿道飲食店等の路上利用に伴う道路占用の取扱いについて柔軟に運用するよう通達が行われた。飲食店がソーシャルディスタンスの確保を前提に、需要に対応できる席数分の屋外客席を設置することで、コロナの影響を軽減できるとともに、新しい生活様式における屋外空間の利活用の土台が整備できる。

しかし、実際は以下の課題により、需要に対応できる席数を確保できていない。

  1. (1) 保健所の規制により屋外客席を設置できる場所が限られている
    保健所においては、屋外客席は完全に区画された調理施設または屋内客席に隣接していなければならないという制限を設けていることがある(東京都保健所「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」を参照)。例えば、屋外にある点字ブロックの利用に支障がないようにした場合、店舗と点字ブロックの間にしか屋外客席を設置することができず、ソーシャルディスタンスを確保しながら需要に対応できる屋外客席数を設置することが難しい場合がある。一方で、同要綱の旧版に「屋外客席は屋内客席に隣接して設置していなければいけません。※ただし、道路の占有許可を受けて設置する場合には、除外されることがあります。」とあることを踏まえ、各自治体の認可により、屋内客席と隣接させることができない場合でも屋外客席を設置できる事例が実際にあり、各自治体の判断により対応が分かれている。

  2. (2) 保健所との協議に時間を要している
    保健所が提示する「屋外客席は屋内客席の規模を超えない程度でなければならない」という原則を順守すると、特に店舗の規模が小さい場合において、ソーシャルディスタンスを確保しながら需要に対応できる席数を確保できない場合がある(東京都保健所「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」を参照)。例外として、保健所により衛生上支障がないと判断された場合には屋内客席の規模を超える屋外客席の設置が可能となるが、コロナの影響により、保健所との協議の場を設けるまでに時間を要している。

現行法では、飲食店の営業について公衆衛生の見地から必要な基準は都道府県が定めるよう規定されており、現在、保健所の規定は各自治体に委ねられている。しかし、コロナにより飲食店が甚大な影響を受けているいま、ソーシャルディスタンスを確保した上で、需要に対応できる屋外客席数を設置できる環境整備が急務となっている。

そこで、上記課題(1)については、各自治体による運用に差異が出ないよう、国が共通のガイドラインを策定するとともに、課題(2)については、例えば、屋外客席を増やす場合には問題発生した場合に罰則を設けるなど条件付きの事後報告制とするなど、政府より各自治体に対して、柔軟かつ迅速な対応を促すよう通達を出すべきである。

<根拠法令等>
  • 食品衛生法第51条、食品衛生法施行令第35条
No. 33. 国立公園における民間企業等活用による観光需要の創出
<要望内容・要望理由>

国立公園においては、環境保護の観点から土地の使用や建物の建設が厳しく制限されている。加えて、使用許可期間が原則1年、最大3年と短いため、投資回収の期間を取れず、国立公園の持つ希少性を十分に活用できていない。

環境保護の観点から一定の制限が必要であることは理解できるものの、コロナ禍での観光需要の創出には、自然豊かな国立公園においてグランピング等の宿泊体験を提供するなど、民間企業等の参入が効果的と考えられる。しかし、民間企業がいわゆる公園事業に参入するには、行政による公園計画の策定が前提となる。

そこで、国立公園の民間活用に向けて、公園事業外における使用許可期間を5~10年程度に延長するなど、国立公園法等の制度を抜本的に見直すべきである。

これにより、公共投資を行わず、新たな国立公園の価値の創造、ならびに「密」を避けたwith/postコロナ時代の新しい観光需要の創出・地方創生を実現することが期待される。

<根拠法令等>
  • 自然公園法第20条
  • 国立公園集団施設地区等土地及び建物等の使用に関する取扱いについて 第3(使用許可の条件、使用許可の期間等)
No. 34. 医薬品卸売販売業の管理薬剤師の配置要件の緩和
<要望内容・要望理由>

医薬品卸売販売業においては、すべての営業所に薬剤師を置くことが義務付けられている。しかし実際には、医薬品・原薬を製造・保管拠点等から販売先へ直送している営業所では、受注や債権管理業務のみを行い、医薬品等を直接取り扱わないケースがある。

薬剤師の不足も深刻化するなか、医薬品等を取り扱わない営業所に専任の薬剤師の配置を義務付ける必要性は必ずしも高くなく、コロナが拡大する中でテレワークの阻害要因ともなっている。

そこで、必要な場合には薬剤師からオンラインで指導を受けられる体制を整えることを前提に、医薬品等を直接取り扱わない営業所における薬剤師の配置要件を撤廃する、あるいはオンラインでの対応や他営業所等との兼務を認めるべきである。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第35条
No. 35. マンション管理組合のIT総会・理事会におけるルール整備
<要望内容・要望理由>

マンション管理組合が開催する総会・理事会は、従前より集会室等で実際に人が集まり対面形式で行われてきた。昨今、感染リスクの回避や業務効率化等を目的に、ITを活用した会議システム等の活用で物理的な場所に制約されない形式で、出席および議決権行使ができる総会・理事会を開催するニーズが高まっている。

しかし、現行の区分所有法において、マンション管理組合の総会及び理事会を、ITを活用し開催した場合に、参加者が出席扱いとされるのか、またオンラインでの議決権行使の有効性が不明瞭である。これにより、国内に概ね10万程度あるとされる管理組合は、WEB会議システム等による総会や理事会を開催することに二の足を踏んでいる現状がある。

2020年5月、公益財団法人マンション管理センターが「新型コロナウイルス感染拡大におけるITを活用した総会・理事会の開催に関するQ&A」を公表し、区分所有法第39条、同第45条の解釈が一定程度示されたが、例えば、以下のような実務上の対応方法が不明確であり、オンライン開催の判断が困難となっている。

  • 本人確認に関する対応(経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」p15参照)
  • 第三者がなりすましてWEB会議システム等で総会に参加し、議決権を行使していたことが後日判明した場合の対応
  • 事前に書面や電磁的方法で議決権行使をした者が、総会にWEB会議システム等で参加し、提出済の議決権行使書の意見から変更の意思表示をした場合の対応
  • オンラインのみ(バーチャルオンリー)で開催した場合においてインターネット環境を持たない区分所有者がいる場合の対応

また、国土交通省が公表しているマンション標準管理規約においても、上記のような場合の扱い等について明示的な記載がない。そのため、仮に管理規約で独自に定めていても、将来的に総会が無効となるリスクがあり、有効に活用できていない。

現在、政府においては、類似の事案としてバーチャルオンリー株主総会のあり方について2020年度中に結論を得る方向で検討されている(「成長戦略フォローアップ」2020年7月17日、p42)。この議論と並行して、WEB会議システム等を用いたマンション管理組合の総会・理事会の開催方法について、デジタルデバイドにも配慮しつつ、決議無効を回避するためのオンラインでの議決権行使の望ましい運用ルール(バーチャルオンリーも含む)についてガイドラインを策定し、明確化すべきである。また、これを踏まえたマンション標準管理規約の見直しも検討すべきである。

要望が実現すれば、全国に約10万存在するマンション管理組合において、WEB会議システム等によって感染症対策をしながら総会・理事会の議案決議が滞りなく進められる。また、WEB会議システム等を活用すれば遠隔地からの参加も可能となるため、これまで以上に総会・理事会への参加者は増加すると期待される。多数の意思決定が総会・理事会に反映されることは、管理組合の活動の健全化にも寄与すると考えられる。

<根拠法令等>
  • 区分所有法第39条第3項、同法第45条1項
No. 36. 管理員業務のIT化に向けた管理員の設置義務の緩和
<要望内容・要望理由>

マンション管理業務において、対面接触機会の削減および利用者の利便性向上、人手不足への対応といった観点から、管理員が駐在するのではなく、IT技術を活用し、居住者が必要とする時間に必要なサービスが受けられるようにするニーズが高まっている。具体的には、スマートフォンのアプリケーション等により、現在管理員が対面形式で行う居住者からの問い合わせや各種申請等への対応をIT化するとともに、オートロック解除や点検等の場合にも管理員が立ち合う必要のない環境を整えることが考えられる。

しかし、一部の自治体では、建築基準法第40条に基づき、分譲マンション建設にあたり事業者(建築主)が遵守すべき事項として、管理員の設置義務とともに、その駐在時間等を詳細に(例えば「常駐または週〇回以上かつ1日〇時間以上」等)条例・指導要綱等(以下、条例等)で定めている。その場合、窓口対応等の業務をIT化して管理員の駐在時間を削減しようとすると条例等の違反となる可能性がある。また、自治体によっては、管理員の設置について「確実な管理業務が行われる場合」や「管理員による管理と同等の管理が行われる場合」に管理員業務のIT技術による代替を認めているが、その場合も基準が不明瞭であることが多い。

そこで、現行の条例等において定められる管理員の駐在時間について、管理員業務をIT技術により代替した場合、確実な管理業務が行われる(管理員による管理と同等の管理が行われる)ことを条件に、事業者が管理員の駐在時間を柔軟に設定できるよう、国から地方自治体に対して通知を発出すべきである。また、管理員業務の代替手法がどのような要件を満たせば「確実な管理業務が行われる」あるいは「管理員による管理と同等の管理が行われる」と認められるかについて、現行の建築許可基準の範囲内で国によるガイドラインの策定およびその定期的な見直しをすべきである。

<根拠法令等>
  • 建築基準法第40条
〔インフラ〕
No. 37. 電気主任技術者の配置要件の緩和
<要望内容・要望理由>

太陽光を含む発電設備においては、設備ごとに電気主任技術者を選任することが義務付けられている。同技術者は原則として1設備1名の選任が求められ、他事業場・設備と兼任する場合には、管理対象施設の電圧が7,000ボルト以下であること、兼務する施設から2時間以内の移動距離に住所あるいは事務所があること等の制約が設けられている。

政府においては、スマート保安実現による保安力の維持・向上と生産性向上との両立を掲げており、企業においても設備の状態を遠隔で把握・監視するSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition、産業監視制御システム)等の遠隔監視システムを導入しつつある。有事の際には同システムが異常を検知して電気主任技術者に知らせることで、現場責任者への適切な指示と安全性の担保が可能である。また、電気主任技術者が必要となる電流・電圧の点検や故障部品の交換・修繕等の電気業務の発生は、概ね年間30日以下にとどまり、この点においても電気主任技術者が常駐する必要性は低い。

こうした状況にもかかわらず、電気主任技術者の選任義務があることで、企業にとっては遠隔監視システム導入と二重のコストを支払う必要が生じている。加えて電気主任技術者の高齢化・人材不足による人件費高騰も相まって、発電設備の運営コストを押し上げ、太陽光発電設備の普及促進も阻害する恐れが生じている。

そこで、適正な保安体制を確保・維持していることを前提として、太陽光発電設備における電気主任技術者の兼任要件を撤廃すべきである。

なお、適正な保安体制の例として、以下が考えられる。

  1. 遠隔監視システムやWEBカメラ等により、発電設備における発電量データや運転状況を一元的に把握・管理出来る体制を有していること
  2. 一元管理を行う責任者として、第一種もしくは第二種電気主任技術者を配置していること
  3. 2時間以内に管理対象設備に到着できる適切な知識・経験を有した人員(第三種電気主任技術者、電気工事士等)を配置していること
  4. 管理対象設備において、電気事業法に則った適切なメンテナンス行為が可能であること
  5. その他、電気設備の技術基準の解釈(20130215商局第4号)第47条に準ずること
<根拠法令等>
  • 電気事業法43条
  • 電気事業法施行規則52条
No. 38. 自家用電気工作物の月次点検・問診・保安教育の遠隔化
<要望内容・要望理由>

自家用電気工作物の点検や問診・保安教育の実施方法については、現行法で明示されていないため、遠隔での点検の可否が不明確であり、従来どおり電気主任技術者の現場訪問による点検しか実施できない。経済産業省告示では、信頼性の高い需要設備については隔月1回以上の点検が求められているが、常時遠隔監視システムで当該工作物の電力使用状況・漏電・電圧低下をはじめとする点検項目を把握する技術はすでに実用化されているとともに、問診・保安教育についてもオンライン会議システムを活用した遠隔化が可能である。

電気主任技術者の高齢化・人手不足、さらには現下のコロナ感染のリスクも踏まえれば、遠隔監視可能な点検のために現場を訪問する必要性は低い。

そこで、保安上支障がないものとして外部委託が認められている自家用電気工作物については、遠隔での月次点検や問診、保安教育を認める旨を明示するとともに、そのための明確な要件を告示等で定めるべきである。

これにより、保安業務におけるコロナの感染リスクを低下させるとともに、新技術を用いた保安事業の効率化、生産性向上を実現することができる。

<根拠法令等>
  • 電気事業法第43条
  • 電気事業法施行規則第52条
  • 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)
  • 平成15年経済産業省告示第249号(電気事業法施行規則第52条の二第一号ロの要件等に関する告示)
No. 39. 産業廃棄物処理業者の実地確認の緩和
<要望内容・要望理由>

廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、中間処理事業者を含む事業者は、その産業廃棄物の処分等を委託した場合、受託者である産業廃棄物処理事業者に対して、法人ごとに産業廃棄物の処理状況を実地で確認することが求められている。このため、事業者の移動や対面での確認の機会が多くなり、コロナの感染リスクが増加している。

そこで、(1)書類や設備等、オンライン会議システムを活用した確認が可能な項目については、実地確認に加えて遠隔での確認も可能とする、(2)同一施設を利用しているグループ会社については、一括した遠隔検査を可能にすべきである。

これにより、実地確認のための移動や対面での点検が抑制され、コロナの感染リスクが低下する。また、現場確認にかかる時間の短縮が期待できる。

<根拠法令等>
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第12条
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第4条第9号ロ
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律法施行規則第1条の8
No. 40. シリンダーキャビネットの設置工事に係る完成検査のオンライン化
<要望内容・要望理由>

高圧ガス保安法における「第一種貯蔵所」は、一般高圧ガス保安規則の定めにより、設置工事または変更工事後に目視での完成検査を受ける必要があり、現地での検査が行われている。地方公共団体の職員、設置者(管理者)、工事業者ら多くの関係者が現地に集まるため、「密」な状態で実施され、コロナの感染リスクが高い。とりわけ、シリンダーキャビネットを多数設置する第一種貯蔵所では、変更工事の頻度が高く、工事の度に現地での検査をするため、コロナの感染リスクがより高まる(例えば、100本以上のシリンダーキャビネットがある貯蔵所では、シリンダ-キャビネットを1本増やしただけでも検査が必要となる)。この完成検査の内容は、装置等を外部から目視で確認するものであり、写真等によっても検査を行うことが可能である。

そこで、「一般高圧ガス保安規則第35条第1項別表第1」を改正し、第一種貯蔵所のシリンダーキャビネットについては、地方公共団体による完成検査の検査項目と同様の内容が分かる写真等のデータと、事業者自らが行う定期点検等の試験結果を電磁的に提出する方法で、完成検査を行える旨を明示すべきである。

これにより、「密」な状態の発生を回避し、コロナの感染リスクを抑制できる。

<根拠法令等>
  • 高圧ガス保安法第20条
  • 一般高圧ガス保安規則第35条の1別表第1
〔物流〕
No. 41. 自動走行ロボット・パーソナルモビリティの社会実装に向けた道路関係法令の整備
<要望内容・要望理由>

自動走行ロボットによる物流や、自動走行パーソナルモビリティによる移動に対するニーズが高まっている。これらの車両は低速で走行することから、みなし歩行者と同様に歩道・路側帯を走行できるようになることが望ましい。

しかし、現行の道路交通法や道路運送車両法等では、車両は自動車、原動機付自転車、軽車両、みなし歩行者の4つに区分されており、運転者がおらず自動走行で旅客・貨物を運送する車両や、車道だけでなく自転車道・歩道・私有地内も横断的に走行する車両が想定されていない。そのため、現行制度において自動走行ロボット・パーソナルモビリティの公道走行実証実験を行うためには、道路使用許可申請や道路運送車両保安基準の緩和申請が必要となる。また、それらの車両は原動機付自転車や自動車として扱われ、車道以外の走行が認められないこともある。

そこでまずは、2020年5月14日未来投資会議における内閣総理大臣発言の通り、「低速・小型の自動配送ロボットについて、遠隔監視・操作の公道走行実証を年内、可能な限り早期に実行する」ことが望まれる。

その上で、将来的に道路使用許可申請や道路運送車両保安基準の緩和申請を経なくても自動走行ロボット・パーソナルモビリティが歩道等を自由に走行できるよう、道路交通法や道路運送車両法等において新たな車両区分を設けるなど、必要な制度を整備すべきである。

また、それらの車両を想定した規定がない現行制度のもとにおいても、実証実験のための許可申請手続を簡素かつ速やかに行えるようにすべきである。併せて、公道と立体交差する私有地における自動走行の実証実験については、公道の交通に影響を与える恐れがないことから、道路使用許可申請道路交通を不要とすべきである。

<根拠法令等>
  • 道路交通法第70条、第77条、第78条
  • 道路運送車両法第3章
  • 警察庁「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」、警察庁「搭乗型移動支援ロボット公道実証実験に係る道路使用許可基準」等
No. 42. 建物管内の代理配送に対する郵便法の規制の緩和
<要望内容・要望理由>

複数テナントの入る大型施設館内においては、自律走行型ロボット等がまとめて代理配送を行うことで、多数の対面機会を減らし、感染症リスクを低減することができる。しかし、一般信書の送達については、日本郵便以外が取り扱うことは、同社から委託を受ける場合を除き認められておらず、代理配送の支障となっている。また、郵便業務の一部委託には総務大臣の認可が必要となるが、そのためには「当該委託を必要とする特別の事情があること」等の要件を満たす必要があり、建物館内の代理配送が想定されているとは言い難い。

すべての配送物について自律走行型ロボット等で代理配送することが可能となれば、ラストワンマイル問題の解決へ大きな前進になるとともに、新しい生活様式における非接触サービス提供の土台整備ができる。

そこで、適切なセキュリティ体制の確保を前提に、複数テナントの入る同一ビル内における一般信書の代理配送については、郵便法第4条の適用外とすべきである。

<根拠法令等>
  • 郵便法第4条の2、第4条の3、第72条
No. 43. 旅客運送手段の多様化に向けた道路運送法の運用の見直し
<要望内容・要望理由>

感染症対策の観点から、電車、路線運行バス等と比べて不特定多数の人の接触機会が少ない移動手段として事前予約・オンデマンド型の相乗りタクシーや通勤シャトルが注目されている。しかし、いずれも法規制によって、一顧客に対しての運行となっており、同一方面へ向かう客を効率的に運送することができない状況にある。

そこで、以下の通り道路運送法を見直すべきである。

  1. (1) 事前予約・オンデマンド型相乗りタクシーの実施に向けた道路運送法の柔軟な適用
    同一方面へ向かう客に対して事前に予約をしてもらい、マッチングをして相乗りタクシーを利用してもらうことにより、同一車両で運搬することが可能となれば、少ない台数で効率的な運用ができるとともに、利用者運賃の軽減にもつながる。また、最大乗車人数制限を設けることで社内に十分な空間を確保することができ、万が一感染者が出た場合も、予約データに基づき乗客の特定が可能となる。
    しかし、一般乗用旅客運送事業(道路運送法第3条第1項第1号ハ)として実施しようとしても、同法で「一個の契約により」旅客を運送することとされており、相乗りでの運送が認められていない。また、一般乗合旅客自動車運送事業(道路運送法第3条第1項第1号イ)として実施しようとしても、地方運輸局の事業許可・事業計画変更審査基準において「運送の区間ごとに発車時刻若しくは到着時刻又は運行間隔時間のいずれかが設定されているもの」とされている。そのため、事前予約に基づき、顧客の指定する時間に合わせ旅客を運送する事業は認められない。
    そこで、事前の予約・マッチングによって相乗りを行う客と運送事業者との契約は、一般乗用旅客運送事業における一個の契約とみなすなど、道路運送法の関連規定を柔軟に運用すべきである。

  2. (2) 同一ビルの複数テナントの従業員等を輸送するシャトル事業の容認
    同一ビルに通勤する複数テナントの従業員等をシャトルによって一括して運送することで、効率的な運行を行うことができる。しかし、このような事業について特定旅客自動車運送事業として許可を取得しようとしても、地方運輸局の事業許可・事業計画変更審査基準において、原則として運送需要者は単数の者に特定されていなければならない。また、取扱客についても、需要者の事業目的を達成するために需要者に従属する者を送迎する場合等に限られることから、同一ビルに通勤する複数テナントの従業員を一括輸送する事業は想定されていない。
    そこで、同一ビルの入居企業・住宅居住者は単数の需要者として扱うなど、柔軟な運用を検討すべきである。
    密を避けて移動できる交通手段の多様化が図れると共に、利用者・事業者双方にとってより効率的・経済的な輸送形態が実現可能となる。

<根拠法令等>
  1. (1) 道路運送法第3条第1号、国土交通省関東運輸局公示「一般乗合旅客自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の審査基準について」(平成13年12月27日)
  2. (2) 関東運輸局公示「特定旅客自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請の審査基準について」(平成14年1月31日)

2.テレワーク時代の労働・生活環境の整備

〔労働〕
No. 44. 企画業務型裁量労働制の対象業務の見直し
<要望内容・要望理由>

労働基準法は、企画業務型裁量労働制の対象を「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」と定めている。

しかしながら、経済のグローバル化や産業構造の変化が急速に進み、企業における業務が高度化・複合化する今日において、業務実態と乖離しており、円滑な制度の導入、運用を困難なものとしている。

そこで、「働き方改革関連法案」の審議段階で削除された「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」を早期に対象に追加すべきである。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第38条の4
No. 45. 雇用型テレワークガイドラインの見直し
<要望内容・要望理由>

コロナをめぐる問題を契機として、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方であるテレワークが急速に普及している。テレワークの導入・実施時における労使双方の参考資料として「情報通信技術を活用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」が存在するが、同ガイドラインは、テレワーク時の時間外・休日・深夜労働の原則禁止を例示するなど、新しい生活様式としてのテレワークを促進する内容とは言い難い。

そこで、テレワークの一層の普及・定着を図る観点から、同ガイドラインを以下のとおり見直すべきである。

  1. 労働時間の把握方法として、電子メール等による始業・終業時刻の報告(自己申告)を追記すること
  2. オンライン面談を通じた健康状態の確認や業務の進捗状況の把握を行うなど、労務管理全般に焦点を当てた記載を追記すること
  3. テレワーク時の残業に関する企業の萎縮効果を招くおそれがある「時間外・休日・深夜労働の原則禁止」との記述を削除すること
<根拠法令等>
  • 情報通信技術を活用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン
No. 46. 時間単位の年次有給休暇の取得制限の撤廃
<要望内容・要望理由>

コロナをめぐる問題を契機として、在宅勤務が急速に普及するとともに、仕事と休暇の組み合わせによる「ワーケーション」を推進する動きもみられる。こうした新しい働き方では、仕事と家庭、仕事と余暇が組み合わさり、業務を一時中断する機会が多く発生するため、時間単位年次有給休暇の活用が有効である。しかしながら、取得日数の上限が年5日と定められているため、導入効果が限定的であり、制度化しにくいとの指摘がある。

そこで、多様で柔軟な働き方を推進する観点から、時間単位年休の取得制限を撤廃すべきである。併せて、年5日の年休付与義務の履行にあたり、時間単位年休の取得を対象に含めることを認めるべきである。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第39条第4項
No. 47. 年次有給休暇の取得義務の緩和
<要望内容・要望理由>

2019年4月より、一定の労働者を対象に時季を指定して年5日の年次有給休暇を取得させることが使用者に義務付けられた。年次有給休暇は雇入日を起算日として付与日数が算出され、原則として業務上の傷病や産前産後、育児・介護休業中にも付与する必要がある。

このため、休業中の労働者が事業年度の後半に復帰して5日間の年休を取得した場合、実質的な労働日に占める休暇日の割合が過大となる。また、退職者についても、本人の退職通知から退職日までの間に5日間の年休を取得すると、実質的な労働日に占める休暇日の割合が過大となり、残務の対応や業務の引継ぎなどを行う時間を十分に確保できず、事業運営に影響が生じることがある。

加えて、基準日から1年間の途中において休業を開始する労働者については、休業発生時期を事前に予期することができず、休業開始前に5日間の年休を取得させることが困難である場合がある。計画的付与制度を活用する企業においては、一斉付与時期に取得できないこれらの労働者における年休の取得に苦慮するケースもみられる。

そこで、上記のような休業から復帰する労働者については、休業復帰日から年度末等、勤務可能日数に応じて按分した日数での年次有給休暇の取得で足りることとすべきである。また、基準日から1年間の途中において突然休業を開始する労働者や退職する労働者については、5日間の年休を取得させられない場合も法違反とならないことを明確化すべきである。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第39条
No. 48. フレックスタイム制の適用の柔軟化
<要望内容・要望理由>

労働基準法は、労働時間の弾力的な運用を可能とする観点から「変形労働時間制度」を設けている。同制度には「1箇月単位の変形労働時間制」「フレックスタイム制」「1年単位の変形労働時間制」等が存在し、各企業は事業内容や就労実態に応じて各制度を使い分けている。

しかしながら、複数の変形労働時間制を同一労働者に同時に適用することは認められていない。例えば、現場業務で1箇月単位の変形労働時間制、後方業務でフレックスタイム制(清算期間1箇月)を併用している企業において、フレックスタイム制の適用労働者が1箇月のうち数日程度現場業務に従事する場合、当該月はすべて変形労働時間制が適用されることになる。このため、オフピーク通勤やテレワーク等の柔軟な働き方をより多くの従業員に適用するにあたり課題となっている。

そこで、フレックスタイム制の趣旨を損なわない範囲で、フレックスタイム制と1箇月単位の変形労働時間制とを併用できるようにすべきである。一例として、前月までに当月の各日の適用労働時間制度を確定していること、月の労働日の過半でフレックスタイム制を適用することを条件として両制度の併用を可能とし、1箇月単位の変形労働時間制度が適用される日においては、始業・終業時刻を使用者が指定することを認める。時間外労働の清算にあたっては、各労働時間制における月間の労働時間を適用日数により按分することが考えられる。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第32条の2、第32条の3
No. 49. 労働法制における「事業場」の考え方の見直し
<要望内容・要望理由>

働き方改革を推進すべくテレワークをはじめ各種人事制度の検討・環境整備が本社主導で進められている。それに伴い就業規則や36協定についても、多くの企業が、事業場からの意見を聞きつつ本社主導で管理を行っていることから、これまでの「事業所単位」の考え方が現状にそぐわなくなっている。

現行労働時間等設定改善法に規定される労働時間等設定改善委員会においては、全部の事業場を通じて環境整備を行うことが認められており、「会社単位」での環境整備が一般的である。加えて、労働者がそれぞれ別の場所で仕事をするテレワークの標準化が進み、労働災害発生時の届出についても「事業場単位」の考え方を堅持するのは時勢に則していない。

そこで、現行法制における「事業場単位」の考え方を「会社単位」に変更するべきである。

<根拠法令等>
  • 労働基準法第32の2、第32条の3~5、第34条、第36条、第37条、第38条の3、第38条の4、第39条、第41条の2
No. 50. 労働者への通知・労働者からの同意取得・異議申し出のペーパレス化
<要望内容・要望理由>

現行の労働契約承継法においては、労働者への承継通知ならびに労働者からの異議申し出を書面で行わなければならない。しかし、事案によっては対象労働者が多く、労使双方にとって書面形式が負担になっている。

厚生労働省は、書面形式の必要性について、「個別の労働者に対して確実に送達する方法で提供するとともに、事後にトラブルが生じて労働者の地位が不安定になることを防止するため」としているが、十分な個人認証、セキュリティ確保措置、バックアップ等の措置を講じれば、電子的な方法においても労働者保護を図ることが可能である。

そこで、書面によるだけでなく電子的な方法の活用を認めるべきである。

<根拠法令等>
  • 労働契約承継法第2条、第2条の2、第4条、第5条
No. 51. 情報通信機器を用いた面接指導の実施に係る留意事項の簡素化
<要望内容・要望理由>

「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(平成27年9月15日付け基発0915第5号)によって、一定の要件のもと情報通信機器を用いた面接指導が可能となっている。

しかし、コロナ禍において、対面による面接指導に制約にある中、迅速に面接指導を行い、労働者の健康確保につなげるためにも、更なる要件緩和が必要である。具体的には、「原則として対面によって行うことが望ましい」とする基本的な考え方を削除し、事業者の判断によって対面、情報通信機器いずれでも可とする中立的な記述とすべきである。加えて、情報通信機器を用いた面接指導が可能となる場合について、以下のとおり要件を定めているが、すべて撤廃すべきである。

  1. 面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医である
  2. 面接指導を実施する医師が、契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している
  3. 面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある
  4. 面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、当該労働者に直接対面により指導等を実施したことがある
<根拠法令等>
  • 労働安全衛生法第66条の8、第66条の10
No. 52. 特別教育のオンライン化(三密回避)に向けた更なる要件緩和
<要望内容・要望理由>

労働安全衛生法第59条第3項の規定に基づく特別教育の実施については、「インターネット等を介したeラーニングにより行われる特別教育の当面の考え方等について(基安安発0326第1号)」において、eラーニングを活用した受講が可能となった。

しかし同通達では、実際の視聴・閲覧時間を受講者自身で操作できる場合は対象外となるほか、視聴・閲覧中に受講者が自由に離籍できる場合、監視者を配置することが必要とされている。そのため、結果的受講者を一か所に集合させ、監視のもと教育を行わなければならず、eラーニングの特性を活かした教育が実施できていない。

コロナ禍において三密を避けるためには、eラーニング等の活用に向けたさらなる規制緩和が必要である。具体的には、学科の最後に理解度テストを実施し、規定以上の得点取得を修了の要件(規定以下の場合は、合格するまで補修や再テストを実施)とすることで、各特別教育を規程に定める時間以上実施したことと同等の成果を担保できるものとすべきである。

<根拠法令等>
  • 労働安全衛生法第59条
No. 53. 新たな特定化学物質に係る作業主任者の選任義務化の延期
<要望内容・要望理由>

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第148号)等によって、2022年3月31日までの間に、溶接ヒューム並びに塩基性酸化マンガンに係る業務の作業主任者を選任しなければならないこととなった。そのため、多くの溶接作業場で資格を持った主任者の選任が必要になり、資格取得のための教育を受講させなければならない。

コロナ禍においては、密を避けるために一回の受講生の数を抑え、講座の開催回数を増やす必要が生じている。しかし、講師の確保はじめ急な体制の整備は困難であり、開催回数が不足して到底間に合わない。

そこで、1年程度の義務化を延期すべきである。

<根拠法令等>
  • 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第148号)
No. 54. 工事所の労働災害防止協議会等における会議の緩和
<要望内容・要望理由>

労働安全衛生規則第635条1に基づいて実施する工事所の労働災害防止協議会等における会議については、密を避けるために、WEB会議による実施が望まれるが、すべての関係請負人が参加する協議組織という要件があるため、効果的なWEB会議を開催できない。

そのため、WEB会議で開催する場合でも、1次下請が会議内容を速やかに2次3次と共有するなどして、全員が参加した状態と同じになるとみなすことが可能であれば、出席者を1次下請までとするなど、会議の開催要件を緩和すべきである。

<根拠法令等>
  • 労働安全衛生規則第635条1
No. 55. テレワーク推進と連動した自衛消防組織の見直し
<要望内容・要望理由>

企業の本社・支店・営業所等の建物(防火対象物)においては、消防法のもと、災害発生時に自衛消防活動の中心的役割を担う「自衛消防活動中核要員」を置くことが義務付けられている。同要員については、施行規則において初期段階の消化業務、情報収集・設備監視、避難誘導、救出・救護といった活動ごとに概ね2人以上の要員を置くことが求められており、さらに自治体の条例において、延べ面積・収容人数に応じた人数の配置が求められている。

コロナ拡大の影響を受けテレワークが急速に進むなか、延べ面積と常駐人数の乖離が進むとともに、災害発生時に「自衛消防活動中核要員」がテレワーク中となる可能性が生じており、現行制度下では適切に対応できない恐れがある。加えて、施設・設備の遠隔監視やスプリンクラー設備等の自動消火設備等の技術発展により、これら設備を適切に配備している建物において、従来と同等の自衛消防組織を求める必然性は高くない。

そこで、「自衛消防活動中核要員」の最低配置人数の撤廃も視野に、テレワークを前提とした自衛消防組織のあり方について改めて検討すべきである。また、各自治体の条例においても、延べ面積ではなく平均出社人数に応じた配置人数の基準とするなど、制度の見直しについて技術的助言等を行うべきである。

<根拠法令等>
  • 消防法施行令第4条
  • 消防法施行規則第4条
〔生活〕
No. 56. シェアオフィス等へのニーズに対応するための建築基準の見直し
<要望内容・要望理由>

テレワークが拡大するなか、ミーティング時の情報管理や遮音性能等、テレワークには環境上の課題があり、居住エリアに近接した場所にシェアオフィス、小規模会議スペース等を整備するニーズが高まっていくと予想される。

このようなニーズに柔軟に対応するために、以下のような規制の見直しが必要である。

  1. (1) 第一種低層住宅専用地域等における建築許可基準の明確化
    第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域における事務所等の整備は、特定行政庁が「良好な住居の環境を害するおそれがない」または「公益上やむを得ない」と認めた場合にしか許可されず、どのような要件を満たせば「良好な住居の環境を害するおそれがない」と判断されるかが明確でない。
    そこで、前述の用途地域におけるシェアオフィス、小規模カンファレンスおよびそれに類する施設の建設について、良好な住居の環境を害しない場合には、地域の実情やニーズに応じて建築できるよう、国から特定行政庁に対して許可準則を発出し、その内容を周知徹底すべきである。

  2. (2) 避難経路の重複区間距離に関する規定の適用除外
    既存建築物においてシェアオフィス等への用途変更に応じて室空間の小割対応を行う際、一定区間の避難経路が一方向のみになることや、採光無窓居室が発生することにより、避難経路上の重複区間の距離に関する制限(建築基準法施行令121条3項)を満たせないケースがある。また、奥まった室に対しては重複距離を遵守するために、避難のためだけの通路を確保するなど、計画上・管理運用上の制約が生じる可能性もある。
    そこで、煙層降下時間から安全性が確認された場合(建築基準法126条の2第1項5号参照)、小規模な居室(30平方m程度)等で自動火災報知設備を設置する場合、避難経路上にスプリンクラー設備等を設ける場合等には重複区間距離制限を適用除外とするなど、運用規定の見直しについて検討すべきである。

<根拠法令等>
  • 建築基準法48条
  • 建築基準法施行令121条3項
No. 57. 在宅ワークスペースにおける採光・換気規定の適用除外
<要望内容・要望理由>

テレワークの普及により、住宅における在宅ワークスペースの整備へのニーズが高まっている。在宅ワークススペースは「居室」(建築基準法第28条)であり、採光・換気の規定を満足しなければならないが、特にマンション等においてリビングや寝室に加え、同スペースに必要な窓を設ける設計は難しい場合が多い。また、既存住戸において同基準を満足したスペースを設けることは更に困難な場合が多い。

他方、実際にオフィスの執務室は建築基準法第28条の採光・換気が必要な居室ではない。

そこで、住戸内のワークスペースも同様に、居室の採光・換気に関する規定を適用外とすべきである。一律に適用外とすることが困難である場合には、例えば寝室に転用できないような面積である場合等に限り適用外とすべきである。

要望が実現することで、テレワークに適した住戸の提供が容易となり、ワークライフバランスの向上、ひいてはより働きやすい社会の実現、労働人口の増加に寄与しうる。また、住宅市場活性化の効果も期待できる。

<根拠法令等>
  • 建築基準法第28条
No. 58. ゆとりある空間の実現に向けた容積率規制の見直し
<要望内容・要望理由>

コロナ対策の観点から、建築物内において、これまでよりゆとりのある空間を確保することが重要である。そこで、特に以下の場合においては、スペース拡大の必要性が高い一方、道路・水道等のインフラへの負荷は小さいことから、容積率算定の基礎となる延べ面積の算入対象から外すべきである。

  1. 感染症対策にとどまらず、自然災害が起こった際の一時滞在施設としても、建物内に十分な空間を確保する必要性が高まっている。また、テレワークの普及とともに、共同住宅をシェアオフィス等に転用するニーズも増えると予想されるが、シェアオフィス等と共同住宅とで、容積率算定における共用部分の床面積の扱いが異なっており、円滑な用途変更の妨げとなっている。そのため、オフィスのエントランス・ロビー、共用廊下に供する部分の床面積は、共同住宅の共用廊下・階段の用に供する部分(建築基準法52条6項)と同様、算入対象外とすべきである。
  2. 感染症対策に資する管理上必要なスペース(手指消毒場所、検温スペース等)、諸室(清掃係員控室、同事務室、同ロッカー室、同用具庫・物品保管庫等)の用途に供する部分の床面積は、備蓄倉庫部分、蓄電池設置部分、貯水槽設置部分等(建築基準法施行令2条4号)と同様、算入対象外とすべきである。
  3. 既存建築物の庇・オーニング等の軒下部分について、屋内的用途とされる活用がなされた場合、その部分が容積対象となるケースがあり、屋外空間の積極活用の妨げとなっている。屋外客席の用途に供する部分等の床面積を算入対象外とすべきである。
  4. 建物内の管理諸室において、感染症リスクを低減するとともに労働環境を改善するため、管理諸室のうち居室に該当する部分(防災センター、管理室、守衛室、宿直室等)の延床面積のうち、一定割合を算入対象外とすべきである。
<根拠法令等>
  • 建築基準法第52条
  • 建築基準法施行令第2条第4項
  • 昭和61年4月30日建設省住指発第115号「床面積の算定について」
No. 59. オンライン教育のさらなる普及及び遠隔教育制度の恒久的な措置
<要望内容・要望理由>

学校教育におけるICT環境整備は、2020年度の補正予算で前倒しとなり、また、遠隔教育に関する措置は、コロナによる緊急経済対策に組み込まれた。しかし、今後も、感染症や大規模災害等で、登校が困難になり、教育課程の実施に支障が生じる可能性がある。

そこで、個別最適化された学びのためにも、以下を柔軟かつ恒久的に講ずるべきである。

  1. (1) 遠隔授業における要件の見直し(受信側にも教員を配置する要件、同時双方向の要件等の撤廃)
    現在、遠隔授業は受信側に教師がいることが必須要件である。生徒が自宅からICTで行う学びについては、受け手側に教師が不在となるが、この場合であっても授業に参加しているものと認められるようにすべきである。また、「同時双方向」であることが必須要件であるが、生徒が時間や場所の制限を受けずに学び続けられる環境を整えるため、授業の内容に応じ「同時双方向」以外のオンライン上の教育コンテンツを使用した場合についても正式な授業に参加しているものとして認められるようにすべきである。

  2. (2) 遠隔授業における単位取得数の制限緩和(高校における遠隔授業による単位上限の緩和)
    高校の場合は、「高等学校が、対面により行う授業と同等の教育効果を有すると認めるとき」に遠隔授業が可能とされているが、その単位数には上限(36単位)が設定されている。遠隔授業における単位取得数の算定について、柔軟な対応を行うべきである。

  3. (3) 配備された教育用端末を家庭学習に使用できる取り扱いとするガイドラインの策定
    現在、教育用端末の自宅への持ち帰り可否は、各都道府県教育委員会の判断に委ねられている。生徒が自宅において、配備された端末を利用し、遠隔授業への参加とともに家庭学習での利用も可能とすべきである。

  4. (4) オンラインでの学びに対する著作権要件の整理
    授業目的公衆送信補償金制度は、2020年度は特例措置として無償となったが、デジタル教科書の普及促進も踏まえ、2020年度以降も合理的な補償金負担にするための必要な支援を行うべきである。

<根拠法令等>
  • 学校教育法施行規則第77条の2、第96条第2項
  • 著作権法第104条の13第1項~第5項
〔データ基盤〕
  • 行政
No. 60. 地方公共団体の個人情報保護制度における学術研究目的の適用除外および個人情報の取り扱い等の統一
<要望内容・要望理由>

個人情報保護法が適応される機関(研究機関・医療機関)と企業との共同研究においては、研究内容が学術研究の場合、個人情報保護法第4章(個人情報取扱事業者の義務等)の適用が除外される。一方、各自治体の個々の条例が適用される機関との共同研究にあたっては、自治体によって学術研究による適用除外の可否や手続、個人情報の取り扱い・管理が異なっている。

その結果、様々な機関と共同研究を実施している企業においては、共同研究実施内容が同じにも関わらず、共同研究先ごとに法令が異なる事態に直面しており、管理コストおよび手間が発生する場合がある。また、機関ごとに法令が異なるために、全国各地の様々な大学・病院の医療データを集めたデータベースや、各組織に分散しているライフコースデータを連結したデータベース等の構築・研究目的利用にあたっても、個人情報保護に関わる膨大な確認作業が必要となる。さらに、個人情報の定義の差異等がある場合には、データを収集できない場合や手続が異なる場合もあり、研究の支障となっている。

そこで、地域や分野を超えた多様な主体間の共同研究を促進し、医学研究の発展に資する研究の円滑な実施を後押しする観点から、地方公共団体の個人情報保護制度における学術研究目的による適用除外の可否・手続および個人情報の取り扱い等についても、現在、「行政機関個人情報保護法」「独立行政法人等個人情報保護法」との一元化に向けて見直しが検討されている個人情報保護法に統一すべきである。

<根拠法令等>
  • 個人情報の保護に関する法律76条
  • 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律8条
  • 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律9条
No. 61. オンラインによる在留申請手続の要件緩和
<要望内容・要望理由>

これまで窓口での申請しか認められていなかった在留申請手続が、一定の要件を満たす場合にはオンラインで申請できることとなり、手続に要する負担が軽減されることが期待されている。また、コロナの拡大が懸念される中、窓口申請からオンライン申請に手続を移行することは、申請者、受理者双方にとっても感染リスクを軽減する上で効果が期待できる。

しかし、企業がオンラインで手続を行うためには、その企業に所属している外国人従業員リスト(別記第3号様式)に加え、受入予定の外国人のリスト(別記第3号の2様式)を事前に提出していることが要件となっている。これらリストは、異動年月日等詳細な情報の記入を求めており、何百人単位で外国人を雇用し、異動が頻繁に発生する大企業にとってはリストを作成・更新する負担が大きく、オンライン申請の活用を阻害する原因になっている。また、受入予定の外国人のリストにない外国人は、オンライン申請の対象外になり、柔軟な採用や緊急な配置転換を行おうとしてもオンライン申請が活用できない。

なお、事業所単位でもリストの作成は可能とされているが、企業によっては本社の人事部門が申請を一括して行うことがあるため、大企業にとっては使い勝手の良い制度となっていない。

そこで、(1)企業が雇用している外国人従業員を把握する制度としては、すでに外国人雇用状況の届出制度があり、同届出には今後、在留カード番号を付記することになることから、同届出によって外国人従業員のリストに代えることとし、リストの提出義務を廃止すべきである。あるいは、外国人雇用状況の届出制度で求められているものと全く同じ情報で、リストが作成できるようにすべきである。(2)受入予定の外国人のリストについては、柔軟な採用、配置を可能にするため廃止すべきである。

<根拠法令等>
  • 出入国在留管理庁 在留申請オンラインシステムの各種様式、要件
No. 62. デジタル・ガバメントの推進によるオンライン在留申請手続の利便性向上
<要望内容・要望理由>

デジタル・ガバメントを推進するためには、単に行政手続をオンライン化するだけではなく、政府に提出した手続等の情報が、適切に政府内で共有されることが必須である。また、オンライン入力の負担軽減も利用者の利便性向上に欠かせない視点である。

こうした中、在留申請手続のオンライン化が導入されたが、エクセル・PDFで作られた様式に入力してアップロードする必要があるとともに、(押印が求められる場合は)印刷した申請書等に押印をした上で、スキャンすることが必要となり、デジタル・ガバメント推進の本来の趣旨に沿った手続となっていない。なお、スキャンされた書類をアップロードするアナログ的な手続ではなく、デジタルデータで送信するシステムにすれば、将来的にはAI等が申請を一次スクリーニングすることも可能となる。例えば特定技能の許可申請には1申請につき約130枚の提出書類が必要とされており、書類作成の負担を減らしつつ、不正な申請や記載ミスをAI等が短時間で見抜くことで許可決定の処理スピードの向上も期待できる。

そこで、(1)オンライン申請システムをAPI開放し、民間企業が開発している在留申請書類作成ツールとAPI連携できるようにすべきである(イメージとしては、宿泊予約サイトのように、必要事項を入力したり、設問に答えたりすることで、申請書類が完成するツールを想定している。これにより各指定様式に一か所ずつ名前等の必要事項を入力するのに比べ、書類作成負担が大きく減るとともに、必須記載項目が欠けている場合は送信できないため、受理側の確認負担も減る)、(2)骨太の方針2020で「すべての行政手続を対象に見直しを行い、原則として書面・押印・対面を不要とし、デジタルで完結できるよう見直す」としている通り、押印が必要な個所を全廃すべきである、(3)外国人本人に関する情報は、マイナンバー等と連携させることで、添付書類等を減らすべきである。また、法人情報等は、GビズID(経済産業省が提供する複数の行政サービスを1つのアカウントにより、利用することのできる認証システム)と連携させることで添付書類の削減を可能とすべきである。

出入国管理庁は、外国人受入に関する総合調整等を政府として一体的かつ効率的に取り組む機関として発足した。これまで法務省内で完結していた在留申請手続をさらに発展させ、政府内で情報を共有する制度にすることで、申請・審査に係る手続の迅速化、簡素化が進むとともに、一体的な出入国在留管理につながることが期待される。

<根拠法令等>
  • 出入国在留管理庁 在留申請オンラインシステムの各種様式
No. 63. 船荷証券のデジタル化
<要望内容・要望理由>

貿易関連書類の中には、法令上、関係者間の取扱い等が紙媒体でしか認められていないものも多い。そのため各社では、紙媒体による情報の伝達・管理・保管、紙媒体で受領した情報の社内システムへの再入力等に多大な労力と時間を要している。特にコロナの影響下では、紙媒体のやり取りがテレワーク拡大の妨げとなるととともに、外出制限等の影響で、紙媒体の情報を各種システムに入力する作業が遅れ、それが港湾における貨物の滞留の一因となっている。

なかでも船荷証券については、貨物の移動手段の高速化により、紙媒体の船荷証券より貨物の方が先に目的地に到着してしまう等、貿易実務に支障が発生している。しかし、商法においては紙媒体の船荷証券が前提とされており、電子船荷証券(e-BL)には有価証券としての法的裏付けがないため、当事者が契約で定めることで有価証券と同様の取り扱いをしているが、当事者の外に対してその効力が及ばない。

そこで、船荷証券に関して、電磁的方法による提供も認めることで、e-BLも利用可能とすべきである。

なお、e-BLの普及による手続の迅速化・円滑化は、船荷証券が流通する関係国すべてがe-BLに法的保護を与えなければ関係者は安全に利用できず、日本のみが法整備を行ってもこれに対応できないため、国際的な動向に歩調を合わせることも重要である。

上記が実現した場合の効果について、紙の船荷証券はe-BL処理の3倍のコストがかかることから、e-BLを50%採用した場合、コンテナ海運業界は年間40億ドル以上のコスト削減が可能との試算がある(DCSA、Digital Container Shipping Association、2019年に設立された非営利組織)。また、コロナ禍での船荷証券の電子化は、輸出入・港湾諸手続の簡素化と迅速化を通じて、世界貿易の拡大に寄与することが期待される。

<根拠法令等>
  • 商法第757条、758条
No. 64. 離職票の電子化
<要望内容・要望理由>

離職に関わる行政手続については、事業主がハローワークへ雇用保険離職証明書を申請する手続は電子化されたが、交付された離職票現物は事業主が紙に印刷して労働者へ郵送するか、メールに添付して送付しなければならない。

しかし、ハローワークにおいては、すでに全国で共有可能なデータベースを有しており、これを活用して離職票を電子化すれば、電子申請による離職票の交付後、事業主による離職票送付事務は廃止することが可能と考えられる。これにより、郵送等コストの削減、テレワークの推進、遅延リスクの削減につながるとともに、ハローワークにおいても業務のデジタル化による効率化および行政コスト削減につながる。

そこで、以下の仕組みを導入し、離職票を電子化すべきである。

  1. 事業主が従業員の離職に際してハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届を届出て、ハローワークによる喪失が確認された後(決裁後)、離職に関わる情報(賃金・離職日・離職理由等)を同データベースにマイナンバーと紐付けて登録する。登録完了時に、マイナポータルや本人が通知した連絡手段(メールアドレス、電話番号、住所等)を通じて基本手当(失業給付)の手続や離職票の発行が可能になったことを元従業員に通知する。
  2. 元従業員がハローワークに被保険者番号やマイナンバーカード、もしくはマイナンバーが記載された書類と本人証明書類(運転免許証等)を提示することで本人確認および離職情報との紐付けを行い、基本手当の受給手続を可能とする。原則電子化でペーパレスとするが、元従業員が紙での発行を求める場合は、企業や働き手の利便性も考慮しハローワークでの本人への発行も可能とする。
<根拠法令等>
  • 雇用保険法第7条
  • 雇用保険法施行規則第17条
  • 民間
No. 65. バーチャル株主総会の利用促進
<要望内容・要望理由>

2020年2月に、経済産業省から「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」が公表され、その中では、株主総会のライブ配信を行うハイブリッド参加型バーチャル株主総会や、リアルの会場を設けつつ株主のオンライン出席を認めるハイブリッド出席型バーチャル株主総会の開催にあたっての留意点等も示された。

コロナ禍の2020年6月の定時株主総会においては、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施も含め、各社、株主等の三密を避けるべく様々な方策が取られたが、今後もコロナの影響が続くことが予想されるなか、リアル総会を縮小しつつ、インターネットを使って株主の総会へのアクセシビリティを高めていくことは、企業が取り得る有効かつ現実的な選択肢である。また、このような方策は、DXを進める中で、感染症拡大時であるか否かを問わず、特に遠方に居住の株主や移動に不自由のある株主にとって合理的である。

そこで、企業がより安心してインターネットを活用した方策を採用でき、株主との対話を深められるよう、ハイブリッド型バーチャル株主総会(参加型・出席型両方)に関して、(1)映像通信なしの音声通信のみによる開催が認められること、(2)通信回線安定の観点から、会社は、オンラインでの株主の参加枠(人数)を合理的な範囲に制限できること、(3)役員が総会当日にオンラインで出席する場合、役員としての説明義務を果たせる態様である限り、当該役員は株主総会に法的に出席しているものといえること。総会における議事進行等を支障なく行える仕組みが整備されている限り、総会議長のオンラインによる出席でもその職責を果たせること、(4)コロナ対策に関する会社と個人株主等との間の各種連絡(例えば、入場の事前登録行為等)について、郵便等の書面以外のインターネット等の手段によることが認められること、(5)リアル出席株主のプライバシー権や肖像権保護等の観点から、会社は、オンライン参加の株主に対し、総会の録音・録画・転載を禁止できること、が早期に政府のガイド等で明らかにされるべきである。

また、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会に関しては、上記に加え、(1)信頼性のあるシステムを使用することを前提に、仮に通信障害が発生した場合等でも、企業としての合理的判断を経て採用されたシステムであれば十分であること、(2)本人や代理人以外の第三者によるなりすましの危険性についても、会社側が本人確認のための合理的な方策をとっていれば十分であること、(3)過年度のリアル出席株主数及びハイブリッド出席型の導入によりオンライン出席に移行すると予想される割合から合理的に導かれるリアル出席株主数が収容可能な会場を用意していれば十分であること。また、感染症拡大時においては、会場での株主等の三密を避けるため、より収容可能数を限定できること、(4)オンライン出席株主から質問フォームにて投稿された質問事項も含め、その取り上げ方(質問者の指名)は、恣意的な運用とならない範囲で議長の合理的議事進行に委ねられること(例えば、リアル出席の場合には、株主が事前に質問状を提出していたとしても、総会当日に挙手し、指名されたあと質問事項を発言して初めて会社に説明義務が生じることから、仮にオンライン出席株主の質問に関し、質問フォームにて投稿されたものすべてに会社が回答しなければならないとすると、リアル出席株主との平等な取扱いが図れない)、が早期に政府のガイド等で明らかにされるべきである。

なお、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会の延長としてのバーチャルオンリー型株主総会(役員・株主がすべてオンラインで出席する株主総会)に関しても、その有用性、許容性はあると考えられる。そこで、来年6月の株主総会に向け、ハイブリッド型バーチャル株主総会の延長として、まずは特例法等による対応によりバーチャルオンリー型を選択的に開催可能とするための措置を検討することが考えられる。

また、爾後の株主総会につき、会社法改正によるさらなる手当てを行う場合には、コロナ発生前からバーチャルオンリー型が導入されているアメリカのデラウェア州の方式を参考にしつつ、そもそも株主総会とは何をする機関なのかといった会議体としての株主総会の在り方(例えば、決議事項の見直し、株主提案権の要件、説明義務や動議権のあり方等)に関しても併せて再度検討を行う必要がある。

その上で、バーチャルオンリー型株主総会の実現については、(1) 株主総会への出席と事前の議決権行使の効力の関係、(2) 質問・動議の取扱い、(3) 通信障害があった場合の効果、について対処することで円滑な実施がなされることが必要であると考える。

<根拠法令等>
  • ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド
  • 株主総会運営に係るQ&A(経済産業省・法務省)
  • 定時株主総会の開催について(法務省)
  • 会社法第298条第1項第1号、第295条第1項、第304条、第314条
No. 66. 株主総会資料のWEBでのみなし提供の拡充の継続
<要望内容・要望理由>

2020年の定時株主総会においては、コロナの影響により計算書類等の作成・監査等に遅れが生じる可能性があることを考慮し、株主総会資料としての単体計算書類等に関してWEB開示によるみなし提供を行うことを認める時限的措置がなされた。

コロナの影響が来年以降にも継続するおそれがあることに加え、将来に向けて株主総会プロセスのDXを促進する必要性も考慮すれば、本年の時限的措置として認められたWEB開示によるみなし提供の拡充を恒久化すべきである。

<根拠法令等>
  • 会社法施行規則第133条の2
  • 会社計算規則第133条の2
  • 会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年5月15日法務省令第37号)附則第2条
No. 67. コロナ拡大下での株主総会基準日の柔軟な取り扱い
<要望内容・要望理由>

コロナ等の感染拡大の下では、3月末決算期の会社が、当初予定の6月に定時株主総会を開催することが困難であることが、今後も想定される(なお、ここでは分かりやすくするために3月末決算期の会社を想定しているが、本要望は決算期を限るものではない)。

2019年度決算企業では、株主総会を2回開く、いわゆる継続会で対応した会社もあったが、決算確定と役員選任等のタイミングがずれる等の問題がある。また、上場会社は、3月末時点の株主が、期末の剰余金配当を受領でき、定時株主総会の議決権を行使できるという前提により、市場における株式取引がなされ、株価も形成されているため、感染症拡大等により、期末の剰余金配当や定時株主総会の開催時期が7月以降になる場合も、3月末時点の株主に権利行使を認めるのが合理的である。

会社法124条2項では、「基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日か三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。」としている。しかし、感染症拡大はじめ極めてやむを得ない事情により、その権利の行使時期が基準日から3カ月経過後にならざるを得なくなったものは、「基準日から三箇月以内に行使するもの」に含まれると解される旨を、法の合理的な解釈であるとして通知・通達等によって明らかにすべきである。

上記により、3月末の配当、総会基準日はそのままに、株主その他関係者の健康や安全を確保しつつ、総会準備を進めることが可能となり、継続会対応や株主に不測の悪影響を与える総会基準日の変更措置を回避することができる。

<根拠法令等>
  • 会社法124条の2
No. 68. 電子帳簿保存法の抜本的な見直し
<要望内容・要望理由>

企業はバックオフィスの効率化を図る観点から、あらゆる書類の作成及び授受のデジタル化を推進している。しかし、国税関係帳簿書類の保存を電子的に行う場合、検索要件をはじめ書面での保存に比べ電子帳簿保存法の厳格な要件を満たすことができず、結局、紙での保存を強いられるケースもある。

感染症下における新しい生活様式を実践する妨げともなっていることから、この機会に見直すべきである。なお、取引のデジタル化をさらに推進するため、電子帳簿保存法の改正とあわせ、授受される数量が多い領収書について、電子的交付を担保するための法制上の措置を検討すべきである。

紙の書類を前提とするスキャナ保存についても、適正事務処理要件、タイムスタンプ要件等、無謬性を求められる電子帳簿保存法の各要件のため、社内整備等のソフト面、機器等のハード面の双方でハードルが高く、企業において導入が進んでいない。経済活動の全面的かつ即時のデジタル化が現実的ではないことを踏まえると、こちらについても要件の合理化が不可欠である。一定の基準により、内部統制が確立されていると見なすことができる法人については、個別の要件を免除するなどの措置も検討する必要がある。

電子帳簿保存法については、個別規定の修正に留まらない、抜本的な見直しを要望する。

<根拠法令等>
  • 電子帳簿保存法第4条1~3項、第10条等
  • 民法第486条
No. 69. 給与明細等、源泉徴収票の電子化に向けた本人同意の廃止
<要望内容・要望理由>

所得税法では、給与明細等、源泉徴収票を電磁的方法で従業員に交付する場合には、従業員一人ひとりの「同意」を必要としている。

しかし、コロナ拡大の下では、給与明細等を適切なタイミングで書面にて交付することは困難である。郵送対応はコストおよび作業工数増となるほか、担当者の出勤が必要でテレワークの阻害となる。一部の従業員が電子化に同意しない場合は、書面と電子明細が混在するため、さらに煩雑な作業となる。

そこで、業務の効率化やペーパレス化のみならず、感染症の拡大防止に向けて、本人同意を廃止し、給与明細等の電子化を促進するべきである。

<根拠法令等>
  • 所得税法226条4項、231条2項
No. 70. 健康保険証の配付における事業主経由の省略
<要望内容・要望理由>

健康保険証の交付については、施行規則において、保険者(健康保険組合・全国健康保険協会)はまず事業主に送付し、事業主から被保険者(従業員)に交付することが求められている。

しかし、簡易書留郵便等を活用して本人確認を行えば、保険者から被保険者に直接に届けることは可能である。また、健康保険証の交付の前提となる被保険者の資格の取得の届出は事業主から保険者に対して行われていることから、保険者から被保険者に健康保険証を交付した事実さえ保険者から事業主に情報共有されていれば、事業主として健康保険証の配布状況を一元的に把握することは十分に可能であり、健康保険証本体が事業主を経由する必然性は乏しい。事業主の人事等担当者は健康保険証送付のために出社を余儀なくされている場合があり、テレワークの推進を阻害しているのみならず、コロナ禍にあって交付遅延のリスクも生じている。

そこで、事業主と保険者の双方が合意した場合、保険者から被保険者に対して、健康保険証本体を直接交付することを認めるべきである。

<根拠法令等>
  • 健康保険法施行規則第47条

3.ヘルステックの飛躍的普及

No. 71. オンライン診療・服薬指導の恒久化・普及促進
<要望内容・要望理由>

今般、コロナ拡大防止策として、オンライン診療、オンライン服薬指導、薬剤の配送に関して、初診対面原則の時限的緩和および診療報酬上の取扱いの見直しが行われた。本対応の期間は、感染が収束するまでの間とし、原則として3か月ごとに、感染拡大の状況、実効性確保の観点等から検証・見直しを行うとされている。

ICTの発達により、オンラインの場合でも対面と同程度のコミュニケーションが可能になりつつあり、医師・薬剤師・患者間での十分な情報連携も可能になっている。また、コロナ禍において医療機関や薬局でオンライン診療、オンライン服薬指導に対する前向きな姿勢が見られ、国民に浸透しつつある状況にある。院内感染を含む感染防止、医療従事者、患者双方の安全確保の観点から、また将来の感染症対策のためにも、オンライン診療・服薬指導の果たす役割は大きい。

そこで、今次の緩和措置の事例を踏まえ、患者の安全性や医療の質的確保、財政への影響等に関する検証を行ったうえで、初診を含むオンライン診療・服薬指導の恒久化に取り組むべきである。また、医療機関側の設備の不足等からオンライン診療・服薬指導が実施できる医療機関の数は限られており、地域間の導入格差も大きいことから、政府においては、オンライン診療の更なる普及促進策を打ち出すべきである。

<根拠法令等>
  • オンライン診療の適切な実施に関する指針
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第9条の3
  • 新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について
No. 72. オンライン特定保健指導の活用拡大
<要望内容・要望理由>

特定健康診査(健康診断)の結果により、生活習慣病の発症リスクが高いと判断された40歳から74歳までの受診者に対し、保健師・管理栄養士等から、生活習慣の見直しについて特定保健指導を実施することが保険者に義務づけられている。同指導はポイント制になっており、同指導の完了には合計180ポイントが必要となる。

特定保健指導における面接の実施にあたっては、1対1の個別支援において情報通信技術による遠隔面接(オンライン面接)を認めているものの、その効果は電話支援と同等とみなされ、対面による個別支援に比べて得られるポイントが低い。具体的には、積極的支援における対面での個別支援が20~120ポイント、電話支援および情報通信技術を活用した面接が15~60ポイントとなっている。加えて、複数名に対して実施するグループ支援においては、オンライン面接に関するルールが存在しない。

特定保健指導の主な内容は、生活習慣の改善の必要性・利点に関する説明、食事・運動等の実践的な指導、グループワーク等であり、オンライン面接で十分に代替可能な内容となっている。自宅・職場等からオンラインで特定保健指導を受けることで、受診者の利便性向上による実施率の引き上げ、コロナ等の感染防止にも資することが期待される。

そこで、グループ支援におけるオンライン面接の導入を認めるとともに、オンライン面接で獲得可能なポイントについても、対面による面接に相当するとみなすべきである。

<根拠法令等>
  • 特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準第7条、第8条
  • 特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第3.1版)
No. 73. 薬局外からのオンライン服薬指導の実現
<要望内容・要望理由>

オンライン服薬指導が時限的措置として導入されたものの、薬剤師が服薬指導を行うことができるのは、その調剤を行った薬局内の場所とすることが義務付けられている。そのため、かかりつけ薬剤師が当該薬局に滞在していないテレワーク中や、薬局が閉まっている夜間・休日等においては、患者が指導を希望する適切なタイミングでオンライン服薬指導を行うことが困難となっている。

薬局(勤務先)外においても、薬剤師が服薬履歴や処方箋内容、服薬状況等を閲覧・管理し、服薬指導が行えるようになれば、薬剤師の感染拡大防止および労務環境の改善につながるとともに、患者にとっても薬剤師との相談・意見交換等が容易となることで、利便性や服薬アドヒアランス(患者による治療方針への積極的参加)の向上につながることが期待される。

そこで、調剤を行った薬局と同程度の通信環境およびセキュリティが確保されていることを前提として、当該薬局の薬剤師が、当該薬局外においてもオンラインで服薬指導を行うことができるよう、服薬指導場所の条件を緩和すべきである。

<根拠法令等>
  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(オンライン服薬指導関係)(薬生発0331第36号、2020年3月31日)
No. 74. 電磁的方法による遠隔での治験説明および同意取得の促進
<要望内容・要望理由>

医薬品の開発に不可欠な治験においては、その開発・実施段階に応じて数十名から最大数万名の規模で実施されている。被験者の同意については、「文書により適切な説明を行い、文書により同意を得なければならない」ことが規定されるとともに、説明文書の交付および同意文書への署名が求められている。

しかしながら、治験責任医師等と被験者となるべき者は、説明後に直ちに書式のやり取りが可能なよう、対面による説明および署名を行うことが通常となっており、スピード感のある医薬品の開発を阻害している。とりわけ今回のコロナによる緊急事態宣言のように都道府県境を越えた移動の自粛等が求められた際には、被験者の治験実施医療機関への訪問自体が困難となり、被験者の募集にも支障をきたしている。

そこで、非対面でも被験者の同意が速やかに得られるよう、電磁的方法による遠隔での治験説明および同意取得を可能とすべきである。具体的には、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」において、同意取得における「文書」については電磁的記録、「記名なつ印、または署名」については電磁的な署名あるいは電磁的な許諾を容認することを求める。併せて、「記録(同意文書、説明文書)の保管」に関しても、電磁的媒体による保管を認めるべきである。

上記の実施方法については、ガイダンス等で明確に周知する必要がある。

<根拠法令等>
  • 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令第41条、第50条~第53条
No. 75. 医療分野のビッグデータ構築に向けた匿名加工情報の加工基準明確化
<要望内容・要望理由>

個人のプライバシーに配慮しつつ医療データの利活用を進めるには、個人情報保護法の適用除外となる匿名加工情報の活用が鍵を握る。個人情報保護委員会は、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(匿名加工情報編)」を作成・公表して周知を図っているが、具体的にどの程度個人データを加工すれば「特定の個人を識別すること及びその作成に用いる個人情報を復元することができない」と言えるのか、加工要件に関する定義が未だ曖昧であることから、積極的なデータ利活用が進まず、医薬品の開発やAI医療診断の事業化研究のボトルネックとなっている。

医療分野において、匿名加工情報の善良用途の活用を促し、情報を集約してビッグデータを構築することは、AIアシストによる高度医療を普及し、医療ネットワークの生産性を向上するうえでも不可欠である。

そこで、医療診断・生体情報等について、これまでの事例をもとに関係者で技術的な検証を行い、匿名加工情報の加工基準を明確化すべきである。

<根拠法令等>
  • 個人情報の保護に関する法律36条
  • 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(匿名加工情報編)

〔別添1〕行政手続における書面・押印・対面原則の撤廃
(電子化要望リスト)

政府においては、この1年を集中改革期間として、あらゆる行政手続を見直し、原則として書面・押印・対面を不要とすることとしている。この取り組みを決して後戻りさせることなく、早期にデジタル・ガバメントを構築することは、わが国のDXの要である。

目指す生産性の向上、行政コストの削減を実現するには、単なる電子化ではなく、マイナンバーの徹底的な活用や行政機関同士の情報連携、センサリング・モニタリング技術の導入等も踏まえ、既存の手続や提出書類が必要か否かをゼロベースで検討することが欠かせない。また、地方自治体や国立大学等における手続についても、国として書式の統一や電子化を後押しすべきである。その際、自治体ごとに電子申請・届出システムを構築することが非効率となる手続については、国の主導により全国統一のシステムを構築し、自治体の利用を義務付ける方向が望ましい。

経団連では、企業が足許で直面している行政手続上の具体的な課題を踏まえ、以下に要望を取りまとめた。規制改革推進会議および所管省庁等において優先的に取り組むことを求める。

1. 全分野に関わる手続

  1. (1) あらゆる行政手続における押印の全廃
  2. (2) 入札手続の様式統一および電子化の加速(国・自治体・国立大学等)
  3. (3) 契約書・見積書・請求書の電子化
  4. (4) 直筆署名の電子署名化
  5. (5) 統計法に基づく統計調査の電子化および回答システムの利便性向上
    • 科学技術研究調査、経済構造実態調査、企業活動基本調査、日銀短観 等

2. 雇用・労働に関わる手続

  1. (1) 雇用保険手続の添付書類省略
    • 受給資格・育児休業の事実の確認書類
  2. (2) 健康保険組合における法定帳簿の電子的管理の容認
    • 歳入簿・歳出簿・現金出納帳 等
    • 月末・年度末の書面出力・通し番号の編綴の電子化容認
  3. (3) 健康保険組合が地方厚生局に対して行う申請の電子化
    • 規約変更届(事業所の名称変更・編入・削除)
  4. (4) e-Gov電子申請システムを通じた就業規則・36協定の提出円滑化
    • 「事業場単位」ではなく「法人単位」での締結可能化
    • (上記が難しい場合)労働者側の協定当事者が事業場ごとに異なる場合の本社一括届出方式の容認、就業規則に添付する協定当事者の意見書が同一の場合の一括申請容認、同一内容の36協定を締結している全事業所に対する協定内容の適用
  5. (5) 就労証明書の完全電子化

3. 都市・住宅・物流に関わる手続

  1. (1) 都市計画事業(市街地再開発事業等)における事業計画の縦覧電子化
  2. (2) 国・地方公共団体の土木工事の入札における設計業務の電子納品の容認
  3. (3) 宅地建物取引業法に基づく届出の電子化
    • 宅地建物取引業者名簿等同9条に基づく手続
    • 宅地建物取引業者事務所所在地等国土交通省令で定める場所
  4. (4) 確認申請、長期優良申請等の申請、中間完了検査申請・受領の電子化
  5. (5) 特定建設作業届の電子化、対面説明のオンライン化
  6. (6) 自動車登録・車庫証明・船舶登録の電子化
  7. (7) レンタカー事業運営における増車に係る運輸支局への届出電子化

4. 環境・エネルギーに関わる手続

  1. (1) 廃棄物処理法の手続における添付書類の省略
    • 産業廃棄物処理業の許可申請、産業廃棄物処理施設の設置申請等
    • 住民票・登記事項証明書等の添付省略
  2. (2) 産業廃棄物管理交付等状況報告書の様式統一の徹底・電子化
  3. (3) 有害物質使用特定施設を有する工場・事業場の形質変更届出の電子化
  4. (4) 高圧ガス保安法に基づく申請・届出の電子化
    • 「保安統括者」「保安統括者代理者」「保安係員」「冷凍保安責任者」等の選任・解任の届出
    • 保安検査・完成検査(収入証紙が必要、検査証は書面交付)
    • 設備に関する各種届出(「製造のための施設の位置及び付近の状況を示す図面」として「事業所全体平面図」を届出の都度提出)
    • 高圧ガス製造許可申請・特定高圧ガス消費届、高圧ガス製造施設等変更許可申請・特定高圧ガス消費施設等変更届(申請と届出を同時一体的に行う場合も手続ごとに定められた同一の添付書類を提出)
  5. (5) 省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業の申請電子化
    • 交付申請・実績報告・成果報告・財産処分申請や計画変更届
  6. (6) エネルギー使用合理化等事業者支援事業の申請電子化
    • 交付申請・実績報告・成果報告・財産処分申請や計画変更届
  7. (7) エネルギー供給構造高度化法に基づく申請・届出の電子化
  8. (8) 原子力規制委員会への届出・報告の電子化

5. 医療に関わる手続

  1. (1) 手指消毒液の薬監証明手続の電子化
  2. (2) 医薬品医療機器総合機構に対して行う申請・対面相談の電子化
    • 製造販売承認申請・製造販売認証申請・一部変更承認申請及び軽微変更届 等
  3. (3) 高度管理医療機器(AED等)に関する販売届出の電子化

6. 特許・登記・裁判等に関わる手続

  1. (1) 特許法に基づく手続の早期電子化
    • 特許権の存続期間の延長登録、登録名義人の表示変更登録手続
    • 特許印紙や収入印紙による手数料納付の廃止
  2. (2) 商業登記・変更手続の完全電子化
  3. (3) 不動産登記および動産・債権譲渡登記の電子化
  4. (4) 株式取得届出書提出手続の電子化
  5. (5) 民事訴訟等裁判手続の電子化の早期実現

7. 通信に関わる手続

  1. (1) 電波法に基づく届出・申請の許可状・免許状の電子保管の容認

8. 警察・消防に関わる手続

  1. (1) 消防法に基づく申請手続の電子化
    • 着工届出、設置届出、防火対象物使用開始届出、少量危険物貯蔵所届出、圧縮アセチレンガス等の貯蔵届出、一般取扱所変更申請
  2. (2) 警察署における道路使用許可申請手続の電子化
  3. (3) 警察に対する警備業に関する各種申請・届出書類の簡素化・電子化

9. 金融に関わる手続

  1. (1) 外国為替および外国貿易法に基づく投資ファンドの許可・届出・報告手続の電子化

10. 貿易に関わる手続

  1. (1) 特定原産地証明書の発給電子化
    • 各国との交渉加速
    • 指定発給機関と輸出先の税関当局との間で原産地証明に関する情報を電子的に共有する仕組みの構築

11. 農業に関わる手続

  1. (1) 農林水産省における登録申請手続への電子現金納付サービス導入
    • 農薬登録申請、肥料登録申請
  2. (2) 農林水産省における輸入米穀等の各種書類の電子化
    • 輸入麦買入委託契約書・特別売買契約書に関する証明書

12. その他行政窓口等における手続等

  1. (1) 戸籍謄本・登記簿謄本・住民票の写しの交付の電子化
  2. (2) 道路法・河川法に基づく占使用許可申請の電子化
  3. (3) 行政窓口での各種申請・証明書の受理に必要な委任状の電子化
  4. (4) 地方公共団体が発行する独身証明書の電子化

13. 資格の取得・更新に関する講座のオンライン化

  1. (1) 監理技術者講習の資格更新のe-ラーニング対応
  2. (2) 電気工事士の資格更新のe-ラーニング対応
  3. (3) 消防設備士の資格更新のe-ラーニング対応
  4. (4) 動力車操縦者(運転士)養成における学科講習のオンライン化
  5. (5) 建築士資格試験における学科試験および定期講習のオンライン化
  6. (6) 安全運転管理者講習(年一回の法定義務)のオンライン化
  7. (7) 外国人承認船員が日本籍船に乗船する際に必要な承認船員試験のオンライン化

〔別添2〕民間取引における書面・押印・対面原則の撤廃

1. 健康保険法に基づき事業主が健康保険組合に提出する各種書類の電子化

健康保険法では、事業主が健康保険組合に提出する育児休業・被扶養者・資格喪失等に係る届出について押印を求めており、撤廃による電子化を求める(健康保険法第48条、健康保険法施行規則第24条、第29条、第38条等)。

2. 住居等の賃貸契約書の電子交付の容認

不動産の賃貸契約時は契約の内容等について記載した書面を交付することが求められており、テレワークが阻害されていることから、電子的な交付を認めるべきである(宅地建物取引業第37条)。

3. 不動産売買時における重要事項説明オンライン化の恒久化

現在、社会実験として行われているITを活用した不動産売買時の重要事項説明について、法改正により恒久的に認めるべきである(宅地建物取引業法第35条)。

4. 建築士が行う重要事項説明のオンライン化の恒久化

建築士が重要事項説明を行う際、書面を交付して説明することが求められており、オンラインでの説明を認めるべきである(建築士法第24条の7)。

5. 都市計画事業等における公聴会のオンライン実施の容認

市街地再開発事業等の都市住宅事業を行う際に開催する公聴会について、対面では「密」な状態になるため、オンライン化を認めるべきである(都市計画法第16条等)。

6. 特定商取引法における特定継続的役務提供等契約書の交付の電子化

顧客に対して提供する特定継続的役務提供等契約書は、書面交付が義務付けられており、オンラインサービスの長期的な利用を阻害しているため、電子的な交付を認めるべきである(特定商取引に関する法律第42条)。

7. 親事業者が下請事業者に提供する下請法「3条書面」提供の原則電子化

下請法では「3条書面」は原則として書面での提出が求められており、電子的な提出は例外として認められている。テレワークの推進のため、書面提出を例外とすべきである(下請代金支払遅延等防止法第3条)。

8. 会計監査手続の電子化・リモート実施

「実地棚卸の立会」は監査人が現地に赴くことを求めており、リモート実施が可能となるよう改正すべきである(監査基準委員会報告書501、3項)。併せて「確認」「実査」の電子化・リモート実施を進めるべきである。

以上

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