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Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 総務省『電気通信事業ガバナンス検討会報告書(案)』に対する意見

2022年2月4
一般社団法人 日本経済団体連合会
デジタルエコノミー推進委員会企画部会

1.総論

Society 5.0の実現にむけ、ネットワーク利用者等の権利利益を保護しつつ、データの円滑な利活用を促進することが極めて重要である。国益に資するよう、時代の要請に応じて法体系のあり方を検討することは不可欠であり、事業者と利用者双方の十分な理解のもとで保護と利活用を進めるうえでは、分野を問わず一貫した法制度の整備が求められる。

総務省の電気通信事業ガバナンス検討会は、利用者保護や経済安全保障の向上にむけた電気通信事業ガバナンス強化の方策を提案している。電気通信事業法が対象とする事業の実態を踏まえ、規律の対象となる情報や内容が再考されたことは評価するが、これまで一般法である個人情報保護法の累次の見直しにおいて議論されてきた対象を、特定分野を規律する電気通信事業法の改正によって規律の対象とすることが適切かどうかの議論が不足していることは否めない。事業者による自主的な取組みを尊重することを前提としながら、各分野の特性に考慮しつつ、データの保護と利活用にむけた適切な法体系のあり方について検討することが求められる。

公平な競争環境を担保する観点から、域外適用の実効性や国際的な法制度との整合性をどのように確保するのか明らかにすることを含め、多様なステークホルダーの参加のもとに検討が進むことを期待する。

2.各論

報告書(案)に関する個別の気づき事項は以下のとおりである。

第3章 電気通信事業ガバナンスの在り方と実施すべき措置
3.2 実施すべき措置
3.2.1.1 適正な取扱いを行うべき情報
(P47)

  • 電気通信サービスの利用者に関する情報のうち、法規制すべきものの取扱いルールについては、すでに十分な議論のうえで個人情報保護法において規定されている。平成29年度改正個人情報保護法で「個人識別符号」が導入され、次いで令和2年改正個人情報保護法においてデータの保護・利活用への十分な配慮に基づき「個人関連情報」に関する規定が新設された際、さまざまなステークホルダーによる多角的な検討がなされてきたことを踏まえ、電気通信事業法において「利用者情報」を新たに規律することが適切かどうか、今後十分に議論することが適当である。

3.2.1.2 利用者情報の適正な取扱いの促進
(1)利用者情報の適正な取扱いに係る規律の対象
(P48)

  • 規律の対象となる事業者については、規律の目的を達成するうえで適切な、実態に即した判断基準を今後検討することが適当である。

(2)利用者情報の適正な取扱いに係る規律の具体的な在り方
(P49)

  • 利用者情報の「安全管理の方法」について、セキュリティや国民不安払拭の観点から適切な内容を今後十分に議論することが適当である。その際、注69で例示されている「利用者情報を保管する電気通信設備の所在国や当該情報を取扱う業務を委託した第三者の所在国を公表すること」が目的に照らして有効な取組みかどうか、また事業者においてリアルタイムで所在国を特定することが実際に可能かどうか、検証する必要がある。

3.2.1.3 利用者に関する情報の外部送信の際に講じるべき措置
(P54)

  • 令和2年改正個人情報保護法においては、データの保護・利活用への十分な配慮に基づき「個人関連情報」が新設され、真に個人への影響が懸念される場合に限定し、意味のある本人同意が規定された。改めて述べるまでもなく利用者情報の保護は重要であるが、まずは個人関連情報に関する令和2年改正個人情報保護法の施行と評価を行ったうえで、今後の方策について幅広いステークホルダーを交え議論することが適当である。

  • Cookie等に関連する技術の進化は日進月歩であり、これを十分踏まえた規制の在り方を検討するとともに、不断の見直しを行うことが適当である。

3.今後の進め方について

情報の漏えいや不適正な取扱い等の防止が重要であることは論を俟たないが、具体的方策を電気通信事業法の枠組みで措置することの是非はもとより、規律の具体的な内容・対象、個人情報保護法との関係について議論が尽くされていない。

検討の大半が限られたメンバーによる非公開の場でなされてきたことから、新たな規律の対象となり得る事業者等の理解が十分に深まっていないことも懸念材料である。

こうしたことを踏まえ、今後、電気通信事業法が規律対象とすべき範囲を含め、より良い法制度のあり方について、幅広いステークホルダーを交えた議論が必要である。総務省には、こうした議論が可能となる場の早急な設置を求めたい。経団連としても、経済界の立場から引き続き議論に貢献していく。

以上

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