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Policy(提言・報告書)  国際協力 戦略的なインフラシステムの海外展開に向けて -2021年度版-

2022年3月15
一般社団法人 日本経済団体連合会

Ⅰ.インフラシステム海外展開に関するこれまでの取組みと現下の課題

わが国企業は、質の高いインフラシステムの海外展開を通じて、ホスト国の人々の生活や経済活動を支える基盤の形成を支援することで課題の解決に協力し、もってホスト国の経済発展や地域の安定に貢献してきた。

今日、新型コロナウイルス感染症は未だ収束を見ておらず、加えて海外渡航に関する厳格な規制により、商談が進まず、新規案件・事業が減少している。また、気候変動への対応が待ったなしの課題となっており、カーボンニュートラルに向けて、よりスピード感のある取組みが求められる。

これらの地球規模課題や環境変化にも的確かつ柔軟に対応しながら、With/Postコロナ時代における経済回復の過程で拡大が予想されるインフラ需要を官民一体となって取り込み、わが国の成長につなげていくとともに、質の高いインフラを実装することによって、ホスト国が直面する社会課題の解決を従来以上に重視し、SDGsの実現に貢献する必要がある。

1.わが国政府の対応

わが国政府は、官民一体となったインフラシステムの海外展開を促進するため、2013年に「インフラシステム輸出戦略」を策定して以降、毎年改訂を重ねながら各種政策を推進してきた。2020年12月には、今後5年間を見据えた新戦略「インフラシステム海外展開戦略2025」を策定し、8つの具体的施策#1を示した。さらに2021年6月には、新戦略策定後の環境変化を踏まえ「ポストコロナを見据えた新戦略の着実な推進に向けた取組方針」を取りまとめ、カーボンニュートラルへの貢献、デジタル変革等への対応、展開地域の経済的繁栄・連結性向上、新型コロナ対応の集中的推進等、具体的施策の追補や分野別アクションプランの策定、行動KPIの多層化を図るなど着実に取組みを進めている。

新型コロナウイルス感染症に対しては、関係機関を通じた各種の支援を実行し、インフラシステムの海外展開に取り組む企業を資金面で支えてきた。また、新型コロナにより国境を越えた往来が制限される中、在外公館や関係機関の在外拠点を通じて現地企業の紹介や情報提供を積極的に行ってきた。

気候変動問題について、国際社会は、2021年11月、COP26(於:英国グラスゴー、約200カ国・地域が参加)において成果文書を採択し、パリ協定が掲げた「世界の気温上昇を産業革命前から1.5℃に抑えるため努力を追求する」との目標、所謂「1.5℃目標」を再確認するとともに、その実現に向けた努力を継続することを決意した。わが国政府は、2020年10月に、この1.5℃目標と整合的な2050年カーボンニュートラルを目標に掲げ、様々な取組み#2を推進している。こうした中、世界全体のカーボンニュートラルへの貢献の一環として、2021年5月に日本政府が公表した「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)」は、エネルギー需要が拡大するアジアにおいて、脱炭素への着実な移行を促すものとして期待が寄せられている。さらに、2021年6月に公表された「脱炭素インフライニシアティブ」では、二国間クレジット制度(JCM)を通じた環境インフラの海外展開を一層強力に促進することとしている。

また、諸外国における突然の政変等の有事の際には、在外公館を通じたきめ細かな情報提供や在留邦人の安全確保に向けた取組みなど、各種の支援が行われてきている。

2.経団連の取組み

経団連は、インフラシステムの海外展開の重要性に鑑み、同分野に取り組む会員企業・団体へのアンケートをもとに、毎年度提言を取りまとめ、政府・関係機関に対して働きかけを行ってきた。

新型コロナウイルス感染症については、昨年度の提言において、工期延長等をめぐる現地政府との交渉への支援の強化および緊急資金支援の拡充、さらには、安全を確保した上での段階的な人の往来の再開を求めた。

気候変動問題への対応については、各種提言#3を取りまとめ、政府への働きかけを行っているほか、経団連自らも、2020年6月に政府と連携して「チャレンジ・ゼロ」を立ち上げ、「脱炭素社会」の実現に向けた企業・団体のイノベーション創出の取組みを後押しし、その具体的な事例等を国内外に発信している。また、2021年11月には、「カーボンニュートラル行動計画」を新たに策定し、2050年カーボンニュートラルに向けた各業界のビジョンを示すとともに、わが国産業界の優れた技術の海外移転と製品・サービスの普及を通じ、諸外国・地域の温室効果ガス排出削減へ貢献している実態を紹介している。

2020年11月公表の提言「。新成長戦略」においては、「サステイナブルな資本主義」を提唱し、各種政策の推進において社会性の視座の重要性を訴えている。インフラシステムの海外展開にあたっても、同提言において、現地のニーズに即しつつ、社会課題の解決へ貢献することの重要性を説いており、それこそが、わが国が追求してきた質の高いインフラの真髄である。質の高いインフラシステムの海外展開を通じたSociety 5.0 for SDGsの追求、即ちデジタル技術の活用と社会課題の解決に向けた創造性・想像力の発揮は、「サステイナブルな資本主義」を国際的に実現しようとする取組みに他ならない。

3.多様な課題とリスク

インフラシステムの海外展開において、わが国企業は欧米諸国や新興国の企業との間でし烈な競争にさらされており、わが国の強みである「質の高いインフラ」は価格競争力の面で課題に直面しているのが現状であり、新型コロナウイルス感染症等により、ホスト国の財政状況が厳しさを増す中、案件形成は困難となっている。加えて、かつてわが国が技術優位性を有した分野についても、他国の技術力の向上により、強みを失ってしまっている部分もある。これらに伴い、インフラ事業のみならず、必要な資機材の調達や工事の実施等においても、業種・業態によって濃淡はあるものの、より一層の現地化が進んでいる部分もあることを踏まえた対応が必要である。

インフラシステムの海外展開にあたってのリスクは、新型コロナウイルス感染症、気候変動問題への対応に止まらない。地政学上および人権上のリスクが高まる中、サプライチェーンの見直し・強靭化の重要性は増しており、企業のインフラシステムの海外展開に必要な資機材の調達や、企業間の連携を行うにあたって十分な配慮が求められている。加えて、突然の政変や、長く不安定化している国・地域における治安の悪化、政権交代に伴う経済政策の激変など、多様なカントリーリスクをも考慮しなければならない。

インフラシステムのハード・ソフト両面における国際標準の獲得や、国際ルールの整備にわが国が積極的に関与していくことも重要になっている。デジタル技術活用は、多くのインフラ分野において、課題の発見や解決策の提供に効率性の向上等の面で重要な役割を担うことから、その一層の推進も課題である。加えて、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現、ひいてはルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けて、同盟国等との連携・協力関係の強化も重要である。

わが国企業は、以上の課題やリスクに対処しながらチャンスを果敢に捉え、ライフサイクルコストを意識しつつ、ホスト国の社会課題の解決に中長期に亘って協力し、質の高いインフラシステムの海外展開を積極的に推進する。

本提言では、そうした企業の取組みを後押しする観点から、特に新型コロナウイルス感染症への対応、グリーン戦略の推進、サプライチェーンの強靭化、カントリーリスクへの対応、国際標準化や国際ルール整備への関与、ファイナンス等の支援強化、官民一体となった案件の形成等を要望するものである。政府においては、こうした激変する環境の中にあって、わが国企業がインフラシステムの海外展開を安心、安全、公正に行えるよう、政府の新戦略の改訂においても反映されることを強く期待する。

Ⅱ.戦略的なインフラシステムの海外展開に向けた具体的要望

1.対日本政府・関係機関等

(1)新型コロナウイルス感染症への対応
① With/Postコロナ時代を見据えた戦略的取組みの実施

新型コロナウイルス感染症の発生から2年超が経過したが、未だ世界の多くの国・地域の社会経済活動は制約を受けている。インフラシステムの海外展開においても、プロジェクトの中断、遅延、資機材調達コストの上昇など様々な影響が生じている。

こうした中、政府においては、新戦略に基づき、個別案件の着実な実行を後押ししている。また、「インフラシステム海外展開戦略2025の推進に関する懇談会」を設置した上で、「ポストコロナを見据えた新戦略の着実な推進に向けた取組方針」(2021年6月)を公表し、環境変化を踏まえた新戦略の実行に取り組んでいる。関係省庁・機関も、コロナ禍で課題を抱えるわが国企業に寄り添い、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策#4を通じた資機材の供与や資金支援に加えて、各種の相談の受付、在外公館を通じた相手国政府への働きかけやウェビナーの活用によるビジネスマッチング支援など、きめ細かく対応しており高く評価している。今後も、資金面や在外公館等を通じた支援を引き続き行う必要がある。また、COVAX等の国際枠組みも活用したワクチン供与により、諸外国・地域において醸成されたわが国に対する信頼が、今後のインフラシステムの海外展開を推進する上で重要な礎となることが期待される。

② 人の往来の早期再開の実現

人の往来の早期再開は、インフラシステムの海外展開にあたっても、当面の最重要課題の一つである。ワクチン接種の進展に伴い、新型コロナの感染者数の抑制に一定の効果が見られる一方で、依然厳しい状況にある国・地域も多く、新たな変異株の発生による感染拡大もあって予断を許さない状況が続いている。そのため、わが国を含む各国・地域の入国規制等により、現地インフラプロジェクト・事業の再開や継続に必要な人員の確保は厳しい制約を受けている。

特にわが国においては、これまで厳格な水際措置により、帰国後の隔離期間が長期に亘り海外出張が困難となり、新規案件の組成等が困難となっていた。日本政府は段階的に水際対策の緩和を図っているが、さらなる善処を期待したい。また、供給の減少や物流の制限によって資機材の手当てが計画通りに進捗せず、輸送費を含む価格の高騰と相俟ってプロジェクト・事業の停滞をもたらしている。企業は創意工夫を重ね、オンラインを介した課題の解決を試みているものの、その効果には限界がある。With/Post時代においては、海外渡航用の新型コロナワクチン接種証明(ワクチンパスポート)の普及・活用の推進、トラベルバブル等による海外渡航制限の緩和等#5、国民の安全と経済活動の両立を目指した仕組みづくりが必要である。併せて、諸外国における、水際規制の緩和や、新型コロナにより遅延している行政手続きの改善などについて、わが国政府からの働きかけを強める必要がある。

(2)グリーン戦略の推進
① 国内対応とインフラシステムの海外展開との有機的な連動

気候変動というグローバルな課題の根本的な解決に向けて、カーボンニュートラルの実現は不可避の挑戦であり、グリーン戦略にあたっては、国内対応とインフラシステムの海外展開とを有機的に連動させていく必要がある。

とりわけ、わが国においてカーボンニュートラルを実現するために必要な、カーボンフリーのエネルギー源である水素・アンモニアのサプライチェーンを構築する上で、海外のインフラシステムを整備することが重要となる。

同時に、わが国企業が有する優れた技術・製品・サービス・システムを諸外国に普及させることは、諸外国の削減目標の達成に貢献するチャンスでもある。特に、経済成長や人口増加に伴い温室効果ガスの排出増加が予想される新興国等においては、そうした技術・製品・サービス・システムを展開することで温室効果ガスの大きな削減効果が見込まれる。

その際、各国におけるカーボンニュートラルに向けたロードマップの策定段階から、わが国政府が相手国政府と連携・協調することが望ましい#6。当該ロードマップに従って、わが国企業の技術・製品・サービス・システムの展開に繋げていくことで、ビジネス機会の拡大にもつながる。わが国政府は、CEFIA#7やAETI、「日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ 2.0」等に基づきASEANと連携し、加盟国における脱炭素化を移行期も含めて支援することを表明している。アフリカなどASEAN以外の国・地域についても、AETIを参考にしながら、当該国・地域の状況を踏まえた取組みを広げていくことが考えられる。

また、各国・地域のエネルギー・トランジションに貢献すると同時に、わが国のエネルギー安全保障にも資する観点から、水素・アンモニア、LNG等の脱炭素技術に対する政策金融等の支援の継続・強化が重要である。

② JCM(二国間クレジット)の活用

JCMはわが国企業が有する技術の活用を通じ、途上国の温室効果ガス削減に貢献する制度であると同時に、わが国自身の排出削減目標の達成にも寄与するなど大きな意義を持つ#8

JCMはインフラシステムの海外展開においても極めて重要であり、今後積極的な活用を促すためには、まずもってパートナー国・地域の拡大#9および予算の拡充・補助金の増額が求められる。また、補助の対象となる事業#10と設備#11の拡大、JCM事業化のためのFS支援の拡充、現状3年の支援期間の延長も検討すべきである。加えて、政府対応窓口の一本化・明確化など体制の整備・強化、手続きや資料の簡素化・迅速化#12、採択時期の柔軟化#13、モニタリング期間の短縮や効率化#14など制度の使いやすさをさらに追求する必要がある#15

相当調整が必要となるJCMでは、ホスト国側の理解を醸成していくことも重要である。クレジットの配分等に関する説明資料等の英訳版の作成と公表、在外公館による相手国側への働きかけや、JCM活用による相手国側メリットのリスト化等、JCM活用の意義や効果を整理し、これまで以上に積極的に訴求していくことが求められる#16

また、JCMは国による関与が強く、各種の補助なしに案件を組成することは極めて困難である。今後、制度や仕組みを見直すことで、民間主導の案件形成を促すことも考えられる#17。この点については、経済産業省と環境省において、民間によるJCM活用のための促進策に関する検討がなされており、民間企業の意見を踏まえた活用し易い制度、仕組みとなることを期待する。

さらに、JCM-REDD+#18は、ホスト国の森林減少・劣化の抑制に貢献することから、JCMと同様、パートナー国の拡大や、今後の展望、問い合わせ先の明確化など、使い易い仕組みとすることが求められる。

なお、カーボンプライシングの一類型であるクレジット取引は、CO2の削減に対してインセンティブを与えることが期待される。CO2を吸収する森林の保全によるクレジットの取引については、実効性を確保するため、吸収量等の算定基準の統一など、客観性・透明性のある仕組みづくりが重要である。

③ カーボンニュートラルに向けたイノベーション創出と社会実装の推進

革新的な脱炭素技術・製品等の開発や社会実装は、巨額の資金を必要とする。政府には、財政支援を伴うイノベーション創出や社会実装に向けた制度#19の拡充に加え、個々の技術分野で優位性を有する企業の連携を推進する仕組み(国家プロジェクト委託事業等)の整備が求められる。また、従来型を含む省エネルギー技術の改良や既存設備・インフラの更新等による取組み#20も有効であり、こうした活動への補助金・助成金制度の柔軟な適用が期待される。また、ホスト国の気候変動対策に繋がるカーボンニュートラル技術の海外実証事業#21の拡大・延長、石炭火力発電設備など既存施設の改修事業への支援の拡充、ファイナンス面の支援#22が求められる。なお、実証事業については、実証等を行った後、事業性や事業の予見可能性、リスクの棲み分けなどの議論や検証を官民連携で行うことが重要である。

ホスト国における理解醸成や環境整備に資する活動も鍵となる。例えば、環境教育や、CO2削減の取組みに対する設備補助金制度など、カーボンニュートラルへの取組みを後押しする施策が実現するよう、ホスト国に対して働きかけていくことが重要である。

④ サステイナブル・ファイナンスの促進

資金動員によって持続可能な社会経済を実現するサステイナブル・ファイナンスの重要性が高まっており、特に気候変動分野において莫大な資金需要が見込まれている#23

サステイナブル・ファイナンス市場の拡大と信頼性の確保のため、各地域・国において関連するルール作りが進行している。先行するEUは「サステイナブル」に該当するビジネスの分類基準である「タクソノミー」を定めるとともに、企業や金融機関に関連する情報開示を求める見通しである。これらのルールは域外のわが国企業にも適用されうるとともに、直接・間接にビジネス上の影響#24を伴う可能性がある。

わが国政府は、各国・地域における取組み状況やわが国への影響等を注視し、ルール形成に積極的に関与していくことが求められる。その際、国・地域毎の経済発展段階やエネルギー事情等によりサステイナブル社会やカーボンニュートラルに至る道筋が異なることを踏まえ、国・地域の実情にあったトランジション・ファイナンスの供与の促進等の環境整備を期待する#25

(3)サプライチェーンの強靭化

地政学上および人権上のリスクに十分配慮する必要性がますます高まっている状況にあって、各企業は、各国・地域の規制およびレピュテーションリスクを踏まえながら、リスク回避のためのデュー・デリジェンスや調査を実施し、原材料や資機材の調達等のためのサプライチェーンを構築していかなければならない。しかしながら、こうした調査等は、求められる範囲が必ずしも明確ではないことに加えて、費用や時間の面からも大きな負担となる。また、現地パートナーと協力してインフラ整備に取り組む場合、当該パートナーのサプライチェーンに地政学上および人権上問題を抱える企業が含まれる可能性を否定しきれない。

わが国政府には、企業が人権に関するデュー・デリジェンスを行う際のガイダンスや、人権上のリスクに関する情報提供など在外公館や政府関係機関等による海外進出企業支援の強化、わが国企業の意見を踏まえた企業の管理体制等に関するガイドラインの策定、先進的企業事例に関する情報共有の仕組みの構築が求められる。

加えて、他国の経済安全保障関連法令の域外適用によるわが国企業への影響を最小限に止めるよう努めることも求められる。

(4)国際標準化・国際ルール整備への関与

案件形成の初期段階から関与することを視野に、わが国が有する技術やシステムの国際標準化を進めることが重要である。鉄道分野については、鉄道技術標準化調査検討会が国の計画を策定し、それに基づく国際標準化戦略が推進されている。また、通信分野では、電波システムの海外展開に対する支援#26がなされており高く評価している。

わが国の強みを活かした国際標準化戦略を引き続き推進するとともに、そのための人材育成等を図る必要がある。また、技術的な強みを起点とした国際標準化のみならず、国際競争力のあるビジネスモデルを構築したうえで、国際標準を官民一体となって推進することが求められる。その際、既存インフラとの相互運用性など、相手国の実情に配慮したシステム規格である点に配慮が必要なことを念頭に置いて、国際標準化を進めることが重要である。

① 国内の体制整備

日本の技術基準・規格類を体系的に整備し、これらがホスト国の基準や規格に採用されるよう普及拡大に向けた取組みの推進が求められる。また、日本の技術基準・規格類の英訳推進と英訳内容の改善、ISO/IEC等の国際標準へ日本の技術が反映される取組みの加速、認証機関や業界団体の更なる拡充が必要である。

② 資金・人材面に関する支援

わが国企業が実績のある高品質なシステムを輸出する際、パートナー企業の中に発注者が求める国際規格等に対応できない日本のメーカー・事業者が含まれていると、対応が困難になる場合がある。国際規格等への対応には相当な初期費用と労力がかかるため、資金面での支援スキームの創設が求められる。また、国際標準化への関与には民間企業における人的資源の「量」の確保も重要であり、政府による支援や、国際標準化を一体的かつ着実に進めるための政府の体制整備に継続して取り組む必要がある。さらに、関係企業に対して研修機会を提供し、国際標準に関する認識と理解を深める活動も重要である。

③ DXへの対応

わが国企業によるインフラシステムの海外展開にあたり、データを多国間に跨って共有・利活用することが不可欠である。そのためには、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT:Data Free Flow with Trust)の具体化とともに、欧米等主要国との規制の相互運用性の確保が求められる。また、こうしたデータの共有・利活用に関するルールづくりの多国間交渉において日本政府が主導的役割を果たすことや、日本国内において同ルールへ迅速に準拠するための関係省庁の協力が求められる。

④ 公正な競争環境の確保と新たな認証制度の策定

OECD公的輸出信用アレンジメントに基づく輸出信用の融資条件を、より競争力あるものとするための諸施策の見直し#27、公平な競争環境の確保を目的に、中国を含む新興国の参加を促す働きかけが引き続き求められる#28

また、ホスト国の課題を解決するためには、「量」のみならず「質」を伴うインフラシステムの展開が重要である。国際的にも、2019年6月のG20大阪サミットにおいて、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」#29が首脳間で合意されている。これに関連し、日米豪が提唱した新たな認証制度「ブルードットネットワーク(BDN)」は、質の高いインフラシステムを海外に展開するにあたって重要なツールとなりうる。技術やシステムを輸出する企業とホスト国にとって使い易い柔軟性のある認証制度となるよう、民間の意見を取り入れながら検討がなされることを期待する。

(5)ファイナンス等の支援強化
① ODA(円借款、無償資金協力、技術協力)

(ア)新型コロナ対応

新型コロナにより各国・地域の財政状況が悪化する中、国際協力機構(JICA)の「新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援借款」による途上国への財政支援が行われたことは、インフラ展開を継続する上で大きな支えとなっている。また、既存のプロジェクトが停滞を余儀なくされる困難な状況にあっても、JICAによる新規案件の公示・入札・契約などは、一部に遅延等はあるものの進捗している。このように、既存案件への各種の支援策および新規ODAへの着実な取組みが実施されていることを高く評価する。

他方、工事の遅延や中断等による影響は未だ解決を見ていない。新型コロナ感染症拡大に伴うフォースマジュール(不可抗力条項)協議への柔軟な対応やホスト国との調整・交渉等に対する支援がなされているものの、状況の改善に向けた更なる後押しが必要である。また、邦人の一時退避や渡航規制が生じた関係から新規案件の形成・推進が十分に行われなかった面もある。渡航再開を視野に官民が連携し、十分な入札準備期間の確保等を図った上で、新規案件の積極的な形成・推進が望まれる。

コロナ禍の影響による現地調査不足を補うため、コンサルタントによる追加調査の実施や現地渡航用の追加費用への対応#30の継続、ホスト国等の施主による「工事一時中止計画書」の承認および経費精算手続きの迅速化に向けた、JICAによる側面支援強化、鋼材等の資機材価格#31や輸送費の高騰など急激なコスト増に対応した事業予算の見直しと適切な事業予算確保の徹底、それらに資する協力準備調査の拡充#32、サプライヤーのリスク軽減#33が必要である。

また、コロナ禍でも海外における円借款や無償資金協力等の各種案件を円滑に実施できるよう、対面での協議や交渉の次善策として、ICT環境を構築して現地における案件の進捗管理等を行う取組みを求めたい。ICT環境の構築に必要な現地政府との様々な調整においては、JICAの海外拠点や在外公館からの働きかけ等側面支援が重要となる。

既存案件で発生している諸課題の解決および新規ODAの推進に向けて、わが国産業の競争力確保、国際協調、社会課題解決等の要素も考慮しつつ、引き続き柔軟な判断、支援を求めたい#34

(イ)各種支援策の拡充および手続きの迅速化

インフラシステムの海外展開を推進するためには、ODAの各種ファイナンス支援の一層の強化、制度・運用両面の改善が欠かせない。円借款の本邦技術活用条件(STEP)については、わが国企業が参画し易い施策が継続された結果、実際に案件が拡大しており、評価できる。他方、一部では、価格乖離等により入札不調が生じており、引き続き改善に取り組むよう要望する。また、業界によっては、日本企業の事業ビジネスの現地シフトが進んでいることに鑑み、ODAスキーム(無償資金協力)の見直しの検討#35に期待する声がある。また、ODAにおける事前調査・設計精度の向上と適切な事業予算・入札期間・工期等の確保が重要である。効率的な計画・設計、適切な事業予算の確保を目的に案件の初期段階から施工者が関与する(Early Contractor Involvement(ECI))方式の具体化を求めたい。

現地政府の要請から契約に至るまで長い期間を要するODA案件の実施にあたっては、これまで以上にスピード感をもって取り組むことが求められる。特にデジタル・ICT案件においては、スピードこそ案件獲得の最大の鍵であり、円借款による案件形成から契約に至るまでの時間短縮が重要である。ホスト国政府や事業者の理解を円滑に得るためにも、JICAによる審査や日本政府による供与に向けた検討の迅速化を含めた円借款事業の手続きと書類の簡素化、現地における関係者との英語等ワーキングランゲージによるコミュニケーションの一層の強化が必要である。

さらに、質の高いインフラを維持するためには、入札条件に長期的な視点に立った評価項目#36を盛り込むなど、他国との差別化を図ることや、JICA調達ガイドラインの遵守をホスト国に徹底してもらうことが求められる。部品の交換やアップグレードを含むアフターサービスもODAの全てのスキームの対象とすることが望ましい。加えて、運営・維持管理(O&M)や人材育成などソフト面での支援に関連する案件形成、製品・技術動向を踏まえた円借款事業等における調達技術仕様の適時見直し#37を検討すべきである。

また、JICAのSDGsビジネス支援事業は、新興国の社会課題解決や経済・産業振興に資する事業開発を両国の官民連携で推進する有効なスキームであることから、制度の拡充等#38を期待したい。

十分な情報を入手してリスクに対処するとともに、資金を効率良く活用し、より多くの案件を実行するため、国際開発金融機関(MDBs)#39、輸出信用機関、多様な民間金融機関との連携も有効である。日本政府は、国際開発金融機関(MDBs)や各種の国際的なファイナンスに関する枠組みに資金拠出を行っており、日本企業による活用を促進する取組みが必要である。さらに、ODAの積極的な活用を通じた民間リスクの低減を図るべく、例えば上下分離型案件(ハイブリッドPPP)やJICA関与型の事業運営権付無償資金協力の拡大、JICAのリインバース方式の改善#40が求められる。

(ウ)有事への対応

突然の政変が発生した国#41において、契約済みのODA事業への対処方針が示され、その後も必要な支援が継続されていることを多とする。こうした非常事態の際には、事業の予見可能性を確保する観点から、現地情勢の変化を捉えた迅速かつ柔軟な政府のODA方針の策定と公表、実施企業への適時適切な情報の開示と共有が求められる。また、現地で進捗中のプロジェクトの実施企業の多くは、安全確保に加えて、追加費用の発生等を巡る契約上の問題等に直面している。これらに関する交渉は時間を要することから、発生している問題の解決に向けて、また事業の継続が困難となる場合には強力な支援が得られるよう、日本政府との連携・協力が不可欠である。

② JICA海外投融資

JICAの海外投融資は、開発途上地域において民間企業等が実施する開発事業を出融資を通じて支援する手段として、有効なファイナンスツールである。コロナ禍においても出融資は着実に継続されており高く評価している。

本機能を通じたインフラシステムの海外展開をさらに強化するため、体制#42やファイナンス#43の拡充が求められる。また、PPPインフラ案件への積極的な供与、現地政府・自治体関係機関との一層の対話促進、審査プロセスの迅速化、ODA卒業移行国や卒業間もない国等を含めた対象国の拡大、積極的なリスクテイク、ブラウンフィールド案件への取組み推進等に期待する。

JBIC先議については、経団連の要望を受けて、関係省庁・機関が運用の見直し等に係る具体的な方策について検討を行った結果、状況は改善している。関係者の努力を多とするとともに、今後は運用状況のモニタリングの継続や、更なる利便性向上に期待する。

③ JBIC投融資

新型コロナにより、プロジェクトの遅延や中断等が発生する中、国際協力銀行(JBIC)の「新型コロナ危機対応緊急ウインドウ(成長投資ファシリティ)」の延長(2021年末まで)、「ポストコロナ成長ファシリティ」の創設などを通じて適時適切な対応がなされてきた。また、現地通貨建て支援の取組み、エネルギー・トランジション分野の案件に関する金融支援に対して、前向きな対応が行われている点を高く評価している。

新型コロナの影響は依然継続しており、プロジェクト・案件の進捗の正常化には相当の時間を要することから、プロジェクトの実情に即したJBIC融資の条件に関する柔軟な対応、ポストコロナ成長ファシリティ(脱炭素推進ウインドウおよびサプライチェーン強靭化ウインドウ)の継続を期待する。

また、インフラシステムの海外展開に関するリスク軽減を図るため、融資メニューの拡充や条件の緩和等が必要である。具体的には、ソフトカレンシー建て融資の拡大、固定金利での融資、本邦企業が下請となる場合の本邦企業取扱品目に対するバイヤーズクレジット#44の適用やファイナンス期間中の持分譲渡制限に関する条件の緩和、融資対象の柔軟化#45を図るべきである。新たな分野におけるわが国企業のインフラシステムの展開を促進する観点から、JBICの特別業務を活用した、グリーン分野等における支援#46の拡大や積極的なリスクテイクと対象業務の拡大#47も重要である。さらに、大規模案件に対応するため、国際開発金融機関(MDBs)や他国の輸出信用機関(ECA)との連携、協調融資の拡大を促進することも期待される。

④ NEXI

新型コロナの影響により、プロジェクトの中断、延期などが生じる中、日本貿易保険(NEXI)の「海外事業資金貸付保険による海外日系企業運転資金支援」の延長(2022年3月まで)がなされたことを高く評価する。また、昨年度の提言において、新型コロナウイルス感染症等をカバーする貿易保険の拡充を求めていたところ、2022年2月に閣議決定され、第208回通常国会に提出される予定の「貿易保険法の一部を改正する法律案」では、プラント建設工事の中断等による追加費用(保険契約の締結後新たに負担すべきこととなった費用)を対象とする貿易保険の塡補事由が、感染症を含む非常リスクに拡大されている。今後、法案が早期に成立するよう期待する。さらに、NEXIのLEADイニシアティブに基づく積極的な支援、海外投資保険を活用したプロジェクトリスクの低減、エネルギー・トランジション分野の案件への前向きな支援を評価する。

新型コロナの影響は依然続いており、世界的なコンテナ・船舶不足による機材倉庫保管料等の追加費用がNEXI貿易保険の補償対象となるよう見直しが必要である。インフラシステムの更なる海外展開を促進するためには、海外投資保険の契約違反特約の要件緩和#48などの保険機能の強化#49、貿易保険の付保対象の拡大#50や信用リスクに関わる条件の改善#51、グリーン分野における支援ツールの拡大#52、新商品の提供#53に加えて、わが国企業の海外現地法人の対外取引きへのより一層の支援が期待される。また、LEADイニシアティブ#54のメリットを積極的に訴求する必要がある#55

⑤ その他政府機関

海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)が、ICT関連の通信インフラ等のハードアセット事業に加え、ソフトウェアを保有・運営する事業や継続的に通信を行うIoT/XaaS事業にも投資領域を拡大している点を評価する。今後も、わが国企業によるICTの海外展開促進に際し、関係機関とも連携し、Society 5.0の実現やSDGsの達成に資する事業への支援を期待する。

海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)については、支援対象を実証実験にも拡大するべきである。また、ICT関連の知見と経験の集積、幅広いICT案件を取り扱うことによる適応力ならびに相手国政府および顧客企業に対する交渉力の更なる強化が重要である。ICTに係る支援業務に関してJICTとの間で重複感があり、ICT案件の相談機能の一本化等の改善を検討すべきである。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)については、カーボンニュートラルに向けて、海外地熱案件開発への支援の創設が必要である。また 、将来的な本邦向けエネルギー源確保のため、水素・アンモニア案件の立ち上げ期における事業性向上の観点から、新たな支援制度の創設が求められる。加えて、日本の低炭素関連技術の広報・情報発信の継続を期待する。

(6)官民一体となった案件の形成
① 司令塔機能の強化

これまで、政府の力強いリーダーシップの下、経協インフラ戦略会議が司令塔となって官民一体でインフラシステムの海外展開が進められてきている。分野別のアクションプランの策定などKPIの達成に向けて取り組んでおり、今後もアクションプランのフォローアップに止まらず、新戦略のPDCAサイクルを回すことが重要である。例えば、政府・関係機関が提供する各種補助事業をはじめ様々な支援メニューの実際の利用状況を評価し、各種施策の実効性を検証して必要な改善に繋げるべきである。また、海外インフラ案件の組成・受注拡大に向けて、省庁の縦割りを解消し、各機能を統合した取組みが必要である。特に、新規事業領域の案件支援促進に向けて、省庁間の連携促進が求められる。加えて、支援メニューや窓口等の情報を一覧化して確認・申請できる仕組みの構築を引き続き要望する。

さらに、経協インフラ戦略会議の決定事項や方針が民間企業の現場レベルにも訴求されるよう、情報発信の更なる強化が必要である。内閣府の関連部局と民間企業の事務レベルでの意見交換や情報共有の機会を増やすことも求められる。

新戦略においては、地域別取組み方針が定められた。今後、行動計画やロードマップの作成および各国・地域の抱えるリスク、特に他国との政治的な緊張に関する客観的な評価・情報提供のサポートに期待する。

② トップセールスおよび在外公館等による支援の強化

コロナ禍において、トップセールスが困難な状況が続いているが、様々な機会を捉え、わが国企業の技術・システムを紹介し、案件形成に繋げていくことが重要である。

海外のインフラ受注において、他国の競合企業と比較して優れた提案を行うためには、調達情報の早期入手と提案内容の十分な検討が鍵となる。そこで、在外公館や政府機関の現地事務所を通じて収集した情報の中で、民間企業に提供可能なものをタイムリーに共有することが重要になる。各国大使館に常駐するアタッシェの拡充、相手国政府の要請に基づき各国政府機関で活躍するJICA専門家の増員も期待される。また、日本政府・関係機関、日本企業、相手国政府機関等が参画する協議の場が求められる。さらに、事業発注者や国際開発金融機関(MDBs)と協調した案件形成の初期段階からの協議や、ホスト国に受け入れられる、質が高く適切な本邦技術の具体的案件への活用に向けた官民協議の拡充を通じて、具体的プロジェクト・事業を推進していく必要がある。

突然の政変等の有事への対応として、在外公館を通じたきめ細かな情報提供や在留邦人の安全確保に向けた取組みなど、各種の支援が行われてきた。今後も、在外公館等を通じた迅速かつ正確な最新情報の提供のほか、人道支援などによる現地での日本のプレゼンスの維持・強化、国際連携を通じた民主化移行に向けた働きかけと後押し、ビジネス環境の改善に引き続き取り組むことが強く求められる。

③ PPP促進に向けた支援強化

拡大基調にある世界のインフラ需要に対応するため、PPPは有効なツールであり、一層の活用を促すべく支援策の強化が求められる。具体的には、制度の改善、例えば、対象国を限定しない個別PPP案件向けのFS事業支援#56が必要である。また、JICAの協力準備調査(海外投融資)においては、日本企業による申請および出資を求められている。日本企業の出資を必須としないことや、申請者の要件を緩和して海外企業等も認める等、制度の柔軟な見直しに期待する。さらに、PPP事業に関するホスト国の需要動向、制度変更、為替動向、政治情勢等各種のリスクに対応する仕組みの整備、実効的な紛争解決メカニズムの導入、入札基準の公開による透明性の確保等が重要である。そのため、PPP関連のホスト国の法制度#57の枠組み作りを支援する専門家の派遣など技術協力や、PPP案件等プロジェクトの組成・実施・管理に不慣れなホスト国政府・関係機関を対象とする法令・環境整備や人材育成等に関わるキャパシティ・ビルディングが求められる。

④ O&Mに関する支援等

長期にわたり使用されるインフラシステムは、適切な運営・維持管理(O&M)を行うことで質の高い状態での継続利用が可能となることから、技術協力等ODAも活用した支援の継続が求められる。また、O&Mは、ハード・ソフト両面からの一体的な案件形成により、わが国企業の中長期的な収益の確保にも繋がる。

その際、O&M事業における需要リスクの共有#58に向けて、相手国政府への働きかけも必要となる。また、O&M等の新たなビジネスモデル導入に向けたFS事業#59では、対象国の拡大に向けた検討が期待される。わが国のインフラシステムの競争力を一層強化するため、相手国にとって有益なハードのみならず、決済システムや人材育成などソフトとのパッケージで受注に繋げることが重要である。

⑤ 第三国市場連携等の推進

複数国・地域を横断するプロジェクトや地球規模課題への対応等では、他国との連携が重要である。特に、わが国企業の優れた技術や製品・サービス・システムを活用し、現地企業と連携しながら価値を創造するCORE JAPAN型プロジェクトの推進が必要である。第三国市場連携では、「日米クリーンエネルギーパートナーシップ」「日中第三国市場協力フォーラム」「アジア・アフリカ地域における日印ビジネス協力プラットフォーム」「持続可能な連結性および質の高いインフラに関する日・EUパートナーシップ」等#60に基づく案件形成が期待される。また、二国間・多国間のエネルギー政策対話等を積極的に実施していくべきである。

2.ホスト国側の課題の改善に向けた日本政府・関係機関への要望

(1)ホスト国側との川上段階からの連携強化

ホスト国のマスタープラン策定では、欧米の政府・企業が先行して関与するケースが多い。日本政府からホスト国側に対し、官民一体のマスタープラン策定支援#61に関する提案を強化する必要がある。具体的には、環境政策や産業政策等が挙げられる。また、サステイナブルな社会インフラの実現・運用では、デジタル技術やデータ活用の重要性が一層高まるため、政府間対話を通じたインフラシステムに関わるデータのオープン化等の働きかけが求められる。

(2)新型コロナウイルス感染症対策の支援

新型コロナウイルス感染症は、変異株の発生もあり未だ多くの国・地域に影響を与えている。ホスト国において、社会経済活動に関する厳しい制約が課される場合も多く、ワクチン接種が進んでいないホスト国へのワクチン提供等、新型コロナの感染対策強化に向けた支援が必要である。また、コロナ禍により、各国の財政状況は厳しい状況が続いており、ホスト国においては、円借款事業に関しコロナ関連費用の精算の手続きが滞っている事例もある。予算上の制約が厳しい場合でも、国際的な枠組みにおける議論を通じて、ローンの返済猶予や金利減免等の措置を実施し、プロジェクトが円滑に進捗できるような仕組みを構築する必要がある。

(3)各種トラブル対処への支援

インフラシステムの海外展開においては、ホスト国政府の一方的要求による合意事項の不履行や契約改定等が発生し、プロジェクトの推進や事業の運営に深刻な影響を及ぼす場合がある。特に、税金問題、ホスト国政府負担事項の不履行問題は従来から多く発生しており、結果として民間事業者が不利益を被るケースも散見される。そこで、案件組成段階からの税務面での事前調査の実施#62に加えて、ODAに関連する免税ルールの明確化や手続きの簡素化が必要である。免税措置を履行しないホスト国に対しては、在外公館・JICAから契約条項の遵守を継続して強く促すとともに、改善が見られない場合には、実効的な対応策を検討すべきである。また、現地政府負担事項の不履行問題に対しては、ホスト国による契約の履行徹底に向けた取組み#63が求められる。

さらに、将来のインフラ受注の拡大、海外展開の促進に向けて、わが国政府には在外公館等を窓口に、契約遵守に向けたホスト国政府への積極的かつ粘り強い働きかけ、現地政府・国営企業等による過度なローカルコンテンツ要求への対応など、わが国企業へのより一層の支援を期待する。

(4)ビジネス環境の改善(法整備等)

インフラシステムの海外展開を進める上で、ホスト国におけるビジネス環境の改善が重要である。特に、法制度の整備およびその適切な運用は、ビジネスの予見可能性を確保する上で欠かせない。わが国政府には引き続き、投資協定や租税条約等の締結を通じたホスト国の法制度整備への働きかけや支援が求められる。

また、ホスト国による外資規制や現地の人材雇用義務等の規制緩和や、手続きの透明性確保・簡略化、資金調達に関する働きかけ#64も重要である。

(5)人材育成の強化

工期短縮・環境面での配慮等、わが国のインフラシステムの質の高さをホスト国が理解し、適正に評価、選定してライフサイクルを全うできるよう運営・維持するためには、ホスト国における人材育成が欠かせない。ホスト国の政府高官や若手官僚ならびに技術者育成のための研修生等の人材招聘の戦略的推進、専門家の現地派遣による政府機関のキャパシティ・ビルディング、経済産業省・海外産業人材育成協会(AOTS)、JICAやJOGMEC等による人材招聘・育成の強化への期待は大きい。

Ⅲ.With/Postコロナ時代を見据え今後一層注力すべき分野

1.グリーン

わが国企業は、優れた脱炭素技術や製品・サービス・システムを有している。経済成長や人口増加に伴う温室効果ガスの排出増加が予想される新興国等においては、そうした技術に基づく製品の現地生産の可能性も視野に、サービスやシステムを含めて当該国・地域や周辺国に展開することにより温室効果ガスの大きな削減効果が見込まれる。その際、エネルギーの効率的な配分・消費、窒素酸化物等の削減に向けて、DXを組み合わせた取組みも有効である#65

インフラシステムの海外展開においてグリーン戦略を進める上で、取組みを強化すべき具体的な分野として、次のようなものが挙げられる。

(1)電力・ユーティリティ

電力分野では、再生可能エネルギー(陸上・洋上の風力、太陽光#66、水力#67、地熱、あるいはこれらの組み合わせ)や、アンモニア・水素等の混焼による火力発電の脱炭素化、可燃廃棄物の焼却による高効率発電、食品廃棄物のメタン発酵などによるバイオマス発電が考えられる。また、電力をより効率的に配電するため、電力系統マスタープランの策定や送電系統の運用改善等のコンサルティングサービスによる政府・企業に対する支援が必要である。さらに、配電網と給電システム#68、水素関連のサプライチェーン構築#69、余剰再生可能電力等による最適化されたエネルギー需給システム#70の普及促進も有効である。

火力発電の更なる効率性向上のため、わが国の高効率石炭火力の技術の活用#71や既存石炭火力発電におけるアンモニア混焼に加えて、水素社会も見据えたガス火力発電の活用#72など、本邦技術に基づく現実的なエネルギー・トランジションの達成を官民一体で後押しすることが考えられる#73

今後、経済成長や人口増加に伴い、アジア、中東・アフリカなどの地域では、電力需要の堅調な伸びが見込まれる。また、世界的に上下水道システムの拡充・更新、造水から廃水・下水処理に至る効率的な水関連システムの整備も必要となることから、電力・ユーティリティ分野における案件形成が期待される。

(2)発生したCO2の処理

発生したCO2を分離・回収・貯留・利用する技術として、CCS#74、CCUS#75やカーボンリサイクル技術#76の展開が期待される。特に、経済的理由等により、当面の移行期間において、石炭火力を活用せざるをえないホスト国や天然ガス採掘に伴いCO2分離を行う国に対して、CCSやCCUSを設置するための包括的な支援が必要である。

CCUSについては、技術開発を進めながら、コスト低減と恒久的利用を促進していくことが課題となっている。また、CO2の分離・回収に関する技術は確立されているものの、貯留地の確保と運用等の課題が残されている。一国に止まらず、アジア地域大でCO2分離・回収・貯留・利用を行う「アジアCCUSネットワーク#77」の推進が期待される。

(3)鉄鋼

わが国鉄鋼業は、操業経験を通じて先進的な省エネルギー技術(BAT、Best Available Technologies)を蓄積してきており、これらを他国においても導入することで、温室効果ガスの排出削減に貢献できる。国・地域によっては、旧式の設備による鉄鋼生産が行われており、日本企業の経験と知見を活かした改善の余地は大きい。また、水素還元製鉄や天然ガスを利用した直接還元製鉄設備の高効率化等を通じて、更なる温室効果ガス削減を図ることも考えられる。

(4)運輸・モビリティ

運輸分野においては、関連インフラの整備を含めた自動車の低炭素化に加えて、MaaS推進によるエネルギー効率の高い輸送モードへの転換や、他の輸送モードに比べてCO2排出量が少ない鉄道インフラの海外展開が考えられる。鉄道インフラでは、インドに加えて、連結性の観点からASEAN諸国に可能性があり、都市交通システムを含め検討に値する。

バッテリー搭載ハイブリッド船や、水素・アンモニアといったクリーン燃料を使用した新しい船舶や四輪車・二輪車の展開によって、脱炭素化を促進することも有効である。これらの技術・製品は、人口の多い中国、インドや東南アジア島嶼部等、多くの国・地域で展開が可能である。

(5)住宅・建築物

住宅分野では、ZEH・ZEB#78技術や、空調用の化石燃料由来エネルギーの消費量削減のための各種断熱材#79の活用が考えられる。例えば、冬季の冷え込みが厳しい国・地域などで需要を掘り起こし、技術や製品を展開していくことが想定される。

(6)サプライチェーン

サプライチェーン全体の効率化によって、脱炭素化を図ることも可能である。例えば、日本企業の集積が厚いASEANやインド等で、エレクトロニクス、自動車等、国境を越えてサプライチェーンを展開する製造業が、中間財・輸送・製造工程を含むサプライチェーン全体を見直し、必要に応じて再構築することによって、ロジスティクス戦略の策定やビジネスモデル変革#80と併せてCO2排出量削減を図ることが可能である。

2.デジタル

各国・地域における課題解決にあたり、AI、IoT、5G、生体認証、アプリケーション等、ハード・ソフト両面のデジタル技術の活用が期待される。インフラシステムにおいても、セキュリティー、グリーンエネルギー、上下水道#81、交通・モビリティ、医療・健康、教育、農業、貿易・通関・港湾などで、デジタル技術を活用したソリューションを提供#82していくことが考えられる。その際、重要となるのは、情報の信頼性の担保であり、今後策定されるデータ共有・利活用に関連する国際ルールに則った運用がなされる必要がある。また、同ルールの策定・導入へ向けて、企業・政府による多国間の緊密な連携が鍵となる。

さらに、日本の技術、製品、サービスの普及支援の充実を図るべく、国際会議や産官学連携の場等を活用して最新の状況につき説明・紹介・展示するような政府間の取組みも期待される。

3.生活・社会基盤インフラ

道路、トンネル、橋梁、港湾設備や空港などの基幹インフラ、廃棄物処理設備、上下水道処理設備などの環境インフラ、洪水・塩害などへの適応・防災対策の整備支援が重要である。特に、わが国では、地震、津波、台風、洪水など多くの自然災害が発生しており、それらを通じて培った経験や知見を活かした関連インフラの整備等を通じて、ホスト国の自然災害に対するレジリエンスの強化に貢献することが可能である。

この分野では、運営・維持管理(O&M)も重要になる。これまでに日本企業が納入した設備・システムの保守、リハビリテーションやアップグレードを対象とするプロジェクトは大きな可能性を有している。

4.スマートシティを含む都市開発(まちづくり)

都市の価値を中長期的に維持し更なる成長を追求する上で、スマートシティの建設は重要である。スマートシティは、都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用してマネジメント(計画、整備、管理・運営等)を行い、全体最適化を図る持続可能な都市であり、住民の生活の利便性・快適性を実現するサービスの提供と併せて今後の発展が期待される。

わが国企業は、これまでの知識や経験を通じて、高い課題解決能力を有している。これを存分に発揮し、スマートシティや複合商業施設の開発と運営の実績に基づくノウハウを活用した案件形成に向け、官民一体となった取組みが必要である。その際、駅、空港など主要交通拠点周辺の開発権(TOD・沿線商業開発)を含む支援パッケージの提供が重要である。

また、スマートシティの海外展開促進の観点から、スマート技術・サービスの導入に係るPoC(実証試験)支援や都市OS等のプラットフォームと基盤構築への支援が期待される。

以上

  1. ①コアとなる技術の確保、②質高インフラと現地との協創の推進、③売り切りから継続的関与へ、④第三国での外国政府・機関との連携、⑤コロナへの対応の集中的推進、⑥デジタル技術・データの活用、⑦カーボンニュートラルへの貢献、⑧展開地域の経済的繁栄・連結性向上
  2. 「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2020年12月)、同戦略の具体化(2021年6月)等。
  3. 「グリーン成長の実現に向けた緊急提言」(2021年6月15日)、「COP26に向けた提言」(2021年10月21日)等。
  4. 医療分野の物資提供等の支援については、緊急性が求められるものの、適切な要求仕様とすることが期待される。
  5. EUのデジタルCOVID証明書など海外との相互承認の仕組みの確立、日本政府主導による規格の世界標準化の推進等。
  6. 例えば、開発政策借款等プログラム型借款による上流の政策策定とファイナンスのセット支援や技術協力等のODAを活用することも考えられる。
  7. Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN。ASEANのエネルギー転換と低炭素化を進めるため、低炭素技術の普及と政策・制度構築をビジネス主導で進めることを目的に、2019年のASEAN+3エネルギー大臣会合(AMEM+3)において、わが国が提案した官民協働イニシアティブ。
  8. パリ協定6条は、排出を減らした量を国際的に移転する「市場メカニズム」を規定。
    昨年開催のCOP26では、パリ協定6条の実施ルール(実施指針)が合意された。
  9. 現在、モンゴル・バングラデシュ・エチオピア・ケニア・モルディブ・ベトナム・ラオス・インドネシア・コスタリカ・パラオ・カンボジア・メキシコ・サウジアラビア・チリ・ミャンマー・タイ・フィリピンの17カ国と構築。新たに、インド、マレーシア、台湾、アフリカ諸国、オマーン、バーレーン、豪州等への期待が大きい。
  10. 例えば、化石燃料による発電の高効率化、新規分野(水素、アンモニア、CCS・CCUS、国境を跨ぐ事業)や蓄電池システム、社会インフラ分野も対象とするなど。
  11. 機器部分のみならず、事業そのものへの支援を可能にするなど。
  12. リファレンス基準値の適時見直しも期待される。
  13. 年一回あるは二回の採択では、入札やパートナー企業との対話等のタイミングと採択時期が合わない場合がある。予算上限に達するまで、通年審査や採択を行う等の工夫によって、公募及び採択の通年化が求められる。
  14. 例えば、デジタル技術活用によるリモートモニタリングや、隔年での計測とする等。
  15. 例えば、①国際コンソーシアムを構成する場合の、代表事業者の定義の拡大・責任内容の見直しや、代表事業者である日本企業のリスク軽減等、②CO2の評価単価の引き上げ、③本邦製品・機器の使用比率に関する柔軟な運用、④小規模案件への参入促進策、⑤天災地変(不可抗力事象)が発生した場合の返還義務の免除。
  16. 特に、今後、民間資金のみでJCMを活用する場合、クレジットの分配などに関し、わが国企業とホスト国との取り決めが難航する事が予想されるため、わが国政府による支援が期待される。
  17. 例えば、創出されたクレジットを国が買い取る仕組みや、企業の脱炭素に向けた取組みが加速化するよう、創出されたクレジットを企業の算定・報告における排出調整量として活用可能とするなど。
  18. 「REDD+」は、途上国が、森林減少・劣化の抑制により温室効果ガス排出量を減少させた場合や、森林保全により炭素蓄積量を維持・増加させた場合に、先進国が途上国への経済的支援(資金支援等)を実施するメカニズム。REDD+は、JCMの対象セクターの一つであり、「JCM-REDD+」は、森林保全活動により得られた温室効果ガス排出削減量を検証し、両国のプロジェクト参加者の貢献に基づきクレジットを創出。
  19. 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)や、グリーンイノベーション基金等。
  20. 例えば、既存港湾施設での陸上貯蔵タンクや荷役設備などのインフラの更新や新設、船舶の電動化、港湾の給電設備の電化を図るうえで、技術開発要素が少ないあるいは無いことを理由に補助金・助成金の対象外とされるケースがある。
  21. 例えば、環境省「コ・イノベーションによる脱炭素技術創出・普及事業」、経済産業省「質の高いインフラ及びエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(委託費、補助金)等。
  22. 例えば、途上国の売電契約(PPA)が現地通貨建て・支払いの場合の現地通貨部分に対する補完策(現地通貨に対する保証差し入れ、為替ヘッジファンド設立等)。
  23. IEAの試算では、パリ協定の目標達成に向けて、2040年までに全世界で約58兆7,950億ドル(約6,470兆円)から約71兆3,290億ドル(約7,860兆円)の投資が必要。
  24. サステイナブルに分類されないビジネスでの資金調達コストの増加、事業機会の減少等。
  25. トランジション・ファイナンスの対象範囲を含め、グローバルなコンセンサスを早急に確立する必要がある。
  26. 総務省の「電波システム海外展開推進会議」の検討に基づいた「電波システムの海外展開を通じた周波数の国際協調利用促進」等。
  27. 市場貸出基準金利(CIRR)の水準やカントリーリスクプレミアムの計算式の見直し、変動金利の導入等。
  28. OECDの「輸出信用に関する国際作業部会(IWG)」において、中国等の非OECD諸国を含めた共通ルール策定に向けた議論の場が設けられたものの、具体的な検討が進んでいないのが実情。閣僚会議での共有やターゲットイヤーの設定等により、議論の加速が求められる。
  29. 同原則には、①開放性・透明性、②ライフサイクルコストを考慮した経済性、③債務持続可能性などが含まれる。
  30. 渡航前のPCR検査費用、渡航先・帰国後の隔離期間の宿泊・日当等。
  31. 一部の案件では、原料の市況変動リスクを価格に反映できないため、サプライヤーであるわが国企業がリスクを負担することとなる事例がある。市況変動リスクを反映させるため、価格調整項目を盛り込むことなどが考えられる。
  32. 例えば、「JICA協力準備調査設計・積算マニュアル」へのパンデミック発生時の経費精算手続きの明記等。
  33. 無償資金協力における製造者供給保証の期間・条件の見直し、明確化等。
  34. 積極的な円借款の供与、無償資金協力の拡充、円借款、無償資金協力とPPPの組合せ等、多様なメニューの構築と拡充。特にアフリカ諸国については、2022年にチュニジアで開催されるTICAD8を目途に対応を検討すべき。また、財政再建に向けた根本的な支援のため、技術協力スキームによる財務、税務、経済政策のアドバイザー派遣や教育等が考えられる。
  35. 無償資金協力は資金を贈与する援助形態であり、その主契約者は日本において設立された法人等に限定されている。しかし、近年、日本企業の海外ビジネスの現地シフトが加速し、日本企業が主契約者となった上で、現地の関係会社に再委託するケースが増えている。この場合、当該関係会社が主契約者となることができれば、より低廉なコストで相手国ニーズに沿った支援が可能になる場合もある。このような観点から、無償資金協力における再委託や調達の現状を把握した上で、主契約者条件を緩和することも考えられる。
  36. 人材育成、技術交流、フォローアップサービスの義務付け等。
  37. 従来、海外企業が保有する技術・製品であったものが、M&A等を通じて、わが国企業が保有する技術・製品となった場合、そうした技術・製品が調達技術仕様に適切に反映されることが期待される。
  38. 予算の拡充や、審査期間の短縮、企画公募タイミングの柔軟化等。
  39. EPSA(Enhanced Private Sector Assistance for Africa: AfDB(アフリカ開発銀行)と日本政府とのパートナーシップによる「アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ」)の利便性向上のため、AfDBへの働きかけ等が期待される。特に日本企業案件における金利を含む条件緩和、手続きの迅速化、サブソブリン・ノンソブリン向け融資の積極化、JICA海外投融資の積極的な併用等。
  40. 現状の仕組みでは、日本側受注者が発注者側相手国のカントリーリスクや信用リスクにさらされるため、例えば、JICAから資金が日本側受注者に直接支払われるスキーム(例:日本国内でのエスクロー口座等の活用)が考えられる。
  41. 2021年2月、ミャンマーで国軍によるクーデターが発生。
  42. JICA民間連携事業部の更なる組織強化と人員増強。
  43. 競争力ある現地通貨建て融資の導入と拡大、サブソブリン案件向けの融資供与、一件当たりの金額規模の増大等。
  44. 本邦企業の輸出契約等の決済資金のため、JBICと市中銀行が協調融資によりバイヤーに対して資金を貸し付けるもの。
  45. アフターサービスやわが国からの輸出品(設備やソフト等役務)を完成させるため必要な現地での工事や調達に対するアンタイドローンによる並行融資等。
  46. 水素・アンモニア事業、LNG事業への支援、洋上風力・地熱開発に係る初期の海域確保や地質調査の開発費用支援制度。既存火力発電設備向けのトランジション・ファイナンスの提供。
  47. リスクの高い案件(カントリーリスクの高い国に関する案件、相手国のソブリン保証がないサブソブリン案件、(商用化前の)実証実験段階の案件等)への融資供与。特に、ICT輸出では、ソブリン保証なしの途上国の民間企業向けや、先進国のスタートアップ企業向けの市場開拓が急務であり、特別業務のリスクテイク機能への期待が大きい。
  48. 海外事業資金貸付保険を利用していない場合も認める、財務省・中央銀行以外の政府保証も可とするなど。
  49. 例えば、海外建設工事の特性を考慮した利便性のある包括保険の新設、スワップハウスがない場合への保険適用、日本裨益等の要件緩和(海外事業資金貸付保険及び貿易代金貸付保険)、海外事業資金貸付保険の金利スワップ特約の運用改善(スワップ契約自体への付保、適用要件の緩和等)、填補する非常危険の範囲を、非常危険による工事の中断のみならず工事のスローダウンによるものも対象とすることが考えられる。
  50. 例えば、発注者が政府自体でなく公社等の場合で、相手側が政府保証を出さない場合の代金回収リスクや、ホスト国の法改正によるリスクの担保、仲介国での非常リスクによる船積み不能事故の追加等。
  51. 例えば、発注者から、契約期間中に不当な理由等により支払いを止められたが、作業を途中で止めることが困難な場合、受注者がtermination right やsuspension rightを行使するまで継続していた作業に見合う債権を保険の対象とすることが考えられる。
  52. 石炭火力発電向けの保険停止に対する引き続きの支援、水素・アンモニア事業、LNG事業への支援等。
  53. 例えば、①円借款案件であっても、現地銀行を経由する支払いについて、日本リスクとして扱える保険の提供、②第三国パートナーとの協業(コンソーシアム、下請けなど)において、パートナー所在国でのカントリーリスク顕在化及び、それに伴う履行中断等に対する保険、③途上国におけるプロジェクトにおいてローカルファイナンスとせざる得ない場合におけるファイナンスリスクを補填する保険等。
  54. カーボンニュートラルやデジタル分野等における産業競争力向上、価値共創パートナーとの国際連携、社会課題解決やSDGs達成に貢献する案件について、先導性要素(LEADエレメント)がある案件と認定し、積極的な海外事業資金貸付保険の適用を行うもの。
  55. 例えば、LEADの融資部分、保険部分がアンタイドであり、使い勝手に優れることをNEXIのHP等で明示するなど。
  56. 例えば、PPP法が整備されている国又は中進国、先進国におけるPPP案件への参画検討を促す観点から、これらの国に対するJICAの協力準備調査や、日本政府・関係機関による支援スキームの構築、FSへの補助金等が考えられる。
  57. ホスト国側政府の保証範囲や出資者の責任範囲を明確に定めた制度整備等。
  58. アベイラビリティ・ペイメント方式の導入等。
  59. 経済産業省「質の高いインフラ及びエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業」。
  60. EUは2021年12月、EU域外向けの新たなインフラ支援戦略となる「グローバル・ゲートウェイ」の立ち上げを発表。2027年までに最大3,000億ユーロの投資(主に融資や公的保証)を動員することとしている。
  61. 例えば、電力系統やスマートシティ、航空管制分野等。
  62. 例えば、円借款の供与プロセスの過程で実施される事業の事前評価等の段階で、当該国における税金の取扱いも網羅的に調査対象とする。その際、過去のトラブル事例等も踏まえ、関係省庁への周知徹底と税務リスクの応札者への開示を行う等。
  63. 例えば、①先方政府の負担事項(用地の買収・引き渡し、住民移転、労働ビザ等の発給、現地関係機関による許認可手続き、通関、自己負担工事の実施等)のE/N、口上書での明確化と入札参加予定者に対する入札前時点での情報提供、入札図書・工事契約書への写しの添付、②案件公示の条件として、現地関係機関による各履行事項の同一文書合意のルール化、③問題発生時に備えた、公平に裁定するための組織、方法の構築等。
  64. 例えば、ホスト国による兌換リスクへの保証提供や、現地通貨建コンセッション契約が一般的な国に対して、ハードカレンシー(ドル)建コンセッション契約拡充の必要性について申し入れることなどが考えられる。
  65. 例えば、貨物輸送の効率化向上をもたらすトラックマッチングシステムや、GPSを利用した航空機の進入着陸を支援するシステム、電力送配電に関する系統解析、需要予測等。
  66. 中国製太陽光発電パネルは価格や性能面で優位にあるが、日本はバッテリーで高い技術力を有している。
  67. 日本の優れたダム更新技術と高効率な発電設備等を組み合わせた提案等。
  68. 日本の高効率送電線技術、トリプルハイブリッド給電システム(太陽光発電等の再生可能エネルギーに蓄電設備(ESS)、エンジン発電設備を組合せたもの)等。
  69. 例えば、洋上の水素生産設備を起点に、船舶用、発電用の燃料とするビジネスモデル。
  70. Gas to Power、Power to Gas、ガスコージェネレーション等。
  71. 超超臨界発電、排ガス浄化、CO2地下貯留技術等。
  72. 相手国産出ガスの活用。アジアの産ガス国でのトランジションエネルギーとしてのLNG活用策として、ガス火力発電導入支援、LNG処理設備・受入基地整備等が考えられる。
  73. IEA(国際エネルギー機関)の報告書(2021年12月)によれば、2021年の世界全体での石炭火力の発電量が対前年比9%増加し、2018年以来過去最高になる見通し。
  74. 二酸化炭素回収・貯留技術(Carbon dioxide Capture and Storage)。
  75. 分離・貯留したCO2の有効利用(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)。
  76. カーボンリサイクル型コンクリート等。
  77. 2021年6月、経済産業省が立ち上げを発表。13カ国(ASEAN10カ国、豪州、米国及び日本)と、100社・機関を超える企業、研究機関、国際機関等が参画。
  78. Net Zero Energy House/Building(快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指す技術)。
  79. 真空断熱ガラス、エアロゲルを用いた建材等。
  80. 大量生産・大量消費を前提としたビジネスモデルを、既存ハード機器のライフサイクルの延伸・リユースを前提としたビジネスモデルへ変革する。また、ソフト面の改善・進化により、例えば、カーシェアリングなど、個々の所有から複数での使用への転換を通じたハードの共有化を一層進め、ハードの製造と使用の一層の効率化を図る。
  81. AI等のデジタル技術や産業分野におけるIoT(IIOT)を活用した上下水道設備全体の効率的なオペレーションや設備管理等。
  82. JICAと経団連は連名で、メニューブック「Society 5.0 for SDGs 国際展開のためのデジタル共創」(2020年6月)を作成。本メニューブックを踏まえ、JICAや在外公館がホスト国に対して、わが国企業の技術製品等の採用を積極的に働きかけていくことを期待。なお、デジタル領域の技術進展が早く、適切なタイミングで更新することも必要。

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