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Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 Society 5.0の扉を開く ― デジタル臨時行政調査会に対する提言 ―

2022年4月12
一般社団法人 日本経済団体連合会

Ⅰ.はじめに

日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れに歯止めがかからないなか#1、政府・経済界の危機感や焦燥感を受け、デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)が立ち上がった。

デジタル臨調の使命は、今後3年間の集中改革期間において、日本の経済社会全体の仕組みを根本的に変革し、デジタルベースへの転換を完遂することである。世界最先端のIT国家を目指しながら頓挫した過去20年余の失敗を繰り返す余裕は、今の日本には残されていない。個々の規制・制度改革を繰り返していても、遅れを取り戻せないことは明らかである。この集中改革期間は、日本が世界に伍したデジタル社会、すなわちSociety 5.0へと転換する最大・最後のチャンスと言えよう。

経団連はデジタル臨調と全面的に協働する。その一環として、Society 5.0実現のために推進してきた諸活動に加え、全会員を対象に実施した「デジタル社会の実現に向けたアンケート」(以下、「アンケート」)を基に、デジタル臨調が取り組むべき事項を以下の通り取りまとめた。これは経団連が発信してきたSociety 5.0の実現にあたり、日本発DX#2の土台構築を求めるものである。

デジタル臨調をはじめ政府等関係方面には、本提言を「規制一括見直しプラン」に盛り込むとともに、その実現に向けて全力を傾注することを求める。

Ⅱ.基本的考え方

デジタル臨調が定める3年間の集中改革期間を終えた2025年は、「Society 5.0を実感できる新たな時代に到達した」ことを誰もが確信できる社会でなくてはならない。誰一人取り残さないSociety 5.0の姿は、人々の日常生活に根付いているのみならず、日本国際博覧会(大阪・関西万博)等を通じて世界に発信されることとなる。

ここで最も重要なことは、デジタル・データの徹底活用によって、多様な人々の新たな価値を創出できる社会を実現することである。単なる電子化や利便性向上にとどまらず、デジタル技術を使った民間の創意工夫によって新しい産業や技術・サービスを間断なく創出し、デジタル技術が「人」の活躍を支え、「人」の暮らしを真の意味で豊かにする必要がある。

デジタル臨調は、こうした社会を見据えた具体的かつ実効的な工程表を描くアーキテクトでなくてはならない。その行く先は、①あらゆる手続がデジタル完結し、②必要な制度やインフラが整備され、③新たな技術の登場に不断に対応可能な仕組みが存在する社会である。その際、政府は最先端の情報セキュリティ技術の導入と国民に対する丁寧な説明により、マイナンバーはじめデジタル・データ活用の利点に対する国民の理解と信頼を醸成することが必要である。

デジタル5原則を全国津々浦々、社会の隅々まで徹底し、Society 5.0の土台を築く観点から、集中改革期間の工程において特に留意すべき基本的考え方を示す。

STEP1:既存規制の総点検とデジタル一括改正(始動)

まずは、Society 5.0にそぐわない旧態依然とした規制を変革し、利用者目線でBPR(Business Process Re-engineering:業務改革)を断行したうえで、国・地方の行政手続や民間取引等において途中で紙が1枚も入らない、真の「デジタル完結」を実現することが待ったなしの最重要課題である。これまでの経験から、改革のプロセスでは、関係する行政当局や利害関係者による現状維持への固執と徹底抗戦に遭遇することが予見される。これを妥協なく突破しなければ、今次改革も過去の失敗を繰り返すことになる。「規制一括見直しプラン」を踏まえた今後の法改正プロセスにおいて、デジタル臨調の胆力と覚悟が問われる所以である。

デジタル臨調は、デジタル手続法に定める3原則#3を大前提とし、法律の一括見直し、政省令や通知・通達の改正に強い覚悟とスピード感を持って対応しなければならない。とりわけ、2021年9月のデジタル改革関連法の施行にもかかわらず、現場で依然として押印を求められる事例が残存する実態を踏まえれば、単なる号令ではなく、現場に浸透する実効的なエンフォースメントが鍵となる。

デジタル改革・規制改革・行政改革の共通指針となるデジタル5原則#4に合致しない法制度・規制の存続は厳に慎まなければならない。仮に存続させる場合には、「デジタルによる代替措置が不可能であり、かつ、その法目的を逆に毀損することが証明された場合のみ」に限定すべきである。デジタル「原則」を謳う以上、デジタルを導入できない「例外」には、すべからく説明責任が求められる。透明性確保の観点からも、ネガティブリスト方式を導入し、所管省庁が挙証責任を負って説明する仕組みを構築することが不可欠である。

また、デジタル完結の最後の課題は、地方公共団体に残る#5。地方自治の本旨を尊重すべきことは論を俟たないが、地方公共団体において未だに散見される書面・押印・対面規制や上乗せ・横出し規制は、国民・利用者に不要・過度な負担を強いており、経済社会全体の効率や生産性を著しく毀損している。国から地方に対して技術的助言にとどまらない強力な措置を講じない限り、Society 5.0の実現は覚束ない。

デジタル庁は、地方公共団体の基本的な業務システムの統一・標準化に向けた取り組みを一層推し進めるとともに、全ての地方公共団体において標準仕様に準拠した業務アプリを可及的速やかに導入する必要がある。

民間慣行がDXを阻害しているケースについては、経団連としても業界団体等と緊密に連携し、DX推進を強力に呼びかけていく。

STEP2:新たな制度・インフラの整備(過渡期)

続いて、制度やインフラが未整備であるがためにデジタル完結・実装できないケースについて、スピード感を持った対応が求められる。自動走行や無人配送の実装においてわが国が先進各国の後塵を拝してきたことに鑑みれば、無人施工・管理や生体認証をはじめとする先端技術に関する安全基準等の制度を早期に整備するとともに、ゴールベース規制への転換に着手すべきである。

また、新たな価値の創造という観点からは、行政はもとより、医療・教育・インフラ・環境等の分野について、これまでデータ化あるいは公開されてこなかったデータの集積・公開に向けた環境整備が急がれる。

この点、マイナンバーは個人を起点とするデータ連携の鍵である。特定個人情報を撤廃し、ヘルスケアや教育、税、社会保障等様々なデータの連携と有効活用に向けた制度を整える必要がある。また、全国に無数に遍在する行政保有・民間保有データベースを把握・整理することも重要な課題である。デジタル庁は、国・地方公共団体、更には民間を通じた行政手続やデータ連携のトータルデザインを描くとともに、連携できないデータの形式や様式、用語を見直すべきである。その際、全ての行政サービスに対して、国・地方公共団体を横断し、利用者目線に立ったIDを附番することも忘れてはならない。

STEP3:デジタル前提の体制構築(Society 5.0の土台の概成)

技術が日々進歩し続けるなかで、上記STEP1~2において実現した規制・制度改革が決して前時代的なものとならないよう、行政が自律的に社会の進展に対応できる仕掛けをビルトインする必要がある。

まずは、目まぐるしく変化する時代における事前規制の限界について全府省で認識を共有し、デジタルや先端技術の活用を前提としたマインドセットへと変革することが不可欠である。その際、人材育成やEBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)の浸透が重要な課題となる。

同時に、日本社会において満点主義・無謬主義から脱却し、失敗を許容する文化を醸成できるか否かが、規制・制度改革の成否を分かつ試金石となる。将来の先端技術の登場・実装を見据え、既存の法体系をゴールベース規制へと抜本的に転換し、新たな技術・サービスに即応できる柔軟なガバナンスの仕組みを機能させることが極めて重要である。これは、デジタル原則② アジャイルガバナンスの具現化に他ならない。自動運転技術やプラットフォーマーに関する規制等も参考に、認可基準や保安規制をはじめ、ゴールベース規制・性能基準へと順次転換すべきである。

また、今後制定・改正するあらゆる法規制がデジタル原則に適合しているか、事前にチェックする仕組みも重要となる。デジタル法制局の設置や法制事務のデジタル活用(リーガルテック導入)に関し、現在政府で行われている議論を早急に決着させ、2025年までにデジタル前提の体制を構築する必要がある。

なお、デジタル臨調は内閣総理大臣の下に臨時の組織体として設置されているが、いかなる規律もいずれ時代に適合しなくなることに鑑みれば、俯瞰的かつ継続的に規制・制度改革を監視していく合議体の存在は不可欠である。デジタル臨調は、将来に亘って日本のDX推進を担う体制についても考え方を明確に示すべきである。

その先へ

世界のDXから20年以上後れを取った日本にとって、デジタル臨調の下での3年間の改革は、Society 5.0の扉を開く一里塚に過ぎない。臨調には、集中改革期間で積み残しがないよう、透明性の高いPDCAサイクルによって、進捗や効果を定期的に検証・公開し、利用者目線から徹底した改革を断行することを求める。

これから先、仮想空間上の行為に関する法制度の整備が不可避になるばかりか、これまで困難であった法規制の仮想空間上での導入実証やそれに基づく最適な政策選択も可能となる時代が到来する。AI予測の精緻化やゲノム解析等、世界で台頭する新技術への対応は絶え間ないチャレンジである。集中改革期間の後も、我々は決して歩みを止めてはならない。

Ⅲ.具体的要望

本章各論では、デジタル5原則に沿って、この3年間で実現すべき具体的なデジタル改革・規制改革・行政改革について提言する。

デジタル原則① デジタル完結・自動化原則

政府はこれまで書面・押印・対面規制の撤廃に注力してきたものの、経団連が実施したアンケートでは、制度・慣習等の理由により、未だ多くの規制がビジネスの現場に残存している実態が明らかになった。

紙の介在は、許認可取得や届出、交付、備付・掲示、契約等、あらゆる行政・民間の手続に残る。アンケートの全回答780件のうち、DXを阻害する要因として「手続の電子化」を挙げた回答は300件に上った。全体の一部のみ電子化されている手続や、時限的に電子化可能な特例措置が混在することにより、利用者は手続ごとに電子化の有無を調べる必要に迫られている。

こうした状況下、まずは、電子化されていない手続・契約、およびその完全電子化に向けた工程表を、誰でも簡単に分かるように一覧で開示すべきである。その際、電子署名サービスの使い勝手の改善、電磁的記録の提供方法等の整合性確保も欠かせない。また、国民一人ひとりの利便性向上に直結する雇用・労働や税、戸籍・相続、社会インフラを支える道路・建設・産業廃棄物や公共調達に関する手続は、特に電子化を急ぐべきである。当該電子化によって取得したデータの活用によって、不要な手続の徹底的削減が可能となる。加えて、民間取引等における電子化の促進に向けて、電磁的記録による作成や交付にあたり、事前の承諾・申出を不要とすることも重要な視点となる。

人の介在については、建設業(主任技術者、監理技術者、現場代理人等)や再生可能エネルギーによる発電事業(電気主任技術者)を中心に、常駐・専任・目視規制の見直しを求めるアンケート回答が55件に上った。既にデジタル代替可能な分野については、常駐・専任・目視規制を早期に見直すとともに、各分野において技術的検証のもと技術カタログ等を作成・公表し、デジタル代替に道を拓く取り組みが急がれる。

1.行政・民間を含めた手続の電子化
【全分野に関する手続】
No. 1 電子化されていない手続・契約の公表と電子化の工程表明示

書面が必須とされる手続・契約は減少してはいるものの、依然各所に残存。企業においては行政手続や契約類型ごとに電子対応の可否を調査する必要に迫られており、却って業務効率化を阻害。電子化を全ての手続・契約の前提とし、現時点で電子化されていない手続・契約については、政府のホームページにおいて誰でも簡単に分かるように一覧で開示すべき。その際、規制改革推進会議が策定した各行政手続の電子化工程表を基に、デジタル完結に向けた具体的スケジュールを明示すべき。(規制改革推進会議「書面を求める行政手続の見直し方針(根拠別集計)」(2021年4月))

No. 2 電子署名の活用に必要な環境整備

クラウド型の電子署名については、裁判で押印と同様の法的効果を有すると判断されるか依然不明確であることが課題。一定の場合には電子署名法に定める要件を満たすことが明らかになるよう、法的に位置付けるべき。(法務省・経済産業省・総務省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」(2020年9月))

No. 3 未だ残る押印・直筆署名の撤廃

(1)押印の全廃
デジタル完結に向けて、実印も含め、未だ地方公共団体等各所に残る押印の全廃が不可欠。押印の要否が統一されていないために、却って手続に混乱をきたすケースも発生。追加要件を設けることなく、全ての行政手続において統一的に押印を撤廃すべき(例えば、商業登記、経済産業省における補助金事業の申請手続において押印が残存)。(商業登記規則第35条の2ほか)

(2)直筆署名の廃止
直筆署名が必須となっている書類が残っており、廃止すべき(例えば、建設工事の契約締結に際しては、既定の事項を記載し署名または記名押印した書面の相互への交付が必要)。(建設業法第19条1項)

No. 4 調査・委託・助成事業等における手続のデジタル完結

(1)政府等の統計調査
公的機関によって実施される各種統計調査等について、IDおよびパスワードの取得から回答提出までの完全オンライン化を実現すべき。加えて、オンライン回答への移行を阻害する個々のシステムの仕様や運用を改善すべき(例:「無回答」の選択不可、質問の一覧性の欠如等)。

(2)政府の委託・助成事業に関する行政手続の電子化
政府機関からの委託業務(技術開発支援)や設備助成事業について精算する際には、紙ベースでの帳票提出が必要であり、電子決済を可能とすべき。

(3)公的研究費に関する行政手続の統一・電子化
経済産業省・防衛装備庁等の省庁や科学技術振興機構(JST)、日本医療研究開発機構(AMED)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)等の公的研究費の事務処理マニュアルおよび提出書類様式が不統一。研究者が各ルールを把握し対応しなければならず、研究等への専念を阻害しており、統一したうえで電子的に公開すべき。

No. 5 政府会合のデジタル技術活用推進

電子ファイルに加え紙媒体の資料提出を求める政府会合が残存(例:厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品部会)。各省庁はオンライン会議の開催やデジタル資料の活用を積極的に進め、デジタル庁は各省庁の対応をサポートし、オンライン化を推進すべき。(令和3年6月24日機構文書「薬事・食品衛生審議会医薬品部会に関する資料提出について」)

No. 6 各種国家資格試験における申請手続・免許証等のデジタル完結

国家資格試験の申請・取得・免状交付に関する書面規制について、電子化およびマイナンバー連携による添付書類の省略化を推進すべき(例:施工管理技士試験申請や電気主任技術者の免状申請について、卒業証明書や戸籍抄本の添付が必要)。また、各種免許の書面での携帯が求められており、免許証本体の電子化を推進すべき(例:建設分野の免許・技能講習修了証・資格証明は義務により、特別教育修了証は慣習により携帯が必要)。

【雇用・労働に関する手続】
No. 7 社会保険・雇用保険等に関する行政手続のデジタル完結

社会保険・雇用保険に関連する各種手続(例:厚生年金・子ども子育て拠出金の保険料増減内訳書と徴収保険料請求、育児・介護・高年齢の給付金申請に必要な被保険者の同意書、育児休業給付金支給延長手続時に必要な保育園入所保留通知書、海外派遣者の社会保障協定適用申請、事業所別被保険者台帳の申請・受領等)において、書面での作成・提出・取得・保管が残存。届出・申請様式を見直し、全てのプロセスを電子化すべき。(雇用保険法施行規則第143条ほか)

No. 8 健康保険組合における電子化対応促進

(1) 健康保険被保険者の申請手続の電子化
一部健康保険組合では、健康保険の得喪業務において、紙の専用様式に記載、代表印を押印の上、健康保険組合に提出することを要求。健康保険組合における押印撤廃および手続電子化の徹底を引き続き促進すべき。

(2) 健康保険被保険者の申請手続のワンストップ化
事業者と健康保険組合が必要な情報を共有する手段を有し、かつ両者が同意する場合は、被保険者が健康保険組合に対して直接届出することを可能とするとともに、手続をワンストップ化すべき。(健康保険法施行規則第28条ほか)

(3) 健康保険組合議員選挙のオンライン化
健康保険組合の組合会議員については、被保険者である組合員において互選するものと規定。投票用紙の配布や受領書の回収等、原本を伴う対応について膨大な稼働がかかるほか、リモートワークが加速する中で投票率の確保も問題に。オンライン投票を可能とするとともに、紙の受領書の原本管理を不要とすべき。(健康保険法第18条第3項ほか)

No. 9 ハローワークに対して行う手続の電子化

企業は各事業所単位で高卒求人票を作成し、管轄ハローワークに電子データで送付する一方、所長の確認印が押印された求人票の企業への返却は郵送となっているため、全てのプロセスを電子化すべき。併せて、ハローワークのデータベースとマイナンバーの連携により、離職者が雇用保険(基本手当)の受給を申請する際に持参する離職票を電子化すべき。(雇用保険法施行規則第17条)

No. 10 会社分割に伴う労働契約の承継に関する手続のデジタル完結

労働契約承継法では、分割会社から労働者への承継通知および労働者からの異議申出を書面で行うよう規定。事業者は、コロナ禍における「3密」回避のために複数回に分けて労働者に書面を配付したり、労働者の自宅に郵送したりするなどの負担を強いられているため、労働契約承継手続の電子化を可能とすべき。(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律第2条、第4条)

No. 11 労使協定に関する手続のデジタル完結

労働者と使用者との間で締結する協定のうち、例えば育児・介護休業等の申出ができる対象者を限定するための協定は書面での作成が求められていることから、電子化を容認すべき。(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第6条)

【税に関する手続】
No. 12 税務手続のデジタル完結

税務手続に関する帳簿書類・申告・納付・通知等について、国税・地方税ともに電子化(法人税等の更正通知書、固定資産税に関する納付書・納税通知書・課税明細書の電子化、e-TaxおよびeLTAXの機能改善・容量拡充・データ形式の柔軟化等)を一層推進すべき。(国税通則法28条、地方税法364条ほか)

No. 13 税務調査のオンライン化

申告等の税務手続の電子化が進むなかで、税務調査については対面での調査、郵送やFAXによる資料の授受等が主流となっている。今後はWeb会議による照会や、e-mail、クラウドの活用による資料の授受といったオンライン化を強力に進めるべき。(国税通則法第74条の2ほか)

No. 14 年末調整・確定申告に関する手続のデジタル完結および簡素化

近年、年末調整の電子化が進んでいるところ、この方向性を確かなものとする観点から、利便性向上を含め、不断に見直しを行うべき。この一環として、生命保険料控除証明書の紙発行の廃止に向けて、添付書類の完全電子化を一層推進すべき。

電子化のみならず、合理性の低い手続は廃止が必要。例えば、給与所得者(以下、従業員)は、毎年1月の給与支払日までに、扶養状況の変更有無にかかわらず、扶養控除等(異動)申告書を毎年提出することが必要。しかし、企業は従業員に対し扶養の変化があれば都度自己申告させており、扶養状況を常に把握しているため、年初に改めて従業員に確認のうえ提出する意義は乏しい。当該申告書を紙で展開・回収する企業もあり、かかる事務が限られた期間に集中するため人的負担も大きい。そこで、扶養状況に異動が生じた際の届出は継続させる前提で、年初における当該申告書の提出を廃止すべき。(所得税法第194条)

No. 15 給与所得の源泉徴収票等の電子化に必要な本人承諾の見直し

所得税法上、給与支払明細書や給与所得の源泉徴収票を電子的に交付するためには、あらかじめ受給者(交付を受ける者)に対し、用いる電磁的方法の種類および内容を示し、電磁的方法または書面による承諾を得ることが必要。書面から電子的交付に移行する際、承認しない受給者が一定数存在することはやむを得ないが、意思表明しない従業員も「非承諾」と見做さざるを得ない。そのため、大半の受給者が電子的交付を望んでいる実態がありながら、意向確認に長期間を要し、企業単位での取り組みが進展せず。書面から電子的交付への移行を、受給者が明示的に承認しない場合(未回答者の場合)は、電子的交付を行うことができることとすべき。(所得税法第226条第4項、第231条第2項ほか)

【道路・運送・建設に関する手続】
No. 16 道路に関する行政手続のデジタル完結

とりわけ地方公共団体では、道路に関連する行政手続(例:道路占用・使用許可申請に関する手続、大型進入禁止場所への納品時に必要な申請書、地図・車検証・免許証、認証工場や指定工場における各種変更届、整備主任者に関わる各種変更届、新規車検・継続車検に関する届出等)において、書面での記入・交付、押印・直筆、対面での提出・受領が残存。相談時に直接訪問または電話以外の相談方法がない地方公共団体もある。一部電子化しているケースもあるが、システムが不統一。押印・書面での交付・携帯義務を廃止し、申請・提出・報告等の全ての手続を全国統一的に電子化すべき。(道路法第32条ほか)

No. 17 運送業に関する行政手続のデジタル完結

一般貨物自動車運送事業および第一種貨物利用運送事業(自動車)に関連する行政手続(例:増減車・役員変更・運行管理者・整備管理者の選解任等)は書面提出が求められ、返信用封筒を同封して郵送する必要。また、実績報告書・事業報告書も事業年度ごとに全て書面での提出が必要。タクシー運転者登録手続も書面で実施。各種運送事業における申請・審査・提出等全ての手続を電子化すべき。(貨物自動車運送事業法第4条、第9条ほか)

No. 18 建設に関する行政手続のデジタル完結

建設に関連する各種対応(例:建築確認申請、特定建設作業届、経営事項審査関連、決算変更届・都道府県知事許可、海上工事に伴う工事計画届申請や水域占用許可申請、昇降機の設置届・設置報告書・確認申請・完了検査申請業務・撤去時の廃止届、建築物の定期調査・検査報告制度、現場監督の付帯業務となっている帳票類の管理、建築主から建築士への委任状、炭素鋼材の大臣認定取得申請等)において、書面での記入・製本・郵送・保管、対面での打合せ・提出・受領・交付、押印が残存。全国一元管理のデータベースも整備・活用し、届出・提出・申請・受理・調査・情報提供・会議等、全ての対応を電子化すべき。契約金額の多寡に依らず電子取引を導入するとともに、検査における電子データも積極的に使用し、建設業全体のDXを推進すべき。(建築基準法第4条、建築士法第21条、騒音規制法第14条、港則法第31条、港湾法第37条、労働安全衛生法第61条ほか)

No. 19 船舶に関する行政手続のデジタル完結

船舶型式承認の取得申請は、申請書の書面提出が求められ、必要な書類が煩雑であるため、新製品のリリースの障壁に。申請を容易にし、船舶用品の開発およびリリースを活性化する観点から、申請の電子化と添付書類の定型化を進めるべき。(船舶等型式承認規則第5条)

No. 20 都市開発における組合関係手続のデジタル完結

土地区画整理事業・市街地再開発事業において設立する組合について、総会のオンライン開催(会場を設けないオンラインオンリーでの開催)が認められていないため、組合員の賛成を前提に容認すべき。併せて、組合の事業報告書等の備付について電磁化記録での保管を容認すべき。(国土交通省「新型コロナウイルス感染拡大等を踏まえた土地区画整理事業・市街地再開発事業の手続に関するQ&A」ほか)

【エネルギー・廃棄物に関する手続】
No. 21 発電に関する行政手続のデジタル完結

(1)事業用電気工作物に関する工事計画届の電子化
事業用電気工作物の工事計画の届出について、資料・図面類の書面での作成・提出、対面での打合せが必要。工事計画届の作成・提出を電子化するとともに、所管する地方経済産業局との打合せにWeb会議等を活用し、対面要求を廃止すべき。(電気事業法施行規則第66条)

(2)水力発電関連の各種手続の電子化
毎年提出する水力発電関連の各種報告書類(例:ダム管理状況報告、取水量報告、ダム堆砂状況報告等)、河川内および河川内構築物工事関連の各種書類(例:許可申請書、工事計画書、完成検査申請書等)、送電鉄塔の建設・工事関連書類(例:河川上空・道路占用申請書、着工届出書、完了届出書等)は、書面での添付・提出、必要書類取得のための訪問、押印が必要。届出・提出・申請・受理・承認・必要書類の取得等、手続を電子化すべき。

No. 22 高圧ガス・冷凍設備に関する行政手続のデジタル完結

高圧ガス設備大臣認定および冷凍指定設備認定に関する申請・審査・届出・確認調査には膨大な書面の作成・製本・提出・郵送および押印が残存。大容量データの送受信も可能なオンラインシステムを構築し、申請・審査・提出等全ての手続を電子化すべき。(高圧ガス保安法第5条ほか)

No. 23 産業廃棄物に関する行政手続のデジタル完結

(1)産業廃棄物処理に関する手続の電子化
産業廃棄物処分に関する各種手続(例:許可申請や変更届、消火器リサイクル広域認定制度における帳簿作成や伝票保存等)において、書面の提出・返信用封筒を同封しての郵送・書面での保存・対面での手続が残存。申請・審査・提出等全ての手続を電子化すべき。説明等にはWeb会議等を活用し、対面の要求を廃止すべき。(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第7条ほか)

(2)電子マニフェスト(産業廃棄物管理票)使用の義務化
紙の産業廃棄物管理票(マニフェスト)の使用義務を負うのは年間50t以上の特別管理産業廃棄物多量排出事業者のみ。少量排出事業者には義務化されておらず、完全普及に至っていないため、電子マニフェスト使用を義務化すべき。

No. 24 放射性同位元素・放射線発生装置に関する行政手続のデジタル完結

放射性同位元素・放射線発生装置の許可申請や届出に書面の提出・郵送が必要。また、申請時には当該設備とは直接関係のない既存設備の全図面提出も都度要求。閲覧・申請・提出等全ての手続を電子化すべき。(放射性同位元素等の規制に関する法律第3条の1ほか)

No. 25 環境保全に関する行政手続のデジタル完結

大気汚染防止法、水質汚濁防止法、騒音規制法、振動規制法、ダイオキシン類対策特別措置法、土壌汚染対策法をはじめ環境保全の法令および条例では、書面による多数の届出(例:施設の設置・変更届、氏名等変更届、使用廃止届出書、承継届出書等)を義務付け。申請から許可までに長期間を要するほか、受理の確認業務も必要であり、非効率。届出を電子化し、システム上での資料の添付・届出・手続状況の確認・受理・審査・承認を可能とすべき。説明や協議等もWeb会議等を活用し、対面の要求を廃止すべき。

【製造・サービスに関する手続】
No. 26 計量に関する行政手続のデジタル完結

(1)計量法における型式承認の各種手続の電子化
電力量計の型式承認プロセスにおいて申請書や図面等の書面での届出・交付が必要。セキュリティの確保を前提としつつ、提出・申請・交付等の手続を電子化すべき。その際、同一図面を文書番号で管理し、電子データで流用できるようにすべき。(計量法第76条)

(2)計量証明書の原則電子化
計量証明事業では、顧客の事前同意を取得した場合に計量証明書の電子的交付が可能であるが、全ての顧客が電子交付を承諾しない限り、紙媒体と電子媒体の二重管理が必要で複雑。行政から「電子媒体での計量証明書を正とし、紙媒体は参考資料とする」旨の通達を発出すべき。(日本環境測定協会「計量証明事業における計量結果の電子交付の運用基準(ガイドライン)例示」)

(3)計量トレーサビリティ証明書の電子化
各種製品の品質検査の際、使用される計器が正しく校正されていることの証明が必要。その際に使用される校正証明書、基準器検査成績書、トレーサビリティ体系図が全て紙媒体であり、チェックや整理・保管の障壁に。ブロックチェーン技術を活用し、産業技術総合研究所計量標準総合センターを頂点とする計量トレーサビリティの証明を偽造不可能なデジタル証明書に置き換え、計器の正確性を緻密に管理できるようにすべき。(計量法第136条第1項)

No. 27 鉱業に関する行政手続のデジタル完結

鉱業法、採石法、鉱山保安法に基づき作成・申請・提出が必要な多数の書類・図面は未だに書面。根拠法令により、ドローン測量で3D化された鉱山図面をあえて2D図面に変換し断面図を作成しなければならない。また、規定の縮尺による大判用紙への印刷・提出・備付が必要。大容量データの送受信も可能なオンラインシステムを構築し、書面による申請・提出を廃止すべき。ドローン測量等による積極的な3D図面での提出を可能とし、電子データで提出できる体制を整備すべき。

No. 28 サービス業に関する行政手続のデジタル完結

(1)旅行業に関する各種手続の電子化
旅行者との取引額の報告、事故が発生した際の登録行政庁への報告は書面となっている。こうした書類はデジタルの利活用により電子化して事務の省力化を図るとともに、登録行政庁においてもこれらをデータベースとして利活用できるようにすべき。また、旅行業の登録行政庁に対する申請に際して添付書類として登記事項証明書が必要となる場合には、登録行政庁と登記事務を行う行政庁の連携により提出書類を削減すべき。(旅行業法第3条ほか)

(2)たばこの販売免許申請の電子化
製造たばこの小売販売業の許可申請において、郵送・持参による提出が残存しており、申請・交付等の手続を電子化すべき。(製造たばこ小売販売業許可等取扱要領)

(3)インターネット型結婚相手紹介サービス業に関する各種手続の電子化
インターネット異性紹介事業者は、当該事業に関する届出事項に変更が生じた場合、管轄警察署への書面での変更届出が必要。また、独身証明書(正式名称「結婚情報サービス・結婚相談業提出用証明書」)は、本籍地の地方公共団体窓口または郵送で請求し、書面で交付される。事業者・利用者双方の利便性向上の観点から、これらの手続もデジタルで完結するようにすべき。(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律第7条ほか)

No. 29 電波に関する行政手続のデジタル完結

高周波利用設備の変更許可申請・届出、無線局免許の申請等の各種手続において、法務局に申請・取得する登記等の必要書類の提出・対面・郵送・免許状の書面交付が残存。申請・提出等全ての手続を電子化すべき。総務省のシステムと法務省の「登記情報連携システム」を連携し、必要書類を取得できるようにすべき。(電波法第100条ほか)

No. 30 医療に関する行政手続のデジタル完結

(1) 医薬品医療機器総合機構(PMDA)への申請電子化
PMDAへの輸出証明の発給申請・適合性調査申請の際に、紙媒体の申請書や添付資料の送付、調査費用振込の証として振込用紙コピーの貼付が必要。申請や振込確認に関するオンラインシステムを導入し、発給や適合性調査に必要な当該医薬品の情報をデータベースで参照できるようにすべき。(厚生労働省医薬・生活衛生局長通知「輸出用医薬品、輸出用医療機器等の証明書の発給について」)

(2) 医師・歯科医師・薬剤師届出票提出の電子化
医師・歯科医師・薬剤師の免許を所持している者は、所在地、従業地、従事している業務の種別等について、所管の保健所に届出票を持参または郵送が必要。届出票は電子データで提供されているため、提出まで電子化すべき。(医師法第6条第3項、歯科医師法第6条第3項、薬剤師法第9条)

(3)診療所の変更許可申請の電子化
診療所の一定事項に変更が生じた場合や社内診療所の移転等の際に行う変更許可申請は書面提出が求められていることから、電子化すべき。(医療法第7条第1項・第2項)

No. 31 金融に関する行政手続のデジタル完結

(1)金融商品取引業における法定帳簿の電子化
金融商品取引業において、帳簿書類を電子媒体で保存する場合は監督指針に則って行うことが必要。既に、証券会社の業務の多くがシステム化されているため、監督指針の詳細な定めを簡素化すべき。(金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針Ⅲ-3-3)

(2)割賦販売法および貸金業法に関する行政手続の電子化
登録信用購入あっせん業(割賦販売法)や貸金業(貸金業法)の登録業者は、所管省庁(経済産業省・金融庁等)に調書・事業報告書・変更届等を提出することが求められるが、様式や提出方法が省庁ごとに異なる。データ連携を見据え、様式を統一したうえで全ての提出を電子化すべき。(割賦販売法省令様式第2ほか)

【特許・登記等に関する手続】
No. 32 知的財産に関する行政手続のデジタル完結

特許・商標・意匠・実用新案に関する申請・発送に一部書面が残る(例:特許証関連書類)。特許庁が掲げる「特許庁における手続のデジタル化推進計画」に基づき、2024年4月までの完全電子化を着実に推進すべき。(商標法第71条の2第1項・第2項)

No. 33 登記・裁判に関する手続のデジタル完結

民事司法分野(例:民事訴訟等に関連する手続、弁護士・弁護士会に関連する手続、登記に関連する手続、債権譲渡の際の債権者ごとの通知作成・発送・資料保管、債権回収に関する照会・回答等)は、未だに書面での作成・押印・郵送・FAXによる送付。新たな民事裁判手続のIT化に向けた民事訴訟法改正案に基づきIT活用を着実に推進すべき。

また、現在政府で検討が進められている民事執行・民事保全・倒産手続等のIT化についても、電磁的な方法を原則とすべき。将来的には、これらの民事手続のほか、不動産登記簿謄本の交付をはじめとする登記関連手続、戸籍法・住民基本台帳法に基づく地方公共団体への申請手続、弁護士会照会手続等も含め、統一のプラットフォームの下で申請・提出等全ての手続を電子的に行えるようにすることが望ましい。(民法第467条、民事訴訟法第91条、破産法第32条第3項、民事執行法第145条第3項、弁護士法第23条の2ほか)

No. 34 相続手続のデジタル完結

(1)戸籍証明書一式の電子化
戸籍証明書は未だに窓口・郵送で送付され、相続手続の負担となっており、戸籍証明書の提出先(金融機関等)の事務のDXも阻害。相続関連手続を早期にデジタル完結できるよう、戸籍・除籍・改製原戸籍謄抄本を含む全ての書面を電子化すべき。改製原戸籍や除籍を含むデータベース化が実現するまでの間は、書面の証明書イメージをPDF に変換し、電子署名を付与したものを電子交付可能とすべき。(戸籍法第10条の3ほか)

(2)遺産分割協議書等の電子化
遺産分割協議は被相続人の死後10カ月以内に成立させる必要があり、協議の結果まとめられる遺産分割協議書は、相続人全員の記名押印とその印鑑証明書が必要。今後、遺産分割協議のリモート化による期間短縮および、移動不要のニーズが高まることが想定される中、自著押印を電子署名に置換し遺産分割協議書を電子化すべき。併せて、公正証書遺言に記載された内容も電子化すべき。(民法第907条969条、相続税法施行規則第1条の6第3項第1号、不動産登記令第19条ほか)

(3)法定相続人のオンライン認証の容認
相続手続においては、申請者が法定相続人であることを証明するため、相続人本人・被相続人の戸籍証明書一式を収集・提出する必要。政府が推進する「死亡・相続ワンストップサービス」も踏まえ、オンラインによる法定相続人の認証を容認すべき。(民法第882条、戸籍法第10条の2第3項、不動産登記規則第247条ほか)

No. 35 在留申請のデジタル完結

オンラインでの在留申請の拡大に向けて、まずは原則として全ての在留資格をオンライン在留申請の対象とすべき。現在、オンライン申請可能な在留資格であっても、オンライン申請に必要な初回登録や申請内容の訂正連絡等は書面・対面に限定されているなど、各所に書面規制が残り、却って手続が煩雑化していることから、デジタルで完結する仕組みとすべき。 申請時に要求されている添付書類は、マイナンバーはじめ行政間のデータ連携によって、可能な限り撤廃すべき。

No. 36 輸出入等に関する手続のデジタル完結

輸出入等に関する手続において書面での発行・郵送・対面等のアナログな手法が未だ更新されないまま残存。手続を電子化し、申請済のデータや登記情報の電子的な確認、迅速な手続を可能とすべき。

電子化すべき例:

  • 陸揚げ地の都道府県知事に対する火薬類輸入許可申請は、多くの地方公共団体において、書面・対面で実施。申請書類としてオーダーシート・インボイス等の写しが必要。(火薬類取締法)
  • 経済産業大臣が指定した発給機関である日本商工会議所が運用する特定原産地証明書発給システムの利用には、企業登録・更新時に登記の履歴事項全部証明書や登録申請書の郵送が必要。(経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律施行規則第4条の2第1項)
  • 外国での事業実施にあたり当該国に日本の公的文書(代表事項証明書等)を提出する際にアポスティーユの取得が必要。(外国公文書の認証を不要とする条約第4条・附属書)
【警察・消防・防衛に関する手続】
No. 37 警察に対して行う行政手続のデジタル完結

(1)車庫証明取得手続の電子化
社有車導入時、所管警察より車庫証明を取得後に納車となるが、車庫証明取得にあたり押印、登記簿謄本の写しの提出等書面による申請が必要。市区町村保有のデータとの連動による住民票等のデータ送付、マイナンバー等入力による本人確認により、全国の所管警察における手続の書面・押印を完全に廃止すべき。(自動車の保管場所の確保等に関する法律第4条)

(2)警備業法に関する各種手続のデジタル完結
警備業の認定申請をはじめとする警備業法上の各種手続において、申請・届出書類への役職員の住民票等の添付、所轄警察署の訪問・対面での提出が必要。2021年6月より警察庁が開始した、警察行政手続サイトにおける一部手続(警備業法第10条、第16条、第17条)のオンライン化を拡張し、警備業法上の全ての申請・提出等の手続を電子化すべき。(警備業法第5条、第9条)

No. 38 消防に関する行政手続のデジタル完結

消防関連の各種届出(例:危険物施設(一般取扱所・屋外タンク貯蔵所等)の変更許可申請、着工届、設置届、防火対象物の工事等計画・一時使用の届出書、防火対象物・製造所等の概要表、防火基準適合状況確認表、消防用設備等点検報告、統括防火・防災管理者選任(解任)届等)について、所管消防署への書面提出が必要。加えて火災予防条例・火災予防条例施行規則に基づく申請図書の様式が地方公共団体間で異なる。所管消防間でフォーマットを統一し、届出・提出・申請・手続状況の確認・受理・審査・承認等全ての手続を全国統一で電子化すべき。建物所有者と所管消防が点検結果を閲覧できる全国統一のデータベースを整備すべき。(消防法第17条の3の3、各地方公共団体の火災予防条例)

No. 39 防衛省に関する行政手続のデジタル完結

防衛省との一部契約においては、契約の都度情報を入手するために防衛省を訪問したうえで、紙媒体で受領し、専用施設内の金庫にて保管管理することを求められている。また、防衛省地方防衛局および陸上自衛隊駐屯地とは、電子メールを使用した連絡・調整ができない状況。安全保障上必要な措置を講じたうえで、クラウド含むサーバーや外部との電子メール送受信が可能なネットワーク環境を構築し、手続等の電子化を検討すべき。

【地方公共団体に関する手続】
No. 40 地方公共団体との契約のデジタル完結

地方公共団体と事業者の取引において、契約ごとに膨大な書類の取交しが必要となるが、地方公共団体ごとにフォーマットが異なり、電子化も進んでいないため、負荷低減に向けて、必要書類・様式を簡素化し、全国統一的に電子化すべき。特に地方公共団体の大手小売店舗では、電力・ガス・水道等の公共料金や通販代金・税金等の支払いを代行する「収納代行サービス」を取り扱っているが、受託時に地方公共団体と交わす契約書の締結・更新に書面・押印が求められることから、総務省は各地方公共団体に対し電子契約を推進すべき。

また、地方公共団体に電力使用料金請求書を送付する際、Webの請求画面からダウンロードに対応している地方公共団体がある一方、会社の代表印を押印した請求書原本の送付を要求する地方公共団体が残り、電子化を徹底すべき。

No. 41 地方公共団体における公共調達に関する手続のデジタル完結

(1)入札参加資格申請の電子化
入札参加資格を申請する際、まず申請書を取りに行き、印鑑登録証明書、納税証明書、履歴事項全部証明書、社会保険料納付済証明書等の必要書類を添付して郵送することが必要。資格取得後も、許可証等の変更事項があれば書面での変更届が必要となるため、手続全体を電子化すべき。また、会社法人等番号等を活用したデータ連携により、必要書類の添付を不要とすべき。(建設業法第28条3項)

(2)公共工事の電子化徹底
地方公共団体が公共工事を発注する際、社印や大臣印の書類を求める例が依然残存。関東地方整備局が2021年9月に公表した「土木工事電子書類スリム化ガイド」を横展開し、押印撤廃・書類削減を徹底すべき。

(3)ポータルサイトの構築
中央省庁のホームページにおける建設機械等の指定・届出状況の公開、建設機械への基準適合ラベルの貼付等を行っているにもかかわらず、地方公共団体において別途資料の書面提出を要求される場合がある。公共工事に関する発注者・コンサルタント・応札者・受注者に対するポータルサイトを開設し、情報の周知・共有を行うべき。

No. 42 公金決済のデジタル完結

地方税に該当しない公金(道路占用料、行政財産使用料等)については、依然としてその多くが、紙媒体の納入告知書または納入通知書により徴収され、収納も金融機関窓口での納付が前提となっている。そこで、道路占用料、行政財産使用料等の電磁的方法による告知・通知を可能とし、収納については、口座振替(自動引落)やオンラインバンキング、eLTAXを活用(対象範囲を地方税のみから公金へ拡大適用)できるようにすることを要望。また、地方公共団体共通の仕組みを新たに構築し、通知・収納を電子化することも期待。(道路法第39条ほか)

No. 43 情報公開請求手続のデジタル完結

情報公開請求制度については、各省・地方公共団体で対応が異なる。手続が窓口、書面またはFAXのみ、資料コピー代支払方法が現金書留のみというケースや、そもそも情報公開請求の方法をホームページ等で明示していないケースもあり、手続の電子化・電子決済と統一手順による申請を実現すべき。

【民間取引等における手続】
No. 44 取引における電磁的記録の提供に関するルールの明確化

電子帳簿保存法、下請代金支払遅延等防止法、建設業法施行規則等では、受発注等に関する電子化の要件を規定。しかし、取引における電磁的記録の提供方法や留意事項等の条件が法令ごとに異なることから、とりわけ発注側企業においてシステム・業務設計の個別対応を迫られ、多大なコストが発生。そこで、デジタル庁が牽引し、財務省や国土交通省ほか全省庁において、法的要件を統一・明確化すべき。

No. 45 下請法に基づく手続の電子化促進

(1)下請法に基づく電磁的記録に関する規律の見直し
親事業者が下請事業者に対して下請法第3条第2項に基づく電磁的記録の提供を行う場合、親事業者において下請事業者のファイルに記録されたか否かを確認することが必要となる。その確認作業が親事業者にとって負担になっており、制度の見直しを検討すべき。(下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項)

(2)取引書類送受・保管の電子化促進
民間において見積書、発注書、検収書(兼納品書)、契約書、請求書、検収一覧等の電子化が進んでおらず、周知徹底が必要。

No. 46 株主総会関連書類の電子化

株主総会資料の電子提供制度における「書面交付請求制度」について、書面への記載を省略できる事項を早期に拡大するとともに、その後、将来的な書面交付の完全廃止を含めた検討に着手すべき。また、非公開会社では、委任状・議決権行使書に押印して書面で提出するよう求められるケースがあるなど、書面・押印が残存。非公開会社に対しても書面・押印撤廃を促すべき。(改正会社法(2022年9月1日施行)第325条の5)

No. 47 金融分野に関する各種手続の電子化

金融分野に関する各種対応(例:自賠責保険の保険金請求、振替法(社債、株式等の振替に関する法律)の適用がない場合における大学債(国立大学法人が発行する債券)や地方債の券面発行等)について、書面での記入・提出・受渡が残存。書面・押印・対面原則から脱却し、DXを推進すべき。

2.常駐・専任・目視規制の見直し
No. 48 建設における常駐・専任規制の緩和

(1)主任技術者・監理技術者等の配置・兼務要件の見直し

  1. ① 建設業法では主任技術者の配置を規定。国土交通省は、現行と同程度の安全・品質の確保を条件として、ICTの活用により一律の配置の規定を見直すべき。
  2. ② 建設業法上、主任技術者・監理技術者の専任が必要となる工事において、現行と同程度の安全・品質の確保を条件として、ICTの活用により専任の技術者が兼務可能な現場数や近接性要件を緩和すべき。
  3. ③ 労働安全衛生法に定める巡視についても同様に検討し、①~③いずれも法整備を進めるとともに、ICTの積極的な導入に向けて当該法改正を広く周知すべき。

(建設業法第26条、労働安全衛生法第30条ほか)

(2)工事監理者の遠隔監理の容認
建築主は工事を行う場合、建築士である工事監理者を定め、工事監理者の責任において、工事が設計図書に沿って実施されているか否かを確認。目視と同等の安全性や信用性が確保できる場合には、ICTの活用により遠隔からの工事監理を容認すべき。(建築基準法第5条の6第4項、建築士法第2条8項)

(3)建設現場における現場代理人の兼務要件の緩和
工事現場で工事請負業者の代わりに責任者を務め、現場全体を管理する現場代理人について、国土交通省は複数現場の兼任要件を「2~3件程度、同一市町村内」と例示。複数現場を掛け持ち管理する場合の条件にデジタル活用による遠隔管理を加えるなど、要件を緩和すべき。(国土建第161号 平成23年11月14日 現場代理人の常駐義務緩和に関する適切な運用について)

No. 49 電気主任技術者の常駐・専任規制の緩和

特別高圧受電設備については、専任の電気主任技術者の常駐が必要。また、発電設備を含む特別高圧設備については、電気主任技術者業務の電気保安法人への外部委託が認められていない。リスク管理体制の整備やデジタル技術の活用による保安力の確保を前提に、①特別高圧受電設備に関して、電気主任技術者の配置要件の緩和に向けた検討を加速するとともに、②発電設備を含む特別高圧設備の保安・管理に関して、電気主任技術者業務の電気保安法人への外部委託の是非を検討すべき。(電気事業法施行規則第52条第2項、第4項)

No. 50 主任無線従事者の常駐・専任規制の緩和

無線設備の操作については、その無線局の主任無線従事者として選任を受けた者の監督の下であれば、無線従事者に代わって行うことが可能となっている。24時間365日操業の製鉄所において、ドローン等の自動運転やローカル5Gの利活用拡大等にあたり、主任無線従事者が不在にしてもよい要件が不明確であるため同制度を活用できず、無線従事者が常駐・運用していることから、要件を明確化すべき。(電波法第39条ほか)

No. 51 点検・検査における目視規制の緩和

(1)電気工作物、ガス工作物、高圧ガス設備等の定期自主検査の遠隔化
電気工作物、ガス工作物、高圧ガス設備等は、関連法規により使用開始後の定期自主検査を行うことが必要。設備の開放点検や目視点検が必須のものも多く、設備保全技術へのデジタル適用が進まない要因の一つ。技術的な検証を前提に、定期自主検査での実施内容(技術基準に適合していることの確認方法)を、デジタル利活用による遠隔実施で代替できる法規制とすべき。(ガス事業法第71条、高圧ガス保安法第35条ほか)

(2)測定結果データを用いたリモート点検への対応
フロン類および第一種特定製品に義務付けられている点検には、直接法(直接第一種特定製品からの漏えい等を検知する方法)と間接法(必要事項を計測して計測結果を確認する方法)が存在。しかし、告示が検査への立ち会いを規定しているために、間接法であっても直接法と同様にわざわざ現場に赴き、実機による検査を実施している状況。故障等の早期発見という法趣旨に照らし、技術を用いた適切な方法によるリモート点検の活用を容認すべき。(フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律第16条ほか)

No. 52 医療における常駐・専任規制の緩和

(1)薬局外からのオンライン服薬指導の実現
オンライン服薬指導が恒久化されたものの、薬剤師が服薬指導を行うことができるのは、その調剤を行った薬局内の場所とすることが義務付けられている。医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)施行規則第15条の13第1項を改正し、通信環境およびセキュリティ、患者のプライバシーが確保されていることを前提として、当該薬局の薬剤師が、自宅等の当該薬局外においても服薬履歴や処方箋内容、服薬状況等を閲覧・管理し、オンラインで服薬指導を行うことができるように、服薬指導場所の条件を緩和すべき。

(2)OTC医薬品の特定販売におけるオンライン対応の実現
OTC医薬品の特定販売(インターネット販売)における情報提供および相談応需は薬局または店舗内で行うことが義務付けられている。しかし販売はインターネット上で行われるため購入者への情報提供もメールや電話で実施。薬剤師・登録販売者は必ずしも薬局・店舗にいる必要がないにもかかわらず、薬局・店舗内からしかメール・電話対応ができない。通信環境およびセキュリティ、患者・購入者のプライバシーが確保されていることを前提として、場所を問わず、オンラインでの情報提供および相談応需を可能とすべき。(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第36条の10ほか)

No. 53 情報記憶媒体等の機器の廃棄における目視規制の緩和

「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」において、情報記憶媒体等の機器の廃棄時に、地方公共団体職員の立ち会いや庁舎内でのデータ消去作業の完了を要求。情報記憶媒体の廃棄は短時間で完了するものではなく、作業時間中の職員の拘束や庁舎内での作業スペース確保が課題。遠隔監視技術等のデジタル技術の活用による立ち会いの代替および庁舎外での作業を認めるとともに、積極的に周知すべき。(地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和2年12月版)P.ⅲ-48~P.ⅲ-52)

デジタル原則② アジャイルガバナンス原則

アジャイルガバナンスは、ソフトウェア開発において機動的かつ柔軟に開発を行い、常に検証を重ねていく、いわゆる「アジャイル手法」をガバナンスに応用したものである#6。このうちアジャイルに見直されていない課題として、特定の手法・基準・資格者要件が課されている規制と、新たな技術に対応していない規制・制度について要望が寄せられた。

手法・基準・資格者要件では、まず、非防爆機器・家電製品等のデジタル技術の活用に対する厳格な規制を緩和する必要がある。また、本人確認や点検・検査の手法、認証を得るための技術基準、気象予報士に関する資格者要件に関して具体的な要望が寄せられていることからも、見直しが急務である。

デジタル技術の進展にもかかわらず、安全基準やガイドラインがないなど、制度整備が追い付いていないことで社会実装を阻害している課題がある。ドローン、ローカル5G、建設の自動施工、介護ロボット、空飛ぶクルマ等について、将来の活用も見据えた制度整備に着手すべきである。

併せて、公共調達の手法がアジャイル開発に対応していない状況に鑑み、早期の見直しが不可欠である。

1.手法・基準・資格者要件等の見直し
No. 54 デジタル技術の導入に関する規制の見直し

(1)非防爆機器の持込規制の見直し
デジタル技術の進展により、非防爆仕様の通信端末等の活用機会が拡大している一方、非防爆機器の持込規制や、当該規制に関する地方公共団体間の基準の相違により、デジタル活用を阻害。プラント装置内等においても十分な安全措置を講じている場合には、防爆エリアの設定要件を緩和すべき。また、防爆に関する危険場所の設定や、電波端末利用による情報システム誤動作エリアの設定に関する導入ガイドラインを整備・最新化すべき。(一般高圧ガス保安規則第6条26ほか)

(2)ドローンの飛行申請の手続の統一・電子化
プラントにおけるドローンの飛行にあたっては、飛行申請方法(必要書類、提出方法等)の確認をはじめ各拠点の所轄消防との折衝が必要となり、手続が煩雑。国が発出するドローン運用ガイドラインに飛行申請方法の項目を追加し、各所轄消防の手続を統一・周知徹底するとともに、オンライン申請を可能とすべき。(プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン)

(3)水中ドローンの使用許可・届出が必要な要件の明確化
水中ドローンの使用について関係法令に基づく許可・届出が必要ないとされる要件が不明確であるため、使用の10日から2週間前には許可・届出手続を行っており、柔軟な利活用を阻害。工場の岸壁付近のように安全等の管理が徹底されている水域での水中ドローンの使用については、官民連携でユースケースを検討し、関係法令に基づく許可・届出は特段必要ないことを明確にすべき。なお、許可・届出が必要な場合であっても、包括申請等簡素化、申請から許可までの期間の短縮化等柔軟な手続体系にすべき。(港則法第31条、第32条、港湾法第37条、海上交通安全法第40条)

(4)一般用医薬品のインターネット販売に関する制度見直し
一般用医薬品の販売業において、店舗販売業の許可を得た店舗では特定販売(以下「インターネット販売」)が可能。当該許可の基準は、購入者にとって「容易に出入りできる構造であり、店舗であることがその外観から明らか」であること、一般用医薬品のインターネット販売のみを行う時間を除いて週「30時間以上」の開店時間を確保することなど、対面販売を前提とした基準を満たす必要がある。インターネット販売に特化した販売業態を許容すべき。また、インターネット販売では、販売店舗以外からの代理発送は不可とされているため、他店舗や倉庫からの配送を許容すべき。(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第25条ほか)

(5)卸売販売業者の区分に関する規制の撤廃
医薬品保管の際、メーカー(卸売販売業許可取得者)ごとの区分により物量の増減に柔軟に対処できず、倉庫スペースの有効活用に支障を来しているため、ITの進展(倉庫管理システム活用、バーコード管理等)を踏まえ、当該区分を廃止すべき。(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第34条第2項第2号、薬局等構造設備規則第3条第1項第7号)

No. 55 本人確認の手法に関する規制の見直し

(1)酒類・たばこ販売における電子的な年齢確認の実現
満20歳未満の者への喫煙・飲酒を防止するため、事業者は対面で年齢確認を行うことが必要。顔認証による登録データベースとの照合や、マイナンバー等の既存IDを用いたシステムによる年齢確認が可能であることを明確化し、利用可能なシステムの技術カタログを公表するなど、無人店舗の実現に道を拓くべき。(未成年者飲酒禁止法第1条、未成年者喫煙禁止法第4条)

(2)資格者証の真正性検証に関する技術基準の明確化
運転免許証はじめ各種資格者証の真正性検証が目視に依存している中、本人確認書類の真正性を検証するデジタル機器が備えるべき精度基準を公示すべき。

No. 56 インフラ検査・点検の手法に関する規制の見直し

(1)点検支援技術性能カタログにおけるLEVEL4の早期実装
「橋梁、トンネルの点検支援技術の公募」では、「LEVEL3(ドローンやセンサーを活用したインフラ部位・部材の状態把握)」までが対象とされ、「LEVEL4(部位・部材の健全性の診断)」は将来的に追加予定となっている。技術開発を促す観点から対応時期を明確化するとともに、リスクの低い橋梁に関する基準を順次緩和することでLEVEL4を早期に実現すべき。(「橋梁、トンネルの点検支援技術の公募(令和3年12月8日に公示)」ほか)

(2)パイプライン溶接部X線検査におけるデジタル画像の受入
ガスパイプライン敷設の際に義務付けられている施工後のパイプライン溶接部X線検査について、デジタル式のX線検査装置の出力を検査成績として扱うよう、日本工業規格(JIS)を整備すべき。(JIS Z 3104 鋼溶接継手の放射線透過試験方法ほか)

No. 57 技術基準の柔軟化

電気用品安全法における「遠隔操作機構を有する電気用品が適合しなければならない技術基準」の解釈は、定型の音声操作や複数機器連動におけるサードパーティーの技術等の活用可能範囲を限定。IoT促進に向け、性能基準へと見直すべき。(「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」別表第8)

No. 58 資格者要件の見直し

ドローン等の安全運航・最適航路選定のための航路周辺風況予報をはじめ、気象予報業務を行うには気象予報士の設置が必須。データとAIの利活用によって気象・地象・水象の予報技術の高度化による利便性や精度の向上、コスト削減を見据え、当該要件を見直すべき。(気象業務法第2条ほか)

2.新たな技術に対応した制度整備
No. 59 AI・ロボット活用に必要な制度整備

(1)建設用ロボットの実装に向けた法制度整備
担い手不足を念頭に置いた生産性向上の観点から、ICT施工の担い手としてロボット等の実装が不可欠。労働安全衛生法に基づく監督員の配置要件を見直すとともに、無人化・自動化施工の実現に向けて、安全管理に関する技術指針はじめ建設用ロボットに関する法制度を整備すべき。(労働安全衛生規則第158条、第159条)

(2)自動運転農機の高い安全機能を踏まえた規制緩和
トラクター、コンバイン、田植え機等の自動運転農機は、圃場内に飛来する鳥にも敏感に停止するほど高度な衝突防止機能を実装しているにもかかわらず、農林水産省ガイドラインによる目視必須等制約が大きい。安全機能のレベルに鑑みれば、圃場内の自動運転における遠隔監視や簡易な農道への立入り禁止措置を講じたうえで、隣接する圃場間のまたぎ、短距離の農道移動を可能とすべき。(農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン)

(3)原子力施設のデジタル活用ルール整備
原子力施設については、デジタル活用できる範囲が不明瞭であるため、AIに対する品質保証基準はじめデジタル導入に向けたルールを整備・明確化すべき。(実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第91条ほか)

(4)AI時代に即した労働安全管理手法の整備
AIを活用したストレスチェックの客観評価に関する最先端技術が確立されつつある中、労働者のメンタルヘルス不調に適時適切に対応すべく、バイタルセンシングを用いたストレスチェックに関するガイドラインを策定すべき。(労働安全衛生規則第52条の9)

(5)介護事業所で使用するデジタルデバイスの標準化
介護事業所で使用する各種業務システム、見守りセンサーや介護ロボット等デジタルデバイスの安全基準や性能基準、出力仕様が標準化されれば、サービス連携・データ一元化により、特定の機器やサービスに律速しない形で介護業務支援システムの構築が可能となる。全国の介護事業所のデジタルデバイスの普及の促進、より質の高い介護サービスの提供に寄与することから、政府や政府の委託する第三者機関による標準化を進めるべき。

(6)空飛ぶクルマに関する制度整備
国内外で空飛ぶクルマの技術開発が進む中、日本国内の利用に関するルール作りが急務。空飛ぶクルマのバス・タクシー利用ができるように、許可基準を整備すべき。中長期的なオートパイロットに関する規制整理も含めた議論の加速が必要。(航空運送事業及び航空機使用事業の許可及び事業計画変更の認可審査要領(安全関係))

No. 60 電波の円滑な利活用に向けた環境の整備

(1)ローカル5Gに関する申請要件の緩和・明確化
ローカル5G導入に関する申請手続(周辺への影響調査、周辺の5G業者との調整等)が不明確であったり、申請から認可にかかる時間やアンテナ設置場所・常駐要件等の制約が存在することにより、ローカル5G適用の柔軟な実証が困難。基地局のアンテナ移設に際した無線局免許の変更申請手続の簡素化を含め、ローカル5Gの柔軟な運用に向けた検討が進展するなか、ドローン情報基盤システムのように申請者自身が簡易かつ適正に申請可能な仕組みを整備すべき。(電波法、電気通信事業法(昭和59年第86号)に基づくローカル5G導入に関するガイドライン)

(2)ローカル5G免許者・免許申請者リストの電子的公開
地方総合通信局にローカル5G免許申請書を提出した後、同局から干渉調整を行うローカル5G免許人窓口の情報を入手、調整に入る現行プロセスを改革し、免許申請者が事前に干渉調整の要否を確認可能とすべき。申請手続の短縮化や各総合通信局での業務効率化に資することから、各総合通信局での免許者・免許申請者のリストを電子閲覧可能とすべき。(電波法関係審査基準(平成13年総務省訓令第67号)、ローカル5G免許申請支援マニュアル2.0版)

No. 61 生体認証に関する横断的なルール整備

生体情報を活用した本人確認・本人認証の普及が期待されるが、現状では、以下の事例において活用するためのルールが整備されていない。生体認証の安全な活用・普及に向けて、以下を含む生体認証の各使用パターンについて横断的なガイドラインを整備すべき。

  • 運転免許証等の身分証明書の代替
  • eシール発行時の本人確認
  • 情報銀行等でのデータ利活用時の本人同意
  • 被災者台帳作成
  • 避難者の本人確認
  • 無人店舗における年齢確認
  • 政府・行政サービスの認証
  • ワクチン接種証明書
No. 62 デジタル導入に向けた公共調達等の制度整備

(1)公共調達におけるアジャイル手法の活用
公共調達においてアジャイル型システム開発を導入するためには、仕様定義や予算の編成・執行に関して、より柔軟に対応可能な契約方法を整備することが必要。「デジタル庁における入札制限等の在り方に関する検討会」報告書(2021年8月)に基づき、デジタル庁が主導して、省庁・地方公共団体等全ての公共機関で対応できる調達制度および契約のひな型を整備すべき。

(2)国立法人における日本版バイ・ドール制度に基づく契約書の使用
研究機関や国立大学法人が発注するソフトウェア開発において、「新たな知的財産は発注者側に帰属するのが一般的」との認識が発注者側に残存。国立法人が発注する請負ソフトウェア開発についても、日本版バイ・ドール制度#7に基づく、知的財産が受託者へ帰属する契約書を活用できることを明示し、適用を徹底すべき。(産業技術力強化法第17条ほか)

No. 63 行政のデジタルマインドへの改革

(1)行政システムの仕様変更に関する運用改善
政府内では、届出書・報告書等の様式変更やシステムの仕様変更を年に複数回実施しているが(例:厚生年金、健康保険、雇用保険の届出仕様)、社内システムと連携させて入力の自動化等に取り組んでいる企業にとって、都度様式変更するシステム改修は大きな負担。システム連携している企業を念頭に、仕様変更に関する事前の通知、可能な範囲での一括改修に努めるべき。

(2)日本年金機構の電子申請の利便性向上
日本年金機構が提供する届書作成プログラムの電子申請の円滑な運用のため、仕様変更内容は全て通知するとともに、仕様の記載内容を明確化すべき。(健康保険法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令)

デジタル原則③ 官民連携原則

官民連携なくしてDXの実現は覚束ない。とりわけ、行政が有する膨大な公共・準公共データを活用可能な形で整備・公開することによって、民間による社会課題の解決やイノベーションの加速に資するビジネスが誕生し、社会に新たな価値を提供することが可能となる。データの公開は、EBPMの推進にも欠かせない要素である。

とりわけ、各府省の通知・通達、行政指導、地方公共団体の条例や規則等を含めた国の法制度を網羅したデータベースは、国として整備・公開する必要がある。また、公的部門が有する建物・地下空間を含めた3Dデータ、医療・防災に関するデータ等について、集積とAPI公開により、民間による活用を促すべきである。同時に、API連携や民間における円滑なデータ集積を可能とする環境の整備が欠かせない。

1.公共・準公共データ基盤の整備・API公開
No. 64 通知・通達、地方公共団体の条例・規則等に関するデータベース整備

各府省の通知・通達、行政指導、地方公共団体の条例や規則等については、一元的に公開された場所がなく、国民・事業者は窓口等に問い合わせて調べることが必要。法律・政省令と同様にe-Gov法令検索に掲載し、国の法制度を網羅したデータベースを整備・公開すべき。その際、PDF形式ではなく、CSV等のデータ連携が可能な形で公開することが不可欠。これにより、事業者や個人のニーズに沿った規制・制度を自動で収集・提供するサービス等も可能に。

No. 65 e-Govの整備・拡充

(1)e-Govの電子申請APIの利便性向上
e-Govポータルの電子申請APIの円滑なシステム保守・運用や、システム開発の負担軽減による行政システムのAPI利用促進という観点から、電子申請APIの仕様変更時には変更内容を一括掲載するとともに、システム障害の発生・解消の旨、速やかに通知すべき。

(2)e-Gov電子申請の容量拡大・利便性向上
e-Gov電子申請は、行政手続における重要なシステムであるにもかかわらず、「アクセス集中で閲覧できない」「受付可否の判断が遅い」等の課題あり。電子申請による利便性向上のためにも容量を拡大し、安定的に稼働可能とすべき。

(3)e-Gov電子申請の窓口体制の整備
システム上の課題が生じた際の問合せ窓口が不透明であることから、窓口体制を整備・強化すべき。

No. 66 医療に関するデータ利活用

(1)健康・医療分野のDXに関する全体ビジョンの提示
各省庁・組織が各々実施している施策を束ね、健康・医療分野のDXによって実現する社会の全体ビジョンを描き、これに基づく一貫した施策を国として推進すべき。また、そのビジョンを国民にわかりやすく示すとともに、様々な健康・医療データ利活用の便益に対する理解醸成に努めるべき。その際、匿名加工情報や仮名加工情報の利活用も進むよう、それらの性質や意義、便益に関する十分な説明が重要。

(2)個人起点のデータ活用を促進する仕組みの整備
個人を起点にライフコースに亘る様々な健康・医療データについて、要配慮個人情報も含めて蓄積・活用できる仕組み(情報銀行における要配慮個人情報の取り扱い等)を早急に整備すべき。ライフコースデータの連携において、データの標準化は不可欠であり、電子カルテデータの標準化とその普及も急務。

(3)公的データベース利活用の環境整備
わが国が有する公的データベースを有効活用するために、NDBとその他公的データベース(全国がん登録DB、難病・小児DB等)および死亡情報との連結を早急に実現させるとともに、それらデータベースを民間事業者が利用する際の要件緩和や、データ提供までの手続の迅速化、クラウドで利用できる仕組みの構築等の環境整備を求める。

No. 67 空間に関するデータ利活用

(1)デジタルツイン納品の推進
3Dモデルは仮想空間の活用において重要な役割を担う。また、事業者・地方公共団体等においてデータを活用した運営・維持管理を実現するうえでも不可欠。国・地方の公共工事等の工事請負契約において、特に一定規模以上の建物を中心に、リアル空間の建物とそのツインの情報である3Dモデル、BIM/CIM#8データの双方の納品を設計者・施工者に求める「デジタルツイン納品」を推進すべき。

(2)BIM/CIMモデルの100%普及
建設の現場では、BIM/CIMモデルの普及が不十分であるために、3Dで作った場合でも2Dへの変換等を余儀なくされるケースがある。建築士法上でデジタルデータによる設計図書を明確に位置付けたうえで、100%普及に向けた工程表を描くべき。また、様々なステークホルダー間での活用や共通基盤へのデータ集積に向けて、データ形式や交換方法、積算方法の標準化が必要であり、技術的な側面ではグローバルな動向にも留意しつつ、推進すべき。

(3)BIM/CIMデータのデータベース構築
官民の3DモデルやBIM/CIMデータの集積により、様々な施策・技術・事象のシミュレーションや実証実験における活用が期待される。「国土交通データプラットフォーム」「Project PLATEAUポータルサイト」等、誰もがアクセス可能なデータプラットフォームに集積・公開すべき。

(4)地下空間情報のデジタルデータ化
地下埋設物(電線、ガス管、上下水道管等)の位置情報について、電子申請・許可での活用や、CAD#9データでの図面取得という観点から、連携可能な形でデジタルデータ化し、集積すべき。(道路法第77条ほか)

No. 68 住宅に関するデータ利活用

(1)建物の耐火性能や耐震性能等に関するデータベース整備・公開
地方公共団体の防災対策を検討するうえで、建物の耐火性能や耐震性能等をデータで収集・分析できるような仕組みを構築することが有効であり、国が主導してデータベースを構築するべき。こうした情報を建築物の所有者等に限りオンラインで開示することで、個人においても防災対策の検討や各種保険契約にデータを活用可能となる。(建築基準法第93条の2ほか)

(2)ハザードマップポータルサイトの利便性向上
国や地方公共団体が公表する情報を一元化したハザードマップポータルサイト#10への最新情報アップデートを地方公共団体に義務付けるとともに、宅地・建物取引の重要事項説明にも活用可能とすべき。(水防法第15条)

No. 69 出入国に関するデータ利活用

(1) 外国人本人がアクセス可能なデータベースの構築
マイナンバーを通じて、税や住民票、他の社会保障給付に関する情報、更に法務省の外国人に関する情報と外国人雇用状況届出情報も含めた全体でのデータ連携を実現すべき。これにより、外国人が各種行政サービスを享受するうえで必要な申請・届出および添付書類を可能な限り不要とするとともに、外国人本人がマイナポータル等から自身の出入国履歴・就労資格等を含めた公的情報を一元的に把握・取得し、履歴証明として活用できるようにすべき。当該証明は、外国人にとって困難の多い銀行口座の開設や住居・オフィスの賃貸借契約、金融機関での与信審査、更に就職活動や入園・入学等、様々な場面において活用できる余地があり、生活基盤確立の円滑化に資する。

(2)外国人旅行者向け免税カウンターにおけるデータ連携
外国人旅行者向け免税カウンターでは、旅券(パスポート)上の上陸許可の認印を探し、上陸年月日や在留資格を確認することで免税対象者判定を行うが、認印が多いケースや自動化ゲートを利用したケースにおいて明確な判定が困難。免税対象者判定を行う際に、出入国在留管理庁の入国管理データをパスポートで照会可能にすることで、迅速な免税可否判定を可能とすべき。また、出入国在留管理庁のデータと国税庁が管理するデータを連携させることで、免税カウンターでの業務負荷を軽減し、効率的かつ確実な免税処理を実現すべき。

デジタル原則④ 相互運用性確保原則

各所で異なるルールや書式・様式等の整合性を確保し、システムの相互運用性を確保することで、新たなデータ集積が可能となる。

まずは国内の多様なステークホルダーが有するデータについて、相互接続可能な形で集積する仕組みを講じるべきである。例えば、地下埋設物に関するインフラ事業者間のデータ連携が進めば、インフラサービスの効率化と安全性の向上に大きく貢献する。

更に、消防設備の設置基準から就労証明書の様式に至るまで、地方公共団体間の不統一はデータ連携やデジタル技術の導入に向けた大きな障壁となっており、原則①の手続の電子化で列記した事項も含め、整合性を確保すべきである。

1.データ利活用に向けたデータベース等の整備
No. 70 インフラ等に関する事業者間のデータ共有

(1)インフラ事業者の設備情報に関するデータ連携
電気・ガス・水道・通信等のインフラ事業者は、各々が保有・管理している設備情報を共有する仕組みを有していないがために、インフラ誤切断や工期の長期化という問題を惹起。埋設物の有無確認作業の共通化や共同工事・共同立会に向けて、政府はインフラ事業各社が保有する設備情報(図面・保全に関する情報等)を共有するルールを整備するとともに、データベースの構築を支援すべき。

(2)建物の仕様等に関する共有データベースの構築
建築確認申請や住宅性能表示制度等に関する申請時に、仕様をはじめとする必要書類を何度も提出しなければならないため、事業者にとって多大な負担。指定された実験方法で事業者が取得した仕様の認定番号をはじめ、各種仕様に関するデータベースを構築し、審査機関や行政機関等、関係者間で共有すべき。ひいては、行政・指定確認検査機関・申請者側等官民双方の業務効率向上の観点から、確認申請、確認済証交付、完了検査申請、検査済証交付・申請に関する質疑等を全てシステム上で行えるように、ステークホルダー共通の一元システムを構築すべき。(建築基準法施行規則第1条の3第1項ほか)

(3)非化石証書に関するデータ利活用
現在、非化石証書の取引や保有量管理は日本卸電力取引所(JEPX)のシステム上で行っている一方、実証中のトラッキング取引は別システムで運用し、一体化していない。また、会員登録や相対取引についてWordで作成した申請書を提出するなどアナログな方法が残存。非化石証書の取引の活性化、集約されたデータの行政での有効活用、迅速な公表・政策決定への活用に繋げるため、取引参加の登録から取引の実行、決済、保有量管理、償却、各種報告等への利用・証明書発行等を一元的に行えるシステムを構築すべき。

No. 71 上下水道事業におけるデータ利活用

地方公共団体による上下水道事業においては、事業運営の効率化のためのデジタル技術およびデータ利活用が遅れている。上下水道施設の監視制御システムがベンダー独自仕様のため、他社システムとのデータ連携やクラウドシステム活用が困難であり、ビッグデータ解析やAI技術を用いたアプリケーション等のデジタル活用が進んでいないのが現状。地方公共団体が発注する上下水道事業のシステムに関するガイドラインを策定するなど、システム間のデータ連携を可能とする監視制御システムのオープンインターフェース化と汎用PLC(電子制御装置)の活用を周知徹底するとともに、地方公共団体にも政府情報システム同様にクラウド・バイ・デフォルト原則を適用すべき。(各地方公共団体の機械・電気設備工事標準仕様書)

No. 72 雇用・労働に関するデータ利活用

(1)定年退職後の健康保険証の継続利用
定年退職後の継続再雇用において、被保険者資格喪失届・取得届を提出した場合にも健康保険証を再発行することなく継続使用できるよう、マイナンバーカードの健康保険証利用の促進を含め、措置を検討すべき。(「嘱託として再雇用された者の被保険者資格の取扱いについて(通知)」の一部改正について(通知))。

(2)企業型年金規約関連事務の簡素化に向けたデータ連携
企業型年金規約において、事業主の名称・住所、実施事業所の名称・所在地に変更があった場合は証憑書類を添付して地方厚生局に届け出ることが必要。厚生労働省・法務省・日本年金機構がデータ連携することで、証憑書類の添付を不要化し、簡易な届出を実現すべき。(確定拠出年金法第6条ほか)

No. 73 研究開発等に資するデータ利活用

(1)e-CSTIのデータ利活用
内閣府は、関係省庁や国立大学・研究開発法人等の関係機関に対して分析機能・データを共有するプラットフォーム「e-CSTI(Evidence data platform constructed by Council for Science, Technology and Innovation)」を構築している。しかし、現状は政府内での活用に止まっており、スタートアップでの活躍を希望する経営人材がこれを活用して、研究者にアプローチすることは難しい。政府はe-CSTIにおける研究データの官民連携を促進すべき。

(2)PIO-NETのオープンデータ化
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)が保有する消費生活相談情報については、一部は「消費者生活相談データベース」で公開されているものの、その内容・範囲は限定的。消費者行政に必要なデータ分析や新たなサービスの創出等に向けて、研究者や事業者がビッグデータとして活用できるよう、個人情報保護等に十分配慮したうえで相談内容のテキスト等をオープンデータ化すべき。併せて、CSV形式でのダウンロードを可能とする、より詳細な分類を公表するなど円滑なデータ利用に向けた環境を整備すべき。(消費者庁「国の行政機関等におけるPIO-NET情報の利用指針」)

(3)製品安全に関する届出事業者・製品情報のオープンデータ化
製品安全4法(消費生活用製品安全法、電気用品安全法、ガス事業法、液化石油ガス法)に関し、販売者・消費者にとって、自らが取り扱うまたは購入する製品が法令に適合していることが個別請求手続なしでも確認できるよう、経済産業省内の届出事業者等情報をオープンデータ化すべき。また、消費生活用製品安全法や電気用品安全法に基づいて登録されている製品や事業収束製品に関する情報は、旧逓信省や日本電気協会発行の電気用品型式承認集に掲載されているものの、情報は一部を除き図書に限られている。電子的に公開し、広く閲覧・活用可能とすべき。(電気用品安全法第3条、第7条ほか)

(4)化学品管理の一元化に向けたデータベースの整備
化学品管理においては同一物質であっても法律ごとの申請が求められるところ、化学物質名の表記ルール等を統一すべき。また、化学物質を特定するCAS登録番号(化学物質に付与する識別番号)等の情報に紐づけて省庁間で共有することで、申請をワンストップ化するとともに、化学品に関する情報を蓄積・更新可能なデータベースを確立すべき。(化学物質排出把握管理促進法、毒物及び劇物取締法、労働安全衛生法)

(5)材料データベースの整備
材料研究開発を加速するためには材料ビッグデータが必要であるが、物質・材料研究機構や産業技術総合研究所等が提供する各々のデータベースが連携しておらず、材料データの統一的な利用が困難。新たなビジネス創出に向けて、研究開発に活用しやすい体制・形式での材料データベースの整備が必要。

No. 74 国家資格取得者に関するデータ連携

国家資格はじめ各種資格の取得時にマイナンバーに資格情報を紐づけ、マイナポータル等から更新期間等も含めて一元的に把握可能とすべき。

例えば、建設業で毎年実施される経営事項審査に関する手続では各種資格者証等(例:建設業法に基づく監理技術者証、主任技術者証、労働安全衛生法に基づく各種免許証・修了証)の提出が必要であり煩雑。各種資格者情報や所属企業に関する情報を統合し、マイナンバーを入力することで必要な資格者の在籍等を確認できる仕組みとすべき。国家資格ごとに発行している資格者証も電子化すべき。(建設業法第27条の23、労働安全衛生法第61条第3項ほか)

No. 75 国家プロジェクトの研究開発に関するデータ連携

国家プロジェクトの研究開発の進捗・成果を一元的に把握するデータベースを構築し、閲覧可能とすべき。また、研究開発ごとにIDを付与することにより、日本版バイ・ドール制度に基づいて企業等がJ-platpat(特許情報プラットフォーム)に出願する際にそのIDを記載すれば出願情報が知財委員会(ファンディングエージェンシーやプロジェクト参加者で構成)に自動的に通知されるようにすべき。(産業技術力強化法第17条)

2.地方公共団体間のルールの整合性確保
No. 76 地方公共団体間の様式・基準統一

(1) 就労証明書の様式統一・完全電子化
就労証明書の押印撤廃は現場レベルで未だ不十分。押印撤廃および雇用保険や厚生年金に関する届出と重複している記入事項の簡素化等BPRを徹底し、標準化・電子化を推進すべき。(内閣府「就労証明書の標準的な様式の改定について」ほか)

(2)消防設備の設置等に関する審査基準の統一・公開
消防設備の設置等に関する審査基準や公開有無が地方公共団体によって異なることから、審査基準を全国的に統一したうえで、各消防のホームページ上でも公開すべき。(消防法)

(3)警察における車庫証明取得手続対応の統一化
所管警察署ごとに車庫証明取得手続の電子化や求められる要件が異なるため、当該手続を全国的に統一すべき。(自動車の保管場所の確保等に関する法律第4条第1項ほか)

(4)医療機関への医薬品等の納入に関する手続の統一・電子化
医療機関への医薬品等の納入に関する入札・納品・請求等の各種手続において、書面・押印が残存。中央省庁では不要とされる書類が地方公共団体では求められる場合も。医療機関に医薬品等を納入する際に、紙の納品書ではなくロット番号や使用期限を含んだ納品データの提供を認めるべき。法務省の「登記情報連携システム」を活用して申請書等への登記事項証明書の添付を省略するなど、中央省庁と地方公共団体での手続を統一すべき。(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第158条の4)

3.イコールフッティングの確保
No. 77 イコールフッティングの確保

日本の利用者にサービスを提供する際、外国法人や外国のIaaS・SaaS等のインフラやソフトを利用する事業者には、必ずしも日本の規律が適切に執行されていない。相対的にコストがかかる国内にデータを置き規律を遵守する事業者と、外国にデータを置き規律を遵守しているか不確かな外資事業者との間で、イコールフッティングが確保されていない。是正に向けて、日本でサービスを提供する場合には確実に日本の各種規律が適用されるよう措置すべき。

デジタル原則⑤ 共通基盤利用原則

データ利活用の円滑化は経済社会のDXを進めるうえで最重要課題であり、人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データであるベースレジストリは、その中核を担う。政府においては、個人についてはマイナンバー、個人4情報(氏名、住所、性別、生年月日)等、法人については会社法人等番号、法人番号、法人資格等を指定したところであり#11、これらを徹底的に活用してデータを相互につなぐことが求められている。

マイナンバーは、個人が行政手続や行政の保有する自己情報に手軽にアクセスできる社会における鍵となるが、その活用範囲は未だ限定的で、期待された効果を十分に発揮していない。そこで、マイナンバーを過度に保護する特定個人情報を撤廃し、本人同意に基づく第三者提供を円滑化することで、教育・金融等の分野におけるデータ連携を推進すべきである。行政手続におけるマイナンバー連携が実現すれば、添付書類や手続そのものの削減が可能になることはもとより、ワンストップ化による利便性向上も期待できる。マイナンバーカードの普及促進に向けて、新サービスの搭載等の機能拡充も重要な課題である。

法人については、GビズID等を活用して法人IDを一本化すべきである。その際、一法人に対してIDの複数・枝番付与を認めることが有効である。

1.ベースレジストリの参照・利用の徹底
No. 78 マイナンバーの徹底活用に向けた特定個人情報の見直し

マイナンバーを含む個人情報は「特定個人情報」に該当し、一般の個人情報に比して利用範囲・利用目的、収集・保管、第三者提供、委託、罰則等の面で規制が厳しい。個人情報については、本人同意を根拠とする第三者提供が認められている一方、特定個人情報については、番号法19条各号が特に認める場合を除き、本人の同意があっても第三者提供が禁じられている。マイナンバー制度を徹底的に活用するため、特定個人情報を撤廃し、個人情報と同等の位置付けとすべき(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)第2条、第19条、マイナンバーガイドライン(事業者)第4-3-(2))。

No. 79 マイナンバーを活用した添付書類の省略(行政等)

企業が規制当局やハローワーク等に対して行う行政手続については、マイナンバーの効果的な活用によって大幅に手続コストを削減することが可能。マイナポータルの自己情報取得APIの対象として、マイナンバーを入力した場合には添付書類を不要化すべき。

対象とすべき手続の例:

  • 警備業法ほか各業法に基づく役職員の住民票の添付
  • 育児休業給付金手続における母子手帳(写)の添付
  • 雇用継続給付・育児休業給付に関する申請手続における確認書類の添付
No. 80 マイナンバーを活用した添付書類の省略(民間)

民間企業の担う行政手続には、行政機関が別途発行する書面を必要とするものが多くあり、DXを阻害。現状、行政手続に関するデータは、マイナポータルの自己情報取得APIの対象になっていない。情報提供ネットワークシステムを用いた情報連携の対象に、マイナンバー法の別表第2に記載のない事務を追加し、当該事務の対象となる情報を取得可能とすべき。

対象とすべき事務・情報の例:

  • 住宅ローン手続時の住民票の写し
  • 相続手続代行時の固定資産税評価証明
No. 81 マイナンバーを活用した手続の省略

(1)許認可申請手続におけるマイナンバーの活用
許認可申請手続における身分証明書の取得が大きな負担となっている現状に鑑み、マイナンバーを申請時に記入することで、住民票や身分証明書の提出を不要とすべき。(古物営業法、建設業法等)

(2)政府内で重複する厚生年金・国民年金手続のワンスオンリー
厚生年金・国民年金に関する手続のうち、他の行政機関・健康保険組合等への届出と重複するものについては、届出・申請先機関(行政機関、健康保険組合等)が複数に跨っていても、マイナンバーを活用してバックヤード連携すべき。

No. 82 マイナンバーを活用したデータ連携の実現

(1)学習者IDとマイナンバーのデータ連携
転出元・転出先の学校間で成績等の情報を連続的に管理する観点から、マイナンバー関連法を改正し、学習者IDとマイナンバーを紐づけるべき。(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第9条)

(2)金融関連手続におけるマイナンバーの有効活用
顧客の口座開設時や住所・氏名変更手続を電子化・円滑化するため、J-LIS(Japan Agency for Local Authority Information Systems:地方公共団体情報システム機構)等を活用して本人同意に基づきマイナンバーと連携することにより、金融機関が本人情報や更新情報を入手可能な仕組みを構築すべき。併せて、AML(Anti-Money Laundering)や相続発生時に、マイナンバーに紐づけて顧客の情報を取得可能な仕組みを構築すべき。

No. 83 マイナンバー制度の利便性向上

(1)マイナンバー授受に関する手続の電子化・システム化
マイナンバーの授受に際しては、給与・報酬・謝礼金等支払いや行政の競争入札参加資格登録において多大な手続コストが発生。また、地方公共団体ごとにフォーマットや求めるデータ、提出方法が異なる。提出を電子化するとともに、安全性が担保された共通授受システムを構築すべき。

(2)マイナポータルにおけるAPI認証時の包括同意の容認
顧客へのサービス提供にあたり顧客の個人情報を必要とする事業者は、マイナポータルの自己情報取得APIにより、行政機関等が保有する特定個人情報を取得できるが、取得の都度、本人の同意を得る必要。自己情報取得APIの利用にあたり、事前に本人の同意を得た利用目的、開示範囲、開示先について、本人が同意した一定の期間内に限り、事業者が任意の機会に本人の特定個人情報を行政機関等から取得可能とすべき。また、自己情報取得APIに限らず、将来的に自己情報取得APIに準ずるAPIによって本人同意を前提に行政機関等から第三者提供される他の個人情報についても、同様の同意に基づく情報の取得を可能とすべき。(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第8条第2項第一号、マイナポータル自己情報取得API利用ガイドライン(1.2版)、マイナポータルAPI利用規約(1.1版))

No. 84 マイナンバーカードの利便性向上

(1)電子証明書の利便性向上
マイナンバーカードの電子証明書に格納されたシリアル番号を署名検証者が他企業に提供した際、当該他企業で本人確認に使用することが可能か否か明確に示されておらず、提供できないケースも。本人同意の取得、厳格な保管ルール、安全なログ管理等を条件に、同じグループ内の他企業に提供し、当該他企業で使用できるよう、公的個人認証法の解釈を示すべき。併せて、J-LISへの電子証明書の有効性照会の際に、住所変更等で証明書が更新された住民について、最新の住所等と併せて、更新後の電子証明書のシリアル番号も取得可能とすべき。(電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(公的個人認証法)第18条、第56条、第57条)

(2)マイナンバーカードへの電子マネー機能搭載
マイナンバーカードの利便性向上、普及やキャッシュレス社会推進等の観点から、今後のマイナンバーカード更新に際しては、電子マネーサービスを追加できる仕様へと変更すべき。その際、法令で求められている電子マネーサービスを提供する事業者の情報について、カードへの直接記載ではなく、NFCリーダライタ(スマートフォン等)でカードを読み込むことで情報を確認できるような手段を認めるべき。(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第18条ほか)

No. 85 行政サービスIDの附番

現在、法令や予算に関するIDはあるものの、行政制度や公共施設の予約等各種行政サービスに対して、国・地方公共団体を横断し、継続的に利用できる標準化されたIDが欠如。また、行政サービスを名称で管理しているために、府省庁・地方公共団体間で異名同一サービスや同名異サービスが混在し、各種行政サービスの法改正の状況や団体ごとの対応差異の把握、統計・分析、利用者のニーズに沿ったプッシュ型の行政サービス展開を阻害。こうした課題の解決を見据え、全ての行政サービスに対して、国・地方公共団体を横断し、利用者目線に立った悉皆的・継続的かつ団体間で重複のないIDを附番すべき。併せて、その附番先の行政サービスカタログも整備すべき。

No. 86 既存ID・コードの連携・統合

(1) 企業IDの連携
企業IDは、登記における会社法人等番号、国税庁の法人番号、政府の補助金申請システム(jGrants)等の利用におけるGビズIDに分かれているため、データ活用に向けてバックヤードでのデータ連携を進めるとともに、企業IDの一本化を検討すべき。

(2)企業IDと有価証券報告書における企業データの連携
政府における各種統計・調査等の入力情報について、事業者・行政府双方の負担が大きい現状に鑑み、会社の法人番号と有価証券報告書等の企業データを結びつけ、政府内で閲覧する体制を構築すべき。(建設業法施行規則第10条ほか)

(3)登記簿番号による手続への対応
商業登記の変更申請後に登記簿謄本が取得できるまで日数を要する。登記簿謄本が必要な手続において登記から手続までのリードタイムが非常に短く、期限直前の対応を余儀なくされる。書面で取得した登記簿謄本ではなく、商業登記簿登録完了と同時に登記簿番号を発行し、それによって各種登録申請を行えるようにすべき。

(4)本人確認手続に関する証明手段の電子化
令和3年度税制改正に伴い一部電磁的方法での提供が可能となるも、振替国債等の利子等課税の特例(J-BIEM)の非課税適用申告手続、所得税等の軽減・免除を定める租税条約等の適用申告手続において、非居住者等の氏名・住所等の規定に基づく書類による確認が引き続き必要。本人確認手続に関する証明手段として、取引主体識別子(LEI)や税務当局がアクセス可能な各国の納税者番号(GIIN等)による代替を認めるべき。(租税特別措置法第3条ほか)

No. 87 GビズIDプライム取得手続の簡素化・簡略化

GビズID制度では、一社に一つのIDプライムアカウントが付与されるが、とりわけ多数の部署が存在する大企業においては、社内横断的な共有に煩雑な手続が必要となり、十分な活用が難しい。IDプライムと同じ権限を持つアカウント種別を、IDプライムに枝番を付す形で新たに設けるべき。

以上

  1. 例えばIMD世界デジタル競争力ランキングにおいて、日本の順位は23位(2019年)⇒27位(2020年)⇒28位(2021年)と、毎年連続して下落。
  2. 経団連「Society 5.0-ともに創造する未来-」(2018年11月)、
    経団連「Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~」(2020年5月)参照。
  3. デジタルファースト(個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結)、ワンスオンリー(一度提出した情報は、二度提出することは不要)、コネクテッド・ワンストップ(民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現)の3原則。
  4. 第2回デジタル臨調(2021年12月22日)において策定された、デジタル完結・自動化原則、アジャイルガバナンス原則、官民連携原則、相互運用性確保原則、共通基盤利用原則の5原則。
  5. 経団連のアンケートによれば、2020年12月に内閣府が「地方公共団体における押印見直しマニュアル」を発出した後も、各団体の対応には著しい差異が見られる。
  6. 経済産業省「GOVERNANCE INNOVATION Ver.2: アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」(2021年7月)
  7. 産業技術力強化法第17条に規定される、政府資金を供与して行う委託研究開発に係る特許権等について、一定の条件を受託者が約する場合に、受託者に帰属させることを可能とする制度。
  8. Building/Construction Information Modeling, Management の略。計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る。
  9. Computer Aided Design の略。コンピュータを用いた設計・製図を指す。
  10. 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/
  11. ベース・レジストリの指定について(2020年5月)参照。
    https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/SpecifyingBaseRegistry.pdf

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