1. トップ
  2. Policy(提言・報告書)
  3. 科学技術、情報通信、知財政策
  4. 宇宙基本計画に向けた提言

Policy(提言・報告書)  科学技術、情報通信、知財政策 宇宙基本計画に向けた提言

2023年3月14
一般社団法人 日本経済団体連合会

(PDF版はこちら

1.はじめに

現在、特に安全保障分野において、宇宙システムが果たす役割はより重要になっている。ロシアによるウクライナ侵略では、衛星画像が戦闘状況の把握などに活用されている。わが国周辺の安全保障環境が厳しさを増すなか、安全保障上の脅威に対応する宇宙システムの強化が急務である。

こうしたなか、政府は昨年12月16日に国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画を閣議決定した。国家安全保障戦略では、防衛力の抜本的な強化を目指すなかで、宇宙の安全保障分野での対応能力を強化する方針が示され、わが国の宇宙産業の支援・育成まで明記された。宇宙安全保障の構想を取りまとめたうえで、宇宙基本計画に反映させることとされた。

宇宙開発戦略本部は昨年12月23日に宇宙基本計画工程表(令和4年度改訂)を決定し、岸田首相が同本部の会合で、本年夏をめどに宇宙安全保障構想を策定したうえで、3年ぶりに宇宙基本計画を改定することを表明した。

経団連が昨年7月に「宇宙基本計画の実行に向けた提言-令和5年度宇宙関係予算で担保すべき重点事項-」を公表してからのこのような情勢変化を踏まえ、新たな宇宙基本計画に盛り込むべき重点事項について、提言を取りまとめる。

2.宇宙安全保障の重要性

いまや宇宙は安全保障上の領域の一つである。安全保障上の領域は、従来の陸、海、空に加えて、宇宙、サイバー、電磁波にまで拡大し、各領域の融合も進んでいる。

とりわけ昨年2月から続くロシアのウクライナ侵略において、宇宙の安全保障利用が顕在化している。民間の商用光学・合成開口レーダ(SAR#1)衛星の画像が戦闘状況の把握や軍事作戦の実施など偵察や監視のために活用されているほか、民間の低軌道衛星コンステレーションにより通信や電波情報収集が行われている。また、測位衛星(GPS)により、車両、無人航空機(UAV#2)、ミサイルなどの位置が確認されている。一方、ウクライナ侵略の前後では、ウクライナ周辺で妨害電波が発せられ、GPSの受信が妨害された。商用静止通信衛星がサイバー攻撃を受けて、通信が不能になった事例も生じている。

このように、世界各国、とりわけ米国、中国、ロシア、欧州、インドは宇宙安全保障の確保に向けた取り組みを強化しており、ウクライナ危機以降、各国宇宙産業の安全保障分野への展開も加速している。特に米国は、ミサイル防衛のための小型衛星コンステレーションProliferated Warfighter Space Architectureを構築しており、そこには大企業だけでなくスタートアップも参入している。

わが国周辺で北朝鮮がミサイルを連続して発射し、安全保障上の脅威が高まるなか、わが国としても宇宙安全保障の強化の方針を明確にし、これを支える宇宙産業基盤を強固にしていく必要がある。またウクライナ情勢により、宇宙安全保障を支えるために必須の宇宙輸送能力にも影響が及んでいる。現在、ロシア製のソユーズロケットが利用できなくなっており、世界的にロケット打ち上げ供給不足の状況にある。わが国としての自立的な宇宙活動を保証する宇宙輸送能力を強化する必要がある。

3.宇宙政策の重要事項

(1) 宇宙安全保障の確保

安全保障分野における宇宙利用の必要性が益々高まる中、わが国として自立した宇宙での対応能力の維持・拡大を図る必要がある。わが国の宇宙産業の生産・技術基盤を強化し、国産技術による衛星やロケットなど宇宙システムの開発、製造、打ち上げ、利用を推進すべきである。

① 準天頂衛星の開発

準天頂衛星システムは民生分野と安全保障のいずれでも活用されている。わが国の社会インフラとして定着しており、測位情報を用いた新たなサービスの提供が拡大している。近年では携帯電話に加えて、自動車やインフラなどの分野で測位情報が活用されている。また、測位情報が含む位置、航法、時刻の情報の活用は、わが国の安全保障能力の強化に資する。

現在、準天頂衛星の4機体制が運用されており、まずは持続測位が可能となる7機体制を構築すべきである。2023年度から2024年度にかけて5号機、6号機、7号機を打ち上げる必要がある。

今後は、仮に1機が故障しても測位サービスを安定的に提供できるようにするバックアップ機能を強化し、また高精度測位が利用可能な場所を拡大するため、7機体制から11機体制への拡張を目指すべきである。衛星測位機能の向上により、安定性が高まることに加え、高精度測位を利用した新たな事業展開も期待される。アジア・オセアニア圏にもサービスが拡大できれば、新たな商品の開発や販売にも有効であると期待される。

② 早期警戒機能の整備

早期警戒機能を保有する小型衛星コンステレーションの構築が急務である。周辺諸国による極超音速滑空ミサイル(HGV#3)の急速な開発に対応し、宇宙から同ミサイルを探知・追尾できるようにする必要がある。

早期警戒機能を確保するため技術開発を推進すべきである。具体的には、防衛省の「衛星を活用したHGV探知・追尾等の対処能力の向上に必要な技術実証」事業を着実に進めるとともに、早期装備化のため実用機の要素技術開発を実施すべきである。

また、HGV発射時の初期探知に必要なセンサの整備も進めるべきである。国産宇宙用赤外線検出素子の高解像度化・高感度化、赤外センサシステムとデータを短時間で伝送する通信システムの継続的な開発などが必要である。

③ 宇宙領域把握(SDA#4)能力の強化

宇宙領域把握(SDA)システムの運用を2023年度に確実に開始し、宇宙領域把握(SDA)衛星を2026年度に打ち上げるべきである。今後はSDA情報を用いた指揮統制機能を確保するとともに、米国や同志国との間で情報共有など多面的な連携を推進し、将来的に世界的なSDAネットワークの構築を目指す必要がある。

SDAシステムの運用向上に向けた取組みも重要である。監視領域の拡大や状況把握手段の多様化などに備え、観測センサを充実させる必要がある。機動的で小型のSDA衛星の複数機の運用に向け、2号機以降の整備を技術開発も含めて継続して推進すべきである。

SDAには多くの異なる場所での観測が有効であるため、民間企業が衛星など宇宙物体の位置や軌道等を把握する能力の活用を進めるべきである。例えば、わが国をはじめ各国の民間企業が、軌道上物体の位置情報を提供するサービスを開始しており、政府がこうしたサービスを活用することが有効である。

④ 防衛衛星通信の強化

防衛衛星通信は、宇宙領域を活用した情報共有により、部隊の指揮統制の基盤となるものである。防衛通信衛星「きらめき」1号機および2号機の後継機となる次期防衛通信衛星の開発・整備を進めるべきである。また、次期防衛通信衛星の検討にあたっては、フルデジタル化技術の適用によって、通信の容量拡大や柔軟性向上を図ると同時に妨害に対する抗たん性を確保する機能の実現を検討すべきである。

衛星通信の需要が増大するなか、宇宙領域における装備品間の連携や、情報収集や指揮命令の伝達を行うためには、通信の遅延時間が少ない通信網の整備が求められる。従来のXバンド防衛衛星通信網に加えて、防衛専用の衛星通信網を整備する必要がある。衛星コンステレーションによる光衛星間の通信を基に、商用衛星の活用も含めた新たな通信網を構築すべきである。

商用衛星や通信網に対するサイバー攻撃への対策の強化も求められる。政府が利用中の商用衛星に対して攻撃を受けた場合、民間企業に対する損害補償のあり方の検討を進めることも必要である。

衛星通信の需要の増大への対応として、従来から利用してきた周波数帯よりも広い範囲の周波数帯で衛星通信を使用するための技術開発や実証を行うことも必要である。

⑤ 宇宙システムの抗たん性#5の確保

宇宙システムの抗たん性を確保するため、サイバー攻撃への対策を強化し、電子戦や情報戦に対応する必要がある。人工知能(AI)技術など民間の技術も活用しながら、サイバーセキュリティ技術の開発を推進していく必要がある。

政府は、わが国が管理・利用する宇宙システム全体の機能が、多様なリスクや脅威のもとでも維持されることを保証するために、省庁横断的な机上演習を実施している。2022年度の机上演習では、参加している民間事業者が増加した。今後の机上演習においても、官民の連携が強化されるように、民間事業者の参加を促進すべきである。

⑥ 情報収集・警戒監視・偵察(ISR#6)能力の向上

わが国の厳しい安全保障環境において、周辺諸国による弾道ミサイルや核実験について、事前に的確に把握する能力を強化すべきである。具体的には、情報収集衛星(IGS#7)10機体制(基幹衛星:4機、時間軸多様化衛星:4機、データ中継衛星:2機)を確立する必要がある。また、短期打上型小型衛星(即応小型衛星)の実証を推進することも求められる。

また、電波情報収集衛星の開発を進めるべきである。電波発信源の位置やGPSの電波妨害の範囲を特定することは、海上および陸上のいずれにおいても有効である。

今後は、最短の時間間隔で画像を撮影できる時間分解能を向上させ、撮影データを短時間で共有するために大容量かつ低遅延での伝送が必要である。サイバーセキュリティ対策を十分に行った上で、民間の小型観測衛星(光学衛星および合成開口レーダ(SAR)衛星)や通信衛星の活用を図ることも有効である。

⑦ 海洋状況把握(MDA#8)能力の強化

昨今、わが国周辺の海洋の安全保障環境が厳しさを増しており、宇宙を活用してわが国の周辺海域の状況を把握する能力を強化すべきである。まず、船舶自動識別装置および光学衛星や合成開口レーダ(SAR)衛星のデータや、電波情報などの衛星情報を即時に収集するシステムを構築することにより、海洋状況把握能力を強化すべきである。

今後は、船舶自動識別装置(AIS#9)の次世代型となる電波情報収集・衛星船舶のデータ交換システム(VDES#10)の通信機器を搭載した小型衛星コンステレーション計画を推進し、関係省庁が共通して利用する枠組みを構築することが求められる。

(2) 宇宙産業基盤の強化

今日、わが国の安全保障や経済社会における宇宙システムの役割が大きくなっているとともに、人類の新たなフロンティアの開拓に向け、宇宙科学・探査についてもわが国が積極的に役割を果たしていくことが重要である。そのため、新たな宇宙基本計画には、わが国の宇宙活動の自立性を支える宇宙産業基盤の強化を具体化する施策を盛り込むべきである。

宇宙産業基盤の強化のためには、官民を合わせて宇宙利用を拡大させ、宇宙産業の規模を拡大させることが重要である。まずは、政府が長期的かつ安定的に調達を行うアンカーテナンシーを行うことで、安全保障のみならず広義の安全保障である防災・減災やインフラ監視などの分野において、政府、地方公共団体、民間における衛星データの利用を促進することが必要である。その際、機微情報を除いて、できる限り速やかに民間企業が衛星データを活用できるようにすることが重要である。衛星データ利用の拡大を促進することで、衛星や輸送システムの研究開発や製造の需要を創出し、宇宙産業の拡大につなげる好循環を構築していくべきである。

また、国際協力プログラムであるアルテミス計画などについては、宇宙産業基盤の強化に資するものであり、将来的な産業化も視野に入れながら取組みを進めるべきである。特に月面や月周辺領域については、他の産業分野からの参入により、わが国の宇宙産業の新たな成長の場となることが見込まれる。

① 契約制度の改善

宇宙産業基盤の強化に向けては、宇宙関連企業において適正な利益が確保され、新たな人材育成や技術開発に投資を行う好循環が形成されることが重要である。しかし、これまで開発難易度の高さや、長期間にわたる履行に伴って発生するコスト上昇に対し、企業側は利益からその費用を負担せざるを得ないなど、宇宙事業は利益を確保することが難しい構造になっている。

宇宙産業が事業の継続に必要な基盤を強化するため、適切な契約制度を構築すべきである。昨年12月に決定された国家防衛戦略では「防衛産業の適正な利益率の算定方式を導入することで、事業の魅力化を図る」、防衛力整備計画では「各企業の防衛事業に対する品質管理、コスト管理、納期管理等を評価して企業のコストや利益を適正に算定する方式を導入し、防衛産業の魅力化を図る」と記載された。今後、企業の生産・技術基盤の維持・強化への取り組みを評価した利益水準の設定や、長期にわたる履行期間中の不可避なコスト変動(部材・人件費等の変動)に対応する調整率の仕組み、長期契約による企業の投資リスクの軽減などの導入が検討されている。宇宙事業の契約制度の改善にあたっては、防衛産業の契約方式の見直しを宇宙産業にも適用することを検討すべきである。

また、宇宙産業に特有の課題として、難易度の高い開発を伴う政府や研究開発機関向けの契約においては、開発難易度に応じた官民の開発リスク分担の見直しを検討すべきである。具体的には、政府や研究開発機関側が開発主体となる契約形態や、コストプラス契約#11の適用、長納期部品やコンポーネントの調達に関する前払金制度などの仕組みなどが挙げられる。

② 技術開発の推進

「衛星開発・実証プラットフォーム」の活動を通じて衛星技術開発・実証を推進すべきである。経済安全保障の観点からも、フルデジタル化、量子暗号通信、宇宙光通信、衛星コンステレーション、軌道上サービス等に必要となる革新的基盤技術の開発を進めるべきである。

世界において技術開発の競争が激化しているなか、わが国が中長期的な視点から戦略的に技術開発を行うためには、諸外国とわが国の現在の技術力を把握する必要がある。特に、安全保障分野で必要な宇宙技術は、民需の技術と比べてより高度なものが求められる。そこで、技術戦略を策定し、ロードマップを示すことが重要である。戦略の策定にあたっては、官民で連携して検討する体制の構築が必要である。

技術戦略で示された中長期的に必要な技術については、プロジェクト開始前にフロントローディング#12という考え方に基づき、技術の研究開発・実証の拡充・推進を図り、新たな開発リスクの軽減を図ることが必要である。国際競争に打ち勝つためには、先端技術開発のプログラムを段階的かつ継続的に行える仕組みを構築することが求められる。

政府の技術開発の体制の整備も必要である。複数の省庁の予算で技術開発を実施する場合、政府全体として一元的に行える制度設計も必要である。

③ 民生技術と防衛技術の相互活用

国家安全保障戦略では、わが国の宇宙産業を支援・育成することで、衛星コンステレーションの構築を含め、民間の宇宙技術を防衛に活用することと、それがわが国の宇宙産業の発展を促すという好循環を実現することが目指されている。

防衛技術と民生技術の境界がなくなりつつあるなか、宇宙システムのデュアルユース性を念頭に、民間技術の安全保障分野への活用を拡大すべきである。また、同戦略では、セキュリティ・クリアランスを含む情報保全の強化に向けた検討を進めると明記されているところであり、わが国企業と他国の政府・企業との連携強化に資する制度を目指すべきである。

技術の活用に加えて、商業化された民間サービスを安全保障分野で活用していくべきである。政府と産業界と安全保障が車の両輪として機能していくことで、宇宙安全保障の確保に貢献できる。

一方、欧米諸国においては、安全保障分野で確立した技術の民生への転用を進めることで、商業市場における競争力の強化や優位性の確保を図っている。民間技術の安全保障への活用のみならず、安全保障上の懸念のない範囲での安全保障関連技術の民間転用による国際競争力強化について戦略的に検討すべきである。

また、民生の開発成果を安全保障の重要プロジェクトに使う施策を実施することで、国内の宇宙産業のサプライチェーンの強化につなげるべきである。例えば、民生の先端部品を安全保障向けに利用するためには、ツールやプログラムの整備、放射線試験など評価機会の確保、技術評価データの取得、技術サポート体制などの充実が必要である。民間企業がツールの整備などを担うなかで、先端的な部品を輸入に依存せずに、国内での調達を可能にしていくことが求められる。

④ 宇宙輸送能力の強化

わが国の自立的な宇宙輸送手段の確実な維持・発展に向けて、宇宙輸送システムに関する施策を強化すべきである。現状の基幹ロケットが抱える課題に対策を打つことにより、打ち上げ輸送の事業の拡大を図り、宇宙利用産業の発展を支える。具体的には、基幹ロケットの国際競争力の継続的な向上、打ち上げ能力の増強、打ち上げの高頻度化に向けた射場等の打ち上げに関わる運用システムの追加整備や抜本的な改善が求められる。宇宙輸送システムの自立性の確保の観点から、技術や環境整備に関する中長期的なロードマップを策定すべきである。

特にH3ロケットについては、複数の人工衛星を同時かつ高頻度で打ち上げることで衛星コンステレーションを構築できるようにするため、ニーズに対応して打ち上げ能力の向上と実用化を推進すべきである。イプシロンロケットについては、早期に打ち上げを再開し、その後は打ち上げの高頻度化を図る必要がある。

小型衛星の抗たん性や即応性を確保する観点から、必要なときに即時に衛星を打ち上げられる即応型小型衛星システムを構築すべきである。また、民間の小型ロケットの射場の整備を推進することが求められる。

⑤ JAXAの体制・機能の強化

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、政府全体の航空宇宙開発利用を技術で支える中核的機関である。

今後、国際的な宇宙開発における競争が激化するとともに複雑化が進むなか、JAXAがわが国の宇宙技術に関する知の結節点となることが必要である。そのためには、政府が資金を拠出することでJAXAに基金等の仕組みを整備し、企業の研究開発を直接支援する仕組みの構築が必要である。なお、知の結節点としての新たな役割を担うためには、体制や人員の強化が求められる。

宇宙の安全保障利用が進むなか、安全保障分野におけるJAXAの機能を強化すべきである。例えば、JAXAと防衛省の間で情報共有や人材交流を行うことで、研究開発における連携を推進する必要がある。

4.宇宙関係予算の確保

現行の宇宙基本計画には、宇宙産業規模の拡大の2つの目標が明記されている。第1に、宇宙機器産業の事業規模について、官民合わせて10年間で累計5兆円を目指す。第2に、宇宙利用産業も含めた宇宙産業全体の規模については、現在の年間1.2兆円から2030年代早期に倍増を目指す。新たな宇宙基本計画では、宇宙機器産業や宇宙産業の規模について、より大胆な数値目標を明記すべきである。

2010年代の宇宙関係予算は、補正予算を含めても3,000億円台で推移していた。2020年代は現行の宇宙基本計画の策定以降、宇宙関係予算が増加傾向にある。令和4年度(2022年度)の当初予算と令和3年度(2021年度)補正予算の合計は5,219億円まで増えて、令和5年度(2023年度)当初予算案および令和4年度(2022年度)補正予算における宇宙関係予算は、6,119億円に達した#13

昨年12月に閣議決定された防衛力整備計画では、2023年度から2027年度までの5年間における防衛力整備の水準に係る金額を43兆円程度まで増額することが記載された。安全保障分野における宇宙利用を推進するなかで、防衛用の宇宙システムの予算の増額も求められる。

今後、毎年度の宇宙関係予算は6,000億円を大幅に上回る額を確保すべきである。特に、防衛関係費が増加するなかで、安全保障利用も含めて増額を継続すべきである。防衛省の宇宙安全保障関連予算がわが国の宇宙産業に投入され、宇宙産業基盤の強化に資する好循環を形成することが求められる。

5.おわりに

新たな宇宙基本計画では、わが国の防衛力の抜本的な強化に資するとともに、わが国の宇宙活動の自立性を維持するための産業基盤の強化につながる政策を強化していくべきである。経団連として、引き続き宇宙産業の一層の発展に努める所存である。

以上

  1. Synthetic Aperture Radar:夜間や天候に関係なく運用でき、また情報を広域にわたり収集できる特徴があるレーダー。
  2. Unmanned Aerial Vehicleの略称。
  3. Hypersonic Glide Vehicle:大気圏突入後に極超音速(マッハ5以上)で滑空飛翔・機動し、目標へ到達するとされる極超音速滑空兵器。
  4. Space Domain Awareness:衛星など宇宙物体の位置や軌道、運用状況、意図や能力などを把握すること。
  5. 宇宙システムの機能を継続的かつ安定的に利用できる能力。抗堪性。
  6. Intelligence, Surveillance and Reconnaissanceの略称。
  7. Information Gathering Satelliteの略称。
  8. Maritime Domain Awarenessの略称。
  9. Automatic Identification Systemの略称。
  10. VHF Data Exchange Systemの略称。
  11. 実際にかかったコストに利益を加算して契約額を算出する契約。
  12. 設計初期の段階に負荷をかけ、早期に開発リスクを低減・排除すること。
  13. https://www8.cao.go.jp/space/budget/r05/fy05yosan_fy4hosei.pdf

「科学技術、情報通信、知財政策」はこちら