1. トップ
  2. Policy(提言・報告書)
  3. 経済連携、貿易投資
  4. B7東京サミット 共同提言

Policy(提言・報告書) 経済連携、貿易投資 B7東京サミット 共同提言

PDF版はこちら
B7東京サミット
共同提言
2023年4月20日
目次
B7東京サミット 共同提言
  1. Ⅰ.経済・財政
  2. Ⅱ.貿易・投資
  3. Ⅲ.グリーントランスフォーメーション
  4. Ⅳ.デジタルトランスフォーメーション
  5. Ⅴ.医療・保健

B7東京サミット 共同提言

(仮訳:正文英語
2023年4月20日

近年、地政学的な緊張とCOVID-19の感染拡大によって助長された自国第一主義の高まりが世界を分断している。ベルリンで開催された前回のB7サミット以降、世界市場は、ロシアによるウクライナ侵略によってさらに分断されている。これが、サプライチェーンのボトルネックとなり、世界的なエネルギー危機、食料不足の悪化を招くと共に、インフレ圧力を高めている。

市場の分断によって、開発の停滞、気候変動、海洋汚染、パンデミックといった地球規模課題を解決するために必要な投資が阻害される。実際、世界が二つのブロックに分断され、国際分業や技術移転が停滞すると、長期的には世界のGDPの多くの部分が失われるとの試算もある#1。これこそが、自由で開かれた国際経済秩序の再構築が急務である所以である。

ロシアによるウクライナへの侵略は明らかな国際法違反であり、国際秩序に対する重大な脅威である。力による一方的な現状変更は、いかなる理由があろうと正当化されない。自由、民主主義、人権、法の支配などの価値を共有するG7諸国は、対ロシア制裁を効果的に継続すると共に、ウクライナを力強く支援するため、引き続き一致団結して行動しなければならない。我々は、ロシアがウクライナにおいて核兵器を使用することに断固として反対する。また、インド太平洋においては、中国がルールに基づく国際秩序と矛盾する行動をとっているほか、北朝鮮が挑発的な行動を起こすなど、課題が山積しており、自由で開かれたルールに基づく国際秩序を再構築するため、G7による継続的かつ精力的な努力が必要である。

分断された世界の影響を最も受け、将来の成長の可能性を失うリスクがあるのは開発途上国である。自由で開かれた国際経済秩序を再構築し、グローバルな課題を克服すると共に、平等原則に基づく持続可能な国際社会を実現するためには、グローバルサウスとの協力が不可欠である。さらに、気候変動問題の解決、すなわち、正当な成長と開発目標を追求しながらCO2の排出を削減することは、グローバルサウスの関与なくして不可能である。

上記の考えに基づき、2023年4月19日から20日にかけて、G7—日本、イタリア、カナダ、フランス、米国、英国、ドイツ、欧州連合(EU)—の経済団体は、「B7東京サミット」を開催した。B7は、G7首脳に対し、持続可能な成長とインフレの抑制、G7としての結束の強化、グローバルサウスとの協力の推進の観点から、経済・財政、貿易・投資、グリーントランスフォーメーション、デジタルトランスフォーメーション、医療・保健などの課題の解決に向けてイニシアティブを発揮するよう求める。その鍵となるのが「Society 5.0 for SDGs」である。すなわち、デジタル技術と多様な人々の創造性・想像力が共存する課題解決型社会の構築を通じて、まずは持続可能な経済成長と地球環境の保全を両立させ、成長の果実を公平・公正に分配すべきである。これは、インド議長国のG20テーマ、「One Earth · One Family · One Future」の実現にも資するものである。

Ⅰ.経済・財政

世界はCOVID-19の感染拡大から回復途上にあるが、ウクライナ戦争の長期化に伴う下振れリスクは依然として高く、景気回復はまだ軌道に乗っていない。2023年2月23日、G7財務大臣・中央銀行総裁会議において指摘されたように、ロシアによるウクライナ侵略は、インフレ圧力の増大、サプライチェーンのさらなる混乱、エネルギー・食料不安の増大などを招き、世界経済を悪化させている。

戦争がもたらす負の帰結に対処するためには、供給力を強化すると共に、エネルギー・食料のサプライチェーンを確保し、人的資源に投資することが不可欠である。加えて、金利の上昇に伴う金融不安にも警戒が必要である。さらには、世界経済の課題や世界的な金融情勢の変化の影響を最も受けているのは低・中所得国であることに鑑み、これら各国の債務危機を回避するために必要な救済措置を講じるべきである。

1.供給力の強化

エネルギー、食料、重要鉱物の不足に対処する観点から、供給力を強化すると共に、サプライチェーンの強靭性を高めることが急務であり、世界各国と調整・協力する必要がある。G7各国は、官民連携(PPP)のエコシステムを構築し、特にグローバルサウスへのさらなる投資を拡大するため、国際機関、国際開発金融機関ならびに自国の開発機関との協力深化が求められる。

(1) インフラ開発への投資

G7は、開発途上国および中所得国における持続可能で質の高いインフラ開発を支援すべく、「グローバルインフラ投資パートナーシップ」(PGII)#2を推進すべきである。インフラ投資の推進は、供給力の強化のみならず、「Society 5.0 for SDGs」が追求するグリーンならびにデジタルトランスフォーメーション、そして持続可能性を実現する上で不可欠である。

インフラ投資の効果を最大化すべく、G7は「質の高いインフラ投資に関するG20原則」#3に示されているように、ライフサイクルを通じた効率性を高め、環境と社会に配慮した投資を実施すると共に、ガバナンスを強化すべきである。併せて、一定の基準の下で質の高いインフラプロジェクトを認証するメカニズムであるBlue Dot Network (BDN)#4に係るOECDの取組みを加速させるべきである。昨今の自然災害を踏まえ、質の高いインフラは、何よりもまず災害に対する強靭性を備えたものでなければならず、インフラファイナンスに際してはこの点が勘案されるべきである。また、ウクライナの復興において、質の高いインフラ整備が強靭な社会を取り戻す鍵となることは言を俟たない。

(2) 重要鉱物への投資

重要鉱物の生産、加工、供給、リサイクルへの投資は、供給力と経済安全保障の強化に不可欠である。供給を特定の国に過度に依存しないためには、官民連携の下、上流(原材料の採掘)だけでなく、下流(製錬・精製・加工)に係る投資先を分散させることが不可欠である。特に、川下における生産を効果的に拡大するため、G7は、産業界と協働し、自由で開かれた貿易を前提とした重要物資のサプライチェーン、ならびにこれに対する共同投資に向けた道筋について理解を深めることが重要である。

2.エネルギーと食料の確保

現在発動されている対ロシア制裁は、ロシアによるウクライナ侵略が続く限り継続すべきである。制裁の実効性を確保するため、G7は可能な限り多くの国と連携し、需要の代替や迂回(いわゆるバックフィル)を防止する必要がある。

同時に、ロシア、ウクライナからのエネルギー資源、食料、肥料などの重要物資の安定供給を維持することが不可欠である。この点、原油と石油製品の価格の上限設定は、エネルギー安全保障を確保しつつ、ロシアの収入を抑制する上で効果的に機能しており、G7はこれを継続すべきである。

ロシアとウクライナは穀物と肥料の主要な輸出国であるため、ウクライナ侵略に伴い、特にグローバルサウスは深刻な食料不足に直面している。ウクライナから世界市場へ食料、肥料を供給する上で、黒海穀物イニシアティブ(BSGI)#5の果たす役割は大きく、G7には、その継続に向けたあらゆる努力が求められる。

以上の取組みと並行して、G7は、輸出制限を維持している国々に対し、できる限り早期にこれらの措置を廃止する共に、保護主義に対抗し、自由貿易の砦となって、制裁に伴う意図しない結果を回避するよう求めるべきである。

G7はまた、途上国の強靭性を高めるため、省エネ/エネルギー効率向上および代替エネルギー源に係る技術および情報を途上国に提供すべきである。

食料については、G7はグローバルサウス、特にウクライナからの食料の輸出が停滞することで影響を受ける人々に対して、生産能力を強化するための技術的・財政的支援を提供すべきである。例えば、最小限の農薬と肥料で単位面積当たりの収穫量を最大化する技術は、食料安全保障と環境保護の両立に資するものである。この点、FAO、WFP、IFADなどの国際機関との連携を推進すべきである。また、Business at OECD (BIAC)の「食料のための平和」イニシアティブにも注目すべきである#6。同イニシアティブによって、インフレ時の世界的な食品市場が安定化され、また、農業分野のイノベーションが加速することが期待される。

3.人材育成ならびに雇用の多角化の推進

産業部門とサービス部門の両方でイノベーションを促進し、生産性を向上させるべく、労働力・技能不足に対処することが求められる。技術の著しいミスマッチや労働力不足が、多くの国で経済成長の足かせとなっており、G7各国政府は、デジタル・グリーンの分野で特に需要がある科学、技術、工学、数学の分野(STEM)における人材のリスキリングとスキルアップのための民間投資を支援すべきである。

多様な労働力と包摂的な仕事の空間が、人材育成を成功させる鍵となる。個人の技能と能力を最大化するためには、人種、宗教、信条、性別、性的指向と性自認、社会的地位や家系に関係なく、すべての人が尊厳をもって平等に扱われなければならない。

社会における制度的変化に適応し、ビジネスの強靭性を高めるために、雇用モデルの多角化を図ることが急務である。パートタイム、有期雇用、派遣、雇用類似などの多様な働き方は、雇用創出を刺激し、起業家精神を培い、中小企業の成長を実現するために重要である。G7各国は、生産性を向上し、より多く、より良い雇用を創出すべく、官民連携による資金調達と投資に尽力すべきである。

4.債務救済措置の実施

国家の債務によって、多くの開発途上国が、自国の能力強化に向けた新たな投資に乗り出すことが難しくなっている。G7は、金利上昇の影響を受けるグローバルサウスの債務救済に努める必要がある。債務救済を実効性あるものとするためには、パリクラブのみならず、世界の主要債権国を含むG20との連携が不可欠である。

Ⅱ.貿易・投資

世界市場のさらなる分断を防ぎ、持続可能な成長を達成すべく、国際貿易システムの基本原則を堅持することが不可欠である。すなわち、G7には、交渉を通じた無差別な自由貿易の実現、法的拘束力を伴う形での透明性と予見可能性の確保、公正な競争の促進、経済改革と開発の推進などを具現化、擁護することが求められる。かかる観点から、G7はWTO改革を推進し、貿易投資に新たな弾みをつけるべく、取り組むべきである。

他方、経済と安全保障が表裏一体となっている状況に鑑み、貿易投資を通じて国際平和と安全を脅かす国に特定の機微技術が転用されないよう対処することが不可欠である。ただし、安全保障上の理由で規制対象とする品目は必要最小限に限定すべきである(small yard high fence)。また、安全保障上重要な製品・サービスの調達先を多角化するなど、いかなる国・地域にも極度に依存する危険性を回避するための配慮も必要である。

1.「自由で公正な貿易投資のためのクラブ」の立ち上げ

WTOの機能不全という現状を踏まえ、G7は多角的貿易体制への信頼を高めるべく主導すると共に、自由で公正な貿易投資への確固たるコミットメントを示すことが求められる。そこで、B7は、G7各国ならびにEUを中核とするハイレベルな貿易投資枠組みである「自由で公正な貿易投資のためのクラブ」の立ち上げを提案する。同クラブは、所定の期間内に一定の基準を満たすことを約束するすべての国・地域の参加を歓迎すべきである。また、同クラブの参加国・地域に対しては、参加の見返りとして、内国民待遇が付与されることが望まれる。参加の基準としては、例えば、以下が挙げられる。

  1. 鉱工業品関税撤廃の追求
  2. エネルギー、天然資源、食料の輸出制限の回避
  3. 市場歪曲的補助金、ローカルコンテンツ要求の回避
  4. 内国民待遇の付与
  5. 直接投資に際しての特定措置履行要求の制限ならびに送金の自由
  6. 知的財産権の尊重ならびにその履行確保
  7. 信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)へのコミット

なお、同クラブは、「気候クラブ」との協力の下、気候変動対策に貢献すべきである#7

2.経済安全保障の確保

(1) サプライチェーン強靭化

G7は、半導体、電池、医薬品、重要鉱物などの重要物資の安定供給に向けて協力を推進すべきである。その際、サプライチェーンを構築している主体は企業であることに鑑み、各国政府は規制に依拠するのではなく、企業の取組みを支援することに注力すべきである。G7は、サプライチェーンの多角化に際し、有志国との協力を継続しつつも、決して排他的であってはならない。

(2) 経済的威圧への対処

第三国による経済的威圧に対処すべくG7諸国間の協力強化と調整を図るべきであり、その際の枠組みとしては、米EU貿易技術評議会(TTC)や、日米豪印(Quad)などが挙げられる。例えば、G7は、関係国が経済的威圧を行使するために利用できるチョークポイントを共同で特定し、有志国やその産業部門との協力の下、当該国間で代替市場を創出することで脆弱性を克服し得る。また、G7は、経済的威圧を行おうとする特定国が重要物資を依存する輸出国を一つにまとめて集団安全保障的な体制を結成し、当該特定国がいずれかの輸出国に対して不利益な措置をとろうとした場合、当該特定国への重要物資へのアクセスを遮断すると警告するのも一案である。 経済的威圧に対する強靭化を目的としたこれらの措置に加え、G7各国の政府、民間部門および関連する利害関係者は、既存のEPA/FTAを活用し、最先端技術の国際基準の策定などの規制協力を推進することで、競争上の優位性を確保することが可能となる。

関税及び貿易に関する一般協定(GATT)第21条は、締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める措置、具体的には、「戦時その他の国際関係の緊急時に執る措置」を妨げない。この規程は、経済的威圧への対抗という現代的課題に適用され得る手段として明確に位置づけられるべきである。ただし、同規程はあくまでも緊急時を想定したものであり、保護主義的な目的、あるいは、自国経済を刺激する手段として援用されることがあってはならない。

3.多角的貿易体制の強化

世界貿易機関(WTO)は164の加盟国・地域で構成され、多国間枠組みの中核的存在である。グローバルサウスとの連携を通じて自由で開かれた国際経済秩序を強化するためには、WTOの機能回復と強化が不可欠である。

(1) WTO紛争解決の危機への対処

WTO上級委員会は2019年12月以降、機能停止状態に陥っている。このため現状では、パネルの裁定を上級委員会に「空上訴」することで、その執行を阻止することが可能となってしまう。かかる紛争解決の行き詰まりによってWTO協定違反への適切な対応ができない状況を克服することが2023年のWTOの優先課題である。この点、多国間暫定上訴仲裁アレンジメント(MPIA)#8は、WTO加盟国・地域が上級委員会の機能回復に向けて取り組むに際しての有益なアイデアを提供し得る。例えば、MPIAの下、仲裁人は紛争の解決に必要な問題のみを扱う#9こととされている点は、上級委員会が紛争解決に関係のない勧告的意見を出す傾向があるという批判に、部分的ではあるものの応えるものである。

(2) 公平な競争条件の確保

国家による補助金が過剰生産を助長し、市場アクセスと競争を制限し、市場を歪曲する場合、公平な競争を確保することは困難である。この問題に対処すべく、「補助金及び相殺措置に関する協定」の改訂が求められる。

とりわけ、無制限な保証、信頼できる再建計画が存在しない場合の破産企業や経営不振企業への補助金交付、過剰生産能力のある部門や産業で活動する企業への補助金、債務の直接的な免除は、「禁止補助金」として定義されるべきである。本件に関しては、日米EU三極貿易大臣会合において議論が進捗しており#10、G7が中心となってWTOの場でクリティカルマスを形成すべきである。

(3) WTO電子商取引共同声明イニシアティブの推進

電子商取引に関するルール策定について、自由な越境データフロー、データローカライゼーションの禁止、ソースコードとアルゴリズムの開示要求の禁止、デジタル製品に係る無差別待遇を含むハイレベルな内容の合意が求められる。2024年2月に開催予定のWTO第13回閣僚会議(MC13)までに合意が得られるよう、G7が議論を主導すべきである。

また、B7は電子送信に対する関税モラトリアムがMC13まで延長されたことを歓迎する。本件は、企業にとって、その規模に係わらず切望された成果であり、G7がモラトリアムの恒久化を主導することを求める。

(4) 貿易と環境

環境技術・物品およびサービスに係る貿易の自由化、円滑化の観点から、G7はWTOにおける「貿易と環境持続可能性に関する体系的議論」(TESSD)を推進すべきである。環境物品への関税賦課は最小限とし、また、カーボンフットプリントの開示などの環境規制は、サプライチェーンを通じた脱炭素化を促進し、消費者にシグナリング効果を与える観点から、国際的な基準と方法論に基づいて実施されるべきである。また、環境規制は正当な目的を達成するために必要以上に貿易制限的であってはならない。

炭素国境調整措置(CBAM)は、WTO整合的に制度設計、運用されなければならない。CBAMの究極の目的はグローバルバリューチェーン(GVC)を通じた脱炭素化であり、決して貿易制限的に作用すること、また、グローバルサウスに対して不釣り合いな形でしわ寄せがいくことがあってはならない。CBAMは、国際貿易への悪影響を回避すると共に、COP21で合意されたパリ協定ならびにCOP26で合意されたグラスゴー気候合意の目標を達成すべく、グローバルサウスを含む世界中のすべての国が、実質的、野心的かつ測定可能な気候政策に関与する動機付けとなることが期待される。第三国でのさらなる脱炭素化を推進し、そしてCBAMの必要性自体を無くすことをゴールに、「気候クラブ」を通じて産業界とのパートナーシップを緊密化すべきである。

4.サプライチェーン全体を通じた人権確保

G7各国政府はグローバルサプライチェーンからあらゆる形態の強制労働を排除する目的にコミットする一方#11、その責任が企業に集中することが無いよう配慮すべきである。

Ⅲ.グリーントランスフォーメーション

経済と環境の好循環は、経済社会全体を変革するグリーントランスフォーメーションを通じてのみ実現可能である。G7各国は、気候変動に対処し、エネルギー安全保障の確保と循環経済への確実な移行を図ると共に、できる限りネイチャーポジティブ(自然再興)な結果を達成するという政策目標に向けて、統合的に取り組まなければならない。我々は、脱炭素化、エネルギー安全保障、地政学的安定という3つの課題に同時に対処しなければならない。これらのバランスの取れたアプローチをとらない限り、世界経済のデカップリングが進行し続けることになる。

1.気候変動への対応

(1) イノベーションを通じた気候中立の達成

グローバルサウスを含む世界の生活水準を向上させつつ気候中立社会を実現することは、グローバル社会にとって前例のない困難な課題であることは明らかである。この実現には、既存のものに加えて新たなクリーン技術、官民による巨額の資金が必要で、また現行の社会経済構造の再考も求められる。2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、革新的技術の開発・普及を含むグリーントランスフォーメーションをG7の産業政策の中心的な軸として位置づける必要がある。各国政府は、イノベーション支援とG7各国間の協力推進に向けて、長期的かつ大規模な投資を行うべきである。協力すべき分野としては、例えば以下が挙げられる。

  1. 次世代蓄電池の導入
  2. 風力、太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーの導入と供給能力整備の加速
  3. 水素、アンモニアやその派生物の低廉な価格での大量供給
  4. 二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS)技術の規模拡大
  5. 次世代革新炉#12の研究開発と建設
  6. 核融合研究開発の継続
(2) パリ協定目標の達成に向けた多様な道筋の許容

G7は野心的な温室効果ガス排出量削減を約束しているが、脱炭素への移行は技術的中立性に配慮しつつ実施されなければならず、国、地域、産業によってさまざまに異なる道筋を通じて目標を達成することを認める必要がある。すべてに適用できる「万能」のアプローチは存在しない一方、危険な気候変動のさらなる進行を食い止めるうえで、すべての主要経済大国の確たる約束に基づいて有意義なグローバル協力を進めることは不可欠である。

G7は、脱炭素化に至るさまざまな技術的な道筋に目を向けるべきである。例えば、水素、アンモニアとの混焼や、PtX(電力由来の合成燃料、とりわけe-fuel:再エネ由来の水素を用いた合成燃料)、CCUSの利用は、移行期における産業用車両・船舶や設備からの排出量削減に寄与する。モビリティ部門では、電気自動車だけでなく、ハイブリッド車や、水素・e-fuel・先進型バイオ燃料を用いる内燃機関(ICE)車も、排出量削減の道筋を提供し得る。さらに、LNGを含む天然ガスは、多くの国で、移行期の燃料として重要な役割を果たしている。このため、他の有効な技術が開発・実装されるまでの間、G7の政策立案者は、天然ガスの生産と世界市場への供給のための投資の継続を可能とすべきである。

今年は、パリ協定の目標達成に向けてグローバルストックテイク(世界全体の実施状況の検討)を行うことになっている。すべての締約国がより野心的な国別目標(NDC)を目指すよう働きかけると共に、目標設定段階から実施段階への移行においてG7諸国がリーダーシップを発揮することが極めて重要である。G7は、部門別の計画を含む明確な目標達成までの道筋、すなわち実施に向けたロードマップを提示することによって、いかにして目標(野心)と実行の間のギャップを埋め得るかを示すことができる。また、国別目標達成に向けてすべての締約国が、こうした道筋を提示するようG7が働きかけるべきである。実施のためのロードマップと共に高いレベルでのコミットメントを伴う中間目標も設定することで、産業界が今後の道筋について明確な考えを持つことができる。

(3) トランジションファイナンスへの対応

グリーンへの移行を果たすには官民の大規模な投資が必要で、資金の動員ならびに資金の流れの転換が求められている。温室効果ガスを排出しない技術への資金の供給に加えて、カーボンニュートラルへの移行に必要とされるさまざまな技術にも資金が回るようにすることが極めて重要である。前述のように、各国の現状や技術の状況を踏まえると、ネットゼロへの道筋はそれぞれ異なるものになるであろう#13

トランジションのための資金を提供する際、金融機関は投融資先の排出量(FE)の増加という課題に直面する。G7は、経済界の代表や国際的な民間イニシアティブ(PCAF#14、GFANZなど)とも連携して、ネットゼロへ向けた投融資の評価枠組みについて検討・議論する必要がある。こうした目的のために何らかの新たな枠組みを構築する場合は、相互運用可能性の確保についても検討すべきである。

脱炭素化に向けた資金供給をさらに拡大するためには、企業が持続可能性基準について共通の理解を有している必要がある。B7は、第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)で気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく報告について進展があったこと、それを受けて国際サステナビリティ審議会(ISSB)が設立されたことを歓迎すると共に、2022年の気候関連の情報開示義務化に関するG7のさらなるコミットメントを認識している。次にG7諸国に求められているのは、各国内においてグローバルな一貫性のあるかたちで国際基準が実施されるようにすることと、国際的な相互運用性と相互主義を確保し、断片化を回避するために、ISSBにおける今後の作業を引き続き支援することである。

(4) 途上国の関与

今日、世界の二酸化炭素排出量に占めるG7の割合は23.6%である#15。途上国の関与なくして気候中立の達成はあり得ない。

  1. G7各国の民間企業は、発展途上にある国々との信頼できる協力を進め、グローバルサウスにおける環境配慮型インフラ整備への投資を検討すべきである。
  2. G7およびその他の先進国は、COP26で立ち上げられた「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」のようなパートナーシップや、G7気候クラブ、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)のような地域イニシアティブの拡充を図るにあたり、民間部門を関与させるべきである。
  3. パリ協定第6条に基づく制度はこうした民間投資の動機付けになり得る。G7各国政府による政府開発援助(ODA)もグリーンインフラ整備や技術支援の推進に活用できる。さらに、G7は、気候保護に大きく資する基準・規制の相互運用性確保に向けた対話を促進すると共に、第三国におけるそれらの運用も含めた協力を推進すべきである。広く認められた基準設定機関による国際的基準の策定がこれに役立つ。
  4. 6月に開催される「新金融協定のためのパリ・サミット」は、国際金融システムをより強固で効率的なものとするために、開発金融と気候変動金融の構造を再構築する鍵となるだろう#16

G20諸国の温室効果ガス排出量を合わせると世界の排出量の80%に上ることを踏まえると、G7は、途上国への支援や協力にとどまらず、G20との緊密な連携の下に世界の排出量削減に取り組むべきである。

(5) 測定・報告・検証(MRV)

温室効果ガス排出量の軌道を検討し、世界の排出量を削減するには、気候変動緩和に向けたさまざまなアプローチについて評価・判断できるよう、グローバルバリューチェーンからの排出量を含めた排出量を測定、報告、検証することが重要である。G7は、ベストプラクティスを共有すると共に、明示的なカーボンプライシングやその他のアプローチを通じた多様な緩和策の有効性と経済的影響を比較するための評価方法について共通理解を構築すべく取り組むべきである#17

低炭素型のバリューチェーンは従来型のバリューチェーンより排出量が少なくなる。したがって、一部の産業分野においては、製品製造段階における排出削減量だけでなく、資源・原材料の調達、流通、最終使用、廃棄、再生利用の各段階における排出削減量についても、算定評価・比較できるようにする必要がある。エネルギー効率の高い製品が、グローバルバリューチェーン全体を通じて排出量の大幅な削減をもたらすのであれば、製造段階における排出量が従来型の製品より多い場合でも販売を促進し得る。この「削減貢献(avoided emissions)」に着目することがこうした製品に対する需要の拡大と市場形成につながり、産業部門の脱炭素化を促すことになるだろう。

2.世界的エネルギー危機への対応

安全性を前提に、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合性(S+3E)を同時に達成するエネルギーミックスの確保が極めて重要であるという認識の下、G7は各国の状況を考慮に入れた具体的な政策を追求すべきである。ロシアのウクライナ侵略は、特にエネルギー安全保障、つまりエネルギーの安定供給がいかに重要であるかを想起させることとなった。ロシアのエネルギーへの依存を減らすためにも、G7はエネルギー供給源の分散化、クリーンエネルギー技術の導入の加速化、エネルギー効率の向上に重点的に取り組むべきである。再生可能エネルギーと原子力はその利用を選択した国のエネルギー安全保障の強化に寄与する#18。カーボンニュートラルを達成するうえでも、再生可能エネルギーと原子力は不可欠な役割を果たすことになるだろう#19

特に天然ガスは、他のエネルギー源を持たない国が、パリ協定に基づく自国の目標を達成しつつ、エネルギー安全保障上の当面のニーズを満たすために利用できるようにすべきである。その意味において、B7は、LNGを含む天然ガスが、世界のエネルギー安全保障に不可欠な構成要素として、脱炭素社会への移行の過程で、引き続き重要な役割を果たすことを強調する。それゆえに、G7によりすでに認識されている通り、現在の危機に対応すると共に、地政学的緊張から生じ得るエネルギー市場の不安定性に対応する手段として、この分野における民間投資の継続を支援する一貫した公的な政策が不可欠である#20

3.サーキュラーエコノミー

環境への影響を低減し、資源確保を図るという観点から、循環経済への移行(天然資源投入量の削減、廃棄物の最小化、バイオマスや再生材の利用促進など)が重要であるとの認識が広がっている。気候中立的な循環経済への移行を速めるためには、製造業者とリサイクル業者などによる動静脈連携など、業界の垣根を越えた企業間連携を促進する必要がある。G7は企業間連携を奨励し、ベストプラクティスを共有すべきである。産業界は「循環経済及び資源効率性の原則(CEREP)」についてG7との対話を必要としている。B7はG7に対して、循環経済の実現に資するインフラへの投資を進めつつ、循環配慮型製品設計や循環資源の使用を促進する政策措置を講じるよう求める。

G7は、海洋プラスチックごみが海洋環境に重大な影響を及ぼしていることを認識し、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン(Osaka Blue Ocean Vision)」#21に基づく取組みを推進すべきである。B7は、自然環境におけるプラスチックの悪影響の低減に向けた国際対話への協力とボトムアップアプローチを奨励する。

4.ネイチャーポジティブ

2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(CBD・COP15)第二部で採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)は、愛知目標の後継となるもので、さらなる生物多様性の確保に向けた重要な一歩である。B7はG7各国政府に対し、同枠組に盛り込まれた目標の達成に向けて、それぞれの生物多様性国家戦略・行動計画(NBSAP)を見直すよう要請する。産業界は、各国政府との協力の下、生物多様性の保全に向けた取組みを強化する。G7各国は、公海における生物多様性の保全と持続可能な利用にも貢献すべきである。また、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の取組みは、民間部門における自然保護の強化につながるビジネス慣行への取組みを構成する重要な要素である。同タスクフォースにおける作業は、より構造的で透明性が高く、地域面でのバランスの取れたものになることが期待されている。

Ⅳ.デジタルトランスフォーメーション

すべての国・地域にとってデータは不可欠な存在であり、またデータはデジタル技術と多様な人々の創造性を融合させた課題解決型社会である「Society 5.0 for SDGs」を実現する上での鍵となる。データの価値を最大限に活かすためには、「信頼性のある自由なデータ流通」(DFFT)を具体化する必要がある。なお、他の商品と同様、データの源泉はイノベーションであり、イノベーションにはコストが伴う。そこでデータへのアクセス(特にデータの提供者が産業界の場合)は適正な報酬を伴うべきである。

昨年のG7デジタル大臣宣言に基づき、G7は、将来の相互運用性を促進するため、共通理解を深め、DFFTを可能にする既存の規制アプローチと手段の間の共通性、補完性および収斂の要素の特定に向け取り組むべきである#22

1.「自由で公正な貿易投資のためのクラブ」を通じたDFFTの実現

現在、十分性認定の下、日EU間で個人データの越境流通が確保されている#23。また、日米デジタル貿易協定は、個人データを含む日米間の自由なデータフローを定める#24。CPTPPは日本カナダ間のデータ自由流通#25を保証し、英国もCPTPP加入後、その対象となる見込みである。米国とEUは、Privacy Shield Frameworkに代わるEU-US Data Privacy Framework#26の合意に向けた作業を進めており、今後もデータの自由な流れが続くことが予想される。このほか米英間でも十分性認定に向けた取組みが進捗している#27

これら既存の合意を基盤とし、「Ⅱ.貿易・投資」において提唱した「自由で公正な貿易投資のためのクラブ」に参加する国・地域は、以下の基準を満たすことを通じてDFFTにコミットすべきである。

  1. 自由な越境データフロー
  2. データローカライゼーションの禁止
  3. ソースコードとアルゴリズムの開示要求の禁止
  4. デジタル製品への無差別待遇 など

2.データ保護制度間の相互運用性の実現

B7は、個人データ保護しつつ、自由なデータ流通を実現する観点から、産学官連携による相互運用性を実現するための国際枠組み(Institutional Arrangement for Partnership)の構築を支持する。これによって、APECのCross Border Privacy Rules (CBPR)やIPEFの下で交渉中の枠組みなど、異なる国際メカニズムとの相互運用性が確保されることが期待される。

3.ガバメント・アクセスに係るルール設定

G7は、公的機関によるデータへのアクセスの透明性と一貫性を高め、またデータを活用する企業のリスクを軽減する観点から、政府による民間部門が保有するデータへのアクセスに関し、産業界との連携の下、OECDで策定された原則の運用を目指すべきである#28

ガバメント・アクセスに関する国・地域間のアプローチの違いがDFFTを妨げる可能性に留意しつつ、政府によるデータへのアクセスは、必要なものに限定した上で、データ保護と国家安全保障や公益目的との比例性を確保した上でなされること、また、有効な救済メカニズムの対象とされることが求められる。とりわけ、不当かつ大量の個人データ収集に対しては、適切な司法上の救済措置が講じられなければならない。

また、G7は、国家安全保障または公益目的で、国家機関が自国域外に存在する個人データの提出を要求する場合のルールについて検討すべきである。

4.セキュリティの確保

(1) サイバーセキュリティの強化

COVID-19のパンデミックによるデジタル化の進展や、社会・経済活動の変化に伴い、産業界のみならず社会全体でサイバー空間と実空間との融合が進展している。一方でサプライチェーンを介したサイバー攻撃も増加している。また、地政学的緊張の高まりがサイバー空間にまで及ぶにつれ、サイバーセキュリティは国家安全保障の重要な分野となりつつある。このような状況下、「Society 5.0 for SDGs」の実現に向けた価値創造とバリューチェーン構築、リスク管理の観点から、G7は、運用上の協力、グローバルサウスに対するキャパシティビルディング、異なった制度間の調和に向けた対話などを推進すべきである。

(2) ディスインフォメーションへの対応

基本的人権の根本である表現の自由が保障されなければならない一方、悪意ある情報を含むディスインフォメーションは民主主義と国家安全保障を脅かす可能性がある。本件は市民の自由と安全保障上の考慮に関する憲法上の議論を含む問題であるため、G7各国はそれぞれの方法でディスインフォメーションへの対応と検閲の禁止といった課題に対処し、必要に応じて情報とベストプラクティスを共有すべきである。

5.デジタル技術の開発

G7はAI、量子技術、メタバース、宇宙、プライバシー強化技術、サイバーセキュリティなどの分野における技術開発と共通原則の確立に向けた官民連携の国際的枠組みを確立すべきである。これら新興技術の倫理的かつ責任ある発展は、既存の国家政策に基づき産業界の全面的な関与の下、国際協力を推進することで可能となる。

AIは、自動運転や個人医療などの個別分野での有効活用のほか、気候変動問題やサプライチェーンの連続性確保などの地球規模課題の解決に貢献する可能性を秘めている。このように、AIが適切に活用されれば、生産性の向上や経済成長の実現を含め、広汎な分野で公共的利益に資することが期待される。

以上の認識に基づき、B7は、AI分野で最先端を行くG7各国に対し、各国のAI政策において、相互運用性の確保とそのための国際協力に優先的に取り組むことを求める。これらを既存の国家政策と国際基準に基づいて推進することで、データ共有に関して必要とされている二国間/複数国間協定を、広汎な分野で先取りすることが可能となろう。

メタバースによって将来的にもたらされるであろうさまざまな事項は、現実空間における我々の生活にも大きな影響を与え得る。倫理的に許容される範囲について、実際の使用状況や社会全体の規範・基準に基づいて継続的に議論することが求められる。

また、G7は新たな重要技術としての6Gと、その研究のための共通ビジョンに係る連携の必要性を認識すべきである。同分野の研究協力は、G7各国での取組みの間にイノベーションの架け橋を構築することで促進されることが期待される。また、6Gの標準化はWTO「貿易の技術的障害に関する協定」(TBT協定)に整合的な形で行うことが求められる。

6.キャパシティビルディング

G7は、デジタルトランスフォーメーションに向けた途上国支援の先頭に立つべきである。特に、適切な個人情報保護法制の整備は、グローバルサウスと連携した形でDFFTを実現するための大前提となる。

Ⅴ.医療・保健

COVID-19に伴う出入国制限措置を解除・緩和し、人の自由な移動を確保することが急務である。同時に、次なるパンデミックに備えるため、G7は、医療・保健分野への投資を促進することで、グローバルサウスによる公平なアクセスを確保すると共に、人の移動に関するルールの策定を主導すべきである。

1.人の自由な越境移動の回復

パンデミックに伴う経済への悪影響を最小限に抑えるため、経済・社会活動に必要なエッセンシャルワーカーや自然人を、出入国制限や検疫措置の対象外とすべく、G7が国際的な合意形成を主導すべきである。そのためには、PCR検査や抗体検査を円滑かつ広範囲に実施できる体制の整備、出入国・移動に必要な手続きの電子化など、G7が民間と連携して行政能力の向上に取り組むことが不可欠である。また、開発途上国への支援も不可欠である。

2.ヘルスシステムの強化と投資

グローバルヘルスに係る問題を提起し、また、世界保健機関(WHO)の機能強化を推進する上で、G7は重要な場である。G7が政治的にコミットすることはシグナリング効果を有するのみならず、保健分野における目標達成に際しての重要な指標を提供する。イノベーションを促すエコシステムを構築するためには、機微技術の流出を防ぐための投資規制を講じつつも、保健、医療研究、医療・検査機器、医薬品、バイオテクノロジーなどの分野への官民投資を促進する必要があり、G7がその中核的な役割を果たすべきである。

3.医療・保健への公平なアクセス確保

将来的な危機に対応すべく、研究とイノベーション活動を支援すると共に、WTO「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPs協定)に基づいて知的財産権を十分に保護することが極めて重要である。すなわち、知的財産保護の放棄が必ずしも適切ではなく、以下を含む、マルチステークホルダー戦略が奨励される。

  1. ワクチン、治療薬、診断薬などの医療対策への公平なアクセスの確保
  2. サプライチェーンの連結性強化
  3. 医療・保健分野の人材育成推進

G7は、パンデミック基金への支援を継続し、また、医療対策へのアクセスを確保するための民間セクターの関与を促すべきである。

4.イノベーション・デジタル化の推進

グローバルサウスを含む誰もがオンライン治療や診断にアクセスできるよう、デジタル化を推進すべきである。この分野では、個人データの保護が特に重要である。

G7各国は、プライバシー保護を含むデータセキュリティを大前提に、デジタル時代に可能な最先端の医療、研究開発、品質管理などを取り込み、デジタルヘルスのベストモデルの構築を目指すべきである。この点、データローカライゼーション要求を含む越境データ流通の制限は、デジタルへルスの進歩に大きな障害をもたらす可能性がある。異なったデータ保護制度間の相互運用性を確保するための基準設定はデジタルヘルスの今後の展開にとっても重要である。

* * *
Business 7
日本経済団体連合会 (Keidanren)
イタリア産業連盟 (Confindustria)
カナダ商工会議所 (Canadian Chamber of Commerce)
フランス経団連 (MEDEF)
全米商工会議所 (U.S. Chamber of Commerce)
英国産業連盟 (CBI)
ドイツ産業連盟 (BDI)
ビジネスヨーロッパ (BusinessEurope)

  1. ンゴジ・オコンジョ=イウェアラWTO事務局長が、2022年6月のWTO閣僚会議で、WTOエコノミストによる試算として、世界のGDPの5%が失われると言及。
  2. G7エルマウ・サミット (2022年6月) で立ち上げ。2027年までに最大6000億米ドルを投資する計画。
  3. https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/g20/osaka19/pdf/documents/en/annex_01.pdf
  4. OECD and the Blue Dot Network - OECD
    https://www.oecd.org/corporate/oecd-and-the-blue-dot-network.htm
  5. Black Sea Grain Initiative | Resources | United Nations
    https://www.un.org/en/black-sea-grain-initiative/resources
  6. OECDやG20等とも連携しながら、短期的には農業市場を落ち着かせ、長期的には食料システムをより強靭で持続可能なものにするためのイニシアティブ。
  7. 気候クラブは、昨年のG7エルマウ・サミットでの合意に基づき、2022年12月に立ち上げ。全参加メンバーが野心的かつ透明性のある気候変動対策に取り組むことが期待されるところ。気候クラブは、一貫性のある方法でパリ協定を実施し、気候変動対策を加速させる意思のある国に対して、参加の門戸を開いておくべき。
  8. 紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(DSU)第25条に基づく、多国間暫定上訴仲裁アレンジメント。
  9. MPIA Annex 1 10.参照。
  10. 日米EU三極貿易大臣会合共同声明 (2021年1月14日) 参照。
  11. G7エルマウ・サミット 首脳コミュニケ (2022年6月28日) 10頁参照。
  12. 小型モジュール炉(SMR)、水素製造に用いられる高温ガス炉(HTGR)、高速炉(FR)など。
  13. 例えば、日本政府は気候関連のトランジションファイナンスの促進のため、2021年5月、「クライメート・トランジション・ファインナンスに関する基本指針」と脱炭素への移行に向けた分野別技術ロードマップを策定。
  14. 金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF)は、金融業界向けに投融資先の温室効果ガス排出量の計測・報告に関するグローバル基準「Global GHG Accounting and Reporting Standard for the Financial Industry」を設定。
  15. https://data.worldbank.org/indicator/EN.ATM.CO2E.KT?end=2019&locations=US-1W-JP-DE-FR-IT-GB-CA&start=2019&view=bar
  16. このサミットは、気候と開発戦略のより良い統合、譲許的融資と公的ファイナンスの強化、民間金融の役割強化、技術発展と普及、「グリーン」投資と資金の流れを定義することによる情報アーキテクチャの改善、開発途上国などのニーズに効果的に対応するためのIFI、DFI、MDB改革を目的。
  17. 「気候クラブに関するG7声明(G7 Statement on Climate Club)」(2022年6月28日) 1頁参照。気候クラブの発足に加えて、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づき現在実施されているグローバルストックテイク(GST)を通じた枠組みやOECDにおける炭素削減アプローチに関する包摂的フォーラム(IFCMA)の発足も、パリ協定の目標達成に向けた気候政策の有効性を担保するための、グローバルな対話と協力を促すうえで重要。
  18. 次世代太陽電池、浮遊式洋上風力発電、近い将来有望なエネルギー源になると期待されている核融合など、新たな技術の開発を促すことが得策だろう。国際的な熱核融合実験炉プロジェクトであるITERで行われているものなど、核融合に関する研究開発の促進に向けて協力することが有益。
  19. 原子炉1基の稼働は、年間100万トンの液化天然ガス(LNG)を世界市場に新規に供給するのと同じ効果 (ロンドンにおける岸田文雄首相講演、2022年5月5日)。
  20. G7エルマウ・サミット 首脳コミュニケ (2022年6月28日) 5-6頁参照。
  21. Towards Osaka Blue Ocean Vision (g20mpl.org)
    https://g20mpl.org/
  22. G7デジタル大臣宣言(2022年5月11日) 23頁参照。
  23. Adequacy decisions (europa.eu)
    https://commission.europa.eu/law/law-topic/data-protection/international-dimension-data-protection/adequacy-decisions_en
  24. 日米デジタル貿易協定第11条参照。
  25. CPTPP第14.11条参照。
  26. EU-U.S. Data Privacy Framework, draft adequacy decision (europa.eu)
    https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/qanda_22_7632
  27. 「英米共同声明:技術とデータに関する新たな包括的対話とデータ十分性認定に向けた進展」第0.2条参照。
  28. 民間セクターのデータへの信頼できるガバメント・アクセスに関するOECDの宣言 (2022年12月14日)は、法的根拠、目的の正当性、承認、データの取扱い、透明性、監督、救済について扱っており、G7における議論の基礎とすべき。

「経済連携、貿易投資」はこちら